2008年11月19日

我が家は広島市民球場

 建造物というのは、その時代、土地の文化、文明を推し量るのに最適な材料であると思います。
 たとえば、イタリア、ローマにあるコロッセウム。この建造物はローマ帝国の皇帝によって紀元80年頃に建てられ、そこでは連日のように剣闘士や猛獣たちによる決闘が繰り広げられていました。その熱にローマ市民たちがさらに熱狂し、娯楽として“戦い”を楽しんでいました。また、市民の目をこういった娯楽に向けさせることで、政治への不満を解消させていたという執政者側の思惑も見えます。
 技術的な観点から見ると、当時のローマ帝国の技術力がいかに高かったかが推察できます。収容観客人数は4万人以上を誇り、今でいうエレベーターのようなもので戦いの主役たちが登場する演出効果もなされていた痕跡もあり、戦いのフィールド一面に水を敷いて、模擬海戦を催していた記録も残っています。
 コロッセウムひとつ取っても、その歴史的背景、技術面を見ると様々なことがわかります。建造物というのは、その時代を生きた人たちの別の姿ともいえるでしょう。

 さて、2008年を最後に広島市民球場が51年の歴史に幕を閉じました。
 市民球団の本拠地として1957年に誕生し、弱小チーム時代の草創期、赤ヘル旋風を巻き起こした70~80年代、ドーム球場増殖の90年代以降と、カープとプロ野球界を約半世紀見守り続けてきました。特に世界初の原爆投下という悲劇を乗り越えてきた広島という街の再生の象徴として、長く広島県民、市民に愛されてきました。
 今年、9月に入ってからクライマックスシリーズ出場をチームが中日と争っていたこともあり、毎試合、広島市民球場は真っ赤に染まっていました。ファンは自分たちの拠りどころがその役割を終えることに対して、惜別と感謝の思いを込めてそこに足を運んでいたのでしょう。
 また、プロ野球本拠地として今では数少なくなった天然芝&土、昭和の雰囲気を漂わせるスタンド、広島市街の中心に建つ好条件と、日本国内でも他に類を見ない野球場としてカープファンのみならず、多くの野球ファンの心をつかんできました。日本のプロ野球という文化を体現してきた球場だったのではないでしょうか。
 広島市民球場は単なる野球をする場所に留まらず、広島という街のシンボルであったことは明白です。まさに広島、カープに関わった人たちの生き写しが、この建造物だったのでしょう。

 この広島市民球場と苦楽をともにし、一時代を築いた“鉄人”、衣笠祥雄氏が自身の現役時代を振り返るとともに、この球場への賛歌を込めた書籍を12月上旬に出版します。
 衣笠氏はこの書籍の終わりにこう綴っています。
「広島市民球場と歩んできた道のりは、衣笠祥雄のプロ野球人としてのすべてと言っていい。市民球場はまさに『我が家』であった。」
 ここで戦うとき、チームは“ホーム”ゲームであり、この球場は衣笠氏をはじめとした選手たちにとって“家”であり、ファンにとってはカープの戦いを間近に見られる“居間”だったのではないでしょうか。

 この建造物、ぜひ世界遺産として未来永劫、語り継いでほしい、そう思います。

『野球の神様がいた球場~広島市民球場とカープの軌跡』  書籍
衣笠祥雄著 定価1,575円(税込) 12月上旬発売
192ページ(うち最初の16ページはカラーで市民球場のいろいろな風景を紹介)
『Forever 広島市民球場』 B.B.MOOK
定価1,260円(税込) 11月22日発売
特別付録付き DVD(1975年 悲願の初優勝/1979年 江夏の21球←【我が英雄】よりダイジェスト版)、新旧広島市民球場ペーパークラフト
『さようなら、広島市民球場』 BBMベースボールカードセット
1セット46枚入り 4,200円(税込) 12月上旬発売 限定4500セット
51年の歴史を誇る広島市民球場での名場面、活躍してきた名選手をカードで紹介

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posted by book |18:09 | トラックバック(0)
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