2003年08月28日

白球の視点 第110回

 またぞろ、巨人のワンマン・オーナーが、他球団も垂涎の的の早大・鳥谷遊撃手に”巨人に入ってほしい”という願望意思を強く表明したかったにしても、いうにことかいて「巨人に入ればヤンキースに貸与してもいい」などと不遜な発言で波紋を広げている。まったくもって度し難いオーナーでは、ある。
 
 球団代表は「オーナーは野球協約は熟知している」といっているそうだが、ならば「選手契約の交渉権を獲得した球団は、その選手に対し、方法のいかんを問わず、他の球団に契約を譲渡することはできない」という野球協約第142条も知っているはずである。知っていてなお「鳥谷が(巨人に)入ってくれたらヤンキ-スにーー」と発言したとしたら、よけい悪質である。
 
 ヤンキースと巨人が業務提携しているという気安さもあったのかも知れないが、それにしても、日米の業務提携の契約には、日本球団の保留選手とアメリカの球団が「独占的、あるいは優先的に契約できる権利を含むことはできない」と明記されている(第14条)。つまり、現行規定では、たとえ巨人が鳥谷を獲得できたとしてもヤンキースに譲渡することはできないのだ。それを、”どうだ、いい条件だろ、だからウチにいらっしゃい”と誘うのは明らかなルール違反ではないか。
 
 阪神の星野監督がすぐ抗議したのは当然の話で、こういう問題発言を黙って見過ごしているほうがどうかしている。さすがに”これはまずい”と思ったのか、巨人の球団代表が「ポスティング・システムを変える必要があり、それはかねてから我々が主張していることであり、それがなくなったらという前提があっての話で、その前提が省かれて伝えられたから誤解を生んだ」と釈明したが、それならもっと早い時期からもっと声高に(もともと声はデカイのだから)「ポスティング・システムの改革論」を世間に訴え続けてくるべきだったし、「ポスティング・システム改革」という前提を省いて報道した側に厳重抗議すべきだった。
 
 いずれにしても”困ったオジイサン”であり、他の11球団が沈黙しているのがなんとも歯がゆく、情けない。

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2003年08月20日

白球の視点 第109回

 机の横のテレビをつけっ放しにして仕事を続けているのだが、夏の甲子園大会、例年のことながらきわどいプレーの連続でつい画面に見入ってしまって目の前の仕事が遅々として進まない。
 
 たとえば3回戦、19日の第二試合、富山商対鳥栖商戦、3対3の6回裏、鳥栖商の攻撃で一死二、三塁からのバウンドの高い三塁内野安打。三塁手が捕った位置がファウル・エリアであったこともあって、まさにきわどい内野安打。そこから決定的な3点が入った。またたとえば同日第四試合の小松島高対桐生第一高戦、1点を追う小松島高9回表の攻撃、一死一塁からの中堅へ抜けるかと思われた投手頭上へのライナー。一塁走者もソレッとばかり二塁へスタートをきった。それが、伸び上がった投手のグラブにスポリと収まって併殺で試合終了。
 
 平凡な投ゴロをかるく処理して悠々一塁へ投げたつもりの送球がフワリと宙に浮いたような高投になって、たまっていた走者のホームインを許し敗れた投手もいたし、走者をおいての会心の当たりが相手野手の地上すれすれのダイビング・キャッチにあって反撃の芽をつまれたシーンもあった。いずれも”ちょっとした差”だ。そういう”ちょっとした差”が重なり合ってトーナメント大会の勝敗を染め分ける。だから目が離せない。
 
 プロ野球の選手たちも、みんな、この季節になると、それぞれの高校時代を思い出し、遠い日の自分を語るとき饒舌になる。”きょう負けても明日からまた勝てばいい”プロのロングランに慣れた身にとって”きょう負けたら一巻の終わり”というトーナメント大会の厳しさを思い出し”われながらよくやったなぁ”と思うそうだ。
 
 夏の高校野球が終わるとプロ野球は秋の陣、と例年なら書くところだが、特にセ・リーグがとっくに”ペナント争い”が終わった感じになって、なんとも緊張感不足。阪神に大差をつけられたいま頃になって、巨人の主力打者が1試合に2本塁打して「タイトルが見えてきた」などといわれても”肝心なときに長期欠場してなにをいまさら”と興ざめだ。
 
 せめてパ・リーグ上位のつば競り合いに緊張感を期待するしかないか。

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2003年08月13日

白球の視点 第108回

 長い雨のあと8月中旬だというのに今度は秋を思わせる涼しさ。”早くも秋”というわけでもあるまいが、いまひそかに伝わってくるアングラ情報によれば、多くのチームが早くも来シーズンへ向かってのさまざまな動きを始めているという。ドラフト対策はもちろんのことだが、そういう表面的なことでなく、チーム構成の根本的変革を含むドラスティックな刷新案まで幹部の検討の対象になっている球団もあるときいた。

 “星野効果”らしい。巨人の渡辺オーナーが「ウチはどうして伊良部をアメリカから連れてくるというような発想がないのか」とボヤいたというが、阪神は昨年夏の急降下のときから、星野監督を中心に、いまにつながるチーム改革に本腰をいれて動き始めたという。”先んずれば人を制す”だ。

 巨人が今季の故障者の多さに驚き、来季は温暖の地でじっくり体を作りあげようということで、希望者も多い「グアム・キャンプ」を久々に復活させようというのも、来季に向けての準備ではあるのだろうが、「キャンプ地を変えるくらいでどれだけ選手の意識が変わるか」と疑問視している関係者の率直な話も聞いた。その人は「それより、ウン億円も投じた“巨額選手”ばかり集めても何故、勝てなかったのかという、もっと根本的な反省がなければならない」という”注釈”までつけていらだっていた。

 惨澹たる成績を続けている両リーグの下位チームは、それどころの話ではない。何故、こうなってしまったのか、球団幹部は深刻に考えなければならない。巨人の渡辺オーナーにあれだけコケにされて黙っているわけにはいかないだろう。会社が東京ドームに近いせいもあって私はいつもパ・リーグの試合があると出かけるのだが、見るも無惨な敗戦の中でも、何人か、終始、全力で懸命なプレーを続けている選手を見ると、涙ぐましくなってホロリとするときがある。チームをどう建て直すか、球団幹部はいまこそ真剣に考えるときだ。

 ここにきて、ダントツの最下位チーム、オリックスの本拠地球場に2万人、3万人というファンが足を運んでいる。ここまで落ち込んでもファンは“プロのプレ-”を見にきていることを、球団幹部は胸に刻みこんでほしい。

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2003年08月07日

白球の視点 第107回

 投手・木佐貫の代打に出て1球も振らずに三振した巨人・元木が、その闘志のなさを理由に即ファーム行きを命じられたというニュースを聞いたとき、正直いって、”なにをいまさら”と思った。
 
 阪神に20ゲーム差もつけられた4位で「最後までファンの声援に応えられるような力いっぱいのプレーを続ける」というチーム方針に反しているということだそうだが、意味はわからないではないが、どうしても”20ゲーム差まで放っておいて、いまさら”という思いが拭えないのだ。特に、このチームには。チーム改革への立ち上がりが遅すぎる。
 
 先週「日本プロ球界もゼネラル・マネジャー制採用の時期にきているのではないか」と訴えたが、その鋭い分析と的確な指摘に感心して長く愛読している産経新聞運動面の毎週水曜日付けのコラム「メジャーリーグ」が「明確な球団の責任体制」というタイトルのついた8月6日付けのコラムで最近のヤンキースとレッズの事例をあげ「GMなしの気楽な無責任体制の日本球界を、ふと思う」と書いていたことに共感した。
 
 ヤンキースの例は、松井秀喜にも優しく仲もよかった右翼手・ラウル・モンデシー放出劇。代打を出されて怒り、試合途中で帰ってしまったモンデシーをトーリ監督とキャッシュマンGMがピタリ一致した考えで、”オーナー寵愛の選手”の放出に踏み切った話。レッズのほうは、逆に「ワールド・シリーズ出場どころか勝率5割では」とGMも監督も、監督がつれてきたコーチもいっしょくたに最高経営責任者から解任されたという話。
 
 対照的な事例にみえて、実は、これがまったく同じ立脚点に立っているというところがミソだ。そして、コラムの筆者(球)氏(私は、実は、その匿名の筆者とは旧知の仲なのだが)は「グラウンドでの結果責任は、すべてチームづくりの頂点にいるGMが負う。そして、GMと監督とは一体であるべきもの」と書き続ける。
 
 いま日本プロ球界の両リーグ下位に低迷しているチームの中で、そこまでシビアに考え、いまから来シーズンの巻き返しに備えて再建策を具体的に考えて実施に移そうとしているチームはどれくらいあるのか。オーナーは吼えるが、球団代表はノラリクラリというところがほとんどではないのか。「責任者」はどこに?

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