2006年03月02日

白球の視点 第196回

 たとえば「週刊ベースボール」3月13日号のうしろのカラー頁に掲載されていた阪神のルーキー・前田大和遊撃手の話。紅白戦に先発出場してすぐ、盗塁王・赤星の打球が三遊間深くに飛んだ。「普通ならあわてまくるところ。が、この天才少年は、サッと走ってバックハンドのグラブにおさめるとノーステップでノーバウンドの一塁送球。いとも簡単にアウトにしてしまった」という。「かわいいし、うまいねぇ。センスあるねぇ」が今岡の言葉で、「吉田(義男)と三宅(秀史)とタイラ(藤田平)を足して3で割った守りや」というのがネット裏の評価だったという。

 こういう話を聞くと、“あ、春がきたんだな”と思う。毎年、キャンプが終って実戦段階に入り、あちこちから思いもかけなかった新戦力のきわだったプレーや、昨年まではカゲにかくれていたのにグングン台頭してきた選手の活躍ぶりを見たり聞いたりすることが一番、楽しい。

 今季のルーキーでいえば、たとえば初オープン戦初打席で逆転サヨナラ3ランを打った日本ハムの川島慶三内野手とか、広島とのオープン戦初戦に「4番・三塁」で先発出場してホームランを打ったソフトバンクの松田宣浩内野手とか、公式戦に入れば出番はなくなるかもしれないが、たとえファームであっても“よし、これからずっと成長過程を見続けてみよう”という気になってくる。そこが楽しい。

 ルーキーでなくても、またたとえば、もう9年目になる楽天の森谷昭仁外野手の“足”に野村監督が興味をもちはじめたという話。近鉄時代、ウエスタンで3 年連続(00年~02年)盗塁王になった快走。昨年は楽天で8試合出場でノーヒット、0四球。代走で1盗塁という選手が起用が多くなったらどんな走りっぷりをみせるか。これも、今の季節だから“楽しみ”ということになる。

 まだ、ある。森谷の背番号は「00」だが、「背番号202」という選手、中日の竹下哲史内野手。今季からの支配下登録もされていない「育成選手」のひとりが対外試合初出場で「歴史的初ヒット」を放ったというニュース。年俸僅か300万円で、まだ入寮も許可されていない環境で「支配下登録」を夢見る青年。こういう男たちの足跡をじっとみつめていきたいとも思う。

 WBC日本代表チームの練習試合では相手チーム打者の打球が右翼方向へ上がっただけでスタンドはどよめいた。“イチローの守備が見られる”というどよめきだ。打つだけでなく、守っても走ってもファンに喜んでもらえる選手でありたいと常に、いっているイチローらしい風景だった。イチローは、久しぶりの日本のベンチでノドがかれるほど大声をあげつづけている。全力をあげ、緊張感の中でプレーに打ちこむ喜びのハスキー・ボイスだ。

 ルーキーも、長い間下積みの苦労を続けてきた選手も、“雲の上のイチローのようなプレーを”とは、いわない、せめて、野球に対するイチローのような”真摯な姿勢を”と願わずにはいられない。

posted by 田村大五 |00:00 | 第181回~第200回 | トラックバック(0)
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