2007年01月18日
“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
北京五輪を目指す野球日本代表の監督に、星野仙一・阪神SDが就任することが正式に決定した模様です。 今回の代表監督の選考は、やはり現場で指揮を執る星野監督の姿を待望していた球界やスポンサー、そしてファンの大多数を納得させるものだったと言えるでしょう。 しかし、懸念材料がないわけではありません。 既にこのネタに関しては就任が規定路線だったために、いろいろなところで議論が交わされていると思うのですが、まず最初に代表監督が最も懊悩するといってもよい代表選手の選考に関する懸念が挙げられます。 サッカーのW杯と違い、五輪はプロ野球のシーズン中に行われるというのが最大のネックになるからです。 まず、北京五輪の代表チームも前回のアテネ五輪の時と同様に、原則オールプロでいくということが確認されました。 ところが、夏季五輪はプロ野球にとって最も大事な時期である8月に行われます。ペナントレースもクライマックスに向かいつつあり、また夏休みということで、観客動員も期待でき、この時期に各球団の主力選手が代表に引き抜かれることの是非がどうしても論じられます。そのためアテネ五輪の時には、12球団から1チーム当たり2人という人数制限がつけられ、各球団に配慮する形になりました。 しかし、“金”を獲ることを義務付けられたはずの初のオールプロによる「ドリームチーム」が“まさかの銅”に終わったこともあって、今回の代表では、この人数制限が撤廃されるとの見方が強いようです。 そうすれば、当然、代表に多くの選手を供給するチームとあまり供給しないチームが出てきます。 代表チームの編成とは、その時点で最強のチームを編成することなのですから、優れた選手を集めるという行為は考えてみれば当たり前の話なのですが、ことは五輪がシーズン中に行われるためにややこしくなるのです。 星野監督や代表スタッフは、各チームの不満をどう説き伏せるのでしょうか。 また、予選の方式もこれまでよりもずっとシビアになっています。 今回の開催国は中国。よって開催国枠として既に中国の出場が決定しています。 アジアに割り当てられた枠は、残りわずか1つ。11月に台湾で行われるアジア予選は熾烈なものになるでしょう。 この1つの椅子を、現実的に言えば日本、韓国、台湾の3カ国で争うことになります。 WBCでは韓国に2敗を喫しましたし(しかもそのうちの1つはホームで!)、台湾にはホームアドバンテージがあります。 さらに言えば、日本はプロ選手が参加したこれまでの五輪予選、WBC(1次ラウンド)で、いずれもホームで戦えるというアドバンテージを持っていましたが、今回はそれがありません。 ただ、アジア予選で2位・3位になっても、すぐに五輪出場のチャンスがなくなるわけではありません。 バレーボールなど他競技でもありますが、野球にも一応最終予選なるものが設定されています。 しかし、この世界最終予選の開催時期が予定では来年の3月となっており、これまた昨年のWBCの時のような開幕前のコンディション調整の問題や、やはり代表選考の問題が噴出することになりそうです。 しかも、この世界最終予選に参加する8カ国のうち、五輪に出場できるのは3カ国のみ。アメリカ大陸の出場国枠2つは既に予選が終わっているため、アメリカとキューバで占められています。したがってメキシコやカナダがここに流れてくるでしょうから、これを突破するのは至難の業です。 最終予選の結果次第では、五輪本選がWBCの2次ラウンドのようなハイレベルな戦いになりそうで、それはそれで面白いと言えるのですが、簡単に「メダル」の声を口にすることが難しい状況にはなるでしょう。 そして、星野監督には日本一の経験がないということを懸念材料として挙げる人たちもいます。 選手、監督として、確かに短期決戦ではいつも苦汁を舐めてきたというイメージはどうしても拭えないのでしょう。 短期決戦に有効な采配が揮えるのか、特に投手交代などがポイントになりそうです。 さらに私が敢えてもう1つ懸念材料として挙げるとするならば、日本では一種のパフォーマンスとして評価されている判定への激しい抗議姿勢であるとしておきましょう。 短期決戦故に1勝の重みは必然的に増し、WBCでもあったように1つのジャッジの有利不利が試合の勝敗を分けることになり、さらに言うならば大会に生き残れるかという分水嶺になる状況も起こりうるでしょう。 星野監督はSDとしてMLBの視察などをよくされているとのことですが、日本との判定基準の違いに対して、現場に戻った時に果たして冷静に対応できるのでしょうか。 国際基準では審判への暴言はおろか、単なる抗議さえ退場に値することがあります。まして暴力などとなれば、五輪大会そのものからの追放さえあり得るでしょう。 ところで、星野監督が具体的に指揮を執り始めるのは報道によると8月の「プレ五輪」からのようです。 私は今日初めて聞きましたが、この「プレ五輪」って何でしょう? 日本、中国、キューバ、アメリカが参加するそうですが……。 しかも開催は8月となっているため、本番でもないのにプロ選手を派遣するというのはまず不可能です。おそらくアマチュアの選手が参加することになるのでしょうが、チームの継続性という点では甚だ疑問も残ります。 一応今度の北京五輪で野球競技は最後ということになっています。 WBCでは困難の末に世界一の称号を手に入れました。国民の記憶はまだ鮮明に残っています。その分、期待も大きいはずです。随分懸念要素を書き連ねながら言うのもなんですが、もちろん私も期待しています。 おっと、こういう国民の過大なプレッシャーもまた不安要素になるのでしょうか。 日本球界が今後も五輪競技に野球を残すことを真剣に考えているのならば、目先の結果も時には有効になります。 この五輪でしっかり結果を残し、発言力を確保し、具体案を示していくことができれば、野球が五輪競技として継続されることの一助になるかもしれません。
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posted by bunchousann |21:40 |
野球 |
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Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
bunchousannさん お邪魔します。
個人的には、誰が監督になっても大変だな、と思っています。確かに、星野監督の個性による懸念材料はありますが・・・
個人的に懸念しているのは、チーム作りに時間がとれそうにない、ということです。連係プレーやチームワークなど、違うチームで野球をしている選手達を一つにまとめるには、それなりの時間が必要だと思います。
そのチーム作りを、星野監督のカリスマ性に委ねるのは、少々酷ではないかと思います。
また、「プレ五輪」は他の競技でもやっています。
本番のためのシミュレーションとして、そのためだけの大会を開催したり、世界選手権やワールドカップなどの国際大会を招致することもあります。
ただ、bunchousannさんの指摘されている通りで、誰を派遣するのでしょうか?
最終的には、日本のプロ野球のオーナーの方々の考え方次第で、五輪の(予選を含めた)結果がある程度見通せるのではないか、と思っています。
posted by チュー新井 | 2007-01-18 22:32
管理人より
コメント投稿者ID :
チュー新井さんへ
お久しぶりです。
今回の監督人事は、「星野監督のカリスマ性に委ねる」というよりも、スポンサーの意向が強く反映されていると考えるのが妥当だと思っています。
前回のアテネのときも、「長嶋監督」という肩書きを外せなかったのはスポンサーからのたっての願いだったと聞きました。
だからといって、星野監督の指揮能力を全面的に否定しているわけではありません。短期決戦に弱いというのはあくまでも指揮能力の1つの要素に過ぎません。
連携プレーなどの練習不足は、致し方ないところですが、サッカーなどにくらべればその影響は小さいと思われます。
最後の部分は仰る通りです。プロ球界がいかに協力できるか、これもまた大きな懸念材料ですね。
posted by bunchousann | 2007-01-18 22:50
Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
bunchousannさん またお邪魔します。
スポンサーの意向は、星野さんの人気に期待している、とのことだと思われます。
サッカーのキリンビールに対して、野球のアサヒビール、という対立の構図も見え隠れします。
短期決戦に弱いのは、星野さんに限ったことではない、と思っています。長嶋ジャパンでは金メダルは獲れなかったですし、WBCも際どい優勝でした。
ただ、プロスポーツではどうしても結果を求められますので、ドラゴンズ時代に日本一になれなかったことから考えると、短期決戦は星野さんにはあまり向いていないのかな、とも思っています。
サッカーは、年に数回代表に招集されますので、代表での練習不足には慣れていると思います。
野球の場合は、招集された選手達のプロ意識に期待するしかないのかな、と思っています。
posted by チュー新井 | 2007-01-18 23:15
管理人より
コメント投稿者ID :
再びチュー新井さんへ
ビール会社ですね。はい。
今思うと、指揮能力ということで言えば、長嶋監督の方がむしろずっと不安でしたよね。
監督の「勘ピューター采配」もさることながら、監督を補佐し、脇を固めるコーチ陣の経験不足がより不安にさせました。
それを考えると、今回のコーチ陣は星野監督の長年の知己である田淵・山本両氏(と前回五輪に引き続き大野氏)。
この2人なら大事な場面で監督に直言することもできるでしょうし、前回よりはまだマシなのかなあと思っていたりします。
ドラゴンズでも、タイガースでも、なぜかシリーズ制覇には縁がない星野監督の最後の意地に期待しましょう。
posted by bunchousann | 2007-01-18 23:24
Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
ってか何で星野さんなんだろう?今や芸能人とも言って良いひとがなぜ?かなり人気面重視、話題性重視の選び方だな。最近のスポーツは人気重視ばっか。星野さんの能力は疑いようがないけど決め方がね 悪いね。もっと他の候補も出して欲しかった。
posted by gu | 2007-01-18 23:40
管理人より
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guさんへ
そうですね。そういう一面は確かにあると思います。
他の候補の名前が一切挙がらなかったのも不思議な話です。
ご指摘の話はテレビ中継の問題など、書けばきりがなくなりますが、スポーツ界の方々は実際どう思っているんでしょうね。
posted by bunchousann | 2007-01-18 23:48
Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
実力が拮抗したら、技術とかテクニックとかじゃないんですよ。気迫や精神力です。
posted by ソクラテス | 2007-01-19 08:55
管理人より
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ソクラテスさんへ
その通りだと思います。
その点では星野監督には全く心配はしてません。気合の塊のような存在ですからね。
posted by bunchousann | 2007-01-19 19:26
Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
TBありがとうございます。
「プレ五輪」に関しては、星野監督が指揮を執るのにメンバーはアマチュアがほとんどとのことですね。
しかも確か、都市対抗野球(だったと思います)と時期的に被るため、
アマチュアですらベストメンバーが組めないとの懸念もあるようです。
スケジュールはともかくとして、予選や本大会には呼ばれない選手たち、
されど監督は氏が担当する…というのはどうにも違和感を感じますね。
「代表予備軍」になりそうな若手を出す、というならまだ納得できるのですが…。
posted by rossonero rossonero | 2007-01-21 09:10
管理人より
コメント投稿者ID :
rossoneroさんへ
いえ、こちらこそいつも拝見させてもらってます。
「プレ五輪」に派遣されるメンバーですが、最初は「かませ犬」に過ぎないのではないかと思い、本文ではそのネガティブな側面にしか触れませんでした。
しかし、一応建前としては五輪の場合、「プロ・アマ一致協力のもと」ということになっていますから、アマを派遣してそこで得られた情報を次(すなわちオールプロで挑む本番)に活かす、ということになれば、建前を守ることにもなるのかな、と考えたわけです。
実際、仮に金メダルを獲得すれば、「あの時のアマ選手らの情報が後に活かされた」云々のコメントも出てくるでしょうし、一応アマ側の面子も保つことができるのならいいのかな、と今では思っています。
最後の一文は仰る通りで、「代表予備軍」、乃至はプロの各チームで中核を担いそうな選手を出して欲しいですね。
posted by bunchousann | 2007-01-21 21:50
Re:“最後”の五輪野球に臨む~いくつかの懸念材料とともに
コメント投稿者ID :
たびたび失礼します。結局アマであろうとプロであろうと、その時、その大会で選ばれたメンバーが日本の最強のメンバーです。そのメンバーで世界と戦っていかなければなりません。そして負けた時点でそれが世界での日本のフロントを含めた実力の位置づけでだと思います。
もちろん運もあるだろうが、アテネでのオーストラリア戦を見て分かるように、日本に対して徹底して緻密な戦略をたてて、日本戦に挑んでいった。そういうこともありように、伏兵の恐ろしさを考えるとそんなに世界を獲ることは甘いものではないということが身にしみてわかったと思います。
たとえイチローが出たら松井が出たら勝てた、確かにそういうこともあるかもしれませんが、逆に他の選手たちはチャンスでもあります。全国的には無名だった西岡や川崎がWBCで名を売ったように、若手にも価値がでてくる。
ただそういう価値をおいておいても、イチローや松井を出場させるような球界の実行委員会のバックアップ体制がなかったとか、そういう一面があまり報道されていないような気がします。
愛国心がないとか、日の丸に敬意を払ってないとか、本当に勝手なことばかりいってますが、松井やイチローとて言い分があるでしょう。一方的に松井やイチロー批判をするのは酷です。
イチローや松井は実行委員会に対して優等生な発言をしているし、記者も質問すらしないんですが、もっとああいう影響力のある選手がものをいってもいいでしょう。
アテネの時の選手選考についても相当議論がありました。今回はアテネの二の舞にはなってほしくはないですね。
posted by ソクラテス | 2007-01-23 22:45
管理人より
コメント投稿者ID :
再びソクラテスさんへ
そうですね。昨年のサッカーW杯で協会批判が起きたように、結局現場をバックアップする側の責任はもっとクローズアップされるべきものだと思います。
そのせいか、今回は早くも(!?)実行委員会で五輪期間中の日程調整や各チームの代表招集人数の撤廃などについて議論された模様です。
MLBの選手に関しては、個人の意思ではどうにもならないこともあります。前回は選手会の方で参加が禁止されていたはずですよね。
シーズン中ということもあって、契約などの関係で今回もメジャーのトップクラスの参加は難しいでしょうね。ですから五輪に関しては少なくとも愛国心の問題とは全く関係ないと思います。
五輪本番、どういう選手が選ばれるのか、確かにまだまだわかりませんよね。
来年のことですから、その時最も調子のいい選手を選んで欲しいものです。まだこれからブレークする選手も出てくるでしょうし。
posted by bunchousann | 2007-01-24 01:34
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