2003年06月25日

白球の視点 第101回

 豪雨で試合中止になったあとも傘をさしたままスタンドに居残っているファンを見て、ズブぬれになって雨のふりしきる中、ダイヤモンドを一周してホームへすべりこんだタイガースの沖原、中村豊両選手の姿を夜遅いテレビ・ニュースで見て、遠い日、その種のパフォーマンスをはじめて見た夜のことを思い出した。

 まさか、そんな”ファン・サービス”があるとは知らなかった、もう40年ほども前のこと。西鉄ライオンズが2度目の”奇跡の逆転優勝”をした昭和38年(1963年)の夏、試合途中、突然、猛烈な雨に襲われた。長い長い中断。スタンドが「早くやれぇ」と騒ぎ出したときだ。いきなり一塁側ベンチから長身の男が飛び出してきて全力でベースをまわりはじめた。二塁ベースを蹴ってはスタンドに向かってバンザイをし、三塁ベースをまわってはまたスタンドに向かって笑顔で大声をあげる。スタンドはもう大爆笑。一気に場内のムードは和らいだ。
 
 ズブぬれになって走ったのは西鉄の4番を打っていたトニー・ロイだった。聞けば「退屈しているお客さんのために、アメリカではよくやること」だそうで、そんなパフォーマンスがあることを、そんときはじめて知ったのだった。
 
 24日のタイガースの試合は結局、中止にはなったが、電話で聞いてみると、トゲトゲしさはなく「みんな笑顔で帰った」という。同じ日の西武ドームでは、二死走者なしで西武・カブレラを敬遠出塁させたロッテ・ベンチの作戦に、左翼席のロッテ・ファンからもブーイングが起きた(東京・日刊スポーツ)そうだ。そのことを伝えた記事の大見出しは「そりゃないぜ」だったが、私もそう思う。
 
 いつかもこの欄で、昨年、巨人に大きくリードされた終回近く、巨人・松井に意味のない敬遠指令を出した横浜・森監督の作戦に大いに怒ったことがあったが今度の「二死走者なし」でのカブレラ敬遠にも「それでもプロ野球か」大声をあげたくなってくる。ロッテの山本監督は試合後、報道陣に「悪いの?」と逆質問したというが、そうか、高い料金を払って球場にきてくれたファンにも”勝負”を見せたくないのか。この「悪いの?」という逆質問に本音がのぞいているようでゾッとした。

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2003年06月19日

白球の視点 第100回

 17日の21対11という試合(オリックス-ダイエー10回戦)には驚いた。6月11日からの対巨人戦で19対11、10対2と大量点で勝ったヤクルトが14日からの対広島戦では逆に3対12、3対11という大量点連敗を喫したり、どうも大味に過ぎる試合が続き気になっていたが、17日夜の、5対10からの逆転での21対11のダイエー勝利には、もう”気になる”段階を越えてしまった。

 ずっと一般的には、マシンに代表される練習環境の整備で打者の強化に関する状況がどんどん充実してきたことにより打力アップが進み、「投手はただ投げる練習だけ」でなかなかその状況に対応できない、というような説明でいまの「打力優位」が語られている。しかし、一方では、15日の甲子園球場での阪神ー巨人14回戦のような緊迫した投手戦もある。あの試合の緊迫感はなかなかのもので、テレビの前で手に汗、握った。派手な打撃戦もさることながら、あの”ハラハラ観戦”も野球観戦の醍醐味といえる。ベテラン下柳とルーキー木佐貫の、味の違うピッチングを見ているだけで、一種の充実感さえ感じたものだ。

 そこで「21対11」とか「19対11」の試合のことだ。私は毎朝、前日の全球団の試合結果を投打の分野別に分けて記録ノ-トをつけているが、そういう試合の登板投手の記録を書き綴るだけでたっぷり時間がかかる。たとえばオリックスの牧野、土井、戸叶、徳元、萩原といった投手たちの連日といっていいほどの登板ごとの数字は書き込んでいるだけで悲しくなってくる悲痛な数字だ。看板になるはずだったアメリカ帰りの吉井やマック鈴木の不振が重なったとはいえ、投手陣整備はどうにかならなかったものかと歯がゆくてならない。

 「オレが許さん」の豊田泰光さんではないが、オリックスをなんとかしないとせっかくの上位3チームの緊迫の争いまでに影響する。打線は頑張っているのに投手陣がどうにも締まらない。ここは、豊田さんがいうように、いまなお元気に草野球で登板するほど”野球大好き”、”投手大好き”の宮内オーナーに”積極介入”してもらいたい。いまやもう自チームの復活のためだけではない。リーグ全体のためである。オーナーには、「がんばろう、神戸」の、あれほど魅力的だったチームを転落から救う義務があるとかんがえる。

posted by 田村大五 |00:00 | 第81回~第100回 | トラックバック(0)
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2003年06月12日

白球の視点 第99回

 イチローが8日、ニューヨークの対メッツ戦、1日2試合で6安打を放ったというニュースをテレビや新聞で見聞してあらためてその巧打に感心したが、一方で「ダブルヘッダー」という言葉を久しぶりに聞いて、思ったことがあった。

 私は昭和30年代の後半(1960年代初め)から、スポーツ紙の西鉄ライオンズ担当で福岡にいたが、当時、ダブルヘッダーはしょっちゅうあって、ときには昼の二軍戦もダブルヘッダーで午前11時から2試合、一軍公式戦もいつもより早めに第1試合は午後5時半試合開始で、それから2試合、ネット裏でスコアをつけながら観戦しているだけでヘトヘトになったこともあった。

 しかし、選手たちはけっこう楽しんでいた。昼間の二軍戦でも夜の一軍公式戦でも、疲れが見える選手は次々に交代、普段あまり出場しない選手が交代で出てきて”出番”を喜んでいたからだ。いまあらためて思い起こしてみても特に昼の二軍選手にしてみれば、そういう意味でこの「ダブルヘッダー」というシステムは嬉しいものだったのではないかと思う。そうやってめぐってきたチャンスに快打を放ったり、いいピッチングをして認められ、”上”へ上っていった選手も何人も知っている。

 観客にとっても同じ料金(いや、ちょっと高かったか。それにしても、それほど高くはない)で2試合ぶん見られるのだから好評で、1試合のときより、スタンドは埋まっていた。試合開始時間は早いが、仕事帰り、第一試合の半ば頃に球場入りして試合後半の勝負を楽しみ、第2試合をたっぷり見て帰るという観戦スタイル。あの「ダブルヘッダー」はいつ頃からなくなったのか、調べてみよう。

 パ・リーグが、またぞろ「マンデー パ・リーグ」を打ち切りにするとか、パ・リーグファンの私でさえ「妙な」といわざるをえない「妙ちきりんなプレーオフ」とか、いろいろ模索を続けているようだ。いまの上位3チームのツバ競り合いや、追うロッテ、日本ハムの健闘などけっこう面白い。それをもっと面白いものにしようということだが、「ダブルへッダー」だって考えていいのではないか。

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2003年06月05日

白球の視点 第98回

 それまで「北陽って、どんな学校?どんなチーム?」などといわれ、強豪チームひしめく大阪高校球界でほとんど無視されていたチームに22歳の若さで監督にに就任してから、伝統の野球名門校・浪商を破るチームにまで築き上げた前監督の松岡英孝さんを、定年後悠々自適の郷里・高知に訪ね、さまざまな苦労話を聞いて帰京したら、自宅に「嘘だといってよ、サミー」と題する”悲しみのメール”が入っていた。

 シカゴ・カブスの人気ホームラン打者、サミー・ソーサのバットの中に、使用が禁止されているコルクが発見され、退場処分になったという事件。対デビルレイズ戦で二塁ゴロを打ったときにバットが折れ、審判がバットの破片を調べたところ、コルクが仕込まれていたことが判明したのだという。

 「嘘だといってよ」という言葉は、1919年、「ブラックソックス・スキャンダル」といわれたホワイトソックスの八百長事件が発覚したとき、追放選手の中の一人、人気のジョー・ジャクソンが法廷に立つと、野球にロマンを求め続けていた少年がいったという悲痛な叫びとして知られる。

 メールをくれた焼津市の中野さんは98年、このコラムのタイトルをつけた「白球の視点ツァー」でメジャー・リーグ観戦に出かけたとき一緒だった人。ちょうど大きな話題になったマグワイアーとソ-サの迫力満点のホームランの打ち合いの真っ最中で、それを追いかける形のツアーとなって興奮したものだが、そういう経験があるだけに、中野さんにはショックだったのだろう。

 勿論、旅の途中で、そのニュースを知らなかった私も強い衝撃を受けた。あわててニュースを追ってみると、大リーグ幹部も言葉を失うほどの混乱、衝撃だという。それが、これまでのソーサのホームラン記録にも影響するかも知れないというのだからゾッとするではないか。

 私にしても「1球を大事にしよう」、「1球の怖さを知ろう」と若い選手に叫び続け、「1ミリの差に気をつけよう」とチームを作り上げてきた高校野球の指導者の話を聞いてきた直後だけに、いいようのないいらだたしさの中にいる。

 サミー・ソーサよ、「野球」とは、そんなものではないはずだ。人気のホームラン打者には、全世界の野球少年たちに本当のことを説明する義務がある。

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