2009年01月20日

カカーはミランに残留するって。

Milan President Silvio Berlusconi Claims Kaka Is Unsellable - Manchester City Deal Is Off

スカイイタリアが,移籍金1億2000万ユーロでミランとシティが合意し,カカーには以前に報じられたより少ない約週給25万ユーロ,つまりは年俸1200万ユーロの契約が用意され,残すは契約期間についての合意のみ,と報じたようなのですが,結局,カカー自身が残留を決めたらしいです。

ベルルスコーニは,カカーは,シティのオファーを盾に年俸をアップを要求することなく,残留を決めた素晴らしい男だ,さすが「I belong to Jesus」Tシャツを着ているだけのことはある,と褒めちぎってます。

というわけで,この冬最大のトランスファーサーガはこれにて終了,ということになりそうです。カカー残留を願ってたミランサポの皆様おめでとうございます。逆に,巨額の移籍金を元にチームの刷新を望んでいたミランサポの皆様には,残念なことになりました。

で,次はカンプノウ?やめてくれー。

posted by coladevaca |07:29 | スポーツ文化 | コメント(3) | トラックバック(0)
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2009年01月19日

シティ「革命」?あるいは,ビッグクラブとは何か?・・・カカー移籍騒動について

本当はバルサのことを書こうかと思ってたのですが,最近色々と他におもしろい話題があり,今回はそっちについて書こうかと思います。

そう,世間の度肝を抜いたカカー移籍騒動についてです。(他にはやはり,マドリーのカルデロン会長が迷走の末辞任したことでしょう。チキートさんのところを読むとかなり笑えます。スヌーピーの名誉って・・・(‐^▽^‐))

皆さんもご存知のように,今回の移籍騒動は,マドリーやチェルシーがカカーを追ったケースが基本的にはメディアが騒いでいるだけの,まやかしだったのと違って,どうやらかなり具体的な,「リアル」なの話のようです。

移籍が成り立つには,基本的に所属クラブとの合意と,選手との合意が必要なわけですが,メディアに流れているコメントを見る限り,ミランは売る気満々ではないにしろ,1億ユーロとも1億1200万ユーロともいわれる巨額の移籍金にグラっときてしまっているようです。元々イタリアのクラブの財務状況は,入場料収入が観客動員減によって低下し,テレビ放映権料頼みでバランスも悪く,よろしくないといわれていますし,ミラン自体もCL出場権を逃したおかげでかなり収入に穴が空いているはずであり,それに現在の金融危機に端を発する世界的な経済不況,ベルルスコーニも多額の損失を被ったかもしれない,そもそも彼は政治活動に多額の資金を投じており,以前ほど余裕のある懐具合ではないといわれていたはず,となればいくらクラブの象徴的選手といえど,あまりに巨額な移籍金にクラブがグラっと来てしまうのもわからないではない話ではあります。一般に,移籍話においては,選手の意向が反映される傾向にあり(その意味で,先夏のCR7のマドリー移籍話では,オファーが具体的だったかどうか怪しかったことは留意する必要がありますが,選手が望んだのに,クラブ側が抵抗し,それがうまくいった珍しいケースだったと思います),クラブの抵抗も無さそうだということになると,選手の意向のみが問題,つまりはカカーがどう考えるかで全てが決まりそうで,それがここまで話が盛り上がる要因となっているといえると思います。

カカーに提示された年俸は,手取りで1500万ユーロというビックリな額がどうやら最低ラインのようで,さらには代理人などにも数千万ユーロという巨額が支払われる見込みのようです。つまりは,シティは「外堀」もきちっと埋めている,カカーの周囲に移籍を成立させようとするインセンティブに溢れた人間を多数作り出しているわけで,こういう状況では彼が冷静な判断を下すのはなかなか難しいことだろうな,と思います。

もっとも,これらの金額を否定する報道もあります。

ヒューズ監督:「カカー獲得はまだ先」
Kaka: Deeply reluctant to join City

1億ユーロとか1500万ユーロという金額は,どちらかといえば,巨額オファーにショックを受けたといわれるミランサイドから出てきたものだと思うのですが,シティサイドは否定気味。とすると,カカーをできるだけ高額で売りたいミランサイドの高値誘導策なのでしょうか。

さて,この騒動に対する個人的な感想ですが・・・

まず,クレの1人としてこれは他人事ではないな,と。つまり,彼らが今度はカンプノウに訪ねて来ることもありうるのではないか,と容易に予想できるわけです。標的は当然ながら,現在神がかったプレーを見せ続けているレオ・メッシーです。スペインにおいては,契約に必ず違約金条項,移籍金条項が盛り込まれるようであり,メッシーのそれは1億5千万ユーロともいわれていたと思います。常識的にみれば,このような金額は誰も払うはずのない金額,そういう前提で設定された金額,メッシーがバルサをどうしても出て行きたいといわない限り,クラブは安心していよいはずの金額,だったはずですが,シティにはどうやらそのような考えが通用しないようなのです。シティが本気で乗り出して来たら,移籍金の問題はクリアされ,我々としては,メッシーのバルサ愛に頼るしかない,という少々心もとない状況にあるわけです。なお,メッシー君は,「僕の人生の残りをここで過ごしたいと考えているし、そうなることを望んでいる」などという素敵なコメントを残してくれています。

仮にレオ・メッシーをシティへもっていかれたりしたら個人的には大変なショックを受けるでしょうが,他方,他のブログや「カカーのシティ移籍が意味するもの」という記事(なお,この記事は本当に飽きれるばかりに酷いです。特に酷いのが,シティをけなしたいがために,マンチェスターという街までをもけなしている点です。「ヨーロッパの中心地から遥か遠い場所に位置しており、自慢できる文化に乏し」い街に,ユナイテッドもあるわけですが。果たしてこれがユナイテッドへの移籍だったらマンチェスターの街をけなしていたでしょうか?「魅力に欠ける」街のことなど議論にさえしていなかったのでは?)に散見されるシティへの嫌悪感みたいなものは,自分の立場で考えればそれは筋が通らないことかな,と思ってます。結論からいってしまえば,たとえレオ・メッシーをとられたとしても,それは自分達のやってきたことが,今度は自分達の身にふりかかってきただけ,ビッグクラブが「スーパービッグクラブ」に選手を獲られるだけ,それに嫌悪感を抱くのはビッグクラブのファンとしてはダブルスタンダードも甚だしいかな,と。ダニ・アウベスを3000万ユーロ強で奪われたセビジスタに比べてバルセロニスタが特権的な地位にあるのであって,セビジスタの嘆きに比べてバルセロニスタの嘆きが尊重されなければならない,と考える理由が思いつきませんし,そう考えることは,ガザで民間人の虐殺を繰り広げるイスラエルが,ハマスのロケット弾の脅威を訴えるのと同じぐらいハレンチなことではないかと(いいすぎ)。

シティといわゆる「ビッグクラブ」の違いって何でしょうか?

金で選手を買い漁ってる?

しかし,他のビッグクラブもやってますよね?そんなことは。若手を育てていると称されるアーセナルでさえも,育てる対象であるところの有望な若手選手を金で買い漁ってますよね,自分達よりも経済的に弱い小さなクラブから。

シティが使うお金の額が余りにも巨額だから?

ベンゲルさんは,クラブにはテレビ放映権料や入場料収入,さらに商品やスポンサーなどによるコマーシャルな収入,などがあり,それらクラブの収入の範囲内でお金を使うのが真っ当なクラブのやることである,というような趣旨のことをいっていました。これは最もなことだと思います。しかしながら,実際,そうじゃないクラブ,つまりクラブ事業による収入以外,オーナーの資産などを頼りにクラブを運営しているところはビッグクラブも含めて山ほどあるわけですし,今回シティの標的となったミランも,その点ではシティと余り変わらないように思えます。違いがあるとしたら,それはベルルスコーニは,アラブの王様程にはお金持ちでは無かった,ということでしょう。ベンゲル理論を貫徹するならば,多くのクラブの経営をひっくりかえす必要があるわけで,オーナーの資産への依存具合をもってシティだけを非難するのは少々おかしいといえるでしょう。

また,ベンゲルさんのいう着実なクラブ経営がなぜ褒められるべきか,その理由を財政面から考えれば,それは長期間に渡ってクラブを安定的に経営できるためであり,長い時間をかけて投資リスクを分散しているから,ということがあるはずです。しかし,そもそも投資リスクを余り気にする必要がない程お金がある,というのであれば,一気にお金を注ぎ込むこと自体が悪いことだとはいえない気がします。さらには,そもそも自分のお金をどのように使おうとそれはその人の自由ではないか,ということもあります(もっとも,アラブの王様の財産は,封建的かつ人権抑圧的,反民主的な政治制度を基盤に成り立っているのであって,そのような財産そのものがけしからん,という理屈は成り立つ気はします)。お金をかけずにチームを強くする,そういう「スマートさ」を備えたクラブは素晴らしいクラブだとは思いますが,他方,そういう「スマートさ」だけでビッグクラブになるのは難しいことですし,また実際に巨額の投資の積み重ねをせずに「スマートさ」だけでビッグクラブとなったクラブなどないのも事実です。長期的にみれば,間違いなく「ビッグクラブ」というのは「タイトルをお金で買ってくるクラブ」のことであり(お金をかければ必ずタイトルを獲得できるわけではありませんが,お金をかけなければタイトルを(継続的に)獲得するのは不可能,という意味で。また,ただ金をかければ良いということもなく,やはり何かしらの「スマートさ」は同時に必要とされるでしょう。),そうなりたいのであれば巨額の投資をする他なく,したがって,シティのやっていることは,ビッグクラブになるためには必要不可欠かつその点からみれば正当な行為であり,またそうだとするなら,50年かけて数億ユーロを使うか,それとも5年で数億ユーロを使うか,それは個々の自由であって,好きなようにすればいい話な気がします。時間を短縮しようとする分だけ余計にお金を払っているかもしれませんが,それは個々の選択の問題にすぎないでしょう。

あるいは,一気にお金を使われると,フットボールにおける価格形成が歪められる,という意見もありうるかもしれません。しかし,シティはカカー以外,例えば,サンタクルスへのオファーやベラミーなどのウェストハム勢へのオファー,獲得したブリッジへのオファー,さらにはHSVへ出したデ・ヨングへのオファーをみていると,このカカーのケース以外では,意外にも今までの常識の範囲内で動いていると思いますし,価格形成を歪める行動をことさらとっているとは思えません。何かこのカカーのケースだけが突出している感じがします。そうすると,この1億ユーロには何か他とは違う特別な意味がある,とみるべきでしょう。「カカーは1億ユーロに値するか」という記事は,カカー1人に1億ユーロというのはスポーツ的には割りにあわない,その額で将来有望なタレントが数人買えるだろうから,これはそれ以外の意味が大きく,「誇示のための消費」なのだ,といっていますが,それはあたっているように思えます。

個人的に付け加えるならば,ミランという世界的に成功している歴史を持つビッグクラブの1つから,そのクラブの象徴的選手を引き抜く,これはバルサも含む既存のビッグクラブが形成している現在の秩序に割って入り,それを打ち倒し,新たな秩序を打ち立てるのだ,というシティによる一種の「革命」宣言だと思っています。マドリーが作った移籍金記録を,歴史は長いものの,新興クラブといえるシティが塗り替えようとする,これもまさに「革命」的な出来事です。

フェルナンド・トーレスは,シティはカカーにはふさわしくない,イングランドでタイトルをとれない中堅クラブじゃないか,というような真に常識的な発言をしています。常識的であること,それはまた,既存のビッグクラブによる秩序を擁護することも意味しています。現在のイングランドの「ビッグ4」体制は,多分にCL出場権獲得による収入との関係が深いものであるだろうと思います(やはり「お金の問題」!!)。仮に,シティが台頭した場合,「ビッグ5」になる可能性は低く,おそらくどこかが「ビッグ4」から落ちることになりそうです。そして,それはやはり最終的には「お金の問題」となり(なぜ「お金の問題」になるか,といえば,変動する成績のリスクからクラブを守ってくれるのがお金,つまり時にCL出場権を逃してクラブ収入に穴が空いた時に,選手の放出で穴を埋めること無く次のシーズンに巻き返す余裕をお金は与えてくれるからです),「ビッグ4」の中でも相対的に財務状況が良くないアーセナルかリバプールということになりそうであり,リバプールに所属するトーレスがシティに反感を覚えるのも当然といえば当然です。しかし,これらの常識を破壊すること,既存のビッグクラブによる秩序をひっくりかえすこと,シティはそれを意図しているのであり,そのような考え方に染まっている人間の頭を,今回「1億ユーロ」というハンマーでわざと引っ叩いたのだ,といえると思います。このように考えると,今後実際にカカーが移籍しなかったとしても,今回の件でシティが自分達の存在感を示し,将来における野望を宣言し,フットボール界を大きく揺さぶったことは確かであり,この時点でシティにとってはある程度満足できる結果を得たことになるのかもしれません。

ここまで見て来たように,私自身はシティの行動にはあまり否定的ではありません。くりかえしになりますが,仮にメッシーをとられたなら,深く嘆き悲しみ,文句の1つもいうことでしょう。しかし,彼らの行動がモラルにもとるとか,「サッカーの伝統と本質」の破壊などとは思わない(そもそも「サッカーの伝統と本質」が何なのかがよくわかりませんし)と思います。彼らはビッグクラブになりたいのであり,そのために彼らは我々と同じやり方で少々急進的に物事を進めているにすぎません。先にビッグクラブになったからといって,彼らのやり方を非難する資格は我々にはないでしょう。どのクラブにもビッグクラブになる権利はあるはずですし,それは尊重されてよいはずです。

余談ですが,これってちょっと地球温暖化の問題に似ていると思いました。先進国が長きに渡ってCO2を排出し地球を汚してきたくせに,発展過程にある後進国の行いをどうして(道徳的に)非難できるのか,という話に。温暖化の場合,現在からの後進国の「暴走」は地球自体を潰してしまう可能性があるために自ずと限度があり,罪にまみれた先進国といえど,後進国の「暴走」を一定程度非難できる理由はあると思いますが,フットボールにおける新興クラブの「暴走」にはそこまでの決定的な制約がない,したがって,それを非難することは難しいように思います。そもそも,この不況下で各クラブとも経営が苦しい中,シティーが大金を色んなところで使ってくれるのはプロフットボール界にとっては「恵みの雨」,称賛すべき行為とも考えられます。「シティによる 1人ニューディール」?

最後に,興味深かったのがこの件に関する各クラブの指揮官のコメントです。ロッシさんとスパレッティさんは,こういう巨額なオファーを拒絶した時の後始末をどうするのか,という問題を指摘しています。これは具体的には,ここでいわれているような,引き止めのための年俸アップをすべきかどうか,アップした場合他の選手の間に不満が貯まりかねないのだが,とか,別の中心選手に対するオファーを今後受けた場合に,嫌でもカカーのケースと比較せざるをえなくなり,その扱いによってはチームに亀裂が走りかねない,とかそういうことでしょうか。あとロッシさんのこの発言はかなり気にいってます。

「モラルに欠くオファー?セリエC2の選手が月給2000ユーロであることの方が、よほどモラルを欠いていると思う。これでは、2人の子供を養っていくことはできない」

posted by coladevaca |07:22 | スポーツ文化 | コメント(7) | トラックバック(0)
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