2009年12月27日

ヒューズが飛んだ

12月19日、マンチェスター・シティはマーク・ヒューズ監督の解任と、ロベルト・マンチーニ氏の招聘を発表した。ヒューズ監督下で最後のサンダーランド戦にも勝って、ここまでの成績は7勝2敗8分けで6位。リーグはまだ折り返し地点にも到達していない。

「リーグ最少のわずか2敗、さらにカーリングカップでは準決勝に進んでいる。結果を出しながらの解任は本当に残念なことだ」(プレミアリーグ監督協会の最高責任者リチャード・ベヴァン)

「解任をシティのファンは悲しんでいる。イングランドの住人なら、1シーズンでトロフィーを獲得することは不可能だと考える。もしも外国人オーナーが出来ると考えているなら、それはイングランドの感覚ではない」(同上)

「マークは失望しているだろう。しかし私にとって、彼の評判に傷はついていない」(同上)

「もちろん、それは悲しいよ。監督が去るのを見るのは簡単なことじゃない。しかし、クラブが最高の判断だと思えば、それを受け入れなければいけない」(マンチェスター・シティのFWロケ・サンタクルス)

そして24日、怒りが収まらないファーガソンが吠えた。今はダービー相手の監督でも、選手時代のヒューズはユナイテッドでファーガソン監督のもとでプレーしている。

「1つだけ議論の余地がないことがある。そういう行為は受け入れられない。20も負けていたのであれば構わないが、マーク・ヒューズの場合はたった2試合だ。人を扱うにはやり方というものがある」

同業者として、これではやってられないと抗議し、シティは酷いクラブだと喧伝する。

「彼は一筋縄ではいかないウェールズ代表で素晴らしい仕事をした。ブラックバーンでも結果を残し、マンチェスター・シティにふさわしい男だった」

シティのフロントに「ひょっとして判断を誤ったのではないか」と思わせたい。

「クリスマスの時期に最悪のことが起きた。何が起るのかを知りながらベンチに座るのは不快なものだ。皆ショックを受けたと思う」

シティのサポーターが賛否両論によって分断されれば、マンチーニは微妙で困難な立場に立たされる。

「マークに電話したが、彼は苦しんでいた。彼とはブルース(サンダーランドの監督)のことを話した。昔のチームメイトを擁護するブルースは素晴らしかった。ブルースを心から尊敬しているし、マークも彼の言葉に感謝したはずだ」

心情に訴えかけて世論を味方にしようとしている。

ファギーはしたたかだ。不条理な監督解任を怒るだけでなく、既にマンチーニを追い込んでいる。
監督協会のヘヴァンの言葉を繰り返して、シティのリーグでの地位を貶め、優勝戦線から完全に突き落とす策略を巡らせる。
その絶妙な発言のタイミング。戦う前に試合に意味を与え、有利に戦える状況をお膳立てし、結果が評価される雰囲気を演出する。これが出来てこそ名将、次のダービーも有利に戦えるだろう。
いくら怒ってもファギーのヒューズは飛ばない。

posted by 直木 善久 |07:42 | ちょっとだけプレミアリーグ | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年09月04日

カルロス・テベスの怨み節、その顛末

昨年の10月、ベルバトフの加入でベンチスタートが増えたテベスがまず口火を切った。
「ここ数試合は俺が犠牲になっている。ゴールを決めたい。今までずっと重要なゴールを決めてきたんだから」(サン)

すわ監督批判!
ところが、いつもは不満に対して毅然とした態度でのぞむファーガソンは、
「彼はここで幸せだと思う。クラブも彼に残って欲しいと考えている。他の選手もファンも彼を愛しているしね」(スカイ)
とまぁ、本心はともかく、
2年間のレンタル移籍中のテベスを完全移籍で獲得するために、
メディアには寛容な態度を示していた。
「テベスはまるで虎のようだ。ピッチを走り回ってチームに貢献してくれた。彼のような選手がチームいるのは大きい」(欧州通信)
機嫌を直してくれよと、褒め称えている。

ところが今年の4月に再びテベスが口を開く。
「僕は大事な試合で出ていない。他のクラブで何ができるかを考えなければいけない」(サン)
移籍交渉がうまく進んでいないようだ。
しかし、この挑発にもファーガソンは乗ってこない。

5月、業を煮やして、テベスが追い討ちをかける。
「求められているとは感じない。サヨナラを言う時が想像できる」
「出来ることは全てしたが、彼らはオファーも契約も持ってこなかった。時が来たら去らねばならない」(ニュース・オブ・ザ・ワールド)

メディアは移籍と書きたてるが、
「移籍についての話は聞いていない。彼はまだユナイテッドの選手。私は彼の移籍話に首を突っ込まない」
と、ファーガソンは落ち着いている。
水面下で行われている綱引きの内容は分からないが、
かつてベッカムやファン・ニステルローイとやりあって来たファーガソンは手慣れている。

そして6月、クラブはテベスの退団を発表する。
「昨晩(19日)、最終的な交渉が行われました。マンチェスター・ユナイテッドは、カルロス・テベスと新しい契約を結ばなかったことを発表します。2年に渡って貢献してくれたカルロスに感謝し、将来の幸運を祈ります」

テベスはユナイテッドを気に入っていたが、少し駆け引きが過ぎたのか。
そしてここから怨み節が始まる。
「ファーガソンはあの試合で僕をベンチに置くというミスを犯した。俺がユナイテッドに来てから初めて負けた決勝戦だ」(ガーディアン)
「もし僕がマンチェスター・シティでプレーすることになっても、ユナイテッドのファンは裏切り者だとは思わないだろう。僕はクラブから追い出されたのだから」
「オールドトラッフォードでリバプールに1対4で敗れてから、ファーガソンはまるで俺の責任だと言わんばかりに、俺を無視するようになった」
「僕はマンチェスター・ユナイテッドにすべてを捧げたし、みんなもそう思っている。だから、こんなふうに終わってしまうのはあんまりだ」(ピープル)
テベスは怒り、嘆き、ときには哀願しているようにも聞こえる。
しかしテベスの言葉は、いかにユナイテッドの選手であることが名誉であり、
ファーガソンが魅力的な男なのかを私たちに教えてくれるだけだ。

きっとテベスが最初に不満を漏らしたときから、ファーガソンは怒っていた。
ただ、もう一つの問題、クリスティアーノとの交渉を抱えており、
テベスに対してはシューズを蹴るようなまねは止めておこうと、
決めていたに違いない。
移籍金次第で彼は退団する。筋書き通りなのでしょう。
ファーガソンを瞬間湯沸かし器のように言う人がいるが、
私のイメージはかなり違う。

「アレックスが僕に電話をかけてくることなどなかった。携帯にメールすら送ってこない」(AFP)
シティへの移籍が決まってからも、怨み節を止めないテベスに対して、
やっとファーガソンは本音を口にした。
「私も価格が適正なら喜んで契約するつもりだったが、簡単に言うと、彼には38億円の価値はない」
と、あっさりと切り捨てた。
「シティはテベスをユナイテッドから奪ったのが手柄だと思っている。情けない話だ。彼はもっとずっと前にシティに行ってもよかった」

テベスがファーガソンを見返すには、
ダービーマッチでゴールを奪ってシティが勝利するしかない。

posted by 直木 善久 |06:42 | ちょっとだけプレミアリーグ | コメント(7) | トラックバック(0)
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2009年09月02日

ファギー語録はケンカ語録か

シーズンが始まる前から、
マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督は、
盛んにマインドゲームを仕掛けていた。

「マンチェスター・シティはメンタリティーに欠けた弱小チームだ。彼らはユナイテッドのことだけを気にして、そこから抜け出すことができない」
「やつらはテベスをマンチェスター・ユナイテッドから奪ったのが手柄だと思っている。もっともテベスはずっと前にシティに行ってもよかった」
大型補強をしてビッグ4に迫ろうとするダービー相手を必要以上に挑発していた。
世界に向けてダービーマッチをPRしている。
シティの監督のマーク・ヒューズはファーガソンの下でユナイテッドでプレーしたこともある。
そして今シーズンはテベスの存在が一段と緊張感を高めている。
確かに面白くなりそうだ。
きっと世界中で視聴率を稼ぐでしょう。
ファギーはスポークスマンの役割を十二分に果たしている。

「アーセナルは最大の試練を迎えている。アーセンには全くカネがないことを私は知っている。アデバヨールで得たカネを使うことができるか疑問だね」(テレグラフ)
大きな問題を抱えているアーセナルを強調したかったのでしょうか?
ビッグ4の中で、若手を育てることに一番情熱を注いでいるのがベンゲルだと、
ファギーは充分承知している。
他のチームに「アーセナルはアデバヨールの穴を埋めていない」と喧伝しながら、
自身は気を緩めないのがファギーの手法だ。

「リバプールの主軸は常に、主将のジェラードとエースストライカーのフェルナンド・トーレスだ」(ザ・サン)
シャビ・アロンソが抜けても大丈夫だと、
リバプールのベニテス監督へエールを送っている。
果たしてそうか?
「アンチェロッティはミランを率いて、チャンピオンズリーグで2度も優勝を成し遂げている。どうして今さらスタイルを変える必要があるというのだ」(ザ・サン)
スタイルを変えなくても大丈夫だと、
チェルシーのアンチェロッティ監督にもエールを送っている。
果たしてそうか?

まぁ、このくらいのことでベニテスもアンチェロッティも気は緩めないでしょう。
ところがその2日後にベニテスは、
「ここ2シーズンのジェラードとトーレスの仕事ぶりは、信じられないほど素晴らしい。ジェラードはトーレスの後ろでプレーするときが最も危険だ。そしてトーレスもジェラードを後ろに置いたときに最高のプレーを披露する。ジェラードとトーレスはリバプールの伝説になるだろう」
ファギーの術中に嵌ったか。

ところで、大枚はたいてユナイテッドからクリスティアーノを、
そしてリバプールからアロンソを獲得し、
そのうえベンゲルを呼び寄せようと画策したレアル・マドリードの狙いは、
プレミア人気の切り崩しに違いない。
それならプレミアから人気選手をかっさらうレアルにこそ、
ファギーは喧嘩を売るべきではないか。
「スタメンを決定するときの苦悩を思えば、私はペジェグリーニ監督にだけはなりたくない」
実際は軽く皮肉を言って終わり。
今、レアルに喧嘩を吹っ掛ければ、
負け犬の遠吠えのように扱われることをファギーは心得ている、

posted by 直木 善久 |06:04 | ちょっとだけプレミアリーグ | コメント(2) | トラックバック(0)
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2009年08月29日

おかしな夏

「とてもおかしな夏だよ」
マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は、
今年の移籍市場をこのように評した。
レアル・マドリードが一段と市場価格を吊り上げ、
大物買いにマンチェスター・シティが参入して、
移籍市場でリーダーシップが取れず、
思い通りの移籍が実現出来なかったことを嘆いているのでしょう。
クリスティアーノ・ロナウドがレアルへ、
テベスがシティへ、
そして欲しかったベンゼマもレアルにさらわれた。
万全の態勢で開幕に望めなかったのは事実、
第2節でバーンリーに負けてしまった。

ファーガソン以上に痛手を負っているのが、
リバプールのベニテス監督かもしれない。
レアルへ移籍したシャビ・アロンソの穴を埋める補強が、
まだ出来ていないように見える。
開幕を前にベニテス監督は、
目標を優勝とは言わず、昨年より多い勝ち点を取ると表現していた。
昨シーズンは2敗しかしていない。
ここ20年間で最高の勝ち点を得ている。
それなのに4敗のマンチェスター・ユナイテッドが優勝してしまった。
引分けた11試合には勝てた試合もあったのに、という思いが強いのでしょう。

「彼は世界一の選手でまだ24歳、彼のキャリアはまだまだこれからだ」
「いつになるかは分からないが、彼が戻ってくることだってあり得る」
ファーガソンはクリスティアーノを称えて送り出したが、
ベニテスはアロンソに未練がましく執着していた。
「本当に素晴らしい選手だし、残留が決まれば感謝してもしきれない」
「来週も彼は我々とともにいる」
監督が未練を引きずるのは危険だ。
第3節のアストン・ビラ戦に負けて2敗目を記すと、
「ここからでも優勝が狙えるチームだ」と言ってみたり、
「今は優勝を考えている場合ではない」と言ってみたり、
混乱を隠せない。

おかしな夏。
おかしな夏はおかしなシーズンへと続き、おかしな結末を迎える。
ビッグ4の地図が塗り替えられるかも知れない。
ファーガソンの最後のシーズンになるかも知れない。
ベニテスは途中で消えているかも知れない。
そんな思いで今シーズンのプレミアを観ています。

posted by 直木 善久 |07:58 | ちょっとだけプレミアリーグ | コメント(4) | トラックバック(0)
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