2007年08月21日

嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

8月22日は代表の試合が3つも重なってしまい、全てを観戦したい方にとっては大変な1日になりそうです。
かく言う私もこの日は仕事のため、3試合とも夜通しぶっ続けで録画観戦の予定です。

さて、その22日の試合に臨むにあたっての記者会見で、オシム監督がメンバー選考と日程に関して不満ともとれる発言をされたことをご記憶の方もいらっしゃることだと思います。以下は引用。

――カメルーン戦以降、年内のA代表の試合はUー22代表の試合と重なるため、彼らを呼べない。U-22以上の選手の見極めの第一歩となるのか

オシム 質問がよく分からない。あなたの考えを拝聴したということでよいか?
 A代表に優先権があるので、本来ならばU-22やU-20の選手を呼ぶことはできる。あなたが何を挑発したいのか、よく分かった。
 私がもし、今年の始めにカレンダーを作る立場であったなら、同じ日にU-22の試合を入れなかっただろう。しかし、今の段階で決まっているので、五輪代表がある程度の優先権を持っている。なぜかということを、ここで話すまでもないだろう。

 私は日本人ではないので、なぜそれほど五輪にこだわるのか理解できないが、日本人の気持ちは尊重しようと思う。五輪の本大会に出場するのが大事だということは理解している。それに今回は、A代表は公式戦ではなく親善試合である。ただ、同じ日に試合があることは残念だ。つまり、若い年代の選手をA代表に呼べない。カメルーンという強豪と戦う際に、1人でも2人でも若い選手が一緒にプレーできれば、彼らにとっては貴重な経験の場になっただろうと思う。カメルーン戦は、特に若い選手にとっては経験だけでなく、選手としてのレベルアップのチャレンジの場として迎えることができればよかったと思う。

 しかし、協会が決めたことだ。五輪予選に優先権があることは私も承知している。A代表に呼んでもいいと考えている、何人かの若い選手たちが、強豪と対戦するチャンスを逃してしまった。来年のW杯予選では、若い選手を使えればと思う。なるべく早く、北京五輪の出場権を確保してもらって、A代表にも五輪代表にも、両方ハッピーになればいいと思う。おそらく近い将来、またこのようなA代表の試合に五輪代表の試合が重なることはない、と信じている。(太字注:管理人)

オシム監督の物言いは難解で解釈に困らされることもしばしばあったのですが、それはゲームの内容や戦術といった現場の話のことであって、それ以前の戦略的な部分についてはこのようにはっきりとした物言いをしているということがよくわかると思います。
そして、今回オシム監督が指摘した日程と選手選考への不満の話は、実は今後の日本サッカーの方向性にも結構関わってくると思うのです。

前任者の日本代表の時には、もっと若い選手を使うべきだったという批判をしばしば耳にしたものでした。
それゆえ、今回オシム監督になってからしばしば五輪世代の若い選手が招集を受けています。
それでも、このような発言が監督自身から出るあたり、まだまだ若い選手を呼び足りないということなのでしょう。

例えばアジアカップで日本と対戦した国々には五輪世代の選手もスタメンにたくさん名を連ねていました。
オシム監督は公式戦ということでわりと保守的なメンバーをスタメンに固定し、その結果として若い選手がスタメンで起用されることはありませんでしたが、今度の親善試合では公式戦とは違い、純粋に「試す」ことが出来るはずでした。
ところが、ここに解決不能な問題が出現し、監督の構想は会見での不満に形を変えて現出したのです。

A代表の親善試合と五輪代表のアジア最終予選の日程がかぶってしまい、五輪代表に勢力を傾注するという日本協会のスタンスと代表監督のスタンスとの間に齟齬が生じたわけです。

これを「地理的な状況によって起こりうる日本と欧州の五輪への取り組み方への違い」と単純に解釈できればいいのですが、そう単純なものとはいえないのかもしれません。

きつい言い方をすれば、日本が五輪代表というカテゴリーにエネルギーを注ぎ込むことが、もしかしたら若手選手の成長に対して必ずしもよい結果をもたらさないということを言いたかったのではないでしょうか。

こうした価値観は欧州の人にはよくありがちとも言えます。
実際、アテネ五輪の際にはオーバーエイジ枠で小野伸二が出場することに対して、オランダのファンやマスコミの間でも、そして彼が当時所属していたフェイエノールトでもあまり歓迎されていなかったようです。
最も、オランダは北京五輪への出場が決まってからは様々な大物選手のオーバーエイジ枠入りが盛んに噂されていますが……。

日本が五輪を初め、年齢別カテゴリーの大会に必ずとっていいほどベストメンバーを送り込むのは、代表単位でも、クラブ単位でも、レベルの高い相手が近隣に存在する欧州や南米と異なり、地理的に国際経験を積むことが困難であるがため、と一般には理解されていると思います。

それに対して、ここでオシム監督が示した考え方は、経験の積み方の違いということが出来るでしょう。
「どうせ経験を積むならば、A代表(しかもレベルの高い)相手に積んだ方がいい」乱暴な言い方をすればそういうことなのでしょう。

こうした日程のバッティングですが、残念なことに、五輪代表の最終予選6試合はことごとく国際Aマッチデーに組まれ、今のところ空いているのは10月13日のみ。しかも五輪代表は同じAマッチウィークの17日にアウェーでのカタール戦が控えており、予選の状況にもよりますが、ここでも五輪代表をA代表に招集するのは難しいと言えるでしょう。

オシム監督はこうした状況がいち早く改善されることを望んでいますが(最も解決するとしても当人の任期切れの後になるのでしょうが)、予選を突破したらしたで、五輪代表としての活動の機会も長引くわけですし、本番前にAマッチデーを使って親善試合をすることもあるかもしれません。そもそもこれまでの日本協会のスタンスを考えると、このような各世代の代表の日程のバッティングは今後も避けられないと思います。

若い選手をどうやって育てていくか、これはどの国でも直面する難しい問題だと思います。
ただ日本では、若手をA代表に抜擢して欲しい、と望む声がある一方で、こうした外的要因によってそれが叶わぬ機会が結構多いのも事実です。
もしかしたらこの問題は日本の若手育成にとって永遠のジレンマになる可能性さえ含んでいます。
しかし、五輪代表には五輪代表の立場もあり、五輪を蔑ろにしろといい難いのも事実です。

22日はそんなことをちょっと考えながらそれぞれの試合を観てみたいと思っています。

posted by bunchousann |12:25 | サッカー | コメント(13) | トラックバック(1)
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反町監督への個人的考察と、年代の枠組みを考える 【或る光栄 スポーツを考える】

 U17、惜しくも予選リーグで敗退してしまいましたね。  城福監督は、筆者がU20吉田監督の年の離れた後輩と言うことも有って、 時々学生時代のリーグ戦などで拝見していたりし、懐かしい心情が沸き起こってなんとも言えない「時世」を感じながらその采配を見守っていました。  日本は、サッカーをするには最適環境とは言えない誘惑の多い先進国だから、今回のU17代表の選手が一人も離脱することなく、順調に成長していって欲しいなと考えています。  今回の結果は、戦前からの実力通りでほぼ終局を迎えたと思います。  本当は、隣

2007-08-27 19:51 | 続きを読む
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Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

最近つくづく思うんですけど、五輪のアジア代表を決めるのにホーム&アウェー方式である必要が必ずしもあるのか?…こんな疑問を感じる事があります。
別にU-22アジアカップみたいな形で決めても全然OKのような気がするんですけど。その方が日程に対しての選手の負担は明らかに楽だろうし。
たぶん五輪のカテゴリーで最後までホーム&アウェーで決めてるのはアジア地区だけですよね?
確かアトランタ五輪まではセントラル開催で決めてたような気がするんですけど。AFCにはそこんとこもう一度ぜひ再考してほしいのですが。

posted by ken1116 | 2007-08-21 13:08

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

始めまして

代表強化という視点で見たら、ken1116さんが言われている様にセントラル開催で集中してやった方が短期間で済むので後の強化がしやすくなるんじゃないかと自分も思います。

恐らく、H&Aでやるのはセントラルより試合数が多くなるのでAFCにとってこれが一番、利益が出るからかもしれません。

posted by t | 2007-08-21 13:49

管理人より

ken1116さんへ
アテネの時も、変則ダブルセントラル方式が採られ、H&A6試合をそれぞれ日本ラウンド3試合、UAE(だったかな?)ラウンド3試合に分けて行われました。5日で3試合くらいやっていたので、かなりキツイ日程だったと思います。

それと五輪のカテゴリーの話ですが、そもそもこういったカテゴリーは他の大陸には存在しません。
欧州では五輪前年のU-21欧州選手権が五輪予選を兼ねていますし、他の地域でも概ねそのやり方です。
ご指摘の通り、アジアでも似たような大会を開くことによって日程の緩和ができそうなものです。

tさんへ
こちらこそ初めまして。
AFCが利益を出したいのもわかるんですが、それがアジアのサッカーの退歩に繋がるとすれば、本末転倒というものです。
アジアでもU-17やU-20では大陸別選手権を開き、それを各世界大会の予選と兼ねているというやり方を採っているのですから、予選方式は一考して欲しいものです。

posted by bunchousann | 2007-08-21 14:11

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

トップチームレベルの選手がユースチームでプレーする必要はないし、A代表レベルの選手がU世代の代表でプレーする必要はないのに、無駄に年齢区分にこだわるよね日本は。

例えばさ、J2のチームがガンバとかマリノスのユースの選手引き抜けるようになったら面白いと思いません?

posted by ne | 2007-08-21 14:18

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

マリノスのユース?糞ばっかやん♪

ユースはサフレッチェやろ~あとはジェフ!!

ガンバやヴェルディのユースが強いのは当たり前。都市やからなぁ

posted by TVT | 2007-08-21 14:26

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

↑↑ 何言ってんのこのバカは?
サフレッチェユースってどこですかぁ?
ジェフユースなんて話にならん。

posted by っき | 2007-08-21 15:13

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

五輪かー。もうここ強化するために日程考えるの辞めません?
自分、一人でサッカーカレンダー組んで遊んでるんですけど、完全に無視してます(笑)

確かに、U-22の大会開くのが一番良さそうですねー。アジアカップの裏でやればいいのに・・・。

posted by negro | 2007-08-21 22:21

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

オシム監督がはっきりとした物言いをしているというのは、お言葉どおりだと思います。
「地理的な状況によって起こりうる日本と欧州の五輪への取り組み方への違い」などを問題にするのではなく、単純に「A代表至上」を言葉にしただけに聞こえますが。

前の方で neさんが明記してるように、
>A代表レベルの選手がU世代の代表でプレーする必要はない
という、一般的な態度です。
だから年齢制限がある世界大会にすぎない五輪重視が理解できないと言ってます。

>1人でも2人でも若い選手が~
という仮定の節は、現在のユース・五輪年代に、残念ながら明確なA代表選手といえる存在 ―アルゼンチンのメッシのような― がいないから、意味がわかりやすいように説明を加えただけでしょう。

小野伸二の件は、単にフェイエノールトにとって益がほとんどないというだけで、小野個人の成長に対して必ずしもよい結果をもたらさないかもしれないといった配慮ではありません。

オシム監督の見解は単純で、「どうせ経験を積むならば、A代表」ではなく、当然A代表の方が上位だ、本人にも、より有意義であるということを明らかにしたつもりでしょう。

まさにオランダ代表に関して触れられているように、本大会出場でも決まったのならA代表からの出向なども考える、その程度が常識だ、との意味で「五輪にこだわるのを理解できない」と言ってますよ。

posted by たぶん | 2007-08-22 02:18

管理人より

neさんへ
難しいところですね。そのためには1度プロ契約を結ばないといけませんし、結局プロになってレンタルという方式を採ることになりますね。

TVTさんへ
今回のU-17W杯に、マリノスのユースから5人が選ばれています。

っきさんへ
現在の代表にはジェフ以外にもジェフユース出身の選手がたくさんいますよ。

negroさんへ
相変わらずカレンダー作り、楽しそうですね。
一応日本はAFCの中でも発言力がそこそこ強いのですから、U-22(名目上はU-23でも構いませんが)アジア選手権の設立を検討してもらいたいと思います。

たぶんさんへ
「地理的な状況によって起こりうる日本と欧州の五輪への取り組み方への違い」はあくまでも日本側の解釈であり、オシム監督がそのように解釈したわけではありません。文章の書き方が悪ければここで訂正させてもらいます。

仰ることは少々一面的、断定的な感じもしますが、概ね同感です。ただ、小野の事に関して、私は小野個人の成長云々という記述をしたつもりはありません。
オランダに関しては、スポナビの中田徹さんのコラムをお読みになるといいかと思います。最近はちょっと考え方が変わってきているそうです。

posted by bunchousann | 2007-08-22 02:47

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

最近は日程のバッティングが目立つように感じます
韓国ではU-17のワールドカップやってて昨日はA代表とオリンピック代表組ですか…
オリンピックには出てほしいけどその前にワールドカップで活躍してほしい!!と思ってしまいました…
トルシエ監督のようにA代表とオリンピック代表が一緒でなくてよかったと感じてしまいます(ジーコの時は…記憶にない…)
まぁ両方勝ちましたね
まずはおめでとうと言いたいです
ですが反町監督はいつまで平山にこだわるのでしょうか?
パフォーマンス悪すぎますよね?と感じるしだい…
こだわるのはいいがこだわりすぎるのは良くないと思います(今の首相のように…)
今のうちに若い有望な選手をオシム監督にピックアップしてもらいA代表デビューさせU-22に入れちゃうのも手かも?と思うしだい…
オリンピックなど大きい大会がないとナショナリズムが発揮されず観戦していても燃えないんですよね…
とにかく頑張ってもらいたい!!

それはそうと佐賀北高校優勝おめでとう!!
広陵の監督は判定にちょっと意見ありのような感じですが…
まぁでも仕方ないですよね…
いい試合にケチつけちゃいけないと思います
佐賀北は本当によく戦いました!!
延長15回引き分け再試合で再試合に勝ったところで勢いに乗った感じがしました
我が地元の前橋商業にも勝ちましたしね…
本当におめでとうございました

ちなみに甲子園の総括は…やらないですよね…

posted by のーちらす | 2007-08-23 15:39

管理人より

のーちらすさんへ
いやあ、五輪代表の試合は録画を観ていたのですが、後半30分あたりから記憶がありません。観戦していて眠ってしまったのはかなり久しぶりですが、内容は……何とも言えませんね。

甲子園の総括、ですか……。
スイマセン。実はあんまり観ていないんです。なのでそれはどなたか他の方にお願いするしかないですね。

posted by bunchousann | 2007-08-24 01:43

Re:嘆きしは永遠のジレンマか~日本代表、メンバー選考と日程についての軽い雑感

難しい問題ですね。
五輪重視っていう考え方は、日本サッカーの創成期からありましたよね、確か・・・

posted by 通りすがり | 2007-08-25 19:04

管理人より

通りすがりさんへ
五輪重視、確かに80年代まではそういう考え方でしたね。
ですが、今の「五輪重視」はちょっと本質が違うような気もします。

「五輪に出ることで国際経験の乏しさが補える」という考え方には一理あるとは思います。
問題はその「国際経験」の“質”であり、オシム監督が言いたかったのはその部分ではないかと思うのです。

posted by bunchousann | 2007-08-26 04:47

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