2008年04月28日

あの一発には死の可能性もあった

先週の続きです。 (先週の記事はこちらから)


バリー・ホールは7週間の出場停止処分。
新聞には「7週間の休暇」などと書かれています。バリー・ホールのノックアウト・ブローについて、もう1回を費やして述べてみようと思います。


このスポーツにはオフサイドがないために、非常にスピーディーなスポーツです。常にボールがフィールドを縦横に駆け巡っています。大柄なオージーが全力で疾走してきて空中でぶつかり合うシーンは、オージーフットボールの最大の見せ場です。ラフプレーは、ボールを持っていない選手へのタックルや暴力行為はもちろん許されません。が、選手の怪我は常にあります。


バリーのブレント・ステイカーに対する左パンチは、あきれるほどひどいものでした。いくぞという警告もなければ、振り向きざまという形容がふさわしい突然のものでした。衝撃は威力があり、怪我もひどい。時として命に関わることにもなりかねません。


バリー・ホールは、自分の脳の中で暴発した、と反省しているのだが・・・。「ビッグ・バッド・バリー」と呼ばれている所以かもしれません。

20080428-00.jpg大振りで、打撃は強烈だったようだ。ブレントは全く防ぎようがなかったろう。怪我が大きかった理由の一つはそれだ」と、ブレントを診察治療したセント・ヴィンセント病院救急担当医は言います。あの時は、救急担当の医者と看護婦が治療にあたったようです。


フィールドは、弱き者を制する場所ではありません。そのようなことがあれば、スポーツではありません。また、これは格闘技でもありません。ホールが制裁のパンチを顎に浴びせた時に、ブレントは意識を失いました。診断は震盪症だそうです。仮にこれまでスポーツ競技場でそういう暴力行為が起きたとしても、夜の通りやホテル外側の通り、深夜のバーで起きた暴力行為より危険度は少ないものだった、とある人が指摘します。


先日も、オリンピック水泳種目出場の有力候補だったニック・ダーシーが、前水泳チャンピオンのサイモン・クローリーさんを殴って気絶させたのも、シドニーのナイトクラブで、でした。(この件は、次回にでも書きたい)サイモンはパンチで打ちのめされたことを覚えていないと、父親に語った。


「スポーツ競技場でノックアウト・ブローが見られるのは、最近では珍しい。選手たちは、タックルの危険性を知っているし、それに対して構えは出来ているからだ。また、選手はカメラで常時監視されているので、ペナルティは重い」
と言うのは、13年間アデレードとジーロング(ヴィクトリア州)でAFLのドクターを務めるピーター・ラーキンズ医師です。


そして・・・

「私は、負傷者の治療にも当たってきたが、スポーツ競技場で起きたけが人を私自身はまだ診たことがないよ」と、話しています。

アルコールが飲める場所の外と中が、一番危ない場所です。

「多くの場合、ノックアウト・ブローはアルコールが原因だ。通常、被害者は男性だが、不幸にも最近は女性が絡んだ事件が多い。そして、問題は、いつもアルコールだ。一度お互いを罵倒し始めると取っ組み合いになる」と、ゴーディアン・ファルド医師は経験則から話してくれました。


キング・ヒットは、その性質から、常にノックアウト・ブローになります。危険な部分は、耳に近い側頭部分です。骨は薄く、動脈の血管が走っており破裂の危険性があります。

この付近を強打すれば、多量の出血をまぬかれず、脳圧を高めます。硬膜外血腫に至れば、出血を防ぐために神経外科の手術をしなければならず、命を落とすこともあるそうです。


ノックアウト・ブローによる怪我で一番多いのは、顔面の負傷です。出血や腫れ、鼻骨、頬骨、顎の骨の骨折、眼窩の骨折、歯が折れる、などがあります。
顔面の負傷は、また脳震盪(のうしんとう)を引き越す。認識能力を司る神経が集中している所です。それによって創造力や反応、複雑な状況に対処する基本的な能力が損なわれる恐れがあります。


道路上でパンチをくらうと、被害者が道路で頭を打ち、無意識状態になっている時に、より致命的な脳損傷がおきかねません。シドニー・スワンズのギッブス医師は、「スポーツ選手はそういう知識がなくてはいけないが、時としてそういうものを忘れて行為に走る選手がいる」と指摘しています。


そして、ギッブス医師はこう警告しています。


「AFLの場合は、その危険性は360度からやってくる。それは選手がボールを目指して、ボールだけに集中して突っ込むからである。ラグビーでは、その危険は180度に減る。前からの衝撃とサイドからのものになる20080428-01.jpg


このところ、意図した暴力が、オーストラリアのスポーツで目立つようなりました。実に残念です。いってみれば、たかがスポーツではないでしょうか。ルールを破って己の意志を通して勝って何の意味があるのでしょうか。


バリーはスター選手です。

紳士のスポーツと言われるような姿勢を確立してほしいと思います。

それなくして、少年少女から親しまれるスポーツは生まれません。暴力助長のスポーツ、暴力容認のスポーツは、戦場での行為と変わりがありません。ルールの中で、苦労して勝つ・・それがスポーツであり、精神と智慧と体力の勝負と言えるのではないでしょうか。(了)


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2008年04月20日

AFLってなんでもありか?

オーストラリアン・フットボール・リーグのバリー・ホールって知っていますか?

正確に言えば、リーグのシドニー・スワンズ所属のフォワードのスター選手です。194センチの長身、100キロの堂々たる体躯です。

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彼が、先日の試合中に、ウェスト・コーストのディフェンダー、ブレント・ステイカーの顎に近い右頬に左手で、強烈なパンチを見舞いました。
 
その模様は、シドニー・クリケット・グランドに入った4万3千の観衆には、スタジアムの巨大スクリーンで再生されましたし、スポーツ・ニュースの映像でも何回もその場面を放送していました。マスコミは、それをキング・ヒットと呼んでいます。
 
殴られたブレントの両親は、あのパンチは臆病な証拠と切り捨てていました。その通りだと思います。
 

結果は、7週間の出場停止です。現行のルールではこれが妥当なのかもしれませんが、AFLの役員は、「彼の行為は、暴力的であり、危険であった」と言いました。特に、彼が以前ボクサーとしての訓練を受けていたことを考えると、まさにこの発言は当然ですね。
 

映画ロッキー・バルボアを辱めるようなパンチでした。

 
シドニー・スワンズのバリーとロッキー・バルボアとの違いは、バリーがグラブを着用していないこと、そこがリング内でなかったこと、相手が殴られると思っていなかったことです。

判定は、7週間の出場停止でしたが、彼の暴力行為は10試合出場停止に相当します。なぜか25%のディカウントになった。10試合出場停止というのは、AFLのペナルティでも最大のものです。
 

バリーは、記者会見の席上で殴った相手のブレント・ステイカー選手にお詫びを表明して、協会の判定を受け入れました。ブレントは、驚きました。記者会見で、バリーがブレントの電話にお詫びのメッセージを残したと言ったからでした。ブレントはダブルチェックしたようですが、そのようなメッセージは自分の携帯にも、仲間の携帯にも無かったと言っています。すると間違った番号に、メッセージを送ったのか、全く送っていなかったか・・どちらのでしょうか。
 

「7週間は公平な判定といえる」とバリーは言いましたが、公平かどうかをいう前に、スポーツサイトで暴力を振るったことに大いなる反省をしてもらいたいです。スポーツ選手にフェアな精神がなくなったら、それこそ何の意味もありません。
 

そして、人格的にも成長してもらいたいです。

 
バリーの弁護士は、「彼は癇癪持ちだ。でもここ数年、自分の感情を自制してきた。再び、リハビリの過程をはじめなくてはならない」と弁護しています。
まだ、その努力が完成してない証拠ではないでしょうか。
 
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彼が受けたペナルティの歴史を書きましょう。

1998年。膝蹴りで、有罪。4試合出場停止。
1998年。膝蹴りで、有罪。3試合出場停止。
2000年。頭突きで、有罪。1試合出場停止。
2001年。殴打。処分無し。
2001年。乱闘。処分無し。
2001年。手荒い行為。処分無し。
2001年。殴打。有罪。3試合出場停止。
2002年。不行跡。有罪。5試合出場停止。
2003年。頭突き。処分無し。
2004年。殴打。処分無し。
2005年。殴打。有罪。懲戒処分。

このところ、オーストラリアのスポーツ選手による暴行が多くなっています。
子ども達のアイドルであることを考えると、もっともっと選手達は人格的に磨いてほしいと、強く訴えたいです。

 
沖縄県産品映画「琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス」。
3作目の「マサーおじいの傘」で、「意地ぬ出じらぁ手引き、手ぬ出じらぁ意地引き」という沖縄・糸満に伝わる諺が語られています。
「腹が立っても手を出さずに引っこめよ、手が出そうになったら怒りを鎮めよ」


スポーツ選手のみならず、誰もが身につけなくてはならない、諺の精神です。(了)


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posted by buruta |18:55 | gensan | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年04月08日

ワーキングホリデーの若者を元気づける日系企業の社長さん

ワーホリといっても、“ワーカホリック”の略ではない。オーストラリアの人気の一つに、ワーキング・ホリデー・ビザがある。働きながら、オーストラリアの国情を学ぶ制度だ。


どこに行っても、このワーホリの若者はいる。外国で働く経験を身につけよう。働きながら遊びたい。日本で落ち込んだので、少し外国暮らしをしてみたい・・・さまざまな理由で、オーストラリアにやってくる若者は多い。だが、慣れない外国。寂しさの中で、孤独に真面目に戦っている人たちも多い。

 

そういう若者をつないで激励したいと、自社の名前をかぶせたサッカー大会を主催している日系運送会社の社長さんがいる。三辻孝明さんが、その人。在豪20年の思いが募っている。

 
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三辻 孝明さん(メガフォンを持った人)



日本の大手運送会社勤務を経験したのち、自分で会社を設立した。
若い時から苦労してきた人で、自らを“幸せメーカー“とよび、日本人若者のみならず、オーストラリア人の若者の顔にも笑みを浮かばせたい・・・が夢だった。「折角自分のおカネでオーストラリアにきて、苦労している人たちに、このくらいのことしかできませんが、楽しんでもらいたいです」と。

 

4月6日、日曜日。
秋の訪れを告げるシドニーのはずれのレーンコーブで、大会を開催したので取材してみた。優勝チームには、「おもいきり食べてもらいたい」と、焼き肉食べ放題賞。2位は「鮨屋さんで、鮨食べ放題」賞。参加者や見学者にも飲み物はフリーと、社長さんが大盤振る舞い。

 
大会はCHEERS主催フットサル大会「CUBE CUP」と名付けられ、今回が第4回だ。参加チームは、9チーム。着替え室も、運送屋さんらしく、屋根付きのトラックの中だ。前回まで上位に食い込んだオーストラリアの大学チームが、予選敗退と不参加で決勝戦は一抹の寂しさはあった。豪日の交流はできなかったが、オーストラリア人が選手として入っているチームもある。

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この日、朝快晴。途中曇りのち驟雨。午後晴れ。まさに秋を告げる雨で、やや肌寒い。

 

途中激しい雨が降ってきた。「中止ですか?」と参加者から声が飛ぶ。「雨で中止のサッカーなんて聞いたことがない」と、グレード1のコーチライセンスをもつレフリー兼社長の三辻さんの声が飛ぶ。クラブチームや高校生までを教えられるライセンスを、猛勉強して取得した。

 

三辻さんは、レッド・カードを出すこともあるというほどルールには厳しい。「真剣なゲームはこの上なく好きですが、勝てば良いってもんじゃありません」と言う。ピッチの上で、「2度とそれはやらないでください」と、注意を飛ばすことだって2度や3度はある。

 

借り上げた2面のグランドで予選を行い、4チームが決勝に残った。


ルールは、5人制サッカーだ。ハーフは10分。交代自由。だが、結構きつい。優勝戦に勝ち上がるまでに5ゲームをこなさなくてはならない。若いと言っても並の体力ではきつい。「ぼこぼこになりますよ」とは、参加者の声。「練習を一日休めば自分にわかる。二日休めば批評家にわかる。三日休めば聴衆にわかる」とは、ある有名ピアニストの言葉だが、当然スポーツにも当てはまる。

 

決勝戦の試合前に、勝ち上がったFC日本のメンバーによる、少年少女相手のエキシビションマッチが行われた。これがなかなか受けた。サッカー教室を開いているというFC日本の、子どもに夢をもたせるマッチだ。お母さんから黄色い声が飛ぶ。勝てると信じる子ども達の必死な眼が気に入った。

撮った写真のうちから何枚かをご紹介しよう。


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いよいよ、優勝決定戦。

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強敵FC日本(グリーン)を相手に、センテニアルFC(黒)の円陣から聞こえてきた文句がおかしかった。

「焼き肉阻止」「焼き肉阻止」これじゃあ、心で負けてやしないか。

 

蓋を開けてみると、やはり、FC日本がいきなり2連続ゴールでリードするや、あとはサブスティチュートが登場。後半また得点を重ね、「焼き肉阻止」されるどころか、ゲームは6-0のワンサイドで、焼き肉を献上。あわや、二桁のスコアか・・という勢いだった。終始フェアプレーに徹したFC日本の4回連続優勝は褒められる。すがすがしい優勝だった。“Jリーグ級のスター選手“が帰国したFC日本だが、見事な勝利だった。

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チャンネル7もスカイ・テレビも、シドニー・モーニング・ヘラルドも取材に来なかったが、見せてあげたかった。大いにワーホリや永住者が楽しんだ大会だった。


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準優勝のセンテニアルFCキャプテンの田上潤さんの敗戦の弁。


「自分の方としては120%の力を出しました。FC日本さんは強いので、思い切りやりました。でも、悔いはあります。目標の2点が取れなかったことです。うちは、キーパーが来なかったのが痛手です。相手はもう完璧でした。パスといい、ドリブルといい・・相手チームが9人も来ていているということ事態がやはり凄いです。」と言いながらも、鮨食い放題の準優勝は悪くなかった。

 

優勝したFC日本の藤原弘樹キャプテンの話。

「皆頑張りました。今回初めてキャプテンとして、優勝を4回連続に伸ばせたことはうれしいです。皆には大いに楽しもうと言ってきたので、それが実現できました。スロースターターのうちは、今日も段々尻上がりで・・・ハイ。5人制というのは、一人一人の役割が大きいです。手が抜けません。スピード等も含めて、チームとしての動きが問われます20080408-15.JPG
握手のシーン(藤原キャプテンと握手する三辻さん)


さわやかなお答え。

 
4月7日に日本に帰国する曲尾 将昭さん(埼玉県出身)は、「他の大会でも準優勝、帰国寸前の今日は優勝。うれしいです。前半の終わりに点を入れたし・・十分楽しめました。いい思い出です」と。さわやかなワーホリ青年だ。

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大会委員長兼主催者兼レフリー兼社長の三辻孝明さんに聞いた。

「大人が失ったひたむきさに触れてとてもうれしいです。真剣にボールを追いかけるあの心。あの姿を忘れてはいけません。泣きそうになるほどの真剣さ・・それが見られただけでも、私はうれしいです。ライバルとしてお互い認め合う・・ある意味の“戦友”になる・・・大事なことです。今の若者・・捨てたもんではありません。自信を持ちました」と。


そして、表彰式に。

 

次回から、女性も参加できる環境を整えたりして、裾野をもう一つ広げるともっと面白い大会になりそうだ。


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自分の企業のことしか考えない人が多い中、日本人と日本人、日本人とオーストラリア人・・他人と他人を結ぶ触媒の役目を果たそうという三辻社長夫妻の心意気を大いに買って、この大会のさらなる発展を祈りたい。それにはもっと企業の支援・応援があってもいい、もっとチームの参加があってもいい・・横にも縦にも斜めにも、大会を広げていけそうな気がする。

 

庶民に視点をおいたささやかな大会だが、若者の力を限りなく広げるのは、大人の役目でもあることを実証した。ボールを真剣な眼は、大人への最大の贈り物だ。そこに大人の大きな使命がある。将来を明るくするには、若者と組むしかない。三辻社長の夢と構想が広く育っていくことを祈りたい。

 

そんな気持ちを持ちながら、軽い足取りで会場を後にした。(了)


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posted by buruta |23:13 | gensan | コメント(0) | トラックバック(0)
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