2008年02月12日

白球の視点 第230回

 「これじゃ、どのチームもみんな優勝チームで、各選手ともみんな首位打者候補か最多勝候補だな」と、現役時代には何度かタイトルをとった実力者が現役引退してスプリング・キャンプの報道を見て言ったのは、40年ほど前のことだった。“40年ほど前”というのは、ようやく、プロ野球のキャンプ報道が派手になりはじめた頃だ。いわゆる「ON時代」がきて、巨人の王・長嶋と対抗する他球団の投打の主力たちの動向もにぎやかにこまかく報道されるようになり、以後、年々キャンプ報道は過熱化し、ON引退後も次々に現れる新しい魅力をもった選手に関する報道は拡大する一方で、ここまできた。

 冒頭の大物実力者の言葉は、そんな過剰報道を皮肉ったものだが、かつて長い間、スポーツ紙の運動部デスクを務めてきた身としては「そうはいうけど、ああいうにぎやかな報道が、公式戦開幕を待つファンをワクワクさせていると思うけどなぁ」などと“反論”? したものだった。

 いま連日の「中田翔・関連記事」など、その最たるものだろう。公式戦が始まって、百戦錬磨の相手のベテラン投手が立ち向かっていったらどうなるか、キャンプ期間中の、狭い地方球場での“場外ホームラン”で大喜びしているようなわけにはいかないだろう。それでもテレビやスポーツ紙の「中田翔報道」には、どこかワクワクさせるものがある。また、それがスプリング・キャンプの楽しさというものだろう。

 そんなスポーツ各紙のスプリング・キャンプ報道の中で、私個人だけかもしれないが、思わずクスッと笑ったのが、「サンケイ・スポーツ」2月7日付けの5面に掲載されていたヤクルトの高田繁・新監督の談話である。

 “談話”といっても報道陣との応対ではない。ヤクルトのキャンプを“偵察”にきた巨人の高田誠スコアラーにいったという言葉だ。その記事によれば「開幕ローテーションを教えてやるから帰れよ」といったという。3月28日の開幕は、ヤクルトの本拠地・神宮球場でのヤクルト-巨人3連戦だ。高田監督は、ズバリ、いったというではないか。

 「ウチは、増渕、加藤、由規、村中でいく。村中は巨人にぶつけるからな」

 巨人の高田誠スコアラーは、高田監督が巨人の二軍監督時、二軍のバッテリー・コーチだった人。お互い、その性格は熟知している。それでいて、スコアラーのほうの高田は、監督のほうの高田の言葉が本音か冗談か判断つきかねたという。

 増渕竜義は昨年、6試合登板で1勝1敗の右腕、加藤幹典は慶大出身のルーキー左腕、佐藤由規は中田翔と並ぶ話題のルーキー、そして村中恭兵は3年目の左腕。私が、その場に居合わせたら、高田監督の肩を叩いて「それで行け!」と叫んだことだろう。

 グライシンガーと藤井秀悟がいなくなったとはいえ、7年目の左腕・石川雅規もいる。韓国プロ野球で昨年22勝もあげた長身のダニエル・リオスもいる。そういう実績ある投手をさしおいて、4人平均20.7歳の男たちを並べて巨人に挑ませるとすれば、その意気や、壮! というべきだろう。“豪華”としかいいようない布陣で今季に臨む巨人に対してはそういう“捨て身作戦”しかないだろう。報道陣のいるところで発した言葉、まんざら冗談とも思えない。11日の対阪神の練習試合で好投した左腕・村中を、巨人は急きょ調べはじめたというからユカイだ。

 今季のセ・リーグ、「AクラスとBクラスにはっきり分れた」という予想というか批評がある。巨人・中日・阪神グループと横浜・広島・ヤクルトのグループ。最初から予想通り、分れてしまっては面白くもなんともない。Bグループといわれる3チームの健闘あってこそのペナントレースだ。BグループがパクッパクッとAグループにかみつき倒していってこそペナント争いの興味が増してくる。ヤクルトの“若手カルテット”が、その先陣役を果せるかどうか、興味津々だ。

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posted by 田村大五 |18:20 | 第221回~第240回 | トラックバック(0)
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