2007年08月06日
ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
ボンズ、大リーグ本塁打記録タイに 本来ならば手放しで賞賛されるべきところなんでしょうが,どうも記事を読んでいる限り,微妙な空気が流れているようです。引用したAFP通信の記事でも, /*あと一本でアーロン氏の持つ偉大な記録を上回るが、多くの純粋な野球ファンは、ボンズのつくる記録は全て汚れていると思っている。*/ これは「偉大な記録」に肩を並べた者,そして「偉大な記録」を更新するであろう者に対する言葉としては相当に手厳しいものだと感じます。ボストングローブ紙のニック・カファルド記者の記事でも, /*ボンズによるこの大リーグ記録は、彼が記録保持者である間は常に疑問視されるものになりそうだ。彼にまつわるステロイド使用疑惑がその理由だが、大リーグ機構によるドーピング検査が開始されて以来、ボンズに陽性反応は出ていない。・・・ ラグジュアリー・ボックスの1室にいた大リーグ機構のバド・セリグ・コミッショナーは、9回に以下のようなコメントを発表した。 「バリー・ボンズ選手が大リーグの本塁打記録に並んだことに祝福の意を表します。この記録をめぐる論議にはいろいろな考えがあるでしょうが、それがいかなるものであれ、ボンズ選手が成し遂げたことは注目に値する偉業です」 またセリグ・コミッショナーは「先に申し上げたとおり、伝統ある野球と、この記録の重要性に敬意を表し、また有罪と下されるまで、この国では誰もが善良な市民であるという事実に基づいて、私ないしは代わりの者が今後の数試合に同行し、ボンズ選手の本塁打記録の更新を見届ける予定です」ともコメントした。*/ と現地における微妙な空気を反映させている記述になっています。 セリグ・コミッショナーのおっしゃるとおり,刑事裁判における挙証責任に関する「無罪の推定」の原則は大変重要なものであり,その原則の示す精神を誰しもが尊重すべきである,という姿勢には敬意を払いたいと思います。もっとも,「無罪の推定」はあくまで法廷で通用している法原則であり,(メジャーリーグのコミッショナーを含めた)一般人がそれに従わなければならないという道理は厳密にいえばない,ともいえます。したがって,「ボンズ、大偉業目前でもつきまとう暗い影」 にあるような /*薬物の供給元とされる栄養補助食品会社「BALCO」の研究所の化学者は、テレビ番組のインタビューで、ボンズとゲーリー・シェフィールド(タイガース)がステロイドを使用していたことを告白した。*/ ということをもって,ファンがボンズ氏を「有罪」だと考えるのは,必ずしも間違っていることではないといえます。私が興味があるのは,仮にボンズ氏が偽証罪や詐欺罪で有罪になった場合,つまり「無罪の推定」という理屈さえも打ち破られた場合に,彼が作ったこの「偉大な記録」はどうなっていくのだろう?ということです。仮に起訴されるようなことになり,その裁判の過程でボンズ氏の薬物使用が明らかになり,ボンズ氏が有罪判決を受けた場合に,この記録はどうすべきなのでしょうか? (以下は,ボンズ氏が薬物を使用したということを仮定して話を進めますが,真実そうであったということを主張するものではありません。) おそらく明確なルールは無いんだろうな,と思いますけど,おそらく,一方には,「ボンズ、大偉業目前でもつきまとう暗い影」 にあるように, /*ステロイドを使用することで、本塁打が一夜にして打てるようになるわけがないのは、おそらく誰でも承知しているに違いない。長い歳月の努力の積み重ねまで否定し、ボンズを生贄(いけにえ)にしてしまうような風潮は、決して“ヘルシー”とは言えない。記録達成の瞬間、シンプルに偉業をたたえたいものだ。*/ のような立場,すなわち,ステロイドを使用していても,ホームランが打てるようになるわけではないのだから,ボンズ氏のホームランを打つ技量は,ステロイド使用とは切り離して別個に評価されるべきものであり,したがって,その「偉大な記録」は認められるべきだ,という立場が考えられます。他方,上記記事で紹介されているシリング投手のように,そもそもステロイド使用は「ルール違反」なのであり,野球あるいはスポーツは,ルールが遵守された上で競争・プレーすることが大前提なのであるから,ルール違反の上に築かれた記録など尊重に値しない,という立場が考えられるでしょう。 前者の場合は,本当にステロイド使用と切り離してホームラン数を評価できるのか,すなわち,ステロイドを使用すればホームランが打てるようになるわけでは確かにないが,そうだからといって,ステロイドを使用していなければ,ボンズ氏がこれほどホームランを打っていなかったのではないか,という疑問は否定できるものではない,という反論,あるいは,シリング投手のようなそもそも論による反論が予想され,それが相当の説得力のあるものであることは否めません。後者の場合は,大変明快でわかりやすいのですが,例えば,ボンズ氏が最初からステロイドを使用していたのではなく,途中からステロイドを使用していた場合は,そこまでの記録は認められるべきなのかどうか,それを判断するにあたり,ステロイドを使用し始めた時期は確定的に認定できるのかどうか,など様々な疑問が浮かばないわけではない,といえます。 今のところ,この種の議論は一種の思考実験に他なりませんが,いずれ本当に議論しなければいけない時が来ることになるのでしょうか?
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posted by coladevaca |17:10 |
スポーツ文化 |
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MLB、記録尽くめの一日 【B・B・B 〜Buffaloes Base Ball〜】
今日もオリックスは西武との試合がありますが、 試合前にウェブニュースなどを確認していると、 MLBが大変なことになっているようですねw オリックスの試合をチェックしながら、今大急ぎでこの記事を書いていますw * 【A・ロッド、史上最年少で通算500号HR達成】 ヤンキースの「A・ロッド」ことロドリゲス選手が、ついに待望の一発を放ちました。 本拠地、ヤンキースタジアムでのロイヤルズ戦、第一打席でした。 通算500号。 この数字だけでも素晴らしい記録ですが、 わずか32歳と8日、史上最年少
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Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
コミッショナーとか、ハンク・アローン本人は認めたくないようだしサンフランシスコのファン以外もやっぱり認めていないっぽいですね。以前のボンズはどちらかというと細身(少なくてもマッチョではなかった)で打って、走って、守れる万能型だったので今の体格を見ると確かに不自然なんですよね。ただその一方でドーピングをしていたと実証されたわけではないしされたとして、それが本塁打激増にどう影響したのか? という意見もある。答えの出しようがないですよね、少なくても誰もが納得できる答えは出ないでしょう。かといって、このままでは混乱するだけでしてAーRODがボンズの記録を更新してくれるのを待つしかないのでしょうか? 本当に答えが出ないです。ただドーピングは別として41歳にしてあれだけ試合に出て、しかも未だに外野を守っている事そのものが凄いですよね。ボンズ本人がハッキリと言ってくれれば良いんでしょうけど。
posted by B・バンズ | 2007-08-06 18:25
Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
はじめまして。
ボンズ選手の記録に関しては、
私のブログでも少し触れさせていただきましたが、
やはり腫れ物に触るような思いですね。
(後付ですがトラックバックさせていただきました)
HRが筋力だけで打てるものではない以上、
ボンズ選手の本来の能力は決して否定されるものではなく、
この「参考記録」も、本来の記録と
ほぼ同じ意味を持つものであるとは思います。
しかし、ならばなぜルール違反を
犯してしまったのか(ドーピングが事実ならば、ですが)。
朝日新聞の記事などでは、
「90年代のソーサやマグワイアのHR競争に嫉妬した」
とありますが、ボンズ選手はその時点で
押しも押されぬ大スターだったのですから、
ちょっと説得性に欠けると思います。
一時の気の迷いにしても、その根拠は何だったのか、まだわかりません。
心情的には、シリング選手の意見に賛成です。
スポーツはルールがなければ成り立たない、これは当然です。
もしドーピングが事実であったなら、
ルール違反をしたボンズ選手には相応のペナルティが必要でしょう。
その際記録がどう扱われるのか、という問題ですが、
ボンズ選手が使用を認めるなど、決定的な証拠がある場合、
残念ながら全記録を「参考」扱いにして、
正記録とは認めるべきでない、と思います。
このルールは、そういう対処でしか守っていくことのできないものだと。
ボンズ選手がドーピングを認めたとしても、
MLBをリードし続けてきた彼の活躍は、
ファンの心から薄れるものではありません。
むしろ、ドーピングの体験を広め、その防止に尽力する方が、
偉大な選手として名を残せるのではないでしょうか。
ルール正常化のために、記録より記憶を選んだ選手として。
posted by りお りお | 2007-08-06 19:06
Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
お邪魔します。プロ野球の保留条項の話や今回の話、相変わらず難しい問題を採り上げておられますね。
ただ、ステロイドを初めとするドーピングの問題は近年になってから急に問題になったわけではありません。
例えば98年のマグワイアとソーサのホームラン争いは、94年~95年の長いストライキで民心を失ったMLBの人気回復にも大きく寄与したわけですが、この時点では、MLBは事実上、ステロイド使用を「放置」していたわけですね。
この時、コミッショナーはひたすら2人を賛辞していたような気がします……。
この当時、ステロイドの使用を禁止することがルールとして確立されていたわけではないにせよ、今回のボンズの一件にてコミッショナーがこうした複雑なコメントを発表する理由は、法的に問題があるか否かではなく、使ったかどうかを問題にしているからだと解釈できるような気がします。
であるならば、コミッショナーは、同時に当時の彼らに対しても批判的なコメントを出して欲しかったものですし、また、疑惑が付きまとう選手が多数存在しながら、長年彼らに対して面と向かって批判できなかったメディアには、少なくともボンズを批判することはできないような気がします。
二宮清純さんを初め、こうした見方をするメディアも多く、今回のバド・セリグコミッショナーの対応は、私個人としてはあまり気分の良いものではありませんね。
私としては、記録は記録として認めてもいいのでないか、と思います。
そして、注釈等をつけることで、ハンク・アーロン等の名誉も守ってあげればいいのではないか、と思います。
それにしても、記録の扱いは本当に難しいですね。
野球の場合、球場やボールによっても、ずいぶん変わってきます。まあそれらについては、少なくともアメリカ人は納得しているのでしょうが……。
posted by bunchousann bunchousann | 2007-08-06 23:39
Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
>B・バンズさん
>以前のボンズはどちらかというと細身(少なくてもマッチョではなかった)で打って、走って、守れる万能型だったので今の体格を見ると確かに不自然
野球の知識は乏しいですけど,聞いたところでは40盗塁・40本塁打をやったことがあるらしいですね。体格が太くなったのは年齢のせいもあるのかなと。41歳ですからねー。
>答えの出しようがないですよね、少なくても誰もが納得できる答えは出ないでしょう。かといって、このままでは混乱するだけでしてAーRODがボンズの記録を更新してくれるのを待つしかないのでしょうか?
このままだと,そうなりそうですよね。
>ボンズ本人がハッキリと言ってくれれば良いんでしょうけど。
「無罪の推定」の原則が大事ってコミッショナーはいってますけど,おそらくファンが求めてるのはそれに反して疑いをかけられている者が自ら疑いを晴らすことなのかな,と思います。シリング投手がいう「薬物疑惑を否定しないことは,その使用を認めているのに等しい」って理屈は,「無罪の推定」の原則に反しますし,黙秘権も実質否定してるし,で刑事裁判においてはありえない理屈なんですけど,ファンの意見としてはわかる気がしますし,ボンズ氏もその声に応えるべきなのではないか,とは思いますね。自分の記録をファンに認めて貰いたいのであれば。
posted by coladevaca | 2007-08-07 01:29
Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
>りおさん
>残念ながら全記録を「参考」扱いにして、正記録とは認めるべきでない、と思います。
このルールは、そういう対処でしか守っていくことのできないものだと。
なかなか厳しいですね(笑)。正論であるとは思いますけど。私の頭の中では,「755」は,ボンズ氏の才能や努力+事実とすれば,そこに薬物も何パーセントかは寄与した結果の数字であり,そこで,その何パーセントかの薬物の寄与分を取り除いた数字を記録として認めてあげることも理屈として考えられないではないと思うんですけど,それがわからないからAll or Nothingで判断せざるをえない,ということで,うーん・・・と迷うんですが。
>ボンズ選手がドーピングを認めたとしても、
MLBをリードし続けてきた彼の活躍は、
ファンの心から薄れるものではありません。
むしろ、ドーピングの体験を広め、その防止に尽力する方が、
偉大な選手として名を残せるのではないでしょうか。
ルール正常化のために、記録より記憶を選んだ選手として。
仮に薬物の使用疑惑が事実としたうえで,ボンズ氏の行動を解釈すると,どうもそういう考えとは相容れない人なんだと推測しますね。やはり彼は「記録」に相当のこだわりがあるんだと思います。「記録」にこだわりがあるからこそここまで多分やってこれたんではないのかと。黙して語らないのは,ファンの声に応えることよりも,ある種の「逃げ切り」を期待して,「記録」に自分の名前を刻むことを選んだのではないか,と思います。
posted by coladevaca | 2007-08-07 01:30
Re:ボンズの755号アーチは今後どう「処理」されていくだろうか?
コメント投稿者ID :
>bunchousannさん
どうも。色々難しい問題をとりあげるのは,多分屁理屈が好きだからでしょうね(笑)。
bunchousannさんの話ですが,平たくいえば「お前ら(コミッショナー,メディア)だって知ってた(もしくは,見逃していた)じゃないか?それを今さら批判するのか?」ってことですよね?
この理屈はボンズ氏が,コミッショナーやメディアに対していうならわかりますけど,ファンに対してはどうですかねー。確かに,ファン自体も,近年になって形成されつつあるドーピングに対する厳しい見方でボンズ氏の「過去の行為」をみていると思うので,一種のギャップがあり,ボンズ氏にとっては酷だとも思いますが,一方で,ファンには昔から素朴な「反ドーピング」感情はあったとも思いますね。ドーピングの話を聞いたときに,一種の「裏切られた」みたいな感情をファンが覚えたことは確かだと思うんですよね。昔,スポーツ選手が薬使ってるみたいな話を最初聞いたときには「えっ!?」みたいな驚きが私にもありましたし。
>私としては、記録は記録として認めてもいいのでないか、と思います。
そして、注釈等をつけることで、ハンク・アーロン等の名誉も守ってあげればいいのではないか
1位のところに記録はあるが,そこに注がついていて「ボンズ氏には,薬物使用の過去があった。」って書いてあるとすると,いわば「疑惑のホームラン王だってことを公式記録に刻む」わけですから,微妙なんじゃないですかねー。1つのうまい解決方法だとは思いますけど,そこまで書くぐらいだったら,認めない方が適切って人は当然出てきそうですね。
posted by coladevaca | 2007-08-07 01:33
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