2007年10月17日

代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

少し前の話ですが,我がバルセロナのラポルタ会長が以下のような発言をしたそうです。波紋を呼ぶバルセロナのラポルタ会長の代表軽視発言から引用すると,

/*バルセロナのラポルタ会長は7日のアトレティコ・マドリー戦後、フランスのテレビ局カナル・プリュスの取材に応じ、代表戦でクラブを離れることになる代表選手に向けて、次のようなメッセージを残した。

「これからまた、代表ウイークでクラブの試合は小休止となる。それはクラブにとってはプラスとなることではない。われわれのクラブの選手は代表でうまく調節して、筋肉の過負荷なく帰ってきてくれることを願いたい」

 ラポルタ会長は9月の代表ウイークの際、代表選手の貸し出しについてFIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)に金銭的補償を求める発言を行った。いまだクラブが無償で選手を代表に送り出している現状を「恥」とまで言い切った同会長だけに、今回の発言も再び波紋を呼んでいる。*/

だそうです。また,ラポルタ会長「うちの代表選手にはバルサに対する義務がある」では,

/*11日、「代表戦で手を抜くことはない」との反応を示したチャビ、ビクトル・バルデスの発言に対し、ラポルタ会長が「私が言いたいのは、彼らがバルセロナでのプレーを考慮しなければいけないということだ。これはクラブの会長として言わなければいけないことなんだ」との主張を繰り返した。

「前回の中断期間にて、代表戦で怪我をしたためにチームが必要とした選手がプレーできないという事態が起こった。彼らに給料を払っているのはクラブであり、本来選手はクラブのことを考えるべきなんだ」。

 彼は全ての選手が代表に呼ばれたいと望んでいることには理解を示しているものの、一方でバルセロナこそ彼らを起用できなければいけないこと、また選手達も「常にバルセロナでプレーできる準備をしておく必要がある」ことを強調している。*/

代表選手は,クラブに配慮して,代表戦(特に親善試合)では怪我をしないように手を抜くべきかどうか,意見が分かれそうな問題ですが,この発言の背景には上記にもあるように,クラブが無償で選手を代表チームに貸し出すことへの不満があるわけです。ここ2週間ばかりは代表ウィークということで,フットボール界は代表の話題が多くなっていますが,代表を考えるいい機会ともいえるわけで,ここでこの問題について考えてみようと思います。なお,ラポルタ会長の9月の発言は,これです。

選手とクラブの間には雇用契約が存在するため,クラブのために選手が働くのは当然です(労働者は,使用者に対して労働義務を負う(誠実労働義務・職務専念義務を含む))が,代表チームと選手は契約関係にはなく,したがって,選手が代表チームのために働くのは,少なくとも法的には当然ではありません。選手が代表チームのために働きたい,と思っても,選手を雇用しているクラブの側はほとんどの場合そうではありません。そこで,代表マッチを行うために,各国協会の規定などに基づいて「強制的に」「無償で」協会がクラブから選手を借りあげて,選手に働いてもらうことになるわけです。例えば,Jリーグクラブの場合,

/*日本サッカー協会基本規定54条
加盟チームは,所属選手が本協会により代表チームまたは選抜チーム等の一員として招聘された場合,当該選手を参加させる義務を負う。・・・

Jリーグ規約41条2項 
Jクラブは,所属選手が,代表チームまたは選抜チーム等の一員に選出された場合,当該選手をこれに参加させる義務を負う。*/

などの規定に基づいて,クラブは,自己の意思に反して,選手を代表チームにタダで「出向」させなければならないわけです。なお,選手個人についても,代表チームへの参加義務を負っており,代表チームへの参加を拒否することはできません。

/*Jリーグ規約88条
選手は,次の各事項を履行する義務を負う。
(7) 協会から,各カテゴリーの日本代表選手に選出された場合のトレーニング,合宿および試合への参加*/

最近「代表引退」という言葉がよく聞かれるようになりましたが,あれは,協会と選手,両者の合意の上での紳士協定のようなもので,協会があくまで選手を参加させようとすれば,現役生活をやめない限り選手の側が招集を拒否できないようになっているわけです(選手には,「クラブだけ」でプレーする道を選ぶ自由はない)。後述するように,エトーさんは,代表選手を「戦争に向かう兵士」に例えていますが,同じ兵士でもシステムとしては「志願兵」ではなく「徴兵」に近い感じといえます。

世の中には,確かに,ある種の「公益」に基づいて,自己の意思に反して何かを強制されるということがあります。わかりやすい例でいえば,空港を作るために嫌々ながら農家は自分の土地を手放さなければならない,みたいな話のことです。しかし,その場合においても,農家は何らかの損失補償を受けることができる,というのが社会における常識です。例えば,我が憲法29条3項は「私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用いることができる」としています。公共の利益のために私有財産の剥奪・制限をする際には,正当な補償が必要だ,という理屈の背景には,「公益,つまり,みんなの利益を得るためにかかるコストはみんなで負担すべきである,そうするのが公平だ」という考え方があります。だから,私有財産を剥奪・制限された人に国が補償をし,税金という形で広く国民に負担を転嫁することになるわけです。

代表チームの活動が,ある種の「公益」に基づくものであるとするならば,その活動を行うにあたり生じるコストは本来みんな(フットボール界全体)で負担すべきものといえるでしょう。代表選手が怪我をしたら,その治療費は広くみんなで負担すべきですし,代表の活動時間分の選手の給料は,広くみんなで負担すべきものといえます。また,代表チームの活動が,ある種の「公益」に基づくものだとしても,一方で,FIFAや各国協会などが自己の経済的利益を追求するビジネスでもあることもまた否定しがたいように思います。そうだとすると,そのようなビジネスにかかるコストをなぜクラブが何の見返りも無しに負担しなければならないのか,ということも当然いえるわけです。

このように考えると,ラポルタ会長のいうとおり,FIFAや各国協会などが,代表の活動で生じるクラブの損失を全く負担しないのは,明らかにおかしいと思います。とりあえず原則的には,FIFAや各国協会などは,選手の給料を日割りにして代表の活動日数分の給料を負担すべきであり,さらには,選手が怪我をした場合にはその治療費も負担すべきだといえるでしょう(なぜなら,モノを借りた人は,借りた時と同じ状態で貸した人にモノを返すべきだからです)。

逆に,なぜ補償しなくていいのか,といわれた場合に,どんな理屈があるでしょうか?

「今がそうだから」という理屈にならない理屈を除くと,1つには,代表選手を抱えるクラブは,基本的にはビッグクラブであり,そうだとすると,代表選手を抱えることによる負担が存在することにより,中小クラブとの戦力の格差が縮小するので,リーグの戦力均衡に資する,というものがあるかもしれません(他にも何かありますかね?)。もっとも,それは余り説得的な理由付けとはいえません。戦力均衡を考えるなら,ビッグクラブから中小クラブに直接資金を移転した方が効率が良いはずだからです。

ところで,我らがエトーさんは,この件について以下のように述べています。

/*「万が一僕が代表の試合で故障しても、僕の国や協会がその治療費を出せるとは思えない。その点を考慮して欲しい。アフリカには貧しい国がたくさんあるから、こういう費用を捻出することさえ出来ないんだ」と語るエトー。一番の解決法は、保険をかけることだと提案する。「クラブも代表も満足するためには、保険をかけることが一番いいんじゃないかな」とのことだ。*/

/*エトーは「代表が選手を招集するためにお金を払うなんてやりすぎだよ。みんな自分の国のために戦うんだ。大げさだよ」と反論する。「自分の国のために戦う気持ちにお金なんてかからない。それはフットボールにとって一番美しい感情なんだ。国歌が響いて、何百万人もの人たちを代表して戦うのは、戦争に向かう兵士のようなもの。この気持ちはお金で解決することじゃない」とラポルタ会長に反論している。*/

まず,後半部分からいくと,エトーさんの理屈から抜け落ちているものがあるとしたら,それは「戦争するにはお金がかかる」ということでしょう。確かに,祖国のために戦う兵士は,自分の国を思い,裸一貫で招集に応じるなり志願するなりすればそれで済む話ですが,当然ながら兵士の装備,食料,医薬品,給与・・・etcは誰かが調達して用意しなければ戦争なんてのはできないわけです。ラポルタ会長は,いわば「ある国(=各国協会)が,他の国(=クラブ)の予算から強引に戦費(の一部)を調達して戦争(=代表マッチ)をやっている」から問題にしているわけで,したがって,エトーさんの議論は,ラポルタ会長の議論に対する反論にはなっていないと思います。

前半部分ですが,確かに,アフリカなどの貧しい国の協会は,選手の治療費などを出せない可能性は高いと思います(ディウフ選手によれば,帰国のための飛行機代さえ選手の自腹だとか)。したがって,前述の原則通りに,個々の協会に選手の給料の日割り負担とか,治療費の負担をしてもらうのは普遍的な制度としては困難だと思います。そこで,エトーさん提案の保険というアイディアが出てくるわけですが,フットボール選手の怪我の頻度を考えると,民間の保険会社が請け負ってくれるのかは少々疑問なところもあります。そうすると,国連の分担金のように裕福な国にある協会に多くを負担して貰うことを前提に,代表関連のビジネスからあがった利益の一部を各国の協会にプールして貰って基金を作り,その運用益から治療費や給料支払いにあてる費用を捻出するのはどうだろうか,と思います。

なお,ブラウグラナさんのところの記事によると,この問題について話しあうFIFAの検討委員会が,ラポルタ会長を委員長として設置されることになったそうです。

ブラウグラナさんのところに載っているラポルタ提案のうち(第1の提案は既に議論済み),

●親善試合に関しては、参加の可否を選べる。
●親善試合の数を減らす。

のうち,まず後者については,クラブも一緒に親善試合を削減して(集金ツアーをやめるか,大幅に削減する),選手のフィジカルにキチンと配慮した日程を組むべきだと思います。同時にムダに公式戦を増やすこともやめるべきでしょう(CWCみたいな)。

前者については,なかなか難しい問題ですね。親善試合に関する参加義務を撤廃すると,選手が代表チームに参加しなくなるかどうかはやってみないとよくわからないので。とはいえ,単純に「お金をくれるクラブと,お金をくれない代表チーム,どっちに配慮する?」ということを考えると,前者に配慮する選手が増えそうな気がします。もっとも,クラブの損失が補償されるとなると,クラブの代表チームへの抵抗感が弱まり,クラブが選手に代表不参加の圧力をかけることが少なくなることも予想されます。一方で,義務だからという理由で嫌々参加するようなのであれば,別に参加しなくてよい,といえる気もします。そうすると,参加の可否を選手が選べることにしても別によい気がしますね。

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posted by coladevaca |09:10 | スポーツビジネス | コメント(15) | トラックバック(0)
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Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

有意義なレポートありがとうございます。
やっぱり、せめてTVでクラブ名やら選手名を連呼してもらうしかないですね。
サポは わかってるからしつこいなあ、と思いがちなんですが・・
「サンフレッチェ広島MF柏木陽介19才走れるファンタジスタ・・」 とかwww

posted by フレーズ | 2007-10-17 10:36

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

ラポルタとエトオの発言は
それぞれ違う立場の事を述べているので
どちらがより正解か、という議論はなりたたないのでは?
また、クラブ側の人間にも
サッカー選手にも色んな多様な考えがあるので
そういう分け方も十分ではないかも知れません。

ただしサッカーでもっとも盛り上がり、
権威があるのはW杯なので、
アスリートならそういう所を目指したい、
というのはあると思います。

もちろんトッティのような
生まれ育った町のチームがもっとも大事、
というのも素晴らしい考えだと思うし、

それぞれのプレーヤーが
どこに帰属意識を持つか、
というのが根底にあって、
それにそってプレーヤーが判断する、
というのを妨げるというのが、
どうであれ、良くない様に思います。
お金が絡むと個人の自由意志がより反映されにくくなる。
レンタル料は良くないアイディアと思えます。
これはアイデンティティの問題で、
アイデンティティはお金で買えない。
ヨーロッパでやってる南米人や
アフリカ人なんかは
やっぱり自国の為という意識は
強いかも知れないなぁ、と思います。
もちろん日本人も。

posted by 音速キック | 2007-10-17 10:57

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

時代にあった規定が必要になるはずだとも思いますが、代表戦における宣伝的な効果によるプラスの要素もすくなからずあるのではないかとも思います。親善試合などは別にしてもW杯各地域杯(ユーロ・コパなど)での活躍によりその選手がいるチームの試合を観たいということで衛星放送などに加わる方もいるように思います。確かに今現在は放映権料の高騰による分配金の増加もかさなって(出費も当然増えているわけですが)特にビッククラブなどでは収益が出ているようですが、かといって代表戦の位置づけが後者になるようだと長期的にマイナスになるのではないかと思います。また勝者による一方的な利益追求は別の立場に立っている人々の強烈な反発(亀田家もそうですが)を生みかねないことも思えば、逆の立場にもたってみて考える必要があるのではないかと感じます。まあ「無償でいい」とも思ってませんが代表戦の地位が低下してしまうことはちょっと危険なような感じがします。

長文失礼します。

posted by 通りすがり | 2007-10-17 11:05

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

現状のルールにおいてクラブは、サッカー選手は代表に選ばれるリスクをもった商品であることを認識しないといけないのではないでしょうか。つまり、優秀な選手は代表参加をすることを前提で契約を結ぶべきなのです。
選手に代表参加の義務を課した規定がある以上、それを認識して契約していないのであれば、それはそのクラブ側の落ち度であると思います。
代表参加の義務を課した規定がおかしいというのであれば、自クラブの利益のみを考えず、世界経済(古い言い方だが南北問題とか・・・)や選手の意向など、もう少し高い見地にたった意見がほしいところですね。
ラポルタ会長の案だと、損をするのは、経済的に貧しい国とその国の選手だと思います。

posted by Kuni | 2007-10-17 11:25

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :


私も常々、この問題について考えてました。
凄く良いレポートですね。

仰るとおり、日常生活に置き換えたら、人から借りた物(正しくは者ですが)は、借りた状態で返す。
壊したら弁償は当然ですね。
もし、選手のサラリーを日割りで協会が負担する事ができたとすると、今の代表マッチが根底から変わるでしょうね。

今日は、親善試合だから(高給取りの)ロナウジーニョは呼ばない(呼べない)。とか・・・。

posted by Kick | 2007-10-17 12:38

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

ほぼ同意。ただ、私はCWCが無駄な公式戦だとは思いませんがw

すぐに金銭的な話になるのは野暮ですが、クラブがなんのために選手を保有するのか?という事を考えれば、なんの負担も保証もなく代表に召集されるのはいささか一方的ですよね。
そゆ意味でも代表召集期間中の怪我に対する何らかの保障は必要でしょうね。
召集される事自体は仕方ないような気がしますけど、骨折とかでシーズンを棒に振られるとクラブとしては納得できないでしょうから。

んでも、これって解決方法ないでしょう。
代表召集に対する限定的な拒否権をみとめつつ、あとは代表、クラブ、選手の3者間で話すしかないのかと。
今の問題点ははなす余地すらほぼ無いという事かと。

posted by うーん | 2007-10-17 13:06

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>選手には,「クラブだけ」でプレーする道を選ぶ自由はない

代表不参加を表明する選手や拒否する人もいるようですし、邪魔するクラブもあると思ってました。
クラブに供出義務を課す協会でも、選手に罰則規定を定めているところは沢山あるのでしょうか。過去、南米ではクラブが選手を代表に出さないことが話題になったりしましたが、今はそんなことはなくなりましたか?

道義的な面は別として、私有財をクラブが各国協会に貸し出すという受け取り方は、今まではされてこなかったのでしょう。それを改めようとするなら、代表戦のあり方自体を問い直すことも避けられませんね。
野球のように、所属チームの意向次第という部分を強大にしてしまうとか。

徴兵の例を挙げるなら、クラブがその間の給与を支払わない方向が第一に検討されるべきではないでしょうか。
徴兵手当を支払う国はかなり多いようですが、日本はじめ、裕福な協会は代表選手に日当や、ときには勝利ボーナスも出すのでは?
選手の所得をつり上げた責任は偏に富裕なクラブにありそうです。

ビジネスに組み込まれた現在では不可能でしょうが、試合数を減らして質を向上させ、代表戦を重視するようになるのを願望します。
金持ちクラブ会長に保険金を支払わせるのが妥協案でしょうか。

posted by ううん | 2007-10-17 13:49

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

サッカーは興業なので戦争とか一般経済とは違う理屈があっても当然だと思います。
たとえば、サッカーは相手がいないと成り立たないので1チームの「独占」市場状態もないわけですし。

サッカーという興業にとって代表やW杯は必須の要素です。
興業にとって価値がある行為=代表出場 が選手の義務であるのは、ある意味 当然ではないでしょうか?

それによって、サッカーの価値、選手の価値も上がるわけです。

問題は最近「代表」の価値とクラブの価値のバランスが崩れたことだと思います。

posted by じゃじ | 2007-10-17 15:47

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>フレーズさん
>やっぱり、せめてTVでクラブ名やら選手名を連呼してもらうしかないですね。

もうちょっと多く望んでもいいはずですよ(笑)

>音速キックさん
>それぞれのプレーヤーが
どこに帰属意識を持つか、
というのが根底にあって、
それにそってプレーヤーが判断する、
というのを妨げるというのが、
どうであれ、良くない様に思います。
お金が絡むと個人の自由意志がより反映されにくくなる。
レンタル料は良くないアイディアと思えます。
これはアイデンティティの問題で、
アイデンティティはお金で買えない。

音速キックさんの議論は,エトーさんと同じで,議論していることが問題になっていることと少しずれていると思います。そもそも,この問題は最初からお金絡みの問題なんですよ。戦争の例えをまた使いますけど,

エトー → 自分の国のための戦争は美しいことであり,お金なんて必要ない!!
ラポルタ → いや,でも戦争にはお金が実際にかかってるわけで,その一部を私たちは無理矢理払わされてるんですが?また,費用を出しているにもかかわらず,戦争で得た戦利品の分配が受けられないってのはどうなってるんですか!?

戦争に参加することが選手のアイデンティティの問題として大事だとしても,そういう大事なもののためにかかる費用は,余所から「略奪」してきてもかまわない,というのであればそれは暴論というものでしょう。

少し話しは外れますが,「アイデンティティの問題」論をとると,代表参加義務を撤廃すべき,という理屈になる気がしますね。トッティのような立場を認めることと,代表参加義務は矛盾しますから。

>通りすがりさん
>代表戦における宣伝的な効果によるプラスの要素もすくなからずあるのではないか

あると思いますが,その逆もまたありうるわけで,結局のところはよくわからないし,この問題を放置できる程の効果があるとはちょっと思えないですね。

>代表戦の位置づけが後者になるようだと長期的にマイナスになるのではないか

これもよくわからないのではないかと思います。

>勝者による一方的な利益追求

ですかね?端的にいえば,クラブ側は「人のモノを借りるんだったら,賃貸料を払ってくれ」って言ってるだけなので,これを「勝者による一方的な利益追求」だというなら,例えば,そこら辺の大家さんが家を貸して家賃をとるのもすべて「勝者による一方的な利益追求」になると思いますけど。

>Kuniさん
>代表参加の義務を課した規定がおかしいというのであれば、自クラブの利益のみを考えず、世界経済(古い言い方だが南北問題とか・・・)や選手の意向など、もう少し高い見地にたった意見がほしいところですね。

ラポルタ会長は,その案をみればわかるとおり,少なくとも親善試合については,代表参加の義務を課した規定がおかしいと考えているようです。まあ,それも含めて,現状の制度はおかしい,という話でしょうね。あと,彼は,そもそもバルサの会長なので,自クラブの利益をまず考えるのは当然だと思いますし,言ってること自体は,自クラブのみならず,代表選手を抱えるクラブに共通する主張だと思います。また,私は,それぞれが自己の利益を主張しあい,それを話しあって調整し,妥協して解決案を出すのが,政治の1つの正しい形だと思いますので,自分の立場を超越した高い見地からの意見が必要だとはとくには思いません。

>Kickさん
>今日は、親善試合だから(高給取りの)ロナウジーニョは呼ばない(呼べない)。とか・・・。

まあ,そういう事態はおそらく多くの人が反発するでしょうから,妥協案としての保険っぽい仕組みを考えたらどうか,ということなんです。

>うーんさん
>ただ、私はCWCが無駄な公式戦だとは思いませんがw

そこは見解の違いということで(笑)

>代表召集に対する限定的な拒否権をみとめつつ、あとは代表、クラブ、選手の3者間で話すしかないのかと。
今の問題点ははなす余地すらほぼ無いという事かと。

そうですね。話しあうしかないと思います。本文で挙げたように,とりあえず話しあう場はできたようなので,これからどのように議論が進行していくか,見守っていきたいと思います。

>ううんさん
>代表不参加を表明する選手や拒否する人もいるようですし、邪魔するクラブもあると思ってました。

それはあると思いますよ。結局,ルール上義務があっても,選手が実際に拒否する場合には,それを受け入れるのが普通だと思いますから。

なぜなら,確かにルール上,代表参加を拒否した場合は,クラブの試合も出られなくなったりするなどの制裁が最終的には待ちかまえているわけですが,普通はそこまで揉めることを誰も望まないわけで,大抵はその前に話し合いによって妥協することを望むわけです。また,代表選手を選ぶ代表監督などが,チーム力アップを第一に考えて行動するものであるとするならば,参加を拒否するようなやる気の無い選手を無理矢理呼んだところでチーム力がアップするとは思えないですから,その選手の替わりに多少力が劣ってもやる気のある選手を招集することを選ぶだろうと思います。したがって,参加を拒否している選手を無理矢理招集することはあまり無いと思います。

>クラブに供出義務を課す協会でも、選手に罰則規定を定めているところは沢山あるのでしょうか。

詳しくは知らないですが,感覚的にいえば,普通は定めてあると思いますよ。

>私有財をクラブが各国協会に貸し出すという受け取り方は、今まではされてこなかったのでしょう。それを改めようとするなら、代表戦のあり方自体を問い直すことも避けられませんね。

まあ,常識的にいえば,1円も支払わずに,選手を自由に使えるという異常事態に何にも気を払わなかった今までが少々どうかしていると思いますけど。

言葉は悪いですが,「奴隷の主人は,奴隷労働に何の疑問を持たない」のと一緒じゃないですかね。

>徴兵の例を挙げるなら、クラブがその間の給与を支払わない方向が第一に検討されるべきではないでしょうか。

そうすると,日本などの裕福な国の協会は,別途日当を支払うことができるでしょうから問題ないのかもしれませんが,それが支払えないアフリカなどの貧乏な国の協会が困ることになるかもしれないですね。仮に,選手達に無償労働を要求する,となると選手達の不満が貯まる可能性は高いですし,そもそもそれって各種法律に違反するんじゃないの,っていう問題も出てきそうですね。

>じゃじさん
>サッカーという興業にとって代表やW杯は必須の要素です。
興業にとって価値がある行為=代表出場が選手の義務であるのは、ある意味当然ではないでしょうか?

必ずしもそうとはいえない気がしますけど。じゃじさんは,フットボール界を何か大きな1つの集団のように捉え,その興業というようにかなり物事をおおざっぱに論じているように思いますが,当然ながらフットボール界には様々なアクターがおり,その利害が錯綜しているわけです。例えば,クラブ側に立った1つの考え方としては,プラスの面が多少はあったとしても,基本的には,代表の試合なんて存在しないに越したことはない(経済的に利益になるわけでもなく,所属選手が故障してクラブの試合に出ることができない可能性が高くなる→クラブの商品ともいうべきフットボールのクオリティが下がる可能性が高くなる)という立場がありうるわけです。結局,代表やWCがフットボールにとって必須の要素であるというのは(それが多数派だとしても)1つの考え方に過ぎないと思いますよ。

posted by coladevaca | 2007-10-17 18:01

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

わりと多くの協会が代表招集の手当を選手に支払ってると思います。日本では貧乏なアマチュア時代から、小額の食事手当など、アマ既定抵触の問題と戦いながら整備してきたのでは?

その多寡の問題や払えない協会があるという課題はあるでしょう。手当などよりも航空機料金が高額で拠出できない場合もあるらしい。しかしなにがしかは支給する考えが主流なのではないでしょうか。

>奴隷の主人は,奴隷労働に何の疑問を持たない
>選手達に無償労働を要求する

これは再考すべきかと思います。法律違反云々は該当しないと見ることもできます。頻度や状況次第でしょう。なによりも、アマチュア時代からの伝統があるサッカーの代表制度ですから。

まあ、繰り返したいのは、給与高騰は富裕な雇用側に大きな責任があるということです。
逆に、高額な対価を支払っているというだけで、どこまで拘束できるのかも問題にすべきです。

旧日本軍も俸給を払っていたでしょう。年金もありますよね。しかし高額所得者には多く支払うなんてことはありません。なにが最低限のラインかは、やはり難しいところではありますが。

今や金持ちクラブ中心に世界は回っているとするならば、代表チームというものの存続自体を検討した方がいいでしょう。
盛んな国が少ないとはいえ、野球なんてほとんど代表チームなど無視ですからね。
そしてクラブは代表招集期間の減棒を契約に含める線で進め、その結果、お金を多くはくれない代表チームに配慮しない選手が増えればいいのでは。

ゆめゆめ、クラブが無償で選手を代表に送り出している現状を「恥」とまで言い切った会長に、世論が同調しないことを祈ります。
彼らが主になって保険制度を整えればいいでしょう。
けが云々なら、クラブ側が試合減少を真剣に議論すべき。

posted by ううん | 2007-10-17 19:04

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>逆に,なぜ補償しなくていいのか,
>といわれた場合に,どんな理屈が
>あるでしょうか?
それは「興業価値が特別に高いから」だという理屈が根本です。

お書きになっている「理屈」で、反対の立場の、根本の理屈がごっそり抜け落ちていると感じたので、コメントしました。
クラブの立場も、会長の発言も、わかります。

公益でも戦争でも経済でもないですし、それらの世界の比喩を持ってきても、違うと思っています。

ワールドカップや代表という興業の「鍵」と考えられてきた要素を、サッカー界がどれだけ重要と考えるか、という視点が根本だと思っています。

中途半端に代表召集を難しくする制度を持ち込むと、やがて「代表」が形骸化していきます。
要は、サッカー界が、代表やワールドカップの価値を保ち続けることが大切なのか、どうか、という点を確認しないといけないと思います。

posted by じゃじ | 2007-10-18 14:38

Re:代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>ううんさん
>まあ、繰り返したいのは、給与高騰は富裕な雇用側に大きな責任があるということです。

つまり,給料が今程上がっていなければ,例えば,給料を日割りにした時に,貧しい協会も支払うことができたであろう,という理屈ですか?

ご存知のように,我々の生きている世界の経済システムは,一般には市場経済といわれるものでして,選手の給料は,基本的には需要と供給の原理で決まってわけですよね?そうしますと,一般人の眼からみてもの凄く高い給料でも,競争が働いている市場が出した額であるならばいわば「適正価格」であるといえるわけです。「給与高騰」は,選手の給料は市場によって決定されるという制度に起因するわけで,これが気に入らないなら,市場を制限する=選手の給与の上限価格規制を導入する必要があるし,そういう議論が必要となるわけです。したがって,現在の制度の元で雇用側を一方的に非難するのは筋違いですよ。

>じゃじさん
>それは「興業価値が特別に高いから」だという理屈が根本です。

ううんさんとも共通するように思うのですが,つまり「代表はフットボールにとって特別だ,だから,特別扱いせよ」という議論ですよね。ただ,それだけでは理屈というより単なる1つの思想というか1つの価値観であって,それを他人に納得させるためには「代表はこれこれという理由で特別である。そう考えるべき理由がこれだけある。」(仮に現行制度を肯定しようとするなら「クラブの損失を全く補償しないという社会常識から外れた扱いをすべきこれだけの理由がある。」)というようにその特別性を具体的に,客観的に議論として展開することが必要でしょう。単に「必須の要素だから」「興行の鍵だから」といわれても,誰もがそのような価値観を持っているわけではないし,それで皆が納得するわけではないのです。

posted by coladevaca | 2007-10-18 15:28

代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>そもそも,この問題は最初からお金絡みの問題なんですよ。

お金がらみの問題とするのを良しとするかどうか、
と言うのも議論してよいかと思うのですが、
いかがでしょうか?
サッカー選手だろうが誰であれ
商品の様に扱われるのは嫌なはず。
圧倒的な力と金を持っているクラブがある。
その不平等が根底にあって、
一方でサッカー選手には意志があり、
自由なプレーが大前提であるサッカーにおいては
モチベーションがすごく重要なはず。
こういった問題はチームモラルに影響を与え、
勝敗といった結果に影響を与えかねない。
とすれば、「経済の理屈で正しいかどうか」、
というのが本当に正しいのか
ということも考えなくてはいけないのでは?

>問題になっていることと少しずれていると思います。

それはそのとおりで、
ぼくはその土俵で議論したい、とは思わないです。
このブログで前提となっている事が
本当に現実存在の視点に立ったときに
それでも重要かどうか?と問いたい。
人間が疎外されたときに
それでもスポーツに魅力があるのか、
と問いたいわけです。
クラブの理論は、
そこに無意識に挑戦している可能性があります。
大金を詰まれれば人間を辞めるのか?
大げさに言えば、そういった事が問われているのでは、と思った次第です。

なんか言葉が足りなくて、
うまく言えないです。

posted by 音速キック | 2007-11-07 21:03

代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

とりあえず・・

WC前のシセを思い出して下さい。。

私は今回の記事は全面的に賛成です。
あえてリバプールファンである事を差し置かずに書きますが、あれは本当に監督としてどうやり繰りすればよいか?
(そしてレッズファンはどこに怒りを向ければよいのか?)
※実際あまり効果的な使い方はされていない時期でしたが・・さておき

反対意見を記述された方は本当に観る方の気持ちを考えているのでしょうか??

国の威信を懸けて戦う・・・
このメンタリティは必要である事には異論はありませんが、最近のFIFA・日本サッカー協会の対応をみていると、そこに付込み利権を貪ろうとしてる姿勢が何より腹立だしいのです。。

共感・・できませんかね??

posted by りばぷ | 2007-11-07 23:36

代表は,なぜクラブに「選手のレンタル料」を支払わないのか?

コメント投稿者ID :

>音速キックさん
>お金がらみの問題とするのを良しとするかどうか、と言うのも議論してよいかと思うのですが、いかがでしょうか?

ちょっと意味がよくわからないです。議論の当事者(クラブとFIFA)がお金絡みの話で揉めているのに,お金絡み以外の問題とする意味がよくわかりません。

>サッカー選手だろうが誰であれ
商品の様に扱われるのは嫌なはず。・・・以下

音速キックさんのいってることが理解できているかよくわかりませんが,

厳密にいえば,フットボール選手が商品であるというより,フットボール選手が提供する労働力が商品として扱われているわけです。これを不快に思う気持ちもわからないではないですが,資本主義の世の中に生きている人誰しもが自分の提供する労働力を市場に売りに出して生きているわけでして,フットボール選手の場合が特別であるということはありませんし,プロフットボールというのはそういう仕組みの上に出来ているわけです。「経済の理屈で正しくても、それは間違ってるのだ」といってそれを否定するなら,それはいわばプロフットボールを否定するのと同じようなものです。

もし音速キックさんが「プロフットボールをやめて,アマチュア中心の代表戦オンリーの仕組みにすべきだ」という立場ならそれはそれで筋が通ると思います。そうでないのならば,お金絡みの話を避けるのは単なる現実逃避のように思います。

なお,このような立場は,マスターカードのCMじゃないですが,フットボールにはお金で買えない価値が存在する部分があることを否定するものではありません。例えるなら,「フットボールが本当に大事なものだとしても,フットボールをするのにはボールが必要であり,それはどこからか買ってくるべきものであって,どこからか盗んできてよいものではない」といっているわけです。

posted by coladevaca | 2007-11-08 09:07

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