2004年06月23日

白球の視点 第147回

 自宅近所の人との朝の挨拶からはじまって、少年時代の同期会、夜の行きつけの店の主人夫婦、常連客、昼は取材や打ち合わせで会う野球関係者……もう朝から夜まで、顔を合わせる人との会話の第一声は「いったい、どうなるんですかねぇ」だ。もう、いまや当該のオリックスと近鉄だけの話では、ない。「いったい、どうなる?」は、「日本のプロ野球」そのものを指している。もはや「国民的関心事」といっていい。

 日本経済新聞のスクープから始まった今度の騒ぎは、まだ具体的な細部がわからないうちにたちまち「1リーグ制」論議が支配的になって、噂だけが雪だるま式にふくれ上がってひとり歩きしたところに特徴がある。50年以上も慣れ親しみ、プロ球史に名を残す大スター選手、個性派選手を生んだ球団が消えようかというとき、問題が明るみに出てから10日も経ったプロ野球実行委員会で、未だ合併の「手続きをすすめることだけ了承」という、ただそれだけの発表しかできない関係当局幹部の超スローモー対応。

 プロ野球全体がどうなるのかとまで心配しているファンと、およそ切迫感を感じさせない関係幹部の能面のような表情を見ているとイライラしてくる。

 短期間では片付けることのできない複雑で微妙な問題が山積していることはわかる。それにしても、だ。

 約40年前、ドラフト制が12球団の合意を得てスタートするまで一緒に当時のパ・リーグのオーナー、球団幹部の精力的なセ・リーグ幹部への説得行脚に随伴して取材を続けた元新聞記者(長らく球界幹部として影響力をもっていた)と、最近、他の用事で会ったら「あの頃、ドラフト制を成立させなかったらプロ野球はダメになると立ち上がったパ・リーグの幹部には情熱があった。野球への夢があった。野球への情熱があった。なのに、いまは……」とタメ息をついた。「自分たちで作ったドラフト制を骨抜きにして、上限を決めたはずの契約金もたちまち破って、ウラ金も見て見ぬふり。あげく“もう球団経営はやっていけません”といっても、なぁ」。

 みんな「危機だ、危機だ」というだけで、まるで他人事のように事態の推移を“見ている”だけだった。この10日間、いまだ「合併」と「合併後」の具体的な方策がなにひとつ浮かび上がってこないのは、その象徴だろう。

posted by 田村大五 |00:00 | 第141回~第160回 | トラックバック(0)
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