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いかに白鳥は美しく舞ったか~スウォンジー対アーセナル分析~

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スウォンジー対アーセナルの一戦。昇格組対プレミアトップチームの対戦だけあって、大衆はガナーズの勝利を予想していた。あるオッズではスウォンジーが5なのに対し、アーセナルが1.83。ウェールズの地といえど、スワンズの劣勢は変わらないと踏んでいたようだ。

さしずめ「白鳥が、銃撃士を倒せるわけがない。」といったところか。
(※白鳥はスウォンジーの、銃撃士はアーセナルの愛称)


しかし、スウォンジーは大方の予想を裏切った。白熱したシーソーゲームをやってのけただけでなく、勝ち点3をももぎ取って見せたのだ。多くの賭博師を悲しませたことだろう。

果たしてこの昇格チームの勝利は偶然か?否、スウォンジーは内容においても決してガナーズに引けをとらなかった。彼らにはとてもプレーオフからプレミアの舞台にのし上がったとは思えないような、パスワークと組織的な守備があったのだ。ロジャースという青年監督の下、白鳥は力強く、且つ華麗にプレミアリーグで羽ばたいている。




両チームスタメンはこちら↓

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●アーセナルの守備●
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ちょっと悩んだ末に、こう図示してみた。べナユン、またはラムジーがペルシーと協力してCBにプレスをかける。ペルシーがGKをチェックすれば、WGがCBをマークする等して分厚い前プレを行っていた。 繋ぐチームであるスウォンジーに対し、プレッシングをかけるのはセオリーである。 しかし、スウォンジーも引かなかった。プレスによりボールをロストしてしまうこともあったが、それでも屈さなかった。決してグレアムの高さに依存することはなく、あくまで繋ぐスタイルを曲げなかった印象だ。真っ向勝負を挑んだロジャースの姿勢たるや潔いものがある。 それを示すのが前半27分時点での支配率。なんとアーセナル相手に60%を上回っている。ロジャースの作り上げたスタイルが、プレミア屈指のアタッキング・フットボールチームからボールを取り上げたことを示す紛れもない証拠だ。いかにスウォンジーはボールポゼッションでアーセナルを上回ったのか?この記事の本題に入っていこう。 ●スウォンジーの特徴~パス成功率85%を超える理由~● 1.動いてボールを受けるプレー 特に中盤の3人に当てはまる。彼らは常にスペース、アーセナルの選手の間を常に狙っていた。パスサッカーをしているが、そこにはマークをはずす各選手の運動量、モーションによる裏打ちがなされていると言えるだろう。 だからこそ、スワンズはアーセナルの前プレをかいくぐることができた。かいくぐると、次に何が起きるか?アーセナルの守備構造を思い出していただきたい。ガナーズのMFの1人はDFにプレスをかける為、当然スウォンジーは中盤で数的有利を形成することができる。つまりスワンズは一気に相手の懐深くに飛び込むことができるのだ。深くまで攻め込まれたアーセナルは、ソング頼みになってしまうことが多かった。 2.バックパスの確保 先述したスペースを狙う動きの1つであると言えるかもしれない。スウォンジーの攻撃を見ていると、ボールを持つ選手に対し、後方で味方がパスに備えているシーンが目立つ。これにより、ボールホルダーは緊急脱出経路を確保。安易なボールロストを回避することができるのだ。 個人的に、この試合でのスウォンジーとアーセナルのバックパス本数のデータが知りたいところである。 3.CBの攻撃参加 CBも積極的にボールを運び、中盤に介入する。コ―カーはサイドの深い位置までオーバーラップし、クロスをあげる等攻撃でも大きな貢献を果たした。 4.守備に繋がる分厚いサイド攻撃 先述した1,2,3の項目も一部含まれる。これがロジャースの仕込んだ要の戦術だったかもしれない。まずスウォンジーの攻撃比率に着目すると、両サイドとも中央より高いパーセンテージを誇る。中央突破ではなく、サイドアタックから崩すのが彼らの主なスタイルであると言えるだろう。例えば右SHのダイアーがボールを保持した場合、他の選手はこのように動いていた↓
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トップ下のアレンはミケルの裏、ソングの脇のスペースを狙ってサイド攻撃に参加。同様にブリットンもダイアーの横か後ろにポジショニングする。ランヘルはダイアーを追い越すか後ろでフォロー。コ―カーもバックパスを受ける為頻繁にサイドに顔を出した。選手が密集して、分厚いサイド攻撃を行っていることが見て取れる。 その為当然アーセナルの選手も同サイドに傾く。その結果、今度はサイドチェンジが有効になってくるのだ。 バックパスの経路を確保しているのは、素早く展開する為でもあると言える。あくまでグラウンダーのパスで、確実にサイドチェンジを行っていた。 SHがダイアーとシンクレアという突破力のある2人を配置しているのは、サイドチェンジをより有効に活かす為でもある。サイドチェンジ後ボールが渡ったサイドにおいて、確かに敵の数が少ないが、その分味方の数も少ない。SHの個人技、突破力が求められるのだ。 尚且つ特徴的なのが後述する内容である。サイドから密集して攻撃するということは、守備においても有効的なのだ。要は選手同士が近い距離で攻撃を行うことで、ボールロスト後分厚いプレスをかけることができる。相手も、選択肢の多い中央ではなく、サイドでボールを持つのでどうしても窮屈になってしまう。 アーセナルの前プレをかいくぐり、分厚いサイド攻撃からボールを懐深くまで運ぶ→サイドチェンジするか、そのまま攻めきる→ロストしても素早く厚いプレッシングで相手からボールを奪う→カウンターに繋げる、ポゼッションも上がるという一連の流れをロジャースは作り上げていた。 結果、スワンズはガナーズからボールを奪取することに成功したのである。 57分のダイアーの得点は、理想的だったと言えるのではないか。高い位置でアレンがラムジーからボールを奪い、抜け出したダイアーへパス。根元に入った為窮屈な姿勢になったダイアーだったが、見事なシュートでネットを揺らした。プレッシングが機能したからこそ、生まれた得点である。 尚、今回の分析は他のフォロワーさんとの意見交換の中でより明確に見えてきたものでもあった。ツイッターを通して、こんな見ず知らずのサッカー未経験者の戯言に付き合ってくれた方々に改めてお礼を申し上げたい。自分自身とても勉強になったし、また1つサッカーの魅力を知ることができた。 ●ベンゲルの持ち出した2丁の銃~流れを断ち切る為に~● 一方のアーセナルである。ポゼッションをあげられなかった原因には守備にもありそうだ。まずジュルー。彼は前に釣り出されやすく、その為背後に広大なスペースを空けてしまうことが多かった。上手く受け渡せていれば問題なかったかもしれないが、残念ながらそうはいかず。16分、スワンズにPKを与えるきっかけになってしまった。もちろん原因はジュルーに限らず、上手くカバーリングができていなかったメルテザッカーにもあるだろう。この点で、相棒のコシールニーとこのドイツ代表DFには大きな差があった。 左SBのミケルもダイアーのスピードの苦戦していた印象だ。尚且つ、途中からアルシャビンが守備に帰ってこないシーンが見受けられるようになり、ミケルの負担が増していた。もしかしたらアルシャビンはカウンターの起点となる役割を担っていたのかもしれないが。前半途中からミケルがダイアーを後方に任せ、右SBのランヘルへとプレスに向かうシーンがあったことには違和感を覚える。それでもコシールニーの見事なカバーリングとソングのフォローで急を凌いだ。 尚、ウォルコットもアルシャビン同様、守備をしていないシーンが見受けれた。 先述したように、スウォンジーは分厚いサイド攻撃を行う。アーセナルのWGの守備力というのが、改めて浮き彫りになったと言えよう。 後半になると、特にべナユンが守備に戻り切れず、ピンチを迎えるシーンが多発。チーム全体としても、ボールロスト後切り替えが遅く、スウォンジーに深くまで運ばれるシーンが目立った。運動量でもスウォンジーに劣っていた印象である。 というわけで、だ。ベンゲルはこの鬱陶しい白鳥を打ち落とすべく、2丁の銃を手に取った。レジェンド・アンリとロシツキである。べナユン、アルシャビンとの交代。時間は63分を経過。1-2のビハインドを背負う状況であった。 ベンチに下がった選手についてだが、べナユンは運動量の低さを露呈しただけ。アシストで復活を匂わせたアルシャビンも、その後ボールロストを繰り返すだけだった。やはり“錆び”は否めないか。 ちなみに、交代後はフォーメーションもこのように若干変更した。↓
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やはり復帰したアンリに注目がいくところではあるが、個人的には同時投入されたチェコ人のプレーの方が印象的である。 ロシツキの投入は、アーセナルの支配率向上に繋がった。彼は低めにポジショニングしてプレスを回避。プレッシャーの少ない状況でパスを受け、良質なボールを前線に供給する。ロシツキが下がって受けることで、スウォンジーの選手が釣り出され、DFとMFの間にスペースが広がる。そこにアンリ、ペルシー、さらには上がってきたラムジーが侵入していった。 その他にも、威力のあるミドルシュートでゴールを脅かす等、存在感を発揮。途中出場ながらスウォンジーに多くの脅威をもたらした。 勝ち点を得る為に一刻も早く点が欲しい。そんなアーセナルの状況に流されて前掛かりにならず、後方で落ち着いたゲームメイクを披露したロシツキ。彼の投入と、スウォンジーの選手の疲れが重なり、ようやくアーセナルにもらしさが戻ってきた印象だった。 ●試合の結末● 流れを引き寄せたアーセナル。それは最終的なポゼッションがイーブンだったことからも分かる。 実際69分にはウォルコットのゴールという形で身を結んだ。 しかし、直後にグラハムに得点を許すと、再び追いつくことはできず。終盤にはチェンバレンを投入し、4-4-2に変更。久々に蘇ったアンリとV・ペルシーの2トップだったが、MFを1人削ったことで、中盤の数的不利を招いてしまった印象であった。 結局試合は3-2で終了。MOMは得点に絡んだダイアーであったとさ。 ●感想● 今までスウォンジーの守備はリトリートがメインで戦ったいた印象だったので、今回の積極守備には少なからずインパクトを受けた。アーセナル相手にやってのけたのだからなおさらである。ちなみに、チェルシーはできなかった。スワンズは自分が見た試合だけたまたまリトリートしてたのだろうか。 ダイアーは好印象な選手。守備でも積極的に中盤のフォローに行っていた。近々ビッククラブに移籍する可能性は高い。ブリットンとアレンもいいね。 アーセナルは先制点のようなシーンをもっと作りたかったはず。マッチアップする中盤において、シャビンのポジションレスな動きが、中央で数的有利を作ることに繋がり、それが得点を生んだわけで。もっとウイングは中央に介入してもいいんじゃないかと思った。でもジュルーが上がらないから、ウォルコットがしてもあんま意味ないのか。ならやっぱりこの試合のキーマンはアルシャビンだったのかもしれないね。 ラムジーは失点に繋がるミスをしてしまい、責任重大である。特に2失点目のボールロストはいただけない。彼は動きは面白いのだけど、ボールを持つとレベルが1つ落ちるイメージ。ところで、ウィルシャーの復帰はまだなのだろうか? 後ロシツキはなんであんまり使ってもらえないのか疑問でした。 最後に、マクエクランがスウォンジーにレンタル移籍します。このチームでフルで働けるなら本物。スワンズでは攻守においてハードワークが求められるので。ブリットン、アレンと魅惑の中盤を形成してほしい。




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サッカーライターを目指していたのだけれど、色々考えるところもあり今はIT系の会社で働いております。
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