2006年08月28日

フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

決勝の再試合から1週間が経っても、「佑ちゃんフィーバー」は衰えるところを知りません。

斉藤君がマウンドで汗をぬぐっていた青いハンカチを求めてファンやマスコミが狂奔し、いつの間にやら「ハンカチ王子」なるニックネームが世間を闊歩しています。彼の群馬の実家には連日ファンやマスコミが殺到し、家族の方はちょっとした外出もままならない状況に追い込まれているようです。
こういう情報を耳にすると、つくづく英雄がいないと生きていけない人々の多さを思い知らされます。特にマスコミはその最たるものでしょう。「佑ちゃん」とその足跡を追いかけて東奔西走する様は、何だか泳ぐのを止めるとエラに酸素が供給できずに死んでしまうサメにも似て、呆れるのを通り越して最早哀れですらあります。

ところで、そんな「佑ちゃんフィーバー」がもたらす膨大な量の情報の中に、こんなものがありました。

いわゆる“ベッカム・カプセル”と呼ばれる高気圧カプセルの話です。高濃度の酸素を体に供給することで怪我や疲労の早期回復に効果があるとされ、2002年の日韓W杯の直前にイングランド代表のベッカムが骨折からの早期回復を目指して使用したことから、日本でも有名になりました。
この“ベッカム・カプセル”を早稲田実業のナインは使用していたというのです。
正直、驚きました。
ベッカムの他にも、今回のドイツW杯に際して同じイングランド代表のウェイン・ルーニーや日本代表の柳沢敦も怪我の治療の過程でこの高気圧カプセルを使用したと聞きましたが、いずれにせよ、このような代物は体の全てを自己管理すべき立場にあるプロのアスリートが使うべきものだと思っていました。
斉藤君が4連投という過酷な条件下の中で、疲労困憊のはずの終盤に自己ベストに迫るような140キロ台後半のストレートを連発していた(実際に私は観ていないが、うんざりするほど報道されている)その理由の一端が垣間見えた気がしました。
3連投となった駒大苫小牧の田中君も、本来は150キロのストレートを投げる豪腕として高校野球のファンなら説明不要の選手ですが、菊池君に代わって登板した再試合の中継をほんの少し観た印象では、とても本来の球速ではなく、ストレートはせいぜい140キロに届くかどうかといったところでした。
効果は、明らかに出ていると言ってよいでしょう。

選手の体を過密日程から保護する、その目的は痛いほど理解できます。しかしながら、こうした特殊な治療機器を使ったことで、優勝にケチをつけるような心ない輩が必ずいるということを、果たして早実の監督をはじめとする関係者はどれだけ理解していたのでしょうか?
実際に各種掲示板にはすでにその手の投稿があふれています。早実の選手たちが全力を尽くした事実は何ら変わらないというのに、優勝どころか、日頃のハードな練習さえも否定されかねないというのはあまりにも酷い話です。
もっと複雑なのは、駒大苫小牧の選手たち、中でも田中君でしょう。
自分たちにもそんな便利なものがあったならば……とは口が裂けても言わないでしょうが、過密日程による疲労のせいで本来の投球ができなかった悔しさは、一層増幅することでしょう。
アンフェアとまでは言いませんが、何処かすっきりしない感じがするのは決して私だけではないはずです。

そして、「伝説の決勝戦」にこうして瑕疵をつけた最大の原因は高野連にあります。
もう以前にも書きましたが、このような過密日程さえなければ、2人の好投手が常軌を逸する連投を強いられることもなく、連投の疲労を取るために高額な医療機器を利用する必要も無く、医療機器を利用することで、勝利にケチがつかなくても済むのです。
よりフェアでフレッシュな勝負が観たいのは、全てのファンの願いです。
一般に危機管理に際しては「事故が起こってからでは遅い」と言いますが、既に過去に事故が起こっている状態であるにも関わらず、何ら改善しないというのは、やる気の有無を問うだけでなく、もっと別のダーティーな理由の有無を問いたくもなります。
阪神球団とも相談して、一刻も早い善処をとるべきです。

クーベルタン男爵の名言に「オリンピックは、参加することに意義がある」というものがあります。
このブログを観るようなスポーツ通の人たちには、男爵の名言の正しい意味を説明する必要もないでしょうが、アマチュアリズムの権化である高野連の主催する高校野球において、“ベッカム・カプセル”が使用された(早実を擁護するなら「使用せざるを得なかった」)事実を観て、男爵がどんなコメントをするのか、是非聞いてみたいものです。

posted by bunchousann |19:00 | 野球 | コメント(11) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

確かに、延長再試合の駒大苫小牧の選手達は、序盤の体の動きは鈍かったように見えました。そのため、早稲田実業に先行を許したのではないか、と思います。
ただ、高気圧カプセルの件は、その有効性を科学的に検証してから議論しても遅くはない、と思います。意外に気持ちの問題なのかもしれません。
今回のフィーバーの中であまり触れられていませんが、斎藤君も田中君も越境入学しています。斎藤君は群馬県出身なのに西東京代表、田中君は大阪府出身なのに南北海道代表。確か文部科学大臣が、越境入学はあまり好ましくない趣旨の発言をされていたと思います。越境入学者が活躍して栄冠を勝ち取るのは、教育的見地からはどう評価されるのでしょうか?高野連はどう考えているのでしょうか?個人的には、越境入学には反対はしませんが、もうそろそろ一定の基準を設けてもよいのではないか、と思います。

posted by チュー新井 | 2006-08-28 22:12

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

コメント有難うございます。
越境入学の問題ですが、中2から高3まで四国の愛媛で過ごした人間からすると、結構深刻な問題と言えますね。
例えば私学の学校ならいざ知らず、愛媛では県立の名門、松山商でさえも似たようなことをやってます。
香川の尽誠学園や高知の明徳義塾などはほとんど越境入学選手ということで有名ですが、その代償として地元の応援にさっぱり熱が入らないという事実があります。
地域対抗色の強い高校野球で、地元のチームなのに地元出身選手がいないということで、なかなか応援しづらいのでしょう。
その学校のOBならいざしらず、そうでない人たちにとっては、企業の名を冠する実業団チームなどと同様に、学校名だけでは地元民のアイデンティティを喚起するまでには至らないのかもしれません。

posted by bunchousann | 2006-08-28 22:55

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

bunchousannさん お邪魔します。
越境入学の件ですが、選手の側から考えると、学校選択の自由を認めてほしいでしょうし、甲子園に行くために、競争率の低いところに進学するのは認めてあげたい、と思っています。問題は、そういった現実があるのにもかかわらず、明確な考えを出さない高野連にあります。
話を戻しまして、高気圧カプセルの件ですが、早稲田実業は、春の選抜で関西高校(岡山)との間で延長再試合を経験していたので、何かコツを心得ていたのかもしれません。経験がものをいったのでしょう。今回に限っては、マスコミが採り上げているほどの効果はなかったかもしれません。ただ、高校野球でそこまでやる必要があるのかどうかは、議論の対象になってもよい、と思います。

posted by チュー新井 | 2006-08-28 23:49

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

またまたレス有難うございます。
都会の参加校の多い地区の子が地方の参加校の少ない地区の高校へ進学する、だから甲子園に出る確率が高くなる……。
数字上の単純計算ではそうなりますが、必ずしもそうとは限りません。シード校の選定方法などは各都道府県によってバラバラで、一概に参加校が少ない地区が勝ち抜きやすいということにはならないようです。そんな内容のコラムがありますので、よかったら私の名前をクリックしてみてください。
また、こちらも高気圧カプセルの話に戻りますが、確かに早実の選手たちが使っていた持ち運び可能なタイプのものは、医療現場で使っているものよりも酸素の濃度が随分薄く、はっきりとした効能はわかっていないようです。ただ、斉藤君が回復の実感を感じている趣旨のコメントを発表していたというのは事実です。
医療現場で使っているものに関しては、実際に保険適用の医療行為として使われているので、医学的にも効能は認知されているとのことでした。

posted by bunchousann | 2006-08-29 01:09

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

bunchousannさん またお邪魔します。
越境入学の件ですが、少し言葉が足りませんでした。bunchousannさんの仰る通り、越境入学したからといって、甲子園に行きやすくなるとは限りません。ただ、進路を考える場合に、選手自身や関係者がそう考えるのは、無理もないように思います。私が選手の立場であれば、東北地方や北陸地方、山陰地方の強豪校に行ってもいいかな、と考えます。
また、高気圧カプセルの件ですが、医学的に効能が認知されているのであれば、高校野球で使用するのは禁止してもよいかもしれません。高校野球はプロスポーツではありませんし、持てる者と持たざる者との格差を助長することになるからです。

posted by チュー新井 | 2006-08-29 07:53

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

はじめまして。

さて、記事を拝見させていただいたのですが、一つ私の方から意見というか。。。

確かに斉藤君が抜群のスタミナを見せたのは、ベッカムカプセルのおかげかもしれません。
しかし、田中君の球速が上がらなかったのは、疲労のせいではありません。
現在の彼の持ち味は150キロの剛速球でなく、目の前で「消える」ほどキレのよいスライダーを中心にした組み立てです。
調子がずっと上がらなかったのもありますが、彼は春先からあのようなスタイルでピッチングを行い、道大会も勝ち抜いてきました。疲労も無く、調整も万全だったであろう甲子園の初戦でも、球速は140そこそこでした。

あまり投球を見ていないのに田中君を引き合いに出すのは、彼に対して失礼かと思います。

posted by imu | 2006-08-29 11:25

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

imuさんへ
そうですね。その点に関しては否定しようもありません。
スライダーの切れの良さは確かに群を抜いていましたし、プロが獲得を切望する1番の理由だったとも聞いています。
ただ、拙稿で私が言いたかったことは、そういうことではなくて、ファンが素晴らしいと賞賛を惜しまなかった決勝戦が、特殊な機器の使用で公平感が損なわれる(と誤解を与えかねない)ような事態になったことに対する批判なので、田中君を引き合いに出したことは、何も彼を貶めようとする意図があったわけではなく、単にきっかけに過ぎません。
ピッチングスタイルが変わったことをただ私が認識できていなかっただけのことで、そこのところはご了解いただきたいと思います。

posted by bunchousann | 2006-08-29 12:16

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

コメント有り難うございました。

この問題は、私も同様に釈然としない物を感じておりました。
まあ、最新兵器を導入する努力を怠らなかったと言えばそうなのでしょうが、金のある学校とない学校との差は、今後、ますます、開いてくるのでしょうね。

でも、それ以前に、延長18回までやってたのが、高校生選手の保護の為に、15回までになったのであれば、高校生投手は保護の為に一試合あたりの球数を決めるとか、中4日間は投げさせてはならないとか、そういう、保護策を決めるべきではないのでしょうか?

この機械が普及すれば、疲労回復が早くなる・・・というのは、本末転倒だと思うんですが・・・。

posted by へいたらう | 2006-08-30 13:52

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

 高気圧カプセルですが、普通に考えて東京のチームがホテルに持ち込んでやっているとは思えません(大きさからして)。
 近くの(大阪あたり)酸素バーにでも行ったんじゃないでしょうか?
 私は大学病院にて難聴を高気圧酸素療法で治して以来、体調に不調があると近くの酸素バー(私の場合は名古屋市内ですが)に良く行きます。
 50分5000円ですが、私にはさほど高価とは思えません。
 医療用は1気圧ほどの加圧で、カプセルは0.5気圧ほどですが、私の体感では充分効果はあると思います。
 私の行く酸素バーにはスポーツ選手も訪れているようですが。

posted by iee | 2006-08-31 07:12

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

はじめまして。

この高校野球の連投については、本当に驚きます。医学的にそして今の常識で考えると、やはり肩には なんらかの後遺症が残るんじゃないかと考えてしまうのではないでしょうか。でも、私のまわりの方の中でも、ぜんぜん平気とか、プロ野球解説者H氏もテレビで公然と平気発言しているし・・・正直どうなんでしょうか?高校野球のブランドには勝てないのでしょうかね。
でも、酸素バーって気持ちよさそうですね、本当に疲れが取れるのであれば、行って見たいです。

posted by ハンカチ家来 | 2006-08-31 11:36

Re:フィーバーから1週間~高校野球に“ベッカム・カプセル”は必要なのか

はじめまして。

皆さんの意見を読ませてもらいました。
各々考え方が違うのは当たり前ですが僕はベッカムカプセルの使用も越境入学も不公平では無いと思います。                        今の様な過密スケジュールで甲子園大会が続いて行くようならカプセルは投手にとって最大限のケアだと思えます。
前日の疲れも抜けきれない疲労した状態で投球を気力で続けさせるのは現代スポーツではナンセンスです。
ましてや選手は大半が体も出来上がっていない高校生。
若い芽を潰さない様に最大限のケアをしてあげるのは誉められる事ではないでしょうか?                         また越境入学も子供達の将来や夢を考えるとさほど悪いとは思えません。
都市部なら話は違うかも知れませんが、田舎の大した設備も無い学校で才能を埋もれさせてしまうならば整った環境で切磋琢磨させてあげた方がどれだけ良いかと思います。

posted by taka | 2006-08-31 23:01

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