2006年03月23日

白球の視点 第199回

 聞けば、いまメジャー・リーグ関係者が、「状況が許せば……」という仮定にたってのことではあるが、「大金を投じてももっとも獲得したい選手」は、キューバのグリエル二塁手だという。WBC決勝戦、6対5と1点差に迫られた9回表、一死一塁で、日本チームの2番打者・西岡が、そのグリエルがダッシュして打球をつかんでもどこへも投げられない絶妙なプッシュバントを決めたとき、私は勝利を確信した。「打って、走って、守るニッポンの野球」が世界を制したことが嬉しくてたまらない。

 みんな、すばらしかった。準決勝の対韓国戦で、大量点の口火をきった二塁打で頭から滑り込んで左コブシでベースを殴りつけた松中。あれで気合が入った。決勝戦で二度エラーした川崎がイチローの右前安打で二塁からのホームインも捕手のマタの間から右手でベースにタッチする“感動もの”だったが、起き上がってベンチに帰る顔や姿が、一種、放心状態のようで、そこまで凄いプレッシャーと戦っていたのかと心に響いた。

 韓国の右翼手の再三のファインプレーにうなっていたら“こっちも見せてやろう”とばかり左翼ファウル・フライを体当たりで捕ってみせた多村の超美技、2 度目の韓国戦で返球を落球して「日本へ帰られない」と落ち込んでいたという今江が決勝の1回、日本に勝利への意欲をもたらした満塁での中前タイムリー。みんなみんな、すばらしかった。

 中でも、やはり、特筆大書したいのはイチローだ。声をあげ、体をふるわせ、体いっぱいに喜怒哀楽を表現して、打ち、走り、守った姿に全選手が強い刺激を受けたはずだ。イチローは「野球少年」に戻ったのだと思う。日本で数々のタイトルをとってももの足らず、渡米して記録を作って、チームの低迷で野球を楽しめなくなった男が、久々に思いっきり野球に没入して「野球の歓喜」を歌いたくなった場所、それが「JAPANチーム」だったことを私たちはあらためて喜びたいと思う。

 そして、優勝した翌日、「(みんなと別れたくなくて)一度、一緒に成田まで帰って、そこからあらためてアリゾナ(のキャンプ地)へ向かおうかと思った」というほどのナインとの一体感をもった「JAPANチーム」。これは、いまの日本の12球団全部に与えたなによりの教訓となったはずだ。

 さあ、いよいよペナントレース開始。チンタラチンタラ・プレーを続けるチームや選手たちには、JAPANチームのビデオテープを送りつけてやろう。

posted by 田村大五 |00:00 | 第181回~第200回 | トラックバック(0)
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