2003年10月29日

白球の視点 第119回

 タイガース・ファンが、日本シリーズで敗れてもなお、去り行く星野監督に「夢を見させてくれてありがとう」といい、選手に対しても”うらみつらみ”をぶつけることなく「よくやった」と拍手を送っている姿を見てホッとした。日本シリ-ズで負けたことによって「長丁場のペナントレースでの優勝が忘れられてしまうことがもっとも辛い」とは優勝チームの監督がよく口にする言葉だが、今年のタイガースの場合は、そうではなかったことが、いい。それだけペナントレース中の熱闘がファンの心をつかんでいたということだろう。よかった。
 
 だからというわけではないが、私は、いろいろな意味で、日本シリーズで福岡ダイエー・ホークスが勝ってよかったと思っている一人だ。日本シリーズを制覇して一夜明けた朝の経済紙の一面トップが「ダイエー福岡事業 主力行支援で再建」(見出し)であったように、本社を含めた経済問題で揺れ続けた日々、ホークスだけは若い力でグイグイと伸び、連日満員のスタンドで福岡市民も力いっぱいの後押しをした。「優勝記念セール」もこれまでにない売り上げを記録したというし、ホークスの優勝が、どれほどイメージをよくしたか、計り知れない。野球のグラウンド上での力強さ、逞しさとそれを支援するファンの熱気に、あらためて「野球と市民生活」、「野球と都市文化」の強い結びつきを感じたものだったし、その上での日本シリーズ制覇だったから”よかった”と思ったのだった。
 
 もうひとつ、パ・リーグのことがある。今度の日本シリーズの「テレビ解説」でも感じたことだが、たとえば岡本克道投手の熱投について「意外」という表現をしていた人がいてハラがたった。この人は、ペナントレース中でも大事な場面で”意気に感じて”力投を続けていた岡本投手を見たことがないんだろうと思った。
 
 そんな例を出すまでもなく、昨年までの3年間、日本シリーズではセ・リーグ・チームの圧勝が続いていたこともあってか、どうもパ・リーグを”下”にみてような気配が感じられた。今度のダイエ-の力感溢れる野球が、そういう風潮を吹き飛ばし、「100打点カルテット」だけでなく、川崎宗則や鳥越裕介や村松有人らのハッスル・プレーなどをクローズアップした。
 
 いまだにチョロチョロと飛び出てくる「1リーグ論」がある。とんでもない話で、大の2リーグ制論者である私としては、その意味でも福岡ダイエー・ホークスの勝利にホッと胸をなでおろすのだ。

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2003年10月22日

白球の視点 第118回

 昼はワールド・シリーズ、夜は日本シリーズ。「アメリカのプレーオフがすばらしい試合の連続だったので、”ああ、野球ファンでよかった”と至福の日々を送ることができた」と大阪から感激の電話がくれば(純パの会の小川さん)、夜はニューヨークから松井のバッティングに関するメールが入ってきたりする(ゴルフ評論家の西島さん)。昭和30年代初頭の、いまなおさまざまなエピソードが語り継がれる西鉄ー巨人の対決から日本シリーズを見てきた身としても、アメリカと日本の野球シーズンのクライマックスを同時に見ることができるなんて、まさに”至福の時”だ。
 
 それにしても松井秀喜は、すごい。第1戦に負けたムードをガラリと変えた第2戦1回裏の3ランに、トーリ監督ではないが、すでに”リーダー的貫禄”さえ感じたといっても決して大袈裟ではないだろう。オソレイリマシタというしかない。「ぼくのホームランで少年たちが元気づけられるとしたら、それが嬉しい」というセリフも自然で、この選手の”大きさ”を改めて感じたりもした。
 
 チャンピオンシップ・シリーズから各選手のプレー以外の話題も多く、そちらのほうも楽しめた。ひるがえって、日本のほうはといえば、リーグ優勝が決まってから長い長いブランクのあと、いよいよ”さぁ、これから”というときに冷水を浴びせかけられたような「阪神・星野監督の勇退」報道。星野監督の体調を考えれば「今季で勇退」はやむをえなかったにしても、日本シリーズ直前の報道だけは、なんともシラけた。阪神の球団代表は日本シリーズの主催者であるコミッショナーに詫びたというが、せめて”手に汗握る熱戦”でシラけ気分を吹き飛ばしてもらいたいものだ。
 
 日本では各球団の秋季練習も始まった。それぞれのチーム、それぞれ山積する課題を抱えての再出発だが、ここにきてまだ新しい監督も決まらず、「秋季練習スタート」といっても十数人しか集まらなかったという千葉ロッテ・マリーンズはいったいなにをしているのであるか。こういうチームこそ、どこよりも緊張感をもって再出発に向かわなければならないというのに、歯がゆいったらありゃぁしない。

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2003年10月15日

白球の視点 第117回

 日本シリーズ直前の、連日、出場両チ-ムに関するにぎやかな情報が満載されている新聞のスポーツ面のすみっこに小さく、2、3行で報じられている各球団の「戦力外通告」記事を見るのは辛い。中には入団時、「将来の投手陣を背負って立つ大器」とか「4番打者候補」などといわれた選手もいる。「戦力外」と通告されてもなお野球への未練断ちがたく、これから次々に行われるであろう各球団のテストを受けて再起へ望みを託す選手は今年も多い。自由契約から他球団のテスト合格、一軍公式戦出場で再びスポット・ライトを浴びた選手もこのところよく出現してくるから、よけいだ。
 
 オフになると、そういう選手とかコーチを解任された人たちの訪問を受けることがある。”再起の道”へ、なにか手がかりをつかみたいからだが、ときに、それまで在籍していた球団、チームへのうらみつらみを延々と語り続ける人もいる。私は聞くだけ聞いてから「もう外部に向かって、あまりそういうことをいわないほうがいいよ」とアドバイスすることにしている。今季は、まだそういう人がいないのでホッとしているところだ。
 
 日本シリーズに出場する両チームとヤクルト、近鉄を除いて、各チーム、コーチ陣の顔ぶれもずいぶん変わった。ファ-ムの監督、コーチ陣の変容を眺めていても”あ、こういう人と人のつながりだったのか”と、あらためて球界地図の一端が見えてきて興味深い。久し振りに”ユニフォームの世界”に復帰した人も、新しく指導者になった人も、いまは初めての役割を果す準備であれを考えこれを考え、気ぜわしいことだろうが、指導者全員に是非、頼みたいことがある。
 
 巨人・堀内、中日・落合両新監督が話し合ったわけでもないのに、ほぼ同時に抱負として述べたこと。「複雑な野球はいらない。投げ、打ち、走り、守るという野球の原点を踏まえたシンプルな野球をやりたい」ということだ。もっとも落合監督にいわせれば「それが一番むずかしいことなんだけどね」ということになる。いたずらに長時間の”ダラダラ試合”ではない”迫力ある野球試合”へ選手たちをどう動かしていくか、新コーチ陣たちの課題は重い。

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2003年10月08日

白球の視点 第116回

 約半世紀近くプロ野球を見てきたが、優勝を争うライバル・チームの、いってみれば”敵地”で、しのぎをけずってきたライバル監督から花束を受け、抱きしめられ「くじけるな、勉強せぇよ」と激励されて涙ぐみ、ペナントレースではときにヤジを浴びた”敵地のファン”にまで温かい拍手をもらった監督など、見たことがなかった。NHKの衛星テレビの画面を通じてだったが、特別な原監督ファンでもないのにジンとくるものがあったのは何故だろう。

 かって阪急と近鉄の監督をつとめ、ずっと下位にいるのが常だった両チームを優勝チームにのし上げた西本幸雄監督をペナントレース最終戦の両チームの対戦後、両チームの選手が一緒になって西本監督を胴上げしたことがあった。そのときも一野球ファンとして感動したが、今度は、そのときとはまた違う感慨があった。特にそれは、一塁側、右翼席側のタイガース・ファンの巨人・原監督への温かい拍手と激励の声にあったように思う。巨人V9時代の最後のシーズン、優勝を賭けた最終戦で阪神が敗れたとき阪神ファンがグラウンドに乱入した時代に比べて、なんと”成熟したファン”になったものかとテレビ画面に見入ったものだった。素晴らしい場面を作ってくれた星野監督にも感謝したい。

 巨人の「原内閣」のコーチ全員が総辞職するのだという。それぞれの事情があるのだろうから、第三者としてその進退についてとやかくいうことはできない。しかし、あえていいたいのは、本拠地・東京ドームでも「巨人ファンへの挨拶」がなかったのに、あの甲子園球場での”タイガース主催”の感動的なセレモニーとか”ライバル球場”での原監督の心のこもった挨拶、そして全コーチ辞任というような現象を、巨人球団幹部、特に渡辺オーナーはどんな思いで見ていたか、ということだ。

 おそらく”心、穏やか”ではなかったはずだ。こういう事態になってしまったのは、どうみても巨人球団幹部のそそっかしい対応にあると私はみているが、そのことに関する”弁明”がほとんど聞こえてこないことがいらだたしい。

 堀内恒夫監督初め新スタッフの苦労も、球団幹部は身を挺して支えてやらなければならない。そういうことをどこまで痛切に考えているのか。そのことも見えてこない。それも腹立たしい。

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2003年10月02日

白球の視点 第115回

 けっきょくはダイエー打線の猛打に屈して王監督の胴上げを見ることになったが、30日夜の、一度は0対3から6対3と逆転してダイエー・ファンで埋まったスタンドをシーンとさせた4回裏のロッテの攻撃(1イニング4連続二塁打、5二塁打のパ・リーグタイ記録)をみて、”これだけのチームがどうしてシーズン中に不甲斐ない負け方ばかりしたのだろうか”と思い続けた。

 ダイエー打線が爆発して13対6。7回終了後に神戸で西武が負けてもう”ダイエーの優勝決定”。しかしロッテ打線は最後まで手を抜かず9回裏になっても里崎、福浦、堀の3二塁打などで4点もとってダイエー・ファンをハラハラさせた。それだけの力を持っている。

 ダイエーが優勝を決めたとき、ダイエ-から32ゲーム差、4位のロッテにも16ゲームも引き離されてのダントツの最下位チーム、オリックスにしてもそうだ。「マジック1」のダイエーに対して2日続きの延長戦で連勝。いつも気が遠くなるような大量点をとられて負けていたのに、特に27日は、12対11とダイエーのお株を奪ったような勝利。30日の対西武戦も堂々の逆転勝利だ。ここも、それだけの力があるという証拠だ。

 なのに、両チームは、何故、こうもだらしのないペナントレースを送ったのか。新しくオリックスのゼネラル・マネジャ-に就任した元阪神監督の中村勝男氏は早くも精力的な動きを始めたようでどういうチーム作りをするのか、興味津々だ。西武退団を表明した伊原監督が神戸に乗りこんでともにチーム改革を進めるという話だが、それがどういう形になって現われるのか、その過程もまた、ヘタな試合を見るより興味深い。

 ダイエーと対戦する前日に山本功児監督の退団を発表するという、相変わらずチグハグな動きをみせたロッテは、まだどういうタイプの監督にするのか、方向を明示していない。複数の”噂監督”の名前ばかりが次から次へと出てくるばかりで、いったいどういうチームにしたいのかがさっぱりわからない。熱心で礼儀正しいと定評があるファンえおもちながら、恥ずかしい話だ。自民党の安部幹事長の起用ではないが、「サプライズ」を待っている。

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