2003年11月26日

白球の視点 第123回

 オフのリハビリをかねたトレーニングの時間がほしいという理由もわからないではないが、ダイエー(こと旅行に関するゴタゴタは一件落着したようだが)と阪神の「優勝記念旅行」に選手の不参加が目立つのが、どうも気になる。
 
 かっては、チームあげての大盤振る舞いの海外旅行といえば、他チームに大いに羨ましがられたものだった。もうずいぶん、昔話になるが、かってヤクルトが優勝したとき、親孝行で知られたホームラン打者・大杉勝男が老母の車椅子を押しながら老母にとって初めてのハワイ旅行、「なっ、優勝っていいもんだろう」と語り続け、ナインを感動させていた姿などを思い出す。
 
 1年間、野球のために家族サービスができなかった、でも家族の協力のおかげで野球に打ち込むことができ、優勝することができた、球団の費用で家族全員でたっぷり海外旅行を楽しむことができた、「よかったね」と大杉は繰り返しいっていたものだ。
 
 家族だけではない。1シーズン、体を揉んでくれたトレーナー、来る日も来る日も打撃練習相手に投げ続けてくれた投手、ブルペンで球を受けてくれた捕手、ケガをしないようにグラウンド整備に汗を流してくれた人たち、対戦相手のデータを克明に分析してくれたスコアラーたちーー1年間、チームを支え続けた裏方さんたちも、滅多にない海外旅行を楽しみにしていたはずだ。優勝のためにチーム一丸となった”みんな”が、日頃の苦労を忘れて海外旅行を楽しむ。それは単なる”遊び”ではない。そこでまたチームの一体感が盛り上がる。それを拒否する選手が多いというのは何故だろう。解せない。
 
 かって「オマリー一家」と呼ばれたときのドジャースのオーナー補佐で知られたアイクさん、生原昭宏さんから聞いたことがある。大エースも4番打者もみんな、万障繰り合わせて出かけた優勝記念のヨーロッパ旅行、「そこで各選手の奥さんや子供たちと知り合って仲良くなり、それが次のシーズンへの結束にどれほど有効だったか」と。
 
 一軍ベンチに入っている選手たちは、経済的にすっかり裕福になった。海外旅行などいつでもゆけるかもしれない。しかし、それでいいのだろうか。他人事ながら気になってならないのは私だけだろうか。

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2003年11月19日

白球の視点 第122回

 「ゴルフに出かけるとき、ドライバーだけ持って行きますか。アイアンもパタ-も必要でしょう?」といったのは、わざわざ「批判ではないが」と前置きした巨人・桑田真澄投手の、最近の巨人の補強戦略への”チクリ批判”。私はゴルフをしないので、こまかくはわからないが”大意”は、わかる。

 ペタジーニが、もう阪神の大独走になった後半戦になってホームランを連発、系列紙が「ホームラン王も視野に」などと書いたときは、たまらなく不愉快になったものだが、一説には10億円を上回るという巨額を払って”ヤクルトのホームラン王”を引っ張ってきてチームは勝てなくなったように、桑田投手のいう通り、「ドライバーだけでは、パターでキメるわけにはいかない」ということを、球団首脳はどうしてわからないのだろうか。小久保獲得の上にさらに近鉄のローズを獲ろうというのだから、しつこいが、あきれはてた上になお、書き続ける。

 「週刊ベースボール」12月1日号の豊田泰光さんのコラム「オレが許さん」によれば、豊田さんがよく乗る車の熱狂的な巨人ファンの運転手さんさえシラけてしまっているそうだ。巨人は、一時は、メジャー行きを決意する前の西武・松井稼頭央遊撃手の獲得にまで名乗りをあげたというではないか。遊撃・二岡をどうしようとするつもりだったのか。三塁には小久保と江藤がいる。二塁には、堀内新監督が”再起”を期待して主将に任命した仁志がいる。攻・守・走、当代きってのキレ者・松井稼頭央(大好きな選手のひとりだ)を、では、どう処遇するつもりだったのか。”さぁ、これだけの戦力を揃えてやった”といわれても堀内新監督だって困ってしまう。「野球」とはそういうものではないからだ。

 桑田投手の発言がスポーツ紙(関東版)に大きく報じられた日、「季刊ベースボール・マガジン」の「アメリカから帰国して見た日本のペナントレース」という企画で、ロッテー横浜ーメッツの小宮山悟さんと会って長話をしたとき、小宮山さんは何度も「バランス」という言葉を口にした。「一部分だけ突出してもチームの力は出ない。打・守・走のバランス、投手陣では先発・中継ぎ・抑えのバランス。アメリカでも日本でも同じことです」。 

 「鳥谷が阪神入りしてよかった」といったら、小宮山さん、「フ、フ、フ」と笑っていた。

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2003年11月12日

白球の視点 第121回

 巨人が近鉄を退団した(と、球団自身が発表している)タフィ・ローズ外野手を獲りに行くという(12日現在、まだ決まっていないが)。報道陣からそのことを訊かれた堀内新監督が首をかしげたというが、まったく首をかしげたくなる。もしローズが巨人のユニフォームを着たら、外野が左からペタジーニ、ローズ、高橋由の布陣になるというが、これでまた清水隆行や斉藤宜之が宙に浮く。出かかった戦力の芽が、こうしてまた摘まれてゆく。
 
 斉藤宜之は「ファームの星」だった。”オレたちも頑張れば、斉藤のように一軍公式戦の先発メンバーに名をつらねることができるんだ”という、ファーム選手の励みになる存在だった。それがまた出場機会を封じられてしまう。巨額を積んでペタジーニを獲ってきて優勝できなかったように、他チームの”巨大戦力” を次から次へと”わがもの”にして勝てなかったら、どうするんだ? 一体、どういうチームを作りたいのか、このチームの戦略が見えてこない。
 
 対照的に、中日の落合新監督は、就任早々から球団に「外部からの戦力補強はいらない」といい、「いまの戦力がもてる力をじゅうぶんに発揮してくれたら勝てる」と明言し、いまの秋季練習の内容を見て”ファームからの抜擢”を示唆している。それが、どういう形になって現れるか、いまから興味津々だ。
 
 さて、相変わらず妙なゴタゴタが続いている福岡ダイエー・ホークス。その後、たとえば「週刊朝日・11月21日号」の「球団社長の独占インタビュー」を読んでみても「小久保のプライドを守る」というが、まだ口の中にモノがはさまっているようで、「無償トレード」の意味などさっぱりわからない。
 
 もうずいぶん古い話になるが、かって南海ホークスの黄金期、それこそチームの中心打者・飯田徳治を国鉄スワローズに譲ったことがあった。そのとき、当時の鶴岡監督は堂々と言ったものだった。「球団は飯田君にボーナスを払えない。そこでトレードの見返り金をそっくり、飯田君にボーナスとして渡すことにした」のちに飯田選手本人から「あれは有り難かった」という”感謝の言葉”も聞いた。ナインも誰一人として文句をいう選手はいなかった。そういうものなのである。

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2003年11月05日

白球の視点 第120回

 ニュースが流れた夜、わが家にも「驚き」と「怒り」と「戸惑い」と「疑問」それぞれが入り混じった”悲憤慷慨”といった感じの、それこそパソコン設置以来最多のメールがドッと押し寄せてきた。
 
 「どう考えたってわからない。わけを教えて」。ダイエー小久保の巨人への無償譲渡のことだ。”わけを教えて”といわれても、王監督だって「どうしてなんだろう、何故そうなったんだという疑問がある」といっているくらいだから、私にわかるわけがない。想像はできる。推理はできる。
 
 例えば、いろいろと報じられているように右ひざ靭帯損傷の治療をめぐる対立とか、昨年までの選手会長としてさまざまな問題で球団と渡り合っているうちに積み重なった不満とか、「小久保がいなかったから優勝できた」とある幹部が発言したことを耳にしたからとか、そういう球団フロントへの不信感が引き金になったというようなこと。しかし、「球団フロントへの不信感」は、多くの選手に大なり小なり、あるものだ。それが何故、「無償譲渡」につながるのか。その点がどうにもわからない。球団に不満をもつチームの中心選手を他球団に譲る(過去そういうケースは、ときにあった)のなら、それ相応の”見返り”が当然だろう。しかも「無償譲渡」の相手が、こともあろうに戦力豊富、資金潤沢の巨人とは、わからない、わからない。
 
 11月5日付け毎日新聞朝刊の特集記事によれば「球団売却問題絡み 渡辺オーナーに返礼?」(見出し)という見方もあるというが、そんな”みえみえ”のことをするだろうか。それこそファンを愚弄している。テレビ画面には、両眼から涙が流れる若いオーナーの顔がクローズアップされた。青山学院大の先輩ー後輩の間柄のオーナーは、特に小久保が可愛くてたまらなかったという。その涙の意味は何だ。悔しさと悲しさの涙としたら、そうまで悲しくて悔しいことを何故しなければならなかったのか。わからない。いまからでも遅くはない。球団はファンにキチンとした説明をする義務がある。
 
 松中が「ふざけるな」と怒ったというが、いまもっとも恐れるのは、せっかく「日本一の座」を総力でかちとった福岡ダイエー・ホークス選手たちの気力の萎えである。小久保の故障離脱で川崎が台頭してきたように、王監督の檄ではないが、「先輩を越える選手よ、出よ」と祈るしかない。

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