2007年10月09日

政治とスポーツの関係、2つの側面から見て~切り離せないものだからこそ

さて、リーグ戦の合間を縫っての国際Aマッチウィークがもうすぐやってくるわけで、またぞろ代表への関心も高まってくる頃です。

そんな中、ひっそりと、小さな扱いのニュースに思わず目を向けてしまいました。

セルビア領内にあるコソボ自治州。木村元彦さんの本によると、その代表チームは既に「セルビア・モンテネグロ」という連邦国家が未だ「ユーゴスラビア」と名乗っていた時代、すなわち90年代から活動をしていたわけですが、セルビアとしては今になってもなかなか存在そのものを認めることができないようです。

セルビアはコソボが事実上国連の管理下にある今となっても、無論その領土所有権を主張しているわけですが、こうした「自国の領土と主張しているが、未だ(あるいは、かつてはその影響下にありながら今は)その影響下に置くことが出来てない地域」に対する執着の一例は、サッカー界でも他国の例で見ることができます。

例えば、スペイン。

ご存知の方も多いとは思いますが、スペインにはカタルーニャ州選抜バスク選抜といった独立志向の強い地域の“選抜”チームが毎年のようにクリスマス休暇などを使って、FIFAやUEFAとは無縁のところで親善試合を行っているわけですが、イギリスとの間に領土問題を抱えるジブラルタル代表に対するスタンスは、スペインサッカー協会も前の二者とは正反対のようです。
この場合はセルビアとコソボの関係とは厳密な意味で異なり、もう一方の当事者として、(「国家」としての)イギリスが絡んでいるのですが、既に「自治州」としてその内部に存在する地域に対する考え方とは軌を一にしているわけではないようです。

ジブラルタルのように、コソボがFIFAやUEFAへの加盟を求めているのなら、まだしもセルビアの立場も理解できます。しかし、まだそこまでは求めてはいないでしょうし、チームの活動くらいは認めてもいいのではないかと個人的には思ってしまいます。

「政治とスポーツは切り離して考えるべきだ」とは多くの人の言ですが、それが理想に過ぎないことを、嫌が応にも痛感させられます。
いや、切り離さない方がいいということもあるからこそ、厄介な問題なのかもしれません。

セルビアとコソボのニュースとほぼ同時に入ってきたニュースによると、リーガ・エスパニョーラでは、アフリカ人選手に対して外国人枠の対象外にするとの決定が下ったようです。
このニュースの直前に、FIFAのブラッター会長が「クラブは自国選手を先発に6人試合に起用しなければいけない」云々の発言をしましたが、これに真っ向から逆らうような決定とも言えます。

スペインは比較的外国人枠に厳しい方ですが、この決定で、優秀なアフリカ人選手をEU国籍選手(という「枠」も政治の恩恵ですね)として使えるのですから、ビッグクラブだけでなく、あらゆるクラブにとって朗報と言えるでしょう。

そして、この決定が下った論拠というのが、何でも「コトヌ協定」というEU諸国とACP諸国(アフリカ・カリブ海・太平洋、計77か国のことだそうです)との貿易に関する協定だそうです。
ということで、協定の大まかな内容を見てみたのですが、管理人の乏しい頭では、どの部分がこの決定に関わっているのかがイマイチわかりませんでした(国際政治に詳しい方、管理人に優しくレクチャーして下さい)。
まあ、それはともかく、こうした協定は政治の世界で生まれるものですし、その点ではリーガのアフリカ人選手たちは政治の恩恵を受けたとも言えます。

これからも、サッカーに限らず、政治に翻弄される局面がたくさん出てくると思います。
切り離せないものだからこそ、スポーツと政治、なるべくなら上手く付き合っていきたいものです。

posted by bunchousann |00:00 | サッカー | コメント(8) | トラックバック(1)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bunchousann/tb_ping/176
この記事に対するトラックバック一覧
ブラッター会長は北の湖理事長なのか 【What's On...】

まずは、以下の記事を読んで頂きたい。先発に自国選手6人以上義務付けへ 国際サッカー連盟(FIFA)ゼップ・ブラッター会長(71)が5日、「ナショナル・プレーヤー枠」の導...

2007-10-11 02:07 | 続きを読む
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
Re:政治とスポーツの関係、2つの側面から見て~切り離せないものだからこそ

管理人様

いつも楽しく拝見させて頂いております。
ご自分の見解をしっかりと通して、且つ感情を抑えてのご筆致、大変心地良く感じております。



さて、「政治とスポーツ」と聞いて私が真っ先に思い出したのは、ストイコビッチの「NATO Stop Strikes」シャツの事でした。彼は当時から「政治とスポーツは関係ない」との姿勢を示していましたが、賛否両論分かれる結果となりました。

また、イングランド代表VSアルゼンチン代表戦や、日本代表VS韓国代表戦の異様ともいえる盛り上がりなども「政治とスポーツ」に関わりがないとは誰もいえないでしょう。

各々の国での政治的背景は色々あるでしょうが、ことスポーツに関しては、ピントはフィールド上に合わせて、「背景」は、あくまで「背景」のままでいて欲しいものです。

posted by audience | 2007-10-09 08:46

管理人より

audienceさんへ
いつもご覧頂いているということで、まずはありがとうございます。

件のストイコビッチのメッセージは確かに賛否両論でしたが、これも大きな影響力を持つスポーツ選手として、同胞が無差別に殺されていく中、何かせずにはいられなかったのだと思います。
また、木村さんの本をお読みになったのならご存知だとは思いますが、この時の欧米の世論は「セルビア=絶対悪」というもので、世界中が非常に偏った、一面的なものの見方をしていたことも、彼の怒りに拍車をかけていたのだと思います。

サッカーでも代表やクラブの試合で、どうしても政治色が色濃く出ることはしばしば起こりえますね。
最後の、

>ピントはフィールド上に合わせて、「背景」は、あくまで「背景」のままでいて欲しい

背景であればこそ、楽しんで観られるというものですね。第三者の気楽な目線なのかもしれませんが。

posted by bunchousann | 2007-10-09 13:03

Re:政治とスポーツの関係、2つの側面から見て~切り離せないものだからこそ

ご無沙汰しておりました。
コトヌ協定と今回のリーガの決定との関係、こちらのブログで書かれているように、協定に参加しているEU外の(ACP:アフリカ、カリブ、太平洋)諸国77ヶ国と地域の国籍の、労働者の権利をEU市民並に扱うという協力体制(パートナーシップ)のようです・・・
http://www.actiblog.com/elplanter/45935

元々は、歴史的な奴隷制度の反省としての、アフリカ出身者のEU内での待遇改善なのでしょうが、ことサッカーのようなビジネスとなれば、利用できるものは何でも利用して、レアル・マドリーやヘタフェが訴えて、優位な状況を作ろうとしているのでしょう。

おそらくはそういう「ボーダーレス」な動きに歯止めをかける為のブラッターの「6+5」発言なのだと思います。全くの推測で根拠ゼロですが。
・・・って自分で書かないといけませんね^^;

FIFA.com での "Football needs autonomy"(フットボールは自治を必要としている)という記事や、プラティニが行なっているCL改革など、強国と弱国の格差を縮小する動きは、コンペティティブである事を理由として、よくご存知のようにF1やノルディック・スキーなどでの頻繁なルール改正に見られますが、ヨーロッパ人のバランス感覚とルールに対する考え方を「政治力」と呼ぶのならば、日本人も身につけて損はない事だと思いますね。儒教や侍・武士の考えとはかなり開きがあり、中国的な考えともやや異なるのでしょうが。

posted by UJ | 2007-10-09 20:49

管理人より

UJさんへ
こちらこそご無沙汰しておりました。

スペインに関しては、EUの市民権まで与えられるようですね(他のEU諸国では通用しないのでしょうが)。なるほど、それでEU圏内では「労働者」として自由に移動できる「ボスマンルール」との合わせ技のような形で今回の決定に至ったわけですね。

後段の部分は難しいことが多いのですが、最近では柔道の例で日本もしたたかに学ばされているような気がしますし、そういった面での専門家を養成する必要があるのかもしれませんね。

posted by bunchousann | 2007-10-09 21:33

Re:政治とスポーツの関係、2つの側面から見て~切り離せないものだからこそ

はじめまして。

「政治とスポーツの関係」を象徴する事件がドイツで今議論を呼んでいます。

http://de.eurosport.yahoo.com/10102007/14/wogen-fall-dejagah-zunaechst-geglaettet.html

自動翻訳頼みなので記事内容の把握がおぼつかないのですが、イラン国籍も有するU-21の選手がワールドカップ予選が行われるイスラエルへの遠征を拒否(自分がイスラエルに行くと、イランに残っている身内に危害が及ぶかもしれないと考えたため)
この行動がユダヤ人団体などから批判を受けているとのことです。
ドイツサッカー協会は今のところ選手の意向を認めているものの、問題が大きくなってきたので対応に苦慮。

最悪の場合代表からの追放も有り得るらしいのですが、何とか関係者で話し合い、折り合いをつけてほしいものです。

posted by マイン | 2007-10-11 00:49

管理人より

マインさんへ
ボルフスブルクのアシュカン・デヤガー選手のことですね。

イランはイスラエルという国家の存在を認めておらず、法律でイスラエルへの入国も禁じられています。
ドイツ代表のレーブ監督も、この選手に対してやや批判的なコメントをしておりましたが、こういった問題は他でも聞いたことがあります。

04-05シーズンのCLのグループリーグでバイエルンが、マッカビ・テルアビブと対戦した時にも同様の話が出たような気がします。
この時のバイエルンにはイラン代表のハシェミアンがいました。幸い主力扱いではなかったのでアウェイの遠征からは外されました。

このようにユダヤ人団体の抗議に、ややもするとあっさり屈した感があるDFBですが、ドイツの過去の歴史(すなわちナチス・ドイツ時代のユダヤ人に対する諸々の行為)もあって、ドイツ側はユダヤ人に対してやや遠慮(?)するところがあるのかもしれませんね。

posted by bunchousann | 2007-10-11 19:35

政治とスポーツの関係、2つの側面から見て~切り離せないものだからこそ

お邪魔いたします。

う~ん国籍や政治的な話って難しいですね。
チベットの問題で今中国オリンピックのボイコット話も出ています。
最初委員会かなにかに名を連ねていたSスピルバーグ氏も辞任し
今やボイコット派の急先鋒。ボイコットもそうですが、
台湾の選手は今回どんな扱いなんでしょう?当然中国は自国の
一部としかみていませんでしょうから、台湾の代表は認めない
のがスタンスですよね。

民族・歴史に縛られたくない人々が縛られるのは不幸でしか
ありませんが、こういった機会にいろいろ話し合いや運動が起き
平和的に解決できると良いのですけれども・・・。

posted by お!TAKさん | 2008-03-20 19:44

管理人より

お!TAKさんさんへ
ずいぶん古い記事へのコメント、ありがとうございます。

北京五輪に関しては、有名人(例えばリチャード・ギア)などがボイコット運動を推進したり、あるいはイタリアのある新聞の世論調査では90%以上の人々がボイコットすべきという結果が出たことで、五輪が近づきつつある今になってそういう人権問題が再燃している印象がありますね。
私の職場にも中国人の留学生の女の子が1人いますが、とてもいい子ですし、非常に日本という国に高い関心と好奇心を持っています。個々の人たちはとってもいい人たちなんですが、こと国家という括りになると、アレルギーを示す人たちも多いんでしょうね。

台湾の扱いはどうなるんでしょうね。確かに不思議です。
ちなみに野球では台湾は独立したチームとしてアジア予選、そして先日の世界最終予選にも参加していました。結果、見事に予選突破しましたが、これを「中国代表」と呼ぶのはどう考えても抵抗がありますし、結局他の競技でも分けざるを得ないと思います。

posted by bunchousann | 2008-03-20 20:32

コメントする