2008年01月08日
白球の視点 第225回
昨年の暮れもおしつまった日、京王線調布駅前で宮田親平さん(元「文藝春秋」編集長・科学ジャーナリスト)とバッタリ会った。81年1月、「七たび生れ変っても、我、パ・リーグを愛す」というエッセイを発表、その一篇に呼応してパ・リーグ・ファンが結集。「パ・リーグへの愛を市民運動にまで高めよう」と82年4月、「純パの会」が発足、年々会員が増え続けていまに至っているが、その「純パの会」結成のきっかけを作った人だ。 しばしの立ち話の中で、宮田さんは、いったものだ。「ひと頃と違って、最近はパ・リーグの人気が高まって……。人気が上がると不思議なもので、会員の熱も一時ほど高ぶることもなくなって……」。まったく、ファン気質とは、不思議なものだ。実力があるのに、個性派選手が多いというのに、セ・リーグに比べて観客が少ない、人気がないといわれていた時代、パ・リーグのファンはカッカと燃えていた。セ・リーグなにするものぞ、巨人がなんだ、阪神がなんだ(いや、キョジンとかハンシンと言葉にするのもイヤだという人々)と、パ・リーグ野球のすばらしさを讃え、応援に力がこもっていた。それがいまや札幌-仙台-千葉-福岡と、セ・リーグを凌駕するほどの勢いで、スタンドは熱気に満ちている。プロ球界を代表する若い魅惑的なスター選手も続々、生まれてきた。そうなると……。 年が明けて届いた宮田さんからの年賀状にも「この数年の激変に驚いています」という添え書きがあった。今年も多くの「週刊ベースボール」の愛読者から年賀状を頂いたが、「プロ球界はどうなるんでしょうか」というような趣旨の添え書きが多かった。実力派スター選手が次々にアメリカをめざす傾向が強まる一方で、そのことに一種の喪失感を感じる不安が底にある「どうなるんでしょうか」という言葉だろうが、私には、そのこととは違う不安がある。 もうすぐまた、あちこちから両リーグの順位予想を求められる日がくる。そのときあわてないように、正月休み、新しい年の両リーグの戦力を考えつつ予想していて、あらためて、その“もうひとつの不安”が広がった。 パ・リーグのほうは、予想がつかない。戦力的にはソフトバンクが頭ひとつ抜けていると思うのだが、昨年、一昨年の例もある。監督が替わった日本ハム、小林雅と薮田がいなくなったロッテだが、そうそうヒケをとることもあるまい。それに「予想がつかない」と混乱するのは、楽天、西武、オリックスの戦力アップ、意気込みが目立つからだ。どこがAクラスになってもおかしくはない。そしてどこもBクラスに終わるかもしれない。それほどの戦力均衡にみえる。大激戦だろう。 一方、セ・リーグはといえば、なんといっても昨年の最下位チームから最多勝投手と打点王をとり、4位チームの実績あるストッパーを加えた巨人の圧倒的な戦力には、ただただオソレイル。伝えられるところでは、この3人に費した補強費だけで日本ハムの年俸総額に近いのだという。「マネー・ゲームにしたくなかった」と球団代表はいったそうだが、これを“マネー・ゲーム”といわずしてなんというのだろうか。 広島から“全日本チームの4番打者”新井を補強した阪神とチャンピオン・チーム・中日を含めた3チームと、クルーンを失った横浜、黒田と新井に去られた広島、左腕・石井一にパ・リーグに行かれたヤクルトの3チームの戦力差はいかんともしがたい。昨年、一昨年のパの日本ハムの例もあるのだから、セでも後者の3チームになんとか頑張ってもらいたいのだが、ハタからみると、この戦力差は「A」と「B」にハッキリ分れると思う。 巨人の補強を「仁義なき補強」という見出しで報じた新聞もあった。確かに“ルール違反”はしていない。「あくなき強化意欲」と評する人もいる。しかし、私は、くり返すがこれではシラけてしまう。戦力均衡の上で、野球戦術をくりひろげてシノギをけずるところにペナントレースの面白味があると考えるからだ。プロ野球組織の長たるものは「限りなく指令に近い強い要望を、いまこそ出すときではないのか」と書いたのは日本経済新聞の浜田昭八記者だが、私も同感だ。 いつもは添え書きなどない巨人OBからの年賀状に、めずらしく「どうしようもない巨人軍になりました」という添え書きがあってハッとした。いつも辛口だが理想家肌で巨人を愛しているOBだ。いつも「若手の育成」を口すっぱくして説いている人も、ついにガマンできなくなったとみえる。 巨人ファンの声を聞きたい。 元日のスポーツニッポン紙上で有本義明さんが書いていたことだが、「グライシンガーが投げ、ラミレスが打って、クルーンが締めて勝つ」……巨人ファンは、それでも勝てば嬉しいのだろうか。
posted by 田村大五 |16:08 |
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