2003年02月25日
西武の三井浩二投手に話を聞く「季刊ベースボール・マガジン」の仕事で高知に出かけたのだが、それだけで帰京するのがもったいなくて、翌日、高知東部球場のダイエーのキャンプ訪問、王監督にあいさつ、雑談中にこのコラムでも書いたルーキー和田投手の故障について監督じきじきに「開幕には間に合いますよ」といわれ、ホッと胸をなでおろした。
紅白戦で2年目の寺原隼人投手が主力打者のメッタ打ちにあった日、飛行機の出発時間が迫ってきて帰ろうとしたとき、またショッキングなシーンを見てしまった。
やはりルーキーの森本学内野手(大阪桐蔭高-福井工大-シダックス)が一塁走者のとき。俊足が看板の選手、リードも大きく、いかにも“走るぞ”といった雰囲気。そこに投手からの牽制球。頭から一塁ベースに突っ込み、戻ったそのとき、グラウンドにうつぶせになったまま、森本は立ち上がれない。担架で運ばれ、救急車が来るまでもがき苦しむ森本の顔を見ているのがつらかった。
右肩の脱臼。野球をやってはじめての経験だという。俊足、強肩、好打で一軍ベンチ入り目前。足に自信があるだけに首脳陣に“いいところをみせよう”と思ったのだろう。成功と失敗は紙一重のところにある“一瞬の魔”をみせつけられた感じだった。
翌日、東京のスポーツ紙を広げてもほとんど報じられていない“小さな事故”かもしれないが、前途有望の青年の“スタートの春”に襲ったアクシデントが与えるこれからの影響を考えると、心穏やかではなかった。
今年のスプリング・キャンプも大小さまざまな野球ドラマを生んでもう終わり、早くも実戦段階に入る。南から東へ一歩一歩“プロ野球の春”が近づいてくる。
沖縄で24年ぶりという巨人の試合には長蛇の列ができたという。公式戦中はナマの試合を見ることができない各地のファンは、この春のオープン戦が“ナマ観戦”の数少ないチャンス。心躍らせて待っているだろう。そういえば、高知で乗ったタクシーの運転手さんが、「せっかくキャンプを張ってくれているのに公式戦中はテレビで巨人戦以外やってくれないんだからつまらん」とボヤいていた。どうもこの種の話になると、どこへ憤懣をぶつけていいのか、困ってしまう。
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第81回~第100回 |
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2003年02月18日
ダイエー期待の和田毅投手が左肩うしろの筋肉を痛めてリタイヤしたという知らせにショックを受けた。なんでも肩関節のインナーマッスル(深層筋)の収縮とかで回復に時間がかかりそうだとか。スプリング・キャンプ中、こういうニュースが一番つらい。“黄金のルーキー・コンビ”といわれる新垣渚とのそろい投げ、松坂大輔との投げ合い、中村紀洋や小笠原道大との対決などなど、ワクワクする期待の中で待ち望んでいたのだが、こうなっては“楽しみ”は少々遅れたっていい、とにかくじっくり完治をめざしてほしいと祈るばかりだ。
“競い投げ”といえば、テレビの紅白試合中継で巨人の木佐貫洋、久保裕也両投手のピッチングを見たがタイプが違っていて興味深かった。お互い、かなり意識しているに違いない。これまで数えきれないほどのチーム内のライバルの言動を見聞きしてきたが、これからふたりがどういう動きをみせていくか、これも “見もの”だ。
“競い合い”といえば、今年も各チームとも激しいポジション争いが続いていてハラハラして見ている。三塁のポジションに限っただけでも、たとえば巨人の江藤智と斉藤宜之、たとえば阪神の片岡篤史と関本健太郎、たとえば横浜の古木克明とルーキーの村田修一。それぞれに大袈裟でなく“野球生命がかかっている”といってもいい正念場だ。江藤や片岡にはベテランの意地があるだろうし、斉藤宜や関本には“一流の域”への突破口という夢がある。こういうポジション争いがハラハラするのは、一方を“敗者”にしたくない気持ちがあるからだ。しかし、そこは勝負の世界、ケリをつけなければならない。スプリング・キャンプ中はそういう意味で非情の世界でもある。
横浜の古木は昨年の終盤戦からもっとも注目している打者のひとりで、今季はもう一本立ちが既定路線と思っていたら、山下大輔監督、その古木にあえて「ルーキーとは思えぬプロ向きの性格」と評される同年同期の村田を挑ませる作戦をとった。こういう“戦い”も興味津々だ。
……という見方で眺めると12球団どこも、まず“内なる戦い”にあふれている。怪我だけに注意を願うだけだ。
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2003年02月10日
友人のスポーツ紙の記者が訪ねてきていうには「今年の松坂大輔に注目、ですよ」。黙ってはいるけれど、このオフのトレーニングは相当なものだった。所沢でのキャンプ・イン早々の動きも自信に満ちていた、故障を含めての昨シーズンのプロ入り以来の大きな挫折、日本シリーズでの屈辱的な敗戦が彼には相当のショックだったようで、心に期するものがあると見た……云々。
私は、そういう友人の話を聞きながら頭の中で、別の投手群像を思い描いた。そう、いわゆる“松坂世代”と呼ばれている投手たち。ダイエーの和田毅、新垣渚(ああ、早く公式戦でのピッチングが見たい)、巨人の木佐貫洋、久保裕也、阪神の江草仁貴、杉山直久、広島の永川勝浩、もちろん今年から松坂の同僚になる長田修一郎を含めて、だ。
松坂の意識の中には、彼ら“松坂世代”のことが強くあると、私は見ている。高校時代、全国のトップに立った松坂は、今度は4年ぶりにプロの世界で彼らと投げ合う。“プロの先輩”として負けるわけにいかない、松坂と和田が、松坂と新垣が同じ試合で先発投手として投げ合うこともあるだろう。“プロ野球の先輩”として恥ずかしくないピッチングをしてみせなければならない。私は、そういう対決を待っていた。
1年目から期待通りのピッチングを見せてくれたのだが、私は、松坂が持って生まれた力と才能を100%出し切っていなかったとみていた。沢村賞に選ばれたとき(2001年、15勝15敗)、球史を飾った大投手たち選考委員が「これから先のさらなる飛躍を願って」と注釈をつけたように、まだまだ余力を残している感じだ。その“余力”が“松坂世代”の登場で爆発するのではないかという予感に、私はいま、ワクワクしているのだ。
このところスポーツ紙は、ニューヨークの松井秀喜の一挙一投足や、新しく日本プロ球界に登場した外国人打者が場外の店の瓦を直撃した“恐るべきパワー” 記事が目立っているようだが、そういうことだけでは“なにか”が足りない。“恐るべき松坂世代”が球界再活性化の起爆剤になることをひたすら願っている。
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2003年02月05日
「キャンプ・イン早々の頃が、一年中で一番、心安らかな日々だ」と、長い間のキャンプめぐりで監督やコーチの口からよく聞いたものだった。選手は新しいシーズンへの希望で生気に満ちている。「みんながよく見えるんだ」という。
それが、10日経ち、20日経ち、実戦的段階に入る頃になってくると首脳陣の頭の中の回路が複雑にからみ合ってこんがらがってくる。たとえば一軍メンバー入りぎりぎりのところにいる、力も似通っているA選手とB選手どちらを残すか、二者択一を迫られたりしたとき。情けをおいてファーム行きを宣告するのは忍びないが決断しなければならない。
「キャンプ終盤の休日、“オイ、ちょっと外でメシでも食いに行くか”などと声をかけただけでビクッと反応する選手がいる。こっちは激励するつもりだったのに“ファーム宣告を受けるのか”と思うらしいんだ」
2人のうち1人はファーム行き……と決める頃、レギュラー選手が故障したため2人とも一軍残留、それがきっかけでファーム行きだった方の選手がグンと浮上してレギュラーに定着した例もある。どこに運がころがっているかわからない。そういう意味では、キャンプの季節は“もうひとつの野球ドラマ”を演じている季節でもある。
キャンプ・イン直前に、正捕手候補の実松一成捕手の左手骨折が判明、手術した日本ハムで、キャンプの初日、練習開始後わずか25分、阪神から移籍してきた期待の山田勝彦捕手が右大腿部全治3週間、完全復帰まで6週間の断裂というアクシデント。さて、“さァ、捕手をどうするのか”と話題になった。一方で阪神の星野監督は、その日本ハムから移ってきた野口寿浩捕手を「大収穫」とほめそやしている。
双方とも、それで“よし”としたトレード。日本ハムのヒルマン監督も阪神からきた伊達昌司投手のピッチングを見て「すばらしい」とご満悦だったというから、それでいいのだが、ここはひとつ、残った荒井修光捕手をはじめとする日本ハム捕手陣の頑張りを見ていくしかない。“捕手をどうするのか”などという声を黙って甘んじ受けていいものか。
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