2007年11月02日
歩け 歩け 運動
日本で歩け歩け運動がうねりを得始めたのは、1963年。 アメリカ大陸を徒歩で横断した大西七郎さんが呼び掛けたものだった。日本の経済は右肩上がり。何で歩くのだという人もいたが、ともかく、大きな流れができた。そして、何と「協会」までできてしまったのが、1964年だった。 なぜ覚えているかというと、私は大学を卒業してテレビ朝日に入った年だったからだ。折しも、東京オリンピック。 こういう運動というのは、歩く人、あるいは歩いてきた人が提唱したものである。![]()
ところが、である。昨今の船旅ブーム。 船会社が、歩く運動を呼び掛けている。船の中を歩くと言っても全員が船内を歩くのではない。では、船会社のコマーシャルかというと、必ずしもそうではない。 私もこの3月に、シドニーを出港して、南太平洋クルーズというのに参加してみた。驚いたのは、船内をウォークする人のなんと多いこと。そのうち、お互いが直ぐ顔なじみになるが、家内の速度が遅いので、家内が1周するまで、2周する人がいる。そのうち、夫である私のところに、「奥さんはチーティングだ」と、手抜きだと言わんばかりに声を掛ける始末。もっと、速く歩けると言いたいのだ。船上でまで発破をかけられるのはたまらないとばかり・・家内はマイ・ペースで歩いていたが、とにかく、普段自宅近くで歩いている格好のままの光景が展開される。家内に発破をかけたのは、この男性だが・・・。 朝早く歩いて、勿論、船内の無料のコーヒーを飲んで、シャワーを浴びて、朝食にする。こういう一日の始まりなのだ。![]()
そう言うところに目を付けた船会社がいる。 話は、こうだ。 呼び掛けているのは、シアトルに本社を置くホランド・アメリカという船会社だ。患者の多い乳ガンの研究用の基金を集めようというので昨年始めたのが、それ。“治癒のためのデッキ”と名付けた企画は、趣旨に賛同した乗船客に、5キロ歩いてもらう。それも15米ドルを払って、Tシャツとリストバンドをもらい、船内をウォーキングするのだ。![]()
他国の事情は知らないが、ここオーストラリアの乳ガン事情をちょっと書いておこう。 現在のオーストラリア女性の平均寿命は83歳だが、85歳までに8人に1人のご婦人が、乳ガンにかかると予想されている。若干古くなるが、2002年に乳ガンにかかった人の数は、12,027人だ。問題は、発症率は、1983年に女性10万人に対して80人の割合だったものが、2002年には10万の女性に対して117.3人へと伸びをしめしていることだ。年平均2%で増えていることになる。 乳ガン発病のリスクは、年齢と共に増すのだ。2002年に新たに乳ガンにかかった人のうちの24%は、50歳以下の女性だった。50%は50歳から69歳までの女性。70歳以上でも26%という高率である。![]()
デッキで乳ガン対策の募金運動を始めたホランド・アメリカ社は、13隻の豪華船を所有しているが、年間で最低でも25万ドルの募金を目指している。 こういうのが始まると、他社も迅速に追随するものだ。すでに、プリンセス・クルーズなどの会社が、もうごく近々開始するらしい。いや、始めているかも知れない、という速さだ。 世は、クルージング時代。大客船の時代に入った。![]()
2週間かそこらをビールやワイン付けにするのもいいが、“海の上”を歩く運動も、爽快な気分にさせる。その歩きが、また社会で苦しんでいる人のために役立つなら、それも大いにいいことではないか・・と思う。利他共の健康を考えて歩くのは、良いアイディアと言える。汗の一滴に、乳ガンで苦しむ患者への支援が込められる。そして、出来るなら、船上のウォーキングだけでやめないでほしい。 ドイツの詩人ヘルダーリンは歌った。 「'北風が吹く。 どの風にもまして 北風がわたしは好きだ。 それは船びとたちに 熱意と そして良い航海とをあたえるだろうから'」 (片山敏彦訳) 船会社の趣旨に、私は大いに賛成である。 皆さんは、どう思われるだろうか?(了)
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posted by buruta |19:43 |
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