2008年02月05日
白球の視点 第229回
1955年(ずいぶん古い話になるが)、当時の高校球界は俊英が数多く出てきて、プロ球界は、自由獲得競争時代だから、各球団は大物選手をめぐって激しい獲得合戦を演じた。本人、両親だけでなく、学校関係者から後援会幹部、さらに本人や両親に影響力をもっているとみられる親類縁者から市町村の実力者にまで網を張って勧誘につとめた。当然のように、それには金品がからんだ。そういう悪弊が、いまにいたるドラフト制度を生むことになるのだが、その55年、高校生選手とプロ球団の間に二重契約が相次いだ。 そのときプロ野球コミッショナーは不在で56年1月、井上登・元最高裁判事が“2年ぶりのコミッショナー”に就任、着任早々、その二重契約問題を裁いていったのだが、そのときの裁定のキーとなったのは「対面契約」だった。選手は未成年だが、親権者である両親と同席して球団関係者と直接対面して契約したものであるのかどうかを再検証して、“両球団からコミッショナーに提訴されている選手”の所属を定めた。その中のひとりに、野球殿堂入りしている“350勝投手”米田哲也投手(阪急-阪神-近鉄)もいる。 ドラフト制度が施行されてから、そういうことがなくなった(当り前だが)。「二重契約」ではないが、“二重契約らしきもの”があったとしたら外国人選手に二例、あった。93年、巨人を解雇されたバーフィールド外野手をヤクルトが一度、「獲得した」と発表した。だが、あとで代理人が「入団同意書」を送ったことがわかって、バーフィールドは自分でヒューストン・アストロズと交渉、入団した。もうひとつは95年、韓国アマ球界のエース、林仙東。「ダイエー・ホークス入り」といわれたが、高校時代に韓国プロ野球・LGにドラフト1位指名されており、LGに永久交渉権があるとされ、林投手は勧告の裁判所に提訴したものの「LGと契約せよ」という判決でLG入りしたというケース。 今度のジェレミー・パウエル投手とオリックス、ソフトバンク両球団との“二重契約問題”は、これまで例のない、私にいわせれば“珍種”だ。 オリックスは1月11日に「獲得」を発表、18日後の同29日、今度はソフトバンクが「獲得」と発表。すると連盟は翌30日、「双方ともに契約は有効」という。つまり二重契約だ。違いがあるとすれば、オリックスの条件が「年俸5500万円プラス出来高5500万円」でソフトバンクが「年俸1億円プラス出来高」。オリックスが契約書のコピーをファックスで送り、サインをもらったもので、ソフトバンクが関係者が渡米して直接サインをもらったもの。しかし、コピーによるサインの送受信はこれまで球界の慣例で、だから「有効」という。そして2月4日の「強制力のない勧告」は「交流戦明けの6月23日以降という条件つきでソフトバンクとの契約を優先する」というもの。それには両球団とも不満で「とことん戦う」という。経過がわかりにくいし不快なことおびただしい(いま5日正午、まだパウエル自身の弁明を聞いていない)。 わからないことが多い。オリックスは「獲得」と発表したあと、ソフトバンクが獲得交渉に入ったことを感じとっていたらしいが、その時点で何故ソフトバンクに抗議するなりパウエルに事実確認をしなかったのか。またソフトバンクは、オリックスが「獲得」と発表までしていることを承知の上で(連盟も「オリックスの契約は有効」といっている)何故、米国まで統一契約書持参で出かけたのか。そのあたりの事実経過がなんとも不透明だ。 パウエルは、オリックスの書類へのサインは「就労ビザ取得用」といっているそうだがその辺も不透明だ。連盟の「強制力のない勧告」は、会長の形容を借りれば「三方一両損。苦渋の見解、政治的解決」だそうだが、よけい混乱を招いた感もある。不透明だからだ。 関係者の間では、この際、パウエルも代理人も日本球界に入れるなという極論さえ、あるし、「外国人戦力依存」の風潮を絶てという声も高まっている。 このところ西武・涌井やロッテ・成瀬、巨人の内海や阪神の上園などなど若手投手の台頭もめざましく野球ファンの“若者へのまなざし”も熱くなっている。一方で、くる年もくる年も、どの球団もとっかえひっかえ、外国人選手を入団させてはクビを切り、クビを切っては入団させる傾向は強まるばかりだ。そしてパウエルの例であらためて浮きぼりになった代理人という名の、いわくいいがたい実態がよくわからない介在人。「外国人戦力補強に関する新たなルール作りを」という声が高まるのも当然だろう。 いい機会だ、不明朗な背景を明確透明にして、とことんウミを出しきって、関係者は大討論を行なって新しい秩序を形成しなければならないときだろう。
posted by 田村大五 |19:57 |
第221回~第240回 |
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パウエる 【あさちゃん。スポーツ】
タイトルは29年前にあった例の件から派生した当時の流行語のパクリです。 本家では昨日の朝にエントリーをあげてたんですが、ここではパウエルの記者会見まで待ってました。 「二重契約したつもりない」・パウエルが釈明会見(日経) ソフトバンク、オリックスとの契約が問題となっている前巨人のジェレミー・パウエル投手(31)が5日、東京都内のホテルで記者会見を開き「二重契約したつもりはない」と釈明した。 パウエルは統一契約書にサインしてオリックスへファクスで返信したが「ビザと在留資格証明の取得のためにしか使わないと言
2008-02-06 07:56 | 続きを読む





