2007年11月20日
白球の視点 第220回
千葉ロッテからFA宣言した薮田安彦、楽天からFA宣言した福盛和男両投手に、メジャーからそれぞれに5球団からのオファーがあるという。カンサスシティからもロイヤルズの監督に就任したばかりのトレイ・ヒルマンの、日本ハム監督として対戦した視点からだろう、「多くの球種を使い分ける、すごく気に入っている投手。中継ぎにも抑えにも使える」という“薮田絶讃談話”が届いている。 これも、今季、レッドソックスで大活躍した“岡島秀樹効果”だと思うが(薮田、福盛両投手には失礼な言い方かもしれないが)、それにしても野茂英雄投手がメジャー・リーグへの道を切り拓いてから13年、野茂-松坂大輔-黒田博樹(まだ所属先はわからないが)といった先発ローテーション入りする本格派とは別に、薮田や福盛といったタイプの投手に5球団ものオファーが殺到するようになるとは思わなかった。 もうひとり、興味ある対象に、今季で37歳になる巨人の左腕・前田幸長投手がいる。このところめっきり出番が少なくなっていたのが面白くなかったのだろうが、敢然と「メジャーに挑戦」と打って出た。こちらも岡島に強く刺激されたのだと思うが、それにしても野球の潮流の変化を感じずにはおれない。 それにしても、レッドソックスのスカウトと岡島投手は、“もうひとつの”プロ野球選手の生きて行く道を教えてくれた。両者のその功績は大きい。 岡島投手は、ドラフト3位指名だった。そのとき巨人入りしたドラフト組は、ほかにもうひとりも残っていない。そのときのドラフトでプロ入りした選手は63名いたが、いまも活躍しているのは小久保裕紀、福浦和也(ロッテの7位指名)、大村直之(近鉄の3位指名)、金子誠、それに今季、コロラドで大活躍した松井稼頭央(当時、西武の3位指名、松井和夫投手)くらいで、あとは“全滅”している。いかに数少ない「成功組」だったかがわかる。 私はずっと以前、野茂やイチローがプロ入りする頃、「ドラフト史」という増刊編集を思いたって編集していたことがあるが、毎回決まって組んだ特集のひとつに「下位指名の男たち」というものがあった。68年ドラフトの阪急8位指名・福本豊とか、73年ドラフトの阪神6位指名・掛布雅之とか、よく知られるところでは91年ドラフトのイチロー、中村紀洋、金本知憲らがいずれも4位指名だったことなど(その他、下位指名からトップスターにのし上がった選手は、いっぱい、いる)を列挙して「ドラフトの指名順序など、その選手の価値基準にはならない」といいたかった。 その年のアマ球界の話題の大物に他球団が目を奪われているスキにサッと指名してしまうスカウトの眼力、そして下位指名だろうとなんだろうと「いつかメにモノをいわせてやろう」と研鑽を積んでいく選手の気力と努力。それらが合致したのが、前記の大物スター選手たちだからだ。 だから、いつの年でも、私は下位指名の選手たちの詳細なデータを頭に入れておくことにする。その男たちが一軍公式戦でグングン台頭してきたとき“ああ、そういうことだったのか”とわかってくる。それが野球観戦の上で非常に役立ってくる。 さて、投手指名が圧倒的に多かった今年、その名も知らなかった選手たちのことを調べていくと実に面白いのだが、今回は、もうひとつ、ロッテの5選手指名を筆頭に8球団が15人も指名した育成選手のことがある。四国リーグあり、BCリーグあり、中には軟式野球の選手もいた。今季は巨人の山口鉄也投手ら、育成組から3人も支配下選手契約をかわすまでになった選手が出ていた。これからは育成選手の足跡もじっくりと見ていきたい。 これまでは考えられなかった薮田や福盛や前田がメジャーに挑戦していくように、いつの日か、育成選手が日本プロ球界のトップに立つような時代がくるかもしれない。そのときは、いまでは考えられないような“底辺リーグ”が大活況を呈するようになるかもしれない……という夢をもって、育成選手の成長を期待したいのだ。
posted by 田村大五 |16:32 |
第201回~第220回 |
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