2007年12月11日
白球の視点 第222回
政界の大連立構想をめぐる“さる人”の話題で、ひとしきり“さる人”が所属する新聞以外のマスコミが批判と皮肉をこめて指弾し続けていたら、その“さる人”──渡辺恒雄・読売新聞社の代表・主筆が、自民党・国会議員のパーティであいさつ、「いまいろいろと誹謗中傷を受けているが、私も新聞記者、そのうちに必らず書く」といったという。渡辺氏があっせんしたといわれている大連立というものが、どういうものであったのか、ときの首相と野党第一党の代表がどんな話し合いをしたのか、ぜひ知りたいところだが、「私も新聞記者」といいきった人の“報道記事”を読みたいものだ。 元巨人オーナーとしても、オーナー在職当時、いろいろと球界に物議をかもした人だったが、今度の“政界大連立のあっせん”のことで報道陣に囲まれると「オレは野球のことはわからん」ととぼけていたシーンをテレビのニュースの一端で見聞したが、もうそんなことをいって逃げているわけにもいくまい。刊行された自伝の中でも、何度も、大物政治家を動かしてさまざまなことをやったことを明かしているのだから、今度も堂々と書けばいい。モヤモヤの状態にしておくから、いろいろな揣摩憶測がとびかうのだ。 政界の大連立というようなスケールの大きなことでなく、プロ球界のトレードに関することだが、私も新聞記者時代、ひとりのちっぽけな記者の分際でトレードプランを仕掛け、あさはかにもそのトレードが成立する前に新聞に大々的に書き、大失敗した経験がある。そうやってなにかを仕掛け、それをスクープすることが、“記者としての大仕事”と錯覚していた時代のバカバカしいミスだった。 いまはもうそんなこともないだろうから、連日、シーズンオフの各紙を読みながら「へぇ」とか「ほう」と首を振ったりうなずいたりしてトレード情報を読んでいるが、巨人が、横浜のクルーン投手の獲得から、今度はヤクルトのグライシンガー投手、さらにラミレス外野手まで獲得しようとしているという報道には「そこまでやるか」と目をむき、しばらくしてすっかりシラけてしまった。 清武英利・球団代表の「週刊ベースボール」の連載「野球は幸せか」は、さすが練達の元読売新聞社会部長の筆でなかなかに読ませてくれるが(12月3日号の第17回、小笠原道大選手とFA入団交渉時の、同選手夫人との手紙のやりとりなど、ついホロリとしたものだ)、同代表は同じ回で、こう書いている。 ──巨人軍の再建にあたって、私たちは「人づくり」を柱に据えた。言い換えれば育成である。その方針と補強は矛盾する、と囃(はや)し立てる人もいるが、私はそうは思わない。補強によって得た小笠原や谷、豊田といった強烈な個性が、どれだけ巨人の生え抜きを刺激したことか。内海、野間口、西村、金刃、脇谷、会田、山口……── 私は別に囃し立てるつもりなどサラサラないが、「育成の方針と補強は矛盾しない」と考えるには、いまの補強ぶりは「度が過ぎる」と考えているひとりだ。クルーンの入団で上原浩治が先発にもどればグライシンガーと強力な2本柱で久保や福田の先発としての出番は減るだろう。それは左の伸び盛りの内海や金刃にも影響しかねない。左の中継ぎとしてのロッテからの藤田宗一の入団で山口鉄也や大器・林昌範の出番も少なくなるかもしれない。谷佳知、高橋由伸、清水隆行、矢野謙次らの外野陣にラミレスが加わったらどうなるだろう。なにしろリーグ最多安打のラミレスである。今季のホリンズやゴンザレスのように扱うにはいくまい。なんとかレギュラーにひと足でも近づきたいと考えている若手外野手にしてみれば、“ああ、これでまた出番が減る”と思うだろう。“どれだけ生え抜きを刺激するか”というより“どれだけ意欲を減退させるか”とならないか。それを憂える。 私がひそかに“カープよ、頑張れ”と応援し続けているのは、FAで主力を他チームに引き抜かれても引き抜かれても次々に生え抜きの若手を育て上げてチームの中軸に据え、それなりの力をみせていることだ。 自分でアメリカからつれてきた選手があまり使いものにならず、他チームで活躍した選手を大枚をはたいて引き抜いてそれを中軸にして“さァ優勝だ”と威張ってみせてもシラけてしまうんだなぁ。清武代表よ。
posted by 田村大五 |14:56 |
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