2008年02月21日

乳ガンと闘う豪州ピンク軍団

ことスポーツをするにおいて、太っていようが、痩せていようが、頭に髪の毛がなかろうが、気分が優れなかろうが、最悪の状態であろうが、魅力的な人であろうが、あるいは貧相であろうが、全く関係はない。スポーツをやろう・・という意志が大事である。

 
オーストラリアのドラゴン・アブレストのボート・クルーたちは、乳ガン患者か経験者、あるいは彼女らを支えてきた人であれば誰をも歓迎するピンク軍団である。「どうぞ、いつでも私たちのボートにお乗りください」と。

 
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元気になりたい、新しい友達を作りたい、楽しみを得たい・・と言う人は大歓迎だ。みな、その気持ち以外にないだろう。

 
ガンを患っている人、ガンを患ったことのある人なら、みなそういう気持ちをもっているのだ。



ドラゴン・アブレストでは、「あなたではボートが漕げないでしょう」「あなたはボートを漕ぐには十分な健康ではありません」という言葉は禁句になっている。

 

そう話すのは、ドラゴン・アブレストのシドニー支部でコーディネーターを務めるシンシア・クイパーさんだ。「私たちは、ボートでレースをしたことのない人たちとよくレースをします」

 

ここでの最高齢は72歳。しかし、女性の大半は50歳代後半だ。女性長寿国の仲間入りをしたオーストラリア。50代後半といえば、これからの人生が長い。


ボート気違い・・と自ら名乗る先ほどのクイパーさんは、2002年に乳ガンにかかった。その6週間前には、乳房X線写真で、疑い無しとされながら、風呂場の明かりの下でしこりをみつけたのだ。乳腺腫摘出手術をして、放射線療法を受けた。しかし、この病気で、彼女は人との接触を遠ざけることになり、孤独になった。

 

「ドラゴンズ・アブレストにいれば、髪の毛がなくても人前で顔を見せられる。リンパ浮腫で手が膨らんでも人目を気にすることはない。誰も、じろじろ見る人はいない。なぜなら、多くの人がそういう経験をしてきたし、皆分かっているからです。逆に、誰もがその話を拒んだりもしません」

 

「ボートに乗って如何に楽しむか。でも、皆が、お互いの病状の進行状況に関心をもっています」

 

クイパーさんは、彼女の人生のほとんどの期間を、“たゆみ無く”スポーツを避けてきた。だから、ボートを始めるにあたって、体力に全く自信がなかった。しかし、今や、かつてよりも、彼女は健康になっていると認める。

 

「ドラゴン・ボートに乗ると、何か不思議な力が湧いてきます。自分で考えているよりも、努力がもっと可能になるとわかります20080221-00.jpg


多くの女性は、乳ガンに巡り会うと、自分の体を過保護にします。当然です。しかし、実は人間の体はいろいろなことが出来るのです。冒険の気持ちが湧いてきますし、もともと持っていた生命の火を燃やすこともできるのです。しかし、そういう女性の気持ちは治療を受けている間に打ちのめされて消えてしまったのです」



ドラゴン・ブレストは、オーストラリア全国で31のクラブがある。友好と楽しみを主眼としており、ボートは競争を排除している。もちろん、女性の中には、もうちょっと先を進んで競争も大事だと言う人たちもいるが。

 

ジェニー・ピーターソンさん、44歳は、その一人である。彼女は、国内、国際競技会でのボート競技に参加しているスポーツ・ウーマンだ。

 

ピーターソンさんは、10年前に乳ガンにかかった。そして、3年後に肺に転移した。彼女が、ボートをこぎ始めたのはその時だった。

 

「ボートは好きです。ガンについてはあまり考えすぎることはありません。楽しく漕ぐことを考えるだけで精一杯でした」

 

カヌーもどきのボートの長さは12メートル。2列になって20人が座れる大きさである。他に、舵取りのような長いオールをもったスイープが一人と、主として式典などの場合には、鼓手が一人乗る。

 

従って、ドラゴン・ボートの1チームは、サッカーの2チーム分に匹敵する大人数だ。1艘のボートに乗り込むクルーの力は偉大だ。

 

ピーターソンさんは、こう話す。

「チームは大きく、仲間意識も大きいです。常に気分は高揚します。あまりスポーツをしていなくても、ついていけるスポーツの一つです。ボートに乗っている仲間に加わればいいのです。出発すれば、楽しさが一杯乗っています」

 

病院を退院したピーターソンさんは、また、このボートに戻る計画をしている。

 
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シドニー・ドラゴンズ・アブレスト・クラブは、昨年は、中国の旧正月、春節の行事の一環として参加した。オーストラリア全国から参加したクルーが、競い合った。腫瘍学者、放射線治療医、看護婦らシドニーの病院で医療に従事している医療関係者もチームを作った。患・医一体の楽しみ方だ。

 

クイパーさんは、ドラゴンズ・アブレストという言葉を、ガン治療している医療現場の人に広めたいという。そうすれば、医療従事者が、患者にその話が出来るからだという。その結果、ガンを生き抜いた人が、さらに多く、ボート漕ぎの良い面を発見出来るという。

 

「患者は、ガンにかかったと知って、完璧に打ちのめされます。それは、生存率が低い時代にかかった患者の事が頭にあるからです。近年は、生存率は非常に高くなってきました。多くの人が早期発見をしているのと転移に対処する医師の治療が極めて向上したからです。昔と同じように健康に戻れない理由はありません。あなたを励まし、さらに楽しみを同じくする多くの人々と一緒にいれば、一層そう感じるはずです」

 

最近、中川恵一先生という癌対策法の制定に尽力された東大病院放射線科準教授が書いた「がんのひみつ」(朝日出版社刊 定価:680円+税)という、極めて優れものの本が出版され、関心を呼んでいる。『がんのひみつ』の最新情報をお書きになっている。ぜひ一度ご一読を。
自身の誤解を正し、安心をえるには、この定価は安いのではないか。

 

ガンにかかったからといって、閉じこもらないことだ。仲間を作り、楽しく過ごすことだ。そこにこの「ドラゴンズ・アブレスト」運動の良さがある。オーストラリアのポップ・スター、カイリー・ミノーグさんも見事に立ち直り、芸能活動を元気に再開している。

 

ドラゴンズ・アブレストの女性たちは、オーストラリア、カナダ、イタリー、ニュージーランド、香港、シンガポール、アメリカの乳ガン患者とも連帯している。なぜか、日本の名がみあたらない。言葉の問題? 違うだろう。心の問題か。

 

今日も、オールを漕いで水しぶきを飛ばしながら、乳ガンの患者や乳ガン経験者の女性たちのピンク軍団の元気な声が、川面に、水面に聞こえる。(了)


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posted by buruta |09:46 | gensan | コメント(0) | トラックバック(0)
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