2008年03月11日
白球の視点 第234回
公式戦ではない。“たかが春のエキシビション・ゲーム”であるのに「7試合、22打席ノーヒット(9日現在)とは、どうしたのだ。なにかあったのか」と大騒ぎされるのだから“さすがイチロー”ということか。マリナーズのマクラーレン監督は、心配する周囲に対して「シーズンに入れば250本は打つよ」と笑って見ているそうだが、過去の記録によれば、日米通じてエキシビション・ゲームであれ公式戦であれ、5試合連続ノーヒットはあっても「7試合連続」はかつて一度もなかったというから、やはり、気になることではある。一方、たとえDHでも公式戦開幕メンバーに名を列ねることができるかどうか不安視されているヤンキースの松井秀喜の動向ともども、どうも気になって落ち着かない。 次元はまるで違うが、“気になる”といえば、キャンプ報道以来、プレーのことだけでなくちょっとした言動のはしばしまでも他のどの選手より大々的に報じられてきた日本ハムのルーキー、中田翔が、「公式戦開幕が近づいて調子をあげてきた各主力投手たち」にてんで歯が立たずしょんぼり、すっかり気落ちしてしまったとか、同じ“甲子園の人気者”ヤクルトの由規投手もコントロールがままならず悩みはじめたとか、“パ・リーグの新人王候補の双璧”と評判高かったソフトバンクの大庭翔太投手がめった打ちにあったとか、楽天の長谷部康平投手が左ひざ半月板を痛めて戦線離脱とか、このところ話題のルーキーをめぐる香ばしからざるニュースが続いていることも、気になってならない。もともと“騒ぎすぎ”といってもいいことなのだが、それにしても……だ。 長谷部の故障が発覚する前の、2日の対ロッテ戦で好投したとき「面白い存在。合格点。ノムラ捕手がリードすれば新人王」などと大喜びしていた野村監督も、長谷部が開幕に間に合わないかもしれないとわかると一転、「これでまた最下位か……」とすっかり気落ちしたコメントを発していた。まだ春のオープン戦もはじまったばかりだというのに、気の早い落ちこみように、そんなコメントを読んだこちらのほうまで気持が萎えてしまった。そんな弱気でどうするの? 野村さん。 そんな報道があった1日前、8日、土曜日午後、NHK教育テレビで、野村監督の約2時間にも及ぶ長いインタビュー番組を見た。苦労した少年時代からテスト入団した頃の話、ホームラン王になってからの西鉄・稲尾投手との丁々発止の戦かい、南海ホークスの兼任監督からロッテ-西武の“生涯一捕手”時代、“チャンピオン・ヤクルト監督”から“悲哀の最下位・阪神監督”、そしていま……と波瀾万丈の野球人生物語は興味深く、時間が経つのも忘れるほどだったが、その中で、野村監督は、現役時代の思い出の中で「監督のひと言」についてふれていた。 ベンチ裏の通路ですれちがったとき、当時の鶴岡監督が「バッティング、ようなったな」とポツリとひと言、いってくれた。「それがものすごく嬉しかった」と。選手は、監督の言葉を気にしている、それをわかっていて、つい、いってはいかんことをいうてしまう……と。最近の言動についての自己反省もあったが、それだけわかっていて、ルーキーの故障だけで「また最下位か」とは“今季こそAクラス”と意気込んでいるチーム全体に冷や水を浴びせるようなものではないか。 野村監督独特の“ボヤキ節”だから、そんなにイキリたつこともないだろうが、多くの名言至言を口にしてきた知将だけに、これも気になったことのひとつだ。 外電をみていると、メジャーでもこのところ故障選手が続出しているようだ。8人のレギュラーのうち6人が負傷欠場中というニューヨーク・メッツのようなチームがあるように、どのチームでも主力が開幕前の手術を余儀なくされているというから、この時期の怪我は怖い。ヤンキースのジラルディ監督は、相手走者が、アウトのタイミングなのに自チームの捕手にタックル、そのせいで捕手が右手首を骨折したということで激怒して相手チームに抗議したということだが、この季節、紙一重のプレーで今シーズンの運命が決まることだってあり得る。 一軍入りすれすれの線上にいる日米両球界の選手にはくれぐれも体のケアには万全を期してもらいたいところだ。
posted by 田村大五 |16:29 |
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