Catalonia is not Spain

日本(人)はオシムに甘い?

このエントリーをはてなブックマークに追加

「オシムに甘くないか」

これは元アテネ五輪代表監督などを務められた山本昌邦さんが,日経新聞に寄稿されていた意見です。こういう意見自体は,確かセルジオ越後さんなんかも言ってたような気がするし,そう珍しいものでは無いのかもしれないけど,いわゆる評論家ではなく,オシムさんと同業のプロフェッショナルなフットボールコーチが正面から言うというのはなかなか興味深いように思います。以下,山本さんの意見を抜粋して紹介してみたいと思います。

山本さんからみると,最近の日本代表をとりまく雰囲気は「微温的」,つまりは生ぬるい感じであって,3連覇のかかるアジアカップを控えているのに「まなじりを決した感じがさっぱり漂ってこない」のはどうしたことか,といいます。自身が参加したレバノン大会のトルシエ監督のときは,相当の準備を重ね,協会幹部からトルシエさんを補佐していた山本さんに二度三度「明日からおまえに指揮をとってもらうかもしれん」といわれる程監督の首は危機的状況に追い込まれていたし,中国大会のジーコ監督のときも,「中国での覇権がなければ,ジーコ氏といえど,お引きとり願おうという雰囲気が確かにあった」,つまりは,それまでどうも"うだつがあがらなかった"ジーコ監督の首がかかった大会だったというわけです。それに比べて「不思議なのは,今のオシム日本の周囲に「負けたら監督解任」とたとえはったりでも言う人がいないこと。監督は老朽の人,実績もある。けれども知らないこともある。アジアの戦いで死活を分かつ暑熱対策,移動やキャンプ設営,それらの裏方の手配に抜かりはないか。先人の積み上げたものをご破算にして監督に一切お任せしましょう,という今の傾きには同調できない」といいます。また,「今回は負けてもOK。3年後のW杯南アフリカ大会で頑張れば」というような意見に対しては,「1年でそれなりの成長幅を示さないチームに,明るい3年後があるとも思われない」し,優勝すればワールドカップのプレ大会であるコンフェデに出ることができ,そこで「現地の事情に通じ,人脈を確保できることのメリットは計り知れない」といいます。

まあ,簡単にまとめてしまえば,「もっとオシムの尻を叩いて,決死の覚悟でアジアカップをとりにいかせろ」ということなんでしょう。そうでないとワールドカップ(に出ること)も危うい,と。

そもそも,山本さんがいう「微温的なもの」の原因は何か,を考えると,日本がアジアで2度頂点を極めたことよりも,私はまずはドイツ・ワールドカップの余りにテキトーな総括が大きいのではないか,と思っています。つまり,ワールドカップであれだけボロ糞に力負けしながら,前から明らかだったウィークポイントを羅列するだけで総括を終え,そもそもの監督選考の妥当性,ベスト8という目標設定の妥当性,その目標達成のための戦略の設定・その戦略に沿った施策実施の妥当性,大会への準備態勢の妥当性,ウィークポイントを修正するための施策実施状況とその評価など「強化体制全体」が批判的に検討/反省されることなく,したがって誰も責任をとることなく,ジーコが駄目だったからオシムで,とナアナアで流してきてしまったところにあるように思います。そのような無責任体制の継続が,ワールドカップのときにみられた余りに楽観的で根拠のないメディアの報道(その報道に加担した(する)一部のフットボール関係者は猛省すべきだと思う),その報道にのせられる愚かな人々が相互補完的に作り出す「バラ色の風景」をもイメージとして存続させてしまったのではないか,「日本はもはやアジアでは相手になる者がいないから,アジアの大会には興味がわかず,世界を第一の相手にするのだ」的なある種の驕り/慢心が「微温的なもの」の裏にはあるのではないでしょうか。

また,オシムさんに周囲が「甘い」のだとしたら,ワールドカップ後の川淵さんが巻き起こした(責任逃れのための?)騒動で,協会にある種の「弱み」があることが原因かもしれません。あるいは,小難しく,哲学的/知性的にフットボールを語る,オシムの「鋭い頑固親父的キャラクター」に国民が魅了されているからかもしれません。しかし,フットボールコーチの仕事は,「フットボールで周囲を魅了すること」であり,自身のキャラクターによってではないでしょう。当然,オシムさんはそんなことはふまえたうえで色々言ってるのでしょうが,周囲は果たしてどうでしょうか?「フットボールで周囲を魅了すること」というのは,「スーパースターが活躍すること」とは同義では無く,「中村俊輔選手が活躍するかどうかよりも,チームとしていかに質の高いフットボールを見せられたか」によって計られるべきであり,「スーパースターが活躍したかどうか」しか国民が見ていないのだとしたら,結局,「フットボールを知らない国民が多い現状では,これ以上この国のフットボールのレベルは上がらない」ということになるのかもしれません。

(余談ですが,どうもスーパースターや監督の「キャラ」にことさら注目がいく風潮は,さすが「キャラ萌え」の国だという気がします。これに「人生ドラマ」好きも加わって,「スポーツ」そのものが希薄化する現象がフットボールに限らずあると思うのですがどうでしょうか?)

オシムさんは,就任会見で

「ドイツでの失望というが、失望というのは、より多くのものを望み過ぎたからするものだ。そういった楽観的な見方はどんな根拠に基づいていたのか?」

と痛烈なメディア/日本批判をぶった方なので,そのような「微温的なもの」に染まらないことを期待したいところですが,彼も人間ですから,周囲が弛緩した空気であれば,程度の差はあれ,それなりに影響されてしまうかもしれません。そういえば,反町さんとは違い,オシムさんの口からは「日本化」あるいは「日本らしいサッカー」なる言葉が就任会見以来消えているような気がします(オシムさんの発言をキチンと毎回チェックしてるわけではないので実際はそうではないかもしれませんが)。その心は,「本当に"日本らしく"やったらロクなフットボールができない」というところにあるのかもしれません。

頂点を極めれば,ある種の驕りとモチベーションの低下が起こる。これは我がバルサにも見られたことで,ある種当たり前のことです。が,ここで考えるべきなのは,

「世界の頂点を極めたのでもないのに,ノンビリしてる暇はない」

ということであって,ワールドカップまでの数少ない真剣勝負の場として,選手/チームの成長が期待できるアジアカップは,「もっと真剣に」フットボールファンが盛り上げて穫りにいかせる必要があるように思います。世界の頂点を極めたイタリアでさえ,ノンビリしていないわけで,このままではますます世界との差が開いてしまうのではないでしょうか。



1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
スポーツ文化
タグ:

【お知らせ】
Yahoo! JAPAN IDで記事にコメントできるようになりました

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

Re:日本(人)はオシムに甘い?

むしろ辛くないですか?
何かに付けてオシムを止めさせようとしてる気がしてならないです。
日本人の気質的にオシムは受けが悪いのかもしれないですが、野球の野村監督みたいに。
だからジーコや長島みたいな人柄だけの人間を過剰評価してしまう、本質を見れないアホが多すぎです。

Re:日本(人)はオシムに甘い?

「アテネ経由ドイツ行き」か・・・

Re:日本(人)はオシムに甘い?

んー,私は,東北の愛犬家さんの意見をみて,正直「甘いなー」と思いました。

まず本当に当たり前のことなんですけど,オシムさんは,別に「ボランティア」で監督をやってるわけではないですよね?年俸の確かな額は知りませんけど,メディアの報道によれば,1億2千万円だとか。ジーコより安いというのはバランスを欠いてるようにも思いますけど,それでも強豪国の監督と比肩する結構な額であることには変わりはないですよね。ようするに,オシムさんは代表監督という選ばれたエリートしかつくことができない「大事なお仕事」をやってるわけです。

なんでこんなことをいうのか,というと,東北の愛犬家さんに「仕事」だという認識があるなら

>いつまでたっても成長しない・突っ込んだ質問が出来ない状態ならそのうちインタビューすら受けてくれなくなるのでは?

なんてことは出てくるはずがないわけです。メディアと関係が良くない監督は結構いると思いますけど,会見やインタビューをやめる監督はまずいないでしょう。それは,彼らが「仕事」でやってるからなわけです。会見やインタビューをやめてしまうのは,いうなれば「職場放棄」です。私は,オシムさんは,プロフェッショナルな監督だと思っていますから,自分の発言がどんなに理解されることが無くても,会見やインタビューをやめることはないと思いますよ。

じゃあ,オシムさんが,なぜ記者会見などのメディア対応を仕事としてやっているかというと,それは別にメディアと話すのが目的ではなくで,最終的には,国民ないしサポーターに対して,現在の代表チームの状態や今後の強化方針などの情報を開示して,代表チームを広くサポートしてくれるような環境を作り,代表チームの強化と試合/大会での勝利という目標達成を円滑にすすめるためにやってるわけです。

>オシムの発言の行間を読めない・読まない記者が多い

という東北の愛犬家さんがいうような状況があるとしたら,それはメディアを通してしかオシムさんの意見に触れることのできない国民にキチンと伝えるべき情報が伝わっていない虞れがありますよね?

そうすると,代表監督としては,行間を読まなければわからないような発言では無く,我が国の現状にあわせて,お馬鹿なメディアやフットボールを知らない一般人にもよくわかるような一読了解の発言を心がけるべきだとは思いませんか?

例え話をするなら,東北の愛犬家さんが学生だとして,家庭教師に勉強をみて貰おうと思って実際雇ってみたところ,その家庭教師は非常に優秀だったが,言ってることが思いの他難しくてよくわからない。そんな場合には,普通,家庭教師に,もう少し噛み砕いていて,わかりやすく教えてもらえませんか,といいませんか?

東北の愛犬家さんの理屈だと,思いの他難しくてよくわからないのは,自分の勉強が足りないのが原因なのだから,家庭教師の姿勢は問題ないということになるでしょう。それも理屈として間違っていないといえるのですが,程度問題があるにせよ,普通はそういう反応にはならないと思います。普通はそういう反応にならないのに,オシムというある特定の家庭教師に対してはそういう反応になる。これが私の「甘い」と思うところですね。

Re:日本(人)はオシムに甘い?

マスコミの報道の仕方にも問題があるのでは?
オシムの発言の行間を読めない・読まない記者が多いように思います。また、質問もオシムの本音を引き出すような内容ではないですよね。
それでいて発言をストレートに報道して批判を煽ったりするのは如何なものかと思います。
解説者や評論家の人も批判の対象が過去の実績に終始しているように思います。ユーゴのW杯ベスト8は大したことないとか現場で監督をやったわけでもないのにでかい顔して批判したりとかってなんか説得力ないですよね。
そんな中で日本(人)はオシムに甘いも糞もないと思います。
ジェフサポとして約4年間、オシムのサッカーを見てきましたし発言も聞きましたが、日本のマスコミやサッカー関係者がオシムを理解しようとしていないんではないですかね?
逆にオシムが日本(のマスコミ)に甘いと思います。
いつまでたっても成長しない・突っ込んだ質問が出来ない状態ならそのうちインタビューすら受けてくれなくなるのでは?

こんな記事も読みたい

ブロガープロフィール

profile-iconcoladevaca

[[coladevaca-260126.png]]

当ブログは,バルセロニスタによる,バルセロニスタを中心にフットボールファンを読者とすることを念頭において書かれる,バルサ関係の話題を基本に主としてフットボールに関する話題を扱うブログです。バルセロニスタ以外の方も含めて様々な意見・議論を歓迎致しますが,__異なる意見を持つ他者に対しての敬意を忘れることなく,礼儀・マナーを守ってのコメントをして頂きますようお願い致します。コメントは許可制にしており私が不適当と判断した場合には表示させません__ので,その点もあわせてご了解頂きたいと思います。

また%color(red){当ブログは,中立的・客観的な視点から物事を語ることに全くプライオリティーを置いておりません。__当ブログは,管理者と意見・価値観の異なる他者がそれを読んでも不快感を覚えないものであることを保証するものではありません。__

当ブログの記事を読むか読まないか,それは読者の方の自由に委ねられており,その自由にはそれが生じさせる結果への責任が伴います。つまり,仮に当ブログの記事を読んで不快感を覚えることになったとしても,このような警告を読んだ上での行為として読者の方がその責任を負うべきものと判断させて頂くことになります。そのことを十分理解された上で,御自身の判断と責任において当ブログの記事をお読み下さるようお願い致します。}
  • 昨日のページビュー:18
  • 累計のページビュー:7950374

(03月03日現在)

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. これは酷い。
  2. 4-0!!まさに奇跡!!
  3. アーセナルのジダン。
  4. 「ジョルディ・アルバ,ダニ・アウベス問題」
  5. エジルがマドリを去らざるを得なかったもう1つの理由。
  6. 売れないビジャ。ティアゴはマンU行きが決まりか?
  7. 全てを壊したアドリアーノ。
  8. エジル獲得!マンチェスター・ユナイテッドを倒したアーセナル。
  9. ペップがバルサ首脳陣を痛烈に批判!!
  10. メッシーは走ってない,でも・・・

月別アーカイブ

2030
04
2020
11
2014
04
03
2013
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2012
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2011
12
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2010
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2008
12
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2007
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2017年03月03日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss