2007年05月07日

今となっては、それが転落への序章であった

そのニュースを聞いて、書棚にあった古い「Number PLUS」を引っ張り出した。

今から6年前のそれは、少し色褪せていて、それだけでも古さを感じる。
裏表紙にはとっくに名前がなくなってしまった車の広告。

どうしても、この号に載っていた特集を思い出せずにはいられなかった。
ページをめくって、ニコリと微笑む2人の若者の顔を確認した。

今もチームメートの2人だが、6年前は今とは違うクラブで、やはりチームメイトだった。

シーズンオフを利用して、強行日程ながら日本へやってきた様子が描かれている。
22歳の若者は、母親も同行させており、家族思いだということがうかがえる。受け答えが丁寧なのは、翻訳者の先入観もあるのだろうが、もう1人の若者が「やんちゃな」キャラということもあってか、何となく優等生タイプに思えてしまう。
20歳の若者は、少年時代にBMXをやっていたそうで、バイク好き。日本のバイクレーサーだと“ノリック”が好きなんだとか。それゆえに、ヤマハの工場見学に一際心躍らせていたのだそうだ。

静岡で、子供たちにサッカー教室を開いていた写真。
そして、これも懐かしい、「Nestle」のスポンサーロゴの入ったサックスブルーのユニフォームを身にまとい、パス交換に興じている写真。
華麗なパスサッカーで、今でもJ史上最高との呼び声が高い、かのクラブの黄金時代の記憶を思い起こす人も多いのではないか。

そして件の2人もまた充実したシーズンを送り、こうして日本にやってきたのだった。
22歳と20歳にして、すでに週給1000万円だという。
それもそのはず、彼らのクラブは欧州でベスト4に輝いたのだ。
彼らの他にも、若き才能が溢れていた。未来は明るいものだと誰もが思っていた。
それゆえに大きな投資も怠らず、このオフもまた高額な移籍金を払ってまで優秀な若者を獲得した。

若者たちに率いられたクラブの未来は明るいはずだった。少なくともこの時は。

だが、この特集の後ろに、転落への序章が記されていた。

欧州でベスト4、しかし、リーグでも4位。
ドイツが4チーム、オランダが3チーム、CLへクラブを送り出していた時代の話である。
この時のイングランドは、まだ3チームしかCLへ送り出せなかった。
まだ2次リーグ方式で行われており、当時「優勝すれば100億円」とも言われていたこの大会に出られなくなったことは、すなわち大きな財政上の損失を意味する。
積極的に選手補強に走っていたクラブにとっては、一抹の不安がよぎる。

翌シーズンも5位で終え、またしても「惜しい」シーズンを送った。
だが、このオフから何かがおかしくなっていった。
財政上の問題が、既に顕在化していたといってもいい。

2人の若者のうち、年長の若者は、DF史上最高金額の移籍金で赤い悪魔のユニフォームを着ることになった。
そして、これ以降、次々と若者たちは……成長して中堅どころになっていた選手は……次々と売られていった。
さらに、ついに凋落の末に、プレミアシップから降格が決まった時、地元出身のもう1人の若者も、愛する地元に別れを告げた。

その後、日本へは情報が届きにくい環境に行ってしまったかのクラブ。
1部での優勝経験さえある名門も、2部の水にすっかり馴染んでしまったのか。
昨季はプレーオフにまで進出したものの、結局這い上がることはできなかった。
しかも、今季はさらに苦しい戦いを強いられることになった。

2部残留へ首の皮一枚、放っておいてもおそらくは降格の可能性が高かっただろう。
しかしサッカーでは何があるかはわからない。
PSVの大逆転優勝のようなことだってあるじゃないか。
わずかな可能性を信じていた矢先……。

無情の破産宣告。

降格ゾーンにどっぷり浸かっていたそのクラブが、10ポイントの減点を喰らって「とどめ」を刺された瞬間だった。

わずか6年前、CLでベスト4に輝いた、かの「ヤング・リーズ」は、来季を3部で戦うことになった。

写真の若者、当時20歳のアラン・スミス、22歳のリオ・ファーディナンドにはこんな将来が予想できただろうか。

posted by bunchousann |02:25 | サッカー | コメント(4) | トラックバック(1)
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