2008年01月19日

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

今朝,LeeさんのBlog「サンフレッチェ降格の理由」という記事をへぇーと思いながら読んでいました。乱暴に要約してしまえば,

「育成型クラブ」というクラブのコンセプトを忘れて優勝を目指した結果,大したお金もないのに(ベテラン)選手を補強せざるをえず,補強した選手に押し出される形で若手が試合に出られなくなり成長しきれず,で結局,優勝もできずに負債と主力になりきれない元期待の若手選手だけが残った。それが降格の原因の1つだ。

ということだと思います。私にはサンフレッチェに関する知識がほとんど無いので,この点について批評するとかそういうことはできないのですが,ここでふと思ったのは,

「そもそも,なぜサンフレッチェは優勝を目指したのか?」

っていうことなんですよね。これを読んでいる方の中には,

「そんなのプロである以上あたりまえじゃーん?何でそんなこと疑問に思うわけ?」

という方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら,ヨーロッパフットボールをご存じの方ならば,それがフットボールの世界では全然当たり前でないことを知っていらっしゃると思います。いわば「特定のクラブを除いて優勝を目指さない(目指してはいけない)」のがフットボール界の常識とさえいえるかもしれません。

そうであるにもかかわらず,サンフレッチェはなぜ優勝を目指したのだろうか?というのを考えてみたいと思います。

ヨーロッパとJの違いでいえば,確かに,Jクラブ間には,例えばマドリーとレバンテの間にあるような泣きたくなるぐらいの絶望的な戦力格差(それは経済格差にほぼ等しいですが)というのは無いように思います。最近,浦和がそこから抜け出してヨーロッパ的ヒエラルキーを構築し,その頂点に立つべく頑張っているようですが,未来はともかく今のところは(差は明確にありますが)そこまでの差はないように思います。したがって,このような状況から「うちもうまくやれば優勝を狙えるかも」と考えてしまったということはあるかもしれません。

私は,そういう状況判断よりも「どのクラブも優勝を目指さなくてはならない」という一種の義務感を下敷きに達成できる見込みもなく安易に目標を立ててしまったのではないか,と推測しています。主力の流出が相次ぐジェフの経営者達が,現実感もないまま「Jリーグの頂点を目指すチーム作り」(仮に現実感をもってこういう目標を立てたのだとしたら,それは・・・。しかもまたも「3カ年計画」・・・。)といってることからもそれは伺えるような気がします。

では,そのような優勝を目指す義務感を生み出すものは何なのか,といえば,それは私は「プロ野球的感覚」ではないか,と思います。プロ野球をあまり知らない私がいうのも何ですが,プロ野球の場合,ほとんどどのチームもシーズン前には「今年こそは優勝を」なんてことをいってる気がします。もちろん,そうでないチームもあるようですが。クラブ経営者達がやたらと「優勝」という目標を立てたがるのは,フットボール的感覚で物事を考えておらず,プロ野球的感覚で物事を考えているからではないだろうか?と思います。そして,これはおそらく相当数のメディアやサポーターもそうではないのだろうか?と思います。Jリーグよりは遥かに歴史があり,今でも我が国におけるキング・オブ・プロスポーツであるプロ野球は,経営者達のスポーツに対する見方,感覚にこのように影響を与えているのではないか,と推測します。

プロ野球のチームが「優勝」という目標を立てるのは,Jクラブがそのような目標を立てるよりは合理的なことだとは思います。なぜなら,プロ野球は,ドラフトや保留権制度など様々な問題を抱えながらも戦力均衡に配慮する制度が確立されていますし,そしてプロ野球には何より目指すべきタイトルが1つしかなく(日本シリーズ制覇),どんなに成績が悪くてもリーグから降格することも無いとすれば,実現可能性を無視して「優勝」という目標を立てても余り弊害はないし,むしろシステム的にみても自然といえるでしょう。

前述のように,フットボールの世界/システムでは,リーグ優勝を目標とすべきでないクラブは沢山存在しえますし,そのようなクラブにはそれぞれの状況にあわせた目標を立てるべきだとされているように思います。ヨーロッパでいえば,リーグ残留,国内カップタイトル,ヨーロッパカップタイトル,そしてヨーロッパカップ出場権獲得など・・・(こう書いてると,Jクラブには,ヨーロッパカップ出場権獲得に相当する目標がないため,無理をしてでもリーグ優勝というものを目指したくなる,というのはあるのかなとは思います)。つまり,いくつかの獲得すべきタイトル/目標があるシステムなので,とりあえずはリーグ優勝を目指すという考え方はフットボール的感覚からは生まれ得ない,フットボール的感覚にはそぐわないものだと思うわけです。

ちょっと話は変わりますが,また「ルールを守っているからいいというのは違う。」などという珍言(ルールを守っていても駄目なら何のためにルールがあるかわからないからです。そこまでいうのなら問題が起こる前にJ側が納得する守るべきルールを先に決めておくべきでしょう。)が出て来たいわゆるベストメンバー規定問題について。以前にこの問題については触れたことがあるのですが,そこで触れなかった視点がありうるかもしれないなー,と思いました。つまり,この規定もやはりプロ野球的感覚で出来ているのではないか,と。プロ野球では,目指すべきタイトルが1つですから,複数のタイトル/目標のうちの自己のプライオリティを考えてターンオーバー制をとるのはちょっと考えにくい(そもそも運動量が少ないので考える必要もない)わけですが,フットボールでは,ターンオーバー制をとるのは常識なわけです。世界の常識を日本の非常識にしてしまうのは,世界のマイナースポーツである野球を見すぎてきたからではないのか,と。

簡単にまとめれば,プロ野球で育ってきた人達が,プロフットボールリーグを運営しているからおかしなことになっているのでは?ということなんですが,どうですかねー,この思いつきは。

posted by coladevaca |21:14 | スポーツ文化 | コメント(8) | トラックバック(1)
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「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。|Catalonia is not Spain|スポーツナビ+ 【Reysoloid】

「そもそも,なぜサンフレッチェは優勝を目指したのか?」 っていうことなんですよね。これを読んでいる方の中には, 「そんなのプロである以上あたりまえじゃーん?何でそんなこと疑問に思うわけ?」 という方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら,ヨーロッパフットボールをご存じの方ならば,それがフットボールの世界では全然当たり前でないことを知っていらっしゃると思います。いわば「特定のクラブを除いて優勝を目指さない(目指してはいけない)」のがフットボール界の常識とさえいえるかもしれません。

2008-01-20 11:04 | 続きを読む
この記事に対するコメント一覧
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「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

読んでて、なかなか参考になりました。

ただ、自分にはまだこれらの問題に対してハッキリした意見がないので管理人さんの意見に対しては肯定もせず否定もせずの立場です。

>プロ野球で育ってきた人達が,プロフットボールリーグを運営しているからおかしなことになっているのでは?

最後の文章ですけど、「3月~12月のシーズン制」「Jリーグオールスター」なんかもこれに該当しますね、たぶん…。

posted by なべつね | 2008-01-19 21:43

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

すみません、さらに追加です。

あと、昔あった「延長戦・Vゴール」とか「Jリーグチャンピョンシップ」なんかもプロ野球からの発想だと思います。

お邪魔しました。失礼しますm(__)m

posted by なべつね | 2008-01-19 21:49

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

Jリーグが春秋制なのは日本の生活習慣に起因してると思う。>なべつねさん

posted by alb | 2008-01-19 21:52

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

そうですね。あとはプロスポーツを「興行」の
面からどう捉えるかということでしょう。

NFLやNBA等のアメリカの閉じたサークル
の中での連続する「興行」では、頭ひとつ抜き
んでたチームが発生することは、観客の興味を
削ぐとして回避するようになっています。
(サラリーキャップやドラフト指名順など)
「ベストメンバー規定」なんかもそういう観点
から見れば、出るべくして出た話でしょう。

ヨーロッパにスタンダードがあるプロスポーツ
を日本に移植してきた訳ですから、管理人さん
のように冷静な分析をした上で

・地域共同体のシンボルとして応援している
 部分もあるんですよ~。
・目指す目標もクラブの体力によって違う事
 理解してますよ~。
・そういう部分も含めてtotoの予想は楽しん
 でまーす。

等々の意見が盛り上がってくれば、上の人々も
理解してくれるんじゃないですかねぇ。
楽観的すぎます?

posted by ダメ親父 | 2008-01-19 22:07

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

読んでてふと頭に浮かびました

プロ野球はずい分前から(部分的な)ターンオーバー制を敷いてますね
「投手のローテーション」です

昔の「権藤、権藤、雨、権藤」や「杉浦(南海)の日本シリーズ4連勝」等の時代を経て、プロ野球界は「酷使は短命に繋がる」と気付きました

サッカー界がそこに辿り着けるのは何年後になるのでしょうか?

posted by 一兵卒 | 2008-01-19 22:29

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

かなり共感しました。

戦力均衡を是とするのは閉鎖的な環境ではいいのかもしれませんが、ドメスティックだけでなく、「対世界」「対アジア」への戦略が必要な点が「野球」と比べ、大きく異なっているような気がします。
別の見方として、アメリカ的スポーツ経営と欧州的スポーツ経営の対比で考えたほうがいいのかもしれませんが、どちらにしても現代サッカーが欧州を中心に動いていることを考えると経営規模に見合った戦略をそれぞれのクラブが立てて行くのが自然なのでしょう。
要はどれだけ観客(ファン、サポーター)を納得させることができるのかということだと思います。そこを「野球」にならって行うと「ずれ」が生じる。
その「ずれ」が今ところどころで出てきているんでしょう。多分。(浦和と千葉の差がその「ずれ」の解釈の違いなんじゃないでしょうか。)

posted by 野球は野球で好きだけれど | 2008-01-20 01:48

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

>一兵卒さん
日本サッカー界はローテーション制を引きたいと思っていると思います。
ただ、Jリーグ側がわけのわからない制度を強いてるからなかなか移行できないんです。
規定を守ってるにも拘らず文句言うんです。

posted by そうですか。 | 2008-01-21 00:37

「3ヵ年計画」と「ベストメンバー規定」を繋ぐもの。

>なべつねさん
>albさん

Jリーグが今のシーズン制をとっているのは,日本の気候にも原因があるように思います。豪雪地帯があるので,真冬にやるのは厳しいのでしょう。

>ダメ親父さん

そうですね。もちろん優勝できるに超したことはないんですけど,クラブには勝つこと以外にもおっしゃるような意義もあるし,もうちょっとゆっくり,地道にやってくれていいんじゃないかと思うんですよね。

>一兵卒さん

いわれてみれば確かに。「ターンオーバー」というと,どうしてもファーストチョイス以外の選手を出す,というイメージだったので,投手のローテーションは私の頭の中でひっかからなかったようです。

>野球は野球で好きだけれどさん

そうですね。ファンも含めて,優勝するのが野球以上に難しいスポーツであることを認識するのが重要だと思います。

>そうですか。さん

規定を守ってるにも拘らず文句言うのは本当に意味不明です。常識とかいわれてもねー。

posted by coladevaca | 2008-01-22 01:27

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