2004年02月25日

白球の視点 第135回

 一、ホームランを打った打者のベンチ前での出迎え禁止、一、投手は早めにかまえて投球間隔を短くしろ、一、場内アナは次打者のコールを早めに、一、攻守交代はダッシュで、一、打席に向かう打者のテーマソングを短縮しろ。
 
 巨人・堀内監督の「3時間ゲームのための具体案」。賛成だ。巨人系列のスポーツ紙が「非情禁止令」などと大見出しを掲げていたが、この”五か条”を「非情」という表現で、いかにも選手に同情するような甘い感覚でいるから、いつまで経っても選手の”ノロノロ、ダラダラ”習慣が治らないのだ。テーマソングが短くなるくらいで、なにが「非情」なものか。たとえば松井秀喜がいた頃のゴジラの主題曲だって延々と流すのではなく、出だしの部分だけでけっこうムードは盛り上ったではないか。
 
 この”五か条”に関連していつも思っていたのは、堀内監督も言及していたようだが、大きくリードされている”負け試合”の終盤、それこそ”焼け石に水” の1点ホームランを打った男にまでベンチ前に出て笑顔でハイタッチなどしているシーンほどムカムカしたものはなかった。まして、まだ接戦中のそれ以前に走者を置いた得点チャンスに凡打した男が終盤に1点くらいとって、一体、なにをはしゃいでいるのか、そしてそれを”祝福”している同僚の、なんという”甘ちゃん姿勢”であることかと一種の怒りをもって見ていた。あんなに無駄な時間はないのだ。堀内監督、よくぞいった。
 
 「攻守交替のダッシュ」にしてもそうだ。ヤクルト・稲葉の攻守交替時の全力疾走に対する神宮球場スタンドの拍手を見よ。あれは見ていて本当に気持ちのいいものだ。稲葉に出来て巨人の選手に出来ないことはない。堀内監督は「7割のダッシュ」などと遠慮がちにいっているようだが「全力疾走」と言い換えてほしいところだ。もし野手全員が、それを実施したらチームのイメージはまるで変わってくるはずだ。
 
 そのむかし、「全力疾走の攻守交替」で話題になった高校野球チームがあった。「疲れないか」と質問した記者に、そのチームの監督はピシャリといった。「そんなことで疲れるような教育はしておりません」。

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2004年02月18日

白球の視点 第134回

 ふたりの若者が「次の松井稼頭央だ」と首脳陣にPRされ、「04年のキーマンだ」とまで持ち上げられていることに強い興味をもっている。それこそ松井稼頭央が抜けた穴を埋める大器といわれる西武の中島裕之と、その西武からオリックスに移ってきた伊原監督推奨の後藤光尊の両遊撃手のことだ。
 
 毎年のことだが、多くの人たちの眼が集まる注目のスター選手のことよりも、スプリング・キャンプでは、話題のルーキーではなくそれまであまり話題にはならなかったのに新たにグングン力をつけてきて新しいシーズンに活躍しそうな若い戦力を見ることが大きな楽しみのひとつだった。過去、よくファームの指導者に会って、その種の質問をして”○○を見ておいて”というアドバイスを受け、本当にその選手がスターダムにのし上がっていった例を何人も見てきた。
 
 それは”オレだけがその進境過程をじっと見ている”というひそかな楽しみになって(誰にもいわず胸の中でその楽しみを味わい続けているのは一種の快感でもある)いた。今度の中島、後藤両選手は両チーム首脳の”大宣伝”もあってすっかり有名になってしまったが、周囲の”大きな期待”というプレッシャーをハネのける闘志で乗り切ってほしい。
 
 特に最下位返上どころかAクラス入りを目指しあわよくば新しいプレーオフ制でリーグ制覇をさえ狙おうというオリックスにとっては谷、山崎、村松といったベテランのこれまで通りの働きなしではそういう夢は叶えられないだろうが(その前に投手陣の頑張りが必須条件だが)、一方で”若い力の台頭”もまた”旧来のチーム”に刺激を与える意味で上位進出のための大事な要件なのだ。
 
 西武の中島にしても同じだ。かって黄金期を謳歌していた頃に比べて、カブレラは別格として、打線はじぶん”小粒”になってきた。その上、打守走揃いパンチもある松井のあとを継ぐ打者の出現はこれまた必須条件だ。希望に満ちた環境ともいえる。
 
 自分で一軍レギュラーの座を目指して頑張っているつもりでも、すぐ次々に”上”に他チームから大物打者がやってくるチームの若者が可哀相になってくる。

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2004年02月12日

白球の視点 第133回

 いきなり私事で恐縮だが昨年暮れからちょっと体調を崩し、いまリハビリ中で”待ちに待ったスプリング・キャンプ地訪問”がかなわず、無念の日々を送っている。昭和30年代から2月といえば九州(新聞社の西鉄ライオンズ担当のときは一ヶ月間ずっと島原、ジャイアンツ担当のときはずっと宮崎)、遊軍記者になってからは四国はじめ各地を歩き続けた季節だったから、この”プロ野球スタートの季節”にチームがいない東京でテレビのスポーツ番組やスポーツ紙などでキャンプ地の動静を”垣間見ている”だけなのは、なんともつらい。

 「週刊ベースボール増刊」の「巨人70年史」の取材で久し振りに”V9監督”の川上哲治さん宅を訪れ長い話を聞いたあと、目的取材後の”自由談義”でそんな今年のスプリング・キャンプの話になったとき、川上さんが「落合監督に興味をもっている」と言い出した。スプリング・キャンプの形態は、実は各球団とも巨人のV9時代のやり方を踏襲してきていた。その”右へ習え”的の練習形式を落合新監督が数十年ぶりに打ち破った。一、二軍の区別なし、いきなりの紅白戦、主力選手の練習スケジュールは白紙で当人まかせ。

 「それぞれの選手の内から盛り上ってくる意識を技術に結びつけようとしているのだろうが、その技術向上が、勝利に向かってどのように心の連帯に結びついていくか」。川上さんは、そこに強い興味と関心をもっているという。V9野球の監督として自分が次々に打ち出した新機軸を、他球団が毎年のように真似していった頃には感じなかった新鮮味を感じたそうで、それがどういう結果となって現れてくるかという興味だ。

 キャンプ地から遠く離れて、マスコミ報道による”間接知識”でいうのだが、いろいろと”場外騒ぎ”のあったパ・リ-グ各地にもファンが例年より多くつめかけているようなのが嬉しい。なんのかのといわれるが、ファンは昨年までとはまたひと味違う”新鮮な野球”を見たがっていることだけは間違いがない。そろそろ疲れがたまってくる頃、あちこちから故障者情報も多くなってきたようだ。”どうか、体を大事に”と願いつつ、各チーム、各選手の動きに好奇心をつのらせているところだ。

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2004年02月04日

白球の視点 第132回

 もちろんTBS(東京)は見て一種の感動を覚えていた。イチローと松井秀喜の初の対談。それが「週刊ベースボール」の巻頭に活字になってあらためて読んで、これこそ、類い稀れな才能を持った男ならではの豊饒な世界だと再確認した。単なる打撃論、守備論、走塁論を超えたふたりのボキャブラリー豊富なやりとりに、ほんと、感じ入った。
 
 たとえば、イチローが松井の守備に関して「追っかけました、帽子とびました、髪がサアッてなびきます、これはダメ(略)、スライディングしました、さっと起き上がるんじゃなくて芝生をえぐってもらいたい」というような表現の要求、自分の走塁に関して、チームごとの「のぞみ」と「ひかり」と「こだま」別選手の比較などは、高度な話をしているのにわかりやすくて唸ったものだ。だからつい、”この男が解説者になったらーー”などと考えてハッとした。そのあとに、私たち報道関係者への痛烈な言葉があったからだ。
 
 とにかく毎日、報道陣のインタビュウに愛想よく答え続けて、ニューヨークの記者による「グッドガイ賞」を得た松井に「オレには遠い賞」といったイチローの、そのあとの言葉だ。「メディアの向こうにファンがいると思っているのは同じだよね。だから俺は(それを意識すればするほど)適当な答えができない。緊張感をもった関係でいたいし、メディアと選手というのはお互いが育てあうものだと思っているから。緊張感がほしい。いい加減なことを聞いてくる人もたくさんいるしね。それをいい加減に答えたくないし、受け流すことができない。それが僕の誠意の示し方。それでお互いが高め合っていくことが理想なんだよね」。
 
 ウーム、である。かってオリックス時代、それまでにこやかに答えていた彼が急にじっとこちらの目をみつめ黙り込んでしまったシーンを思い出した。そのときイチローはきっと”いい加減な質問にいい加減に答えたくなかった”のだろう。こちらもイチローのように”緊張感のある世界”の中で、彼らの緊張に満ちたプレーについて質問を続けなければならないのだと、あらためて我と我が身にいい聞かせたものだった。

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