2008年01月22日

浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か?

浦和レッズがスポナビ・アワード2007に選ばれたそうです。ここのコメント欄をみると,罵声を浴びせ合っている人達がいてなかなかおもしろいですが,ふと目を留めたのが,「クラブ時代の象徴 浦和レッズが導いたもの」という宇都宮徹壱さんのコラムです。結論部分を引用すると,

/*2007年という年は、間違いなく“青の時代”から“赤の時代”へと移行するターニングポイントであった。もちろん“青”は日本代表であり、“赤”は浦和レッズ、つまりクラブである。それまで代表人気で回っていた日本のサッカー界は、この年、浦和を象徴とするクラブに、完全に自転軸をシフトさせたのである。*/

私は,この論調には違和感を覚えました。

結論からいえば,

「それでも,代表優位の時代は変わらない。」

ということになると思います。

そもそも,なぜ日本のフットボールシーンがクラブではなく代表中心に回っていたのかを考えてみると,様々な要因があるものの,大きな理由の1つとして,

「代表チームの参加するコンペティションが世界とつながっているオープンなものであったのに比べ,クラブが参加するコンペティションはドメスティックでクローズドなものであったから」

というシステム/制度レベルの差があったと思います。

クラブの戦いはいくら頑張っても日本一どまり。日本のフットボールのレベルが世界レベルにあるならそれもOKなのでしょうが(メジャーリーグベースボールのように),世界では評価されないレベルにあるため「日本一」といわれても微妙な感じは否めません。ACPなんてものもありましたが,「日本がトップレベルにあるようなアジアって微妙」という感じで,結局,クラブの戦いが制度的に有する閉塞感は拭いされなかったように思います。

一方,代表の戦いは,日本のフットボールのレベルとは無関係に,制度的には世界のトップにたどりつける(世界のトップと戦える)可能性があるため,やはりそれは魅力的なものがあったのだろうと思います。

このような状況において,クラブワールドカップは,日本のクラブシーンにおいて存在していた閉塞感を打ち破り,制度的に世界への扉を開いてくれたということができます。浦和レッズのブレイクは,トヨタカップからクラブワールドカップへという制度/システム変更が無ければ存在しえなかったでしょう。

しかし,ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

「クラブワールドカップは,本当に制度的に世界への扉を開いたのだろうか?」

宇都宮さんのコラムを引用してみましょう。

/*最終的に浦和は、この大会で「世界3位」の称号を得ることになった。だが、ミランとの準決勝で明白となった彼我の差もまた、ほろ苦い思い出となった。スコアこそ0-1と僅(きん)差であったが、その1点は長谷部誠が語った通り、「5点、10点に匹敵する」1点であった。とはいえ、これまで「別世界」でしかなかった欧州のビッグクラブに対し、日本のビッグクラブが公式戦で真剣勝負を演じたことが、日本サッカー史のメルクマール(指標)となったのは紛れもない事実。浦和ファンのみならず、日本のサッカーファン全体にとっても、世界のトップとの距離感をはっきり認識することができた。その意味で、今大会における浦和の貢献度は計り知れない。*/

ここでキーとなるのは,欧州のビッグクラブが真剣勝負を演じた,ということです。しかし,今回のミランは真剣だったかもしれないが,次のヨーロッパチャンピオンがどこまで本気でやってくれるのか,疑問に持つ人は多くいると思います。クラブワールドカップというタイトルの重みはいかほどになるのか,それが予測できない状況においては,クラブワールドカップは必ずしも世界への扉を継続的に開いてくれることにはならないかもしれない。つまり,日本に「クラブ時代」が訪れるかどうかは,欧州のビッグクラブがこのコンペティションに対してどのような姿勢をとるか,にかかっている部分が大きいということになるわけです。

ワールドカップのタイトルは,既に権威あるものとして確立されているが,クラブワールドカップのタイトルは,まだまだ未知数。ワールドカップでの戦いは,世界との戦いであるとほとんどの人が認識しているが,クラブワールドカップは,必ずしもそうでもない(浦和レッズの世界3位に「」を付けたがる人が何と多いことか!!)。このような状況において「クラブ時代」の到来を告げるのは時期尚早であるといえるでしょう。

さらに,より根本的な疑問をこのコラムからは感じました。

また,宇都宮さんのコラムを引用してみます。

/* 私見では、決勝のセパハン戦よりも、むしろ準々決勝、準決勝での韓国のクラブ(全北現代、城南一和)との死闘こそが、今大会のクライマックスであったと考える。代表戦ではない、クラブ同士の対戦でも「日韓戦」がこれほどまでに両国のサッカーファンを熱くさせるということを、浦和とそのサポーターは私たちに証明して見せた。普段は浦和の「数の力」を快く思っていない他クラブのサポーターでも、この「日韓戦」には心底感情移入できたのではないか。*/

この発想は,正直「クラブの時代」とは全くそぐわないものだと思います。結局,クラブ同士の戦いを「疑似代表戦」にみたてて盛り上がっているわけですから。それなら別にクラブ同士の戦いじゃなくていいわけで,代表戦の数を,「日韓戦」を増やせばいいじゃない?ということになるでしょう。

前の引用にも現れていますが,宇都宮さんは,浦和レッズの戦いを評価するうえで,「日本サッカー史」とか「日本のサッカーファン」とか,「クラブ」とは別の「日本」という尺度における成果でしか評価しようとしていないといえます。宇都宮さんは,浦和レッズのサポーターでは必ずしもないでしょうから,浦和レッズとのつながりを求め,それを評価するうえでは,どうしても「日本」という尺度に頼らざるをえないのでしょう。しかし,それは「クラブの時代」を語る言葉として適切なものだとは思いません。「クラブの時代」においては,他のクラブの躍進を,そのクラブのサポーター以外が持ち上げる必要などないはずだからです。他のクラブは,基本的には自クラブの生存を脅かす,利害が対立する存在のはずですから。

今回,宇都宮さんは,でもどうしても,他のクラブを褒めたくなった。同じ「日本のクラブ」だから。だから「日本」という尺度を持ってくる。しかし,「日本」という尺度は,基本的には「代表」のものなのです。「日本」という尺度から「クラブ」を語ることは,「代表」から「クラブ」をみているのと同じ,「浦和レッズ」を「日本代表」の代替物として扱っているのと同じなのです。

したがって,「クラブ」を「代表」のアナロジー以外で理解することが「クラブの時代」の到来には必要であり,「クラブ」が「日本」という尺度から語られ続ける限り「代表優位の時代」が続くことになるだろうと私は思います。

posted by coladevaca |01:42 | スポーツ文化 | コメント(4) | トラックバック(1)
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[サッカー] 浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か? : Catalonia is not Spain 【昨日の風はどんなのだっけ?】

宇都宮さんは好きだし、お世話になっているけど、この件に関しては、僕はこっちの意見に賛成です。

2008-02-01 00:06 | 続きを読む
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浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か?

良エントリー。

宇都宮さんは好きなコラムニストの一人だけど、管理人さんの言うように、このコラムは浦和を持ち上げすぎたように思った。(アワードだからそういう記事になったのかもしれないけれど)

恐らく、浦和の選手もサポも「代表の代替物」みたいな扱いは違和感を感じるんじゃないかと思う。エルゴラに啓太が「僕らは浦和でやっているわけですし、むしろ周りのほうがおかしいように感じる」ってコメントがあったけど、こっちの方がしっくり来る。

オシムさんは日本じゃまだ代表がその国の「ウインドウ」になってるって指摘したけど、高原の移籍にしろ、サッカー好きなファン(コアサポは別にして)にしても選手においても代表重視はまだまだ続くと思う。日本のクラブが世界と伍する場としはCWCはまだまだ発展途上。ミラン戦はエポックメイキングな位置づけになるかもしれないけれど、今後、CWCがWCと同様な存在になれるかどうかで再評価されるのだと思う。宇都宮さん、ちょっと勇み足気味だったのかな。

ま、クラブの現場の雰囲気がACL、CWCを重視するようになったから、釣られてしまったのも分からないこともないけど。このエントリーのスタティックな視点は大切だと思いました。

posted by ブランク | 2008-01-22 20:35

浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か?

ナイスな記事だと思います。
僕も上のブランクさんと同様宇都宮さんのコラムは興味深く読んでおり、好きなコラムニストのうちの一人です。
今回のコラムに関しては、少し違和感を感じつつも何となく納得していましたが、この記事を読んで違和感を取り除けたように思います。

posted by 宇都宮一派 | 2008-01-23 01:26

浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か?

coladevacaさんのおっしゃる通りだと思います。

日本は島国であり、島国がもつ特有の文化尺度を持ってしまうのではないかと。
どうしても、日本を代表して! という言葉が世界に何かを発信する際に、出てしまいがちだと思います。

posted by あろう | 2008-01-23 03:29

浦和レッズは「クラブ時代」の象徴か?

皆さん、レスありがとうございます。

皆さんに何か感じて頂けるものがあったとしたら幸いです。

posted by coladevaca | 2008-01-25 21:07

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