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それでもヴェンゲルは“エモノ”を変えず~アーセナル対ミラン分析~

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 リーグ戦4連勝、しかもトッテナムとリヴァプールという強豪を立て続けに沈めたアーセナルは、その勢いのままミラン戦に臨むことが出来た。メルテザッカーやアルテタ、ベナユンら多くの選手が負傷している状況でも、選手たちは“不可能なミッション”の遂行を決してあきらめてはいなかった。失いかけた自信と誇りを取り戻したガナーズは、エミレーツで素晴らしい銃撃戦を展開することとなる。


 では、試合を見ていこう。両チームスタメンはこちら↓
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 前回対戦ではシステムのかみ合わせを修正できなかったことが大敗に繋がった。2nd Legでは、ヴェンゲルは4-1-4-1にするとかして修正を加えてくると思ったけど、蓋を開けてみれば従来通りの4-2-3-1。それにしてもチェンバレンのボランチ起用は驚いた。リヴァプール戦でもCMFをやっていたけど、ディアビの負傷によるスクランブルなものだったので。まさか先発起用してくるとは…といったところ。ただ、けが人多発のためヴェンゲルにも選択肢はなかったね。  一方のミランは、ボアテングさんがいなかった。代わりにトップ下に入ったのはロビーニョ。2トップはイブラさんと、最近パトより存在感を示しつつある(?)若手エル・シャーラウィだった。 ●何故クリーンシートを達成できたのか?●  布陣の上では特に変更点はなかったヴェンゲル。しかし、フランス人指揮官はこの試合でクリーンシートに成功している。一体アーセナルの守備にはどのような特徴があっただろうか? 1.ハイライン  アーセナルは高いラインを維持していた。それも簡単には下がらずオフサイドトラップを積極的に駆使する。中盤のコンパクトネスを維持していた。 2.積極的に飛び出すCB  コシールニーとヴェルマーレンは、ミランの2トップを積極的に追う。具体的には、イブラやエル・シャーラウィが下がってボールを受けようとする時、SBの裏を狙った時等だ。最終ラインに穴をあけることを恐れず、コシールニーとヴェルマーレンは攻めの守備を敢行した。 3ボランチの負担増  最も変わった点はここかなと。この試合、アーセナルのDMFは縦横に激しい運動量が求められた。(どちらかといえば)バイタルを守るという意識ではなく、サイドに前にと、時に大胆に動いて相手に突っかかる。そのハードワークっぷりは前回対戦の比ではなかったかなと。特に17番の金髪の人。  ソングは何度もシャトルランを繰り返していた印象だ。積極的に前に出て、相手にプレッシャーを与えていた。例えばロシツキがボメルのプレスに行けない、もしくはミランのCMFが下がってビルドアップに参加する、といったケースでソングはガンガン上がってボール保持者にプレスをかける。そのまま相手CBに迫ることも。  ここで地味に面白かったのはロシツキの動き。ソングが相手の攻撃を遅らせている間に、ソングとポジションを交換してDMFに入ることが多かった。相手最終ラインをチェックする時もあったけどね。ソングを上がらせるリスクマネージメントも、ヴェンゲルは計算していたと言える。  もう1人のDMF、チェンバレンはどうか。こちらは冷静なプレーをしていた印象だった。もちろん相手CMFに対し、ミドルサードでプレッシングも行う。それに加え、彼は最終ラインのカバーリングでチームに大きく貢献した。SBが上がればその背後を、CBが飛び出せば空いた位置に入って、ポジションの穴埋めを行う。SBとCBの間のスペースの補完も行っていた。18歳の青年は、地味にアーセナルの守備で効いていたといえる。先述したCBの2の動きも支えたね。戦術理解度の高い、頭のいい選手だ。宮市にとっては、強大すぎるライバルかもしれない。  アーセナルの守備をまとめると、積極的な中にも選手同士がカバーし合う高いチーム力がそこにはあった。上記したロシツキやチェンバレンだけでなく、ジェルビーニョは深い位置まで戻ってきてギブスを助けていたし、サニャとコシールニーはお互いカバーし合っていた印象。  ※サニャがCBのカバーに入ったシーンは少なかったが、前の試合から地味にこの動きでチームを助けていたので、敢えて書かせてもらいました。  時に前回対戦同様サイドで数的不利を作られたり、ギブスが不用意に背後を空けることもあったが、4失点の悪夢を振り払うだけの見ごたえのある攻撃的な守備だった。 ●アーセナルの攻撃●  総括すると、(これは守備にも言えたことだが)アーセナルらしかった。SBを積極的に攻撃参加させ、ピッチをワイドに使い、相手を横に間延びさせて中央にスペースを作る。  具体例として、右サイドの攻撃を挙げようかなと。特筆すべきはロシツキ。しばしばこの位置に侵入し、相手を脅かした。↓
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 このスペースを有効活用できるのはサニャがいるからこそ。彼が攻撃参加してエマヌエルソンを釣り出すことで、スペースが生じやすくなる。  ロシツキがこの隙間でボールを受け、そこから半FW化したウォルコットにスルーパスを送ったり、オーバーラップしたサニャにボールを配給するといった形でチャンスを広げる。サイドで数的有利を形成していたとも言えるかもしれない。  またペルシーもサイドに流れたり、空いたスペースに侵入し、相手を脅かした。  逆にミランとしては、V・ボメルがロシツキを捕まえ切れるかというのが鍵を握っていた。  またミランの左サイドが少し不安だったと言える。エマヌエルソンは何を守りたいのか分からない時があった。後半からは運動量も落ちたね。メスバフ君は明らかに実力不足。彼のディフェンスの甘さから、結果としてミランは2点を失うことに。  そのメスバフ君、攻撃においても存在感を発揮できず。ジェルビーニョに比べてウォルコットは守備にハードワークしないので、そこをつきたいところではあったが、フリーでボールを受けても印象的なプレーはできなかった。  ちょっとメスバフ君叩きすぎた。ごめん。  話しを変えよう。  ミランの対策であるが、アッレグリもただボメル任せだったわけではない。前半途中からエル・シャーラウィにサニャをチェックさせ、左サイドの補てんを行った。このエル・シャーラウィの献身的な守備は◎。SBにプレッシャーを与えるだけでなく、エマヌエルソンが帰り切れない時は、彼の代わりにCMF化してフォローしていた。エル・シャーラウィ程ではないが、似たことがロビーニョにも言える。前線の2人の時に見せるカバーリングは好印象であった。  (前回対戦では、ロビーニョの守備にあまり良い印象を持たなかったが、考えなおした方がいいね) ●1点が遠く…●  前半でCKからコシールニーが、ウォルコットのクロスからこぼれ球をロシツキが、PKからRVPがそれぞれ得点を決めトータルスコアを3-4と迫ったアーセナル。しかし、後半は1点か遠かった。個人的に最大の原因は選手層かなあ、と。ミランが立ち直ったことも大きかったけれど。正直シャマクとパク・チュヨンには期待しづらかった。アルテタやベナユン、ラムジーさらにはウィルシャーのうちせめて誰か1人でもベンチに居てほしかったところ。ミケル、ジェンキンソン、エジアクブ(?)、パク・チュヨン、シャマクという控えでは攻勢を強めることは難しかった。 ●感想●  ミランで思ったのは、この試合地味にメクセスがビルドアップで目立ってたこと。理由はアーセナルがボメルを塞いでいたから。主にロシツキがボメルをチェックし、無理ならペルシーやソングが見張ることもあった。  メクセスが中盤まで上がる→DMF釣り出す→空いたDMFの背後に2トップのどっちか下りてパスもらうとか印象的。ミランのボール運びの手段として、メクセスが上がったり、前線の選手がハーフラインくらいまで下りて、中盤で数的有利を築くというのは見ていて面白かった。   アーセナルは、明確なミラン対策を練ったわけではない。もちろん1st Legの時より改善点もあったけど。攻守において、あくまで自分達のスタイルを貫いた。そんな印象だった。ヴェンゲルは、銃を持ち変えはしなかったのだ。  個人で挙げるならロシツキ。完全にトップフォームを取り戻した。ウィルシャー、ラムジーがいなくとも、このチェコの指揮者がいればアーセナルは簡単に沈みはしないだろう。  …まあ、管理人はチェルシーファンなので、多少沈んでくれまいかと内心思っているのは内緒(笑)とりあえず、今度はチェルシーが意地を見せる番だ。ぶっちゃけアーセナルよりもチーム事情は悪いが、頼むよディ・マッテオ。




2つ目の図で、選手の動きを書き足しました。ファン・ペルシーとジェルビーニョです。

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この記事へのコメントコメント一覧

りめっとさんへ

初コメありがとうございます。
嬉しいコメント重ねてありがとうございます!思わずテンションあがりますね(笑)

今のアーセナルはサニャとロシツキが非常に効いてます。ペルシーは言わずもがなですねwサイドを使って中央にスペースを作る→そこをつくっていうアーセナルの得意な攻撃が頻繁に見られるようになりました。…恐ろしいです苦笑

それでもヴェンゲルは“エモノ”を変えず~アーセナル対ミラン分析~

初めてコメントします。実はアーセナルファンです。
…が、こちらのブログでのアーセナルの戦術等の解説がとてもわかりやすくて、よく覗かせていただいています。

ヴェンゲルさんは試合では戦術についてあーだこーだという指示を選手にあまり出さないと聞いていたので、「へー、そんな考えだったのか…!」と意外かつうれしい驚きでいっぱいです。

チェルシーファンなのに他チームへのリスペクト溢れるフェアな視点での解説が、純粋にサッカーをよくわかるようになりたい自分にはとても心地よいです。

これからもお邪魔します。

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チェルシーとジョー・コールが大好きな新社会人。

サッカーライターを目指していたのだけれど、色々考えるところもあり今はIT系の会社で働いております。
社会人になってサッカーに割く時間が減ってしまいましたが、何とかチェルシーと日本代表は追っていきたいなあと考えているところです。


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