2005年11月16日

白球の視点 第182回

 4年契約で日本円にして50億とか60億とかいわれて「松井、ヤンキースに残留」というニュースに並んで、ソフトバンクの城島捕手に2年契約で9億円を上回る条件を提示した球団が現れたという外電。両選手にはなんとも景気のいい話で「これでは日本の選手がわれもわれもとアメリカを目指すわけだ」と顔をしかめた人がいた。

 西武の松坂大輔投手はポスティング・システムによるメジャー・リーグ入りをまだあきらめたわけではないと「週刊朝日」のインタビューで語っているし、阪神・井川慶、ヤクルト・石井弘寿投手も意欲満々、球団と粘り強く交渉を続けるというし、今度は日本ハムの入来祐作投手まで球団の了承を得てメジャーに挑むという。その意気や壮、というところだが、こういう“われもわれも”といったメジャー・リーグ志望は、松井秀喜や城島健司による刺激ではないと思っている。

 ひそかに私が推測しているのは、大家友和投手の存在だ。

 渡米する1年前(98年)、横浜では一軍公式戦に2試合しか登板していない(それも2イニングで被安打2、自責点2という成績だ)。横浜での5年間で1 勝2敗の投手が、レッドソックス、エクスポズと渡って02年は13勝8敗、03年は10勝12敗、エクスポズがナショナルズになった今季、10試合登板で 4勝3敗というところでシーズン中のトレードでブリュワーズへ。そこでメジャー初完封を含む7勝6敗。計11勝9敗。外電によれば、球団は新年俸として 400万ドル(約4億4000万円)を提示したという。推定年俸450万円でプロ(横浜)入りした男が、その100倍もの大金をつかんだのだ。

 大家は、自分から球団に頼み込んで自由契約の身にしてもらっての渡米だった。そこがすごいと思う。

 もうひとつ、大家投手に関して関心するのは、稼いだお金で「大家ベースボール・クラブ」を作って少年たちの野球指導を続けていることだ。あまり大きく報じられていないが、年々参加する少年たちも増えているという。野茂英雄投手が社会人野球選手に手をさしのべれば、こちらは野球を通じて少年たちの夢を育むお手伝い。このふたりのメジャー・リーガーの、日本の野球振興にかける情熱はもっともっと評価していい。

 さて、いま、そしてこれからもアメリカへアメリカへとなびこうとしている選手たちには、大家のような志があるのだろうか。

 あるなら行くがいい。

posted by 田村大五 |00:00 | 第181回~第200回 | トラックバック(0)
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