2006年11月21日

笑ってはいけない(でも笑っちゃう)、オランダ人の抗議行動

オランダ・エールディビジのADOデン・ハーグ対FCトゥエンテの試合で、ADOのサポーターが乱入したために試合が中断してしまったというニュースを聞きました(こちら)。

スポナビの中田徹さんのコラムでも紹介されているのですが、かつて戸田和幸(現・サンフレッチェ広島)も所属したADOというチームは、サポーターの気質が荒いことで有名だそうです。
そんなADOですが、ここまで13節を消化して見事に最下位。
で、不振を極めるチームを率いる指揮官を、ADOのサポーターが0ユーロでネットオークションにかけるという抗議行動に出ました。
(11/21 23:30追記 ADOのアデラール監督の辞任が発表されました)

笑ってはいけないのですが、オランダ人の抗議行動と聞いて、ある代表監督のことを思い出してしまいました。

2004年のEUROのことです。
当時のオランダ代表監督は、ディック・アドフォカート。今年のW杯には韓国代表の監督として出場しました。

EURO2004に挑むアドフォカート監督は、事前の評判があまりよくありませんでした。
大会の直前になってもシステムを頻繁にいじり、戦い方に一貫性がないなどの批判を受けていました。
そうして迎えたユーロ本番。オランダはドイツ・チェコと同居する厳しいグループに入りました。
緒戦はオランダにとって相性の悪いドイツ戦。オランダは何とか引き分け、勝ち点1を獲りました。
そして2戦目は、後にこの大会のベストゲームとも呼ばれたチェコ戦。オランダは何としてもこの試合で3ポイントを獲らなければグループリーグ突破が苦しくなります。
予選でも同組という因縁の相手ですが、その予選ではホームで引き分け、アウェーでは1-3の敗戦を喫した嫌な相手です。
そのチェコ相手にオランダは前半で2点のリードを奪います。
前半23分にコラーに1点を返されますが、依然オランダがリード。
ところが後半、チェコの猛攻に遭うと、たまらずアドフォカート監督は、この試合2アシストを挙げ、左サイドを支配してオランダの攻撃の基点となっていたロッベンを下げて、ボスフェルトを入れるという守備的な采配を見せます。
この交代が見事に裏目に出たのは皆さん、ご存知でしょう。
ロッベンがいなくなったことで、チェコの右サイドからの攻撃が活発になり、結局バロシュ、スミチェルのゴールでチェコの逆転勝利に終わりました。

既に充分評判の悪かったアドフォカート監督でしたが、この敗戦によってその立場を決定的に悪化させました。
ヨハン・クライフは「この交代は、オランダにとって最大の恥だ」と言い放ち、またある雑誌(忘れてしまいました)で見かけたのですが、この選手交代が「世界でただ1人、彼だけが正しいと思った采配」と評されるなど、ロッベン→ボスフェルトの交代は試合の行方に決定的な影響を及ぼしました。

オランダ国民も、無論この敗戦に激しく憤慨しました。
クライフ以来、「攻撃的に、美しく勝つ」ことを信条とするオランダサッカーの哲学を踏みにじり、守備的な采配を見せただけならともかく、あろうことか前半で2点リードしながら逆転負けを喫するという屈辱を味わったのです。

たちまちネットの世界で「アドフォカート解任キャンペーン」が始まりました。
ポルトガルにいるアドフォカート監督を、一刻も早く代表チームから遠ざけ、ポルトガル国内から追い出そう、ということで、航空チケットの募金活動が始まったのです。
そして、たった15分で目標の金額に達しました。
実際に彼のもとに届けられたかどうかは定かではないのですが、その航空チケットは、ポルトガルからオランダへのチケットではなく、ポルトガルからベルギーへのチケットでした。
「オランダにはもう帰って来るな!」ということでした。

この後、ラトビア戦で息を吹き返したオランダは、グループリーグを突破して準決勝まで進出し、傍目には一定の成果を挙げたように映ったのですが、アドフォカート監督の人気は一向に回復せず、結局大会後に辞任してしまいました。
ベスト4に残った国の指揮官の中で、辞任したのは彼だけでした。

チームを愛するがゆえの抗議行動なのですが、オランダのそれは激しい中にもどこか愛嬌のある抗議行動のように思えます。

日本でもそのうち、こうしたちょっとウィットに富んだ抗議行動が出てくるのでしょうか。

<ちなみに余談>
オランダ国民の激しいプレッシャーに押し潰される格好になったアドフォカート氏ですが、幸運にもすぐに次の就職先が見つかり、ブンデスリーガの古豪、ボルシア・メンシェングランドバッハ(長いので以下、ボルシアMG)の監督になることが決まりました。
ところが就任直前に地元の新聞に彼の頭髪が増毛だという記事が掲載され(いわゆる「使用前」「使用後」の写真付き、しかも「増毛してこの程度か」というコメントもあったとか)、新監督としての面子は完全に丸つぶれになってしまいました。結局ボルシアMGとは1シーズンでお別れとなり、韓国代表の監督になるわけですが、アドフォカート氏にとってはさんざんな2004年だったと言えるでしょう。

posted by bunchousann |04:15 | サッカー | コメント(6) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
Re:笑ってはいけない(でも笑っちゃう)、オランダ人の抗議行動

先ほどはコメント有難うございました。せっかく頂いたコメントのある記事を非公開にしてしまい、申し訳なく思います。今後もよく考えてワンテンポ置くくらいで出していこうと思ってます。

この記事の追記の所(と思われる部分)をスポナビで読みました。スポンサーも降りるような事が書かれてたと思います。不利益につながるのはやり過ぎかなぁと思う反面、日本でいうならFC東京のサポーターのような逞しさを感じたりもしてます。
アドフォカート氏の件は...かのリヌス・ミケルス監督から「反面教師」で学んで失敗してる感じがしますね。

posted by UJ | 2006-11-22 02:34

管理人より

UJさんへ
いえいえ、ちょっとしたフライング、私もこの後の野球の記事で「やっちまったかな?」と思った次第で(結局大事には至りませんでしたが)。

スポンサーが降りるのはクラブとしても誤算だと思います。が、このADOというクラブ、オランダではトラブルメーカーのような存在みたいなので、スポンサーとしても我慢の限界だったのかもしれません。

ちなみにアドフォカート氏が韓国代表の監督に就任する話を聞いた時、私が真っ先に思い浮かべたのが今回のエピソードでした。
守備的な采配に懲りたのか、W杯では随分攻撃的な采配を揮ってらっしゃったような気がします。
何分オランダではミケルス~クライフのラインが強すぎるために、ちょっと独自色を出したかったのかもしれませんね。

posted by bunchousann | 2006-11-22 03:59

Re:笑ってはいけない(でも笑っちゃう)、オランダ人の抗議行動

余談、かなり僕のツボにハマッてくれましたよ(爆)

こういったサポーターの行動を、今はぜひスペインで起こしてもらいたいですね。
アラゴネスはもういいでしょう。

しかしオランダ人って結構ユーモアある人種なんですね。

posted by elkjaer0902 | 2006-11-22 15:30

管理人より

elkjaer0902さんへ
本当はマスコミの批判の仕方などにも踏み込もうと思ったのですが、オランダサポーターの記事で満腹感を感じてしまったので今回は見送りました。

さて、ドイツの新聞ですが、無茶苦茶やるなあ、という印象です。
クリンスマンと「ビルト」の仲が最悪だったのは有名ですが、ある試合で、若手主体で結果が出ずにさんざん批判されてしまいました。そこで次の試合に試験的に30代のベテラン選手を数名(確かハマン、あとは忘れました)召集したところ、「石器時代への回帰」という見出しを打たれてもうカンカンだったそうです。
W杯の時も自国(ブラジル)のメディアが「ロナウド、妊娠中」なんて言うのはわかるのですが、他国の選手にも「太っちょロナウド、なんて丸っこいんだ!」なんて平気で言ってしまうドイツのメディアの神経の太さを、日本のメディアももう少し見習って(!?)欲しいものですね。

posted by bunchousann | 2006-11-22 19:32

笑ってはいけない(でも笑っちゃう)、オランダ人の抗議行動

お久しぶりです。
reds-junky@レッズ・ジャンキーの甘辛コラムです。

トラックバックありがとうございました。
いつも私のブログに補足して頂いて助かります。

日本代表も「勝つときは少々汚くても構わないが、敗れるときは美しく」っていう試合をしてくれると、”まだ”納得できるんですけど・・・

これからもよろしくお願いします。

posted by reds-junky | 2008-04-20 21:10

管理人より

reds-junkyさんへ
いえいえ、こちらこそご無沙汰しています。

「敗れる時に美しく」……う~ん、難しいですね。
私としては、美しくなくても、せめて魂というか、気持ちが伝わってくれればいいかな、と思うのですが(先のW杯では残念ながらそれがちょっと、ですよね)。

これからもそちらにまたお邪魔しますのでヨロシクお願いします。

posted by bunchousann | 2008-04-20 22:23

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