2003年09月25日
「久し振りに故郷に帰ったとき、たまには母校のグラウンドに立って後輩たちの顔を見たいと思うこともあるけど、規則上、それはできないという。なにか、プロになったことで若い頃からの野球仲間からのけ者にされたような感じがして面白くない。どうにかならんものか」 これまで、プロ野球選手、あるいはすでに引退して時間をもてあまし気味のプロOBから、何度、そういうことを聞かされてきたか。
かって長嶋一茂さんが立教高ー立教大の野球部にいた頃、規定では、家の中でも父・長嶋茂雄さんは息子・一茂さんに打撃指導してはいけないことになっているというような極論を例に出して失笑したことがある。規定を文字通り解釈すればそういうことになるのだから、現実ばなれした話だった。
長い間、そんな状態だったから、今度の「プロ野球選手による高校球児対象のシンポジウム形式の野球教室開催」という知らせは近来にない明るいニュースだと受け取った。松阪大輔や井川慶が直接、高校球児たちと対面してさまざまな野球会話をかわして交歓しようという試み、待ちに待った企画といえる。
プロ野球選手会の提案に高野連のほうも快く応じたということだが、よくぞ踏みきってくれた。高校野球指導者へのアンケートでも半数以上が「プロOBのアドバイスを受けたい」と答えていたというが、もともとから底辺にずっとあった”本来の要望”が、プロ・アマの雪解け現象を察知した大きなうねりとなって高野連幹部にもプロ野球幹部にも押し寄せていった成果だろう。
シンポジウム形式による野球教室のタイトルが「夢の向うに」というのもいい。高校球児たちも”夢の向うに”技術の向上を見ている。「高校時代はもっとも技術が向上する時期。そういうときにぜひ、貴重なアドバイスを頂きたい」とは新しい高野連会長の言葉だが、これを機会に冒頭にあげたプロ野球選手の言葉のように、オフ、気軽に母校の後輩に声をかけてあげられるようになればもっといい。
そのためにもプロ側は、選手獲得にまつわる不明朗なことは絶対にしてはならないことが大前提であることは勿論だ。
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2003年09月17日
2位以下を10ゲーム引き離しても15ゲ-ム差をつけても星野監督は「眠れない夜があった」というから監督業というもの、大変なんだとあらためて思った。こちらにしてみれば2位以下を10ゲーム以上も引き離しての大独走状態だったんだから、夜は”高枕、高イビキ”と思っていたのだが、事実は逆で、「もしこれで優勝できなかったら笑いものになる。日本におれなくなる」とずっと考えていたというから、プロ野球の監督、並みの神経では務まらない。
星野監督の、甲子園球場で優勝が決まった夜のインタビュー時の言葉がすばらしかった。前日の「母の死」をひたすら隠して、あれだけの落ち着きと選手を讃え続ける姿に感動した。やれ「鉄拳制裁」だとか、やれ「蹴飛ばし興奮状態」とか、これまでいろいろいわれてきたが、優勝決定時の”赤星抱き締めシーン”に象徴されるように、選手への熱い思いは、各夫人の誕生日に花が贈られるこまやかな気配りによくあらわれている。私は、かって、「鉄の人」、「非情の人」などといわれもしたV9時代の巨人・川上監督がキャンプ地の宿舎で選手夫人にあてて「今日もご主人は元気でした」という手紙を綴っていたシーンを直接、目撃して、プロ野球チームの監督の内面を、考え直したことがある。選手も含めたチーム全体のハシバシへの気配りに成功した監督が優勝監督になるのかも知れないと思ったことさえ、ある。
今度の阪神の優勝も、何度も書くことだが、星野監督がゼネラル・マネジャーとして徹底してチーム全体の編成をやり直したことにあると思っている。かって南海ホークスの黄金期を築いた鶴岡監督も巨人の川上監督も、コーチ陣編成からトレード計画からなにからなにまで自分が先頭に立って動いた。鶴岡監督がシーズン中、遠征の旅行日のたびにアマ球界の有力選手の家を独自に訪問、選手の家族に親しまれていたことも、何度か同行して知っている。日本球界にまだ「ゼネラル・マネジャー」という言葉が広まっていなかった頃から、ちゃんと現実にやっていたのだ。
いま星野監督は、それを実践した。日本プロ野球の監督、”いまふう”はないようだ。
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2003年09月11日
まだ連日、30度を越す暑さの中で、日本のプロ球界はもう秋から冬への”人事の季節”に入った。
中日が山田監督に「休養しろ」という事実上の解任発表(スポーツ紙に「解任か?」という「?」つきの記事が出るやその日に遠征先での正式発表というのもめずらしいケースだ)すると、巨人は新しい球団社長と球団代表の就任発表。ヤクルトは昨年最多勝の外国人投手を解雇するというし、横浜は、いつも広島ベンチで山本浩二監督の横に立っている松原誠チーフ兼打撃コーチを招くという(松原コーチは大洋ホエールズOB)。
パ・リーグでもロッテやオリックスの監督人事をめぐってさまざまな噂がとびかっているし、監督が代わるということはコーチ人事にも飛び火するということだから、当事者にとっては落ち着かない季節だ。ましてや阪神が大量整理からはじまってフロントも現場も大幅な入れ替え人事がいまの好成績に至っていることを、どの球団も承知していて、強い刺激になっているから、”阪神、ひとり勝ち”は想像以上の波紋の広がりをみせている。
そういう中で、私はいま、オリックスと横浜に注目している。両球団とも、思い出すのもイヤになるであろう今シーズン、その悪夢を払いのけるためにどう建て直そうとしているのか、それが知りたい。落ちるところまで落ちたのには、ただ幹部のクビをすげ替えたくらいでは治りきらない深い傷があちこちにあるはずだ。どういう処方箋を書き、どういう手法で傷の手当てをしていくのか、その道程に興味がある。それによって、その球団が「プロ野球」というものをどう考えているのかみることもできるだろう。
両球団とも「日本一の座」についてから、大袈裟な表現でなく”アッという間の転落”だった。チャンピオン・チームが何故、こうも早く”弱小球団”になってしまったのか、いま抜本的な対策を講じないととりかえしがつかないことになってしまうことを関係者は肝に銘じてほしい。両球団とも、なかなかにいいプレ-をみせてくれる若い選手が台頭してきている。立ち直る”芽”が出てきているだけに、黙ってみていられなくなった。
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2003年09月04日
デイリー・スポーツ紙上で始まった「星野語録」が好評だったせいだろう、各スポーツ紙ともいっせいに阪神・星野監督の折りにふれての感想語録を連日、掲載するようになった。”そうだそうだ、その通りだ”とうなづいたり、”星野監督よ、それはちょっと違うんじゃないかな”と反発したりすることもあるが、連日、なかなかに面白い。タテマエ論がなく、いつも率直で、周囲に気兼ねしないホンネばかりだからだろう。
最近では、各紙8月31日付けの「今年で解雇することが決まっている外国人選手をシーズンの最後まで使うチームがある。あれが理解できない。おれなら、二軍から若い選手を連れてきてガンガン使う」という言葉など”その通り”とうなづいた代表例だ。
巨人のワンマン・オーナーも、早大・鳥谷選手の獲得に関する”ルール違反”発言で星野監督が怒っていることをスポ-ツ紙のその「語録」で知ったようで、デイリー・スポーツ紙の「星野監督熱血語録」によれば「星野監督が怒るのも当り前」と”謝罪”したという。「星野語録」の効果大、というところだ。
試合のことでいえば、早川健一郎外野手の起用もシビれさせてくれたが、金本知憲といい伊良部秀輝といい下柳剛といい、さらには片岡篤史、広沢克実と、今季の阪神ほど”外からの血”がいかにチ-ムの活性化につながったかを如実に示した例はちょっとないのではないか。
もうひとつは、コーチたち。ヘッドの島野育夫、打撃コーチの田淵幸一、投手コーチの佐藤義則、西本聖、守備・走塁の長嶋清幸、バッテリーの達川光男、さらに二軍にも投の山口高志、打の水谷実雄。みんな阪神以外の球団で実績をあげてきた錚々たるメンバーだ。その貪欲なまでの”補強”に驚いたものだが、これだけのチームあげての団結ぶりをみせられると、その”外からの血の補強”がみごとに実ったものと思わざるをえない。
それぞれ個性の強いコーチ陣をフルに駆使し、束ね、一方では「語録」を使ってファンと接し、球界にも”正常化発信”を続けるとは恐れ入るばかりだ。少々の大言壮語があっても、”なにいってやがる”という気にならないーーと書けば”お前も星野魔法にやられたか”といわれるだろうか。
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