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魂の試合。

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武藤キットから受け取った、背番号1の赤いユニフォームに袖を通そうとした城後に、主審篠藤巧がストップをかける。会話の内容はわからないが、想像はできる。この試合の出場権が既にない神山の背番号だったことだろう。このようなアクシデントの場合、緊急避難的にフィールドプレーヤーが着用するユニフォームには、区別さえつけば背番号は関係ないはずだが。競技規則の例外条項にしっかりと記されている。
神山のユニフォームを返した城後は、すでに立ち上がることのできない水谷から、真紅の23番を受け取った。

よくわからない主審解釈のおかげで、23番のGKユニフォームをまとい、城後はフォーメーションの最後尾についた。

汗と雨を吸ったユニフォームは重い。
水谷の魂も、重い。
その重さを背負うのは、城後しかいない。






後半79分。

古巣アビスパ相手に存在感を見せつける藤本主税のミドルシュートが枠をはずれ、ゴールキックを蹴ろうと走り出した水谷。
滑った、というよりも、異変により腰砕けに倒れこんだ。シグナルは、「×」。
尾亦が駆け寄っていき、すぐさま両手を交差させる。
他の選手もそれに気づき、アビスパ側は困惑を、熊本側は遅延アピールを、それぞれがみせながらゴール前に集まってくる。
主審も時計を止めながら走り寄り、水谷の言葉ですぐに担架を要請する。

アビスパサポーターは、選手同様困惑。ただ、即座に出された「×」が気になり息をのむ。
熊本サポーターからしたら、あからさまな時間稼ぎに映った行為、1000馬力のブーイングがフィールドに響いてくる。すかさず水谷コールがホーム側スタンドから届いてくる。

立ち上がった水谷、足首を気にしながらも出場意志を示す。

「交代枠使ってるからやめられない」

他の選手が止める。説得する。
熊本のベテラン選手39番、柏時代の先輩が言う。

「絶対やめとけ。おまえのサッカー人生のために、やめとけ。」

北嶋に続き、南も反対側からやってきて、柏時代の後輩を説得する。
藤本ら、熊本の選手は自軍のサポーターに、水谷の怪我が深刻であることを伝える。


ブーイングが、止んだ。



事実を知れば、赤も紺も関係ない。スタジアムの7000人と、TVの前の数万人が、想いを一つにする。



うつ伏せに寝かされ、異変の起きた左足を曲げられ下腿筋のチェックを受ける水谷。それはアキレス腱の断裂チェックじゃないか。プレーするなんて、とんでもない。部分断裂なのか、全断裂なのか、どちらにせよ無理をすれば、二度とここには戻ってこられない重傷。
そのままの姿勢で担架に乗せられ、運ばれていく赤いアンダーシャツの水谷に、赤いゴール裏からは激励の拍手が起こっていた。
ビハインドの後半40分にそれができる熊本サポーターに、感じるものは多かった。



 





そこからの約15分間は、凄かったの一言だ。




ヴィジョンのメンバー表も、GK10城後寿に変わった。
いきなり足を滑らせた城後だが、ある意味当然だ。急造キーパーが、数的不利の、しかもこんな悪天候で、無事にプレーできることなどほとんどない。表記が変わったところで、そこにいるのは手を使う権利を与えられたフィールドプレーヤーなのだから。


再開直後、船山のスライディングが後ろから入るが、主審は何もとらなかった。よくわからない。


魂のこもった声援と手拍子が、ここ数年で一番の大音量となって、必死にボールに喰らいつくアビスパの選手を鼓舞する。反対側もそう、こんな展開で負けるなど許されない熊本、前半はスタンドにちょこんと座っていたロアッソ君までもが、短い後足をばたばたさせながら外に出たボールを追いかける。馬にも魂はある。

豪快なロングシュートが、水しぶきを上げながら城後を襲う。
正面、なんとかキャッチした城後に大歓声。
城後の不慣れなパントから前線まで飛んでいったボールに、船山が倒される。FKは、もう直接狙うだけ、枠をそれていく。

古賀の足も限界だった。プレーが止まるたびに攣った足を伸ばしてもらうしかない。

セカンドを拾った養父のシュートが右上隅めがけて飛んでくる。
城後、飛ぶ。必死に右手を伸ばしたその先で、ボールはわずかに枠をそれていく。普通のGKならば左手を伸ばしていくところ。ぎこちない、だが、できる範囲で最大限のプレー。足も攣ってしまった。トレーニングメニューが異なるように、もともと鍛えていた筋肉が違う。

オズマールが一人でボールを追いかける。南のクリアボールはそのまま流れていき、古賀の指示でなんとか城後が収める。
城後のパント、オフサイドポジションのオズマールにつられ船山をフリーにしてしまった熊本、飛び出した南と船山が競り合ったボールは外へ。南も足を攣ってしまった。ケアするのは、船山。

金森が、オズマールが、時間を稼ぐ。オズはあからさまだったが、主審は即座に担架を要請する。よくわからない。

岡田リュウが掻っ攫ったボールを持って上がっていく。コーナー付近、倒され奪われたボールを左へと展開する熊本。
左からのクロス。矢野、齋藤とつながれた落下点で、ファビオが豪快なボレーを叩き込んだ。


城後の手は、及ばなかった。




試合終了とともに、凄まじいブーイングが起きた。
誰の、何に対してだろう。
よくわからない。

直後のオズマールが、露骨にそれを態度に表してしまい、レッドカードをくらった。




記憶にも、記録にも残る試合。
両軍、サポーターも含めてよく闘った。

カード乱舞、荒れるきっかけのひとつが、前半37分のプレー。
先制点をあげた西田が、同じようにボールを追いかけていたとき。
熊本5番矢野は、背後に迫る西田を確認したあと、その進路に向けてロングレンジの肘打ちを入れた。後半の古賀のイエローを基準とすれば、レッドが出てもおかしくない確信犯的な行為。だが、主審は笛すら吹かなかった。間近にいた副審も。
結果的にこの日最も悪質なチャージ(と思う)が流された時点で、この試合はボディコンタクトをそれほどとられないというひとつの基準が出来上がってしまっていた。その基準を示した主審を馬鹿正直に信じて、より激しく当たっていったアビスパに、カードが乱発されたのも当然だ。
かと思えば、再開後のアビスパのチャージにはほとんど笛は鳴らなくなった。この日の基準なら、アビスパにはあと2枚ほどイエローが出ていてもおかしくはなかった。

よくわからない。

わからないその答えは、ピッチを去るときにもちょこちょこと右後を振り返り、次の獲物を見定めていた黄色人種が知っているはず。


てか、わかりたくもない。
権威を振りかざす演出家のショーに用はない。
アビスパ側にも熊本側にも、不満だけが残る試合にはならなかったのは、出演者と観客が雨靄を吹き飛ばすほどに熱い魂をみせたからだ。
「俺達が福岡」の大合唱。しびれたね。おかげで少し風邪ひいた。


アウェイ熊本戦は11月10日。怪我の回復具合では水谷が復帰している可能性もある5ヵ月後。
今度は秋晴れのうまスタで、安定公平なジャッジのもと、堂々と勝ち負けつけたいもんだ。





 

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この記事へのコメントコメント一覧

>ネイビアンさん

コメントありがとうございます。

篠藤巧主審への怒りは別記事でアップしています。
本当に酷かった。

雨のレベスタ劇場開演(主審が主演)

僕は2010年からJリーグの試合をかなり観てきましたが、この試合ほど審判に対して不信感と不満をもったのは初めてです。

熊本は攻守に渡ってハードワークしていて非常に素晴らしかったし、北嶋選手や南選手の行為は敵ながら拍手を送りたかったし、城後がGKになった後のスタジアムの一体感など、一見さんにはまた観戦したくなる要素がたくさん詰まっていました。それをよりにもよって主審が台無しにしようとはね。

雨のレベスタは城後がよく目立ちますけど、今回まさかこんな形で目立つことになるとは思いませんでした。いや、こんな形で目立つのは二度とごめんですが。

水谷の代わりはたぶん神山でしょうけど、個人的にはそろそろ笠川が出番を獲ってほしいです。

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