2006年08月23日

改めて「託児所」の可能性を思い知らされた

拙稿『安易な「ブランド」信仰でなければよいが……』では、小笠原や大黒の移籍話について否定的な考えを述べさせてもらいました。
そこで日本人にとって、いや、世界中の多くの「フットボーラー輸出国」の選手にとって、最も理想的な海外移籍とは何かを、ここ数日(不謹慎にも仕事中に)考えてみました。

この夏は、ご存知の通り「ユーべの八百長」絡みの大型移籍が絡んで、期限までまだ1週間を残しているにも関わらず、欧州全体で有力選手の移籍が相次いでいます。

そんな中、私が注目していたのは、ここ2シーズンのフェイエノールトの爆発的な攻撃力を支えていた「K・K」コンビの行く末でした。

サッカーファンならご存知の通り、カイトはリバプールへ、カルーはチェルシーへの移籍が決まりました。
カイトはここ5シーズン連続でエールディビジで20ゴール以上をあげている安定感が魅力です。移籍先のリバプールではイングランド代表のクラウチとの競争が予想されますが、代表ではゴールをあげているクラウチもレッズでは昨シーズンリーグ戦でわずか7ゴールしかあげていません。あくまでも参考のデータですが、ゴールデンシューのポイント換算では、15ゴール程度は期待できるわけで、上手くプレミアのスピードに順応すれば、即エースとなることも充分に可能です。
一方のカルーですが、こちらは何と言ってもシェフチェンコ加入の影響をモロに受けることになりそうで、同胞のドログバに次ぐFW3番手あたりを争うことになるでしょう。しかしまだ21歳と若く、ほんの少しモウリーニョが我慢すれば一気に花開く可能性も秘めています。

それにしてもこの2人、昨年までフェイエノールトで小野伸二のチームメイトだったんです。
それが今では04-05欧州王者のリバプールとプレミア2連覇のチェルシーの一員なのですから……。
何だか、急に遠くへ行ってしまった感じがするのは私だけでしょうか?

この2人の移籍の事実を目のあたりにして、毎年のことながら改めてエールディビジ、とりわけその3強の可能性を思い知らされます。
オランダは優れたスカウティングによって世界中の優秀な若手を集め、育成して大国の強豪リーグに移籍させることで有名です。この事から「欧州で最も優秀な託児所」と呼ばれることもあります。
フェイエノールトに限っても、過去にはトマソンがミランへ、ファンペルシがアーセナルへとステップアップを果たすなど、ビッグクラブへの入り口へとなっています。アヤックスやPSVなども含めると、いったい何人のワールドクラスの選手が産まれたのか、数えるときりがありません。

この「オランダ3強経由ビッグクラブ行き」こそが、何となく海外移籍の理想形のような気がします。
それでは、これから日本人にその可能性があるのでしょうか?

結論から言うと、可能性はあるが、かなり困難な道であると思います。

小野伸二はフェイエノールトでレギュラーを獲り、その可能性を最もよく見せてくれた選手でしたが、やはりオランダ3強はそれほど甘くはありません。小野のケースは、あくまでも例外的に彼が優れていたということにしておいたことがいいと思います。
Jリーガーの出世例としては韓国代表のパク・チソンに触れないわけにはいきませんが、彼も京都からPSVに移籍したものの、2年間はレギュラーを獲れませんでした。ヒディンクが辛抱強く彼を起用しなかったら、今頃彼はオールド・トラフォードのピッチには立っていなかったかもしれません。

しかし、チャンスはあります。
オランダ3強のレベルは確かにそれなりに高いものがありますが、それ以外のエールディビジのクラブはというと、それほどのレベルにあるとは思えません。
過去に藤田俊哉、戸田和幸といった日本代表経験者が短期間ながらそれぞれユトレヒト、デン・ハーグといったクラブでレギュラーとしてプレーしました。ヘラクレスの平山相太もまだ奮闘中ですが、レギュラーを獲るチャンスは充分に残ってます。
これらエールディビジのクラブでレギュラーを獲るのは、日本代表レベルの選手であれば、そう難しいことではないと言えます。

ただ、プレー以外で問題があるとすれば、エールディビジの財政規模、この一点に尽きます。
エールディビジでは外国人選手に最低でも日本円で約5000万円の年俸を保証しなければいけないのだそうですが、この金額を3強以外のチームが捻出するのはかなり至難の業です。
何しろオランダは人口1500万人程度の国ですから、市場の大きさは限られています。ヘラクレスの平山の場合は、日本のスポンサーがつくことでやっとこさ年俸の支払いが行われている状況です。
先に紹介した藤田俊哉も、ユトレヒトで充分な戦力になっていたにも関わらず、ユトレヒト側が当時藤田の保有権を持っていたジュビロ磐田に5000万円のレンタル料が払えないということであえなく日本に帰還するハメになってしまったほどです。しかもユトレヒトはヘラクレスと違って残留を争うクラブではなく、毎シーズンUEFAカップ出場を目標とする「セミトップ」と呼ばれるクラブですから、エールディビジ全体がいかに財政的に厳しいかが解ろうかというものです。

それでも平山が現在プレーできるように、チャンスは0ではありません。
もしエールディビジのクラブに所属し、そこで好プレイを見せれば、同じオランダの3強に引き上げられる、そんな可能性もあるわけです。
もちろん、小野伸二のように、パク・チソンのように、いきなりJリーグから引き抜かれることもあるかもしれません。
そしてその後は……本人の努力とほんのささやかなタイミングの妙によっては豊かな可能性が待っています。

以前にも書きましたが、闇雲にハイレベルを目指すことがいいことだとは思いません。
階段は大股で上るよりも、一歩一歩上るほうが楽だし、怪我をする可能性も少ないのですから。

posted by bunchousann |02:26 | サッカー | コメント(0) | トラックバック(0)
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