2008年06月30日

カタイ ドイツvsスペイン

 
 EURO2008の決勝戦、ドイツvsスペインの試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。
 立ち上がりでカタさが見られたスペインイレブン。しかしその時間帯にドイツが仕掛けることができず。徐々にスペインがペースを掴むと33分、チャビのスルーパスにF・トーレスが反応し見事に流し込んだ。
 反撃を試みるドイツだが、ラームとバラックという攻撃のキーマンが前半終了間際に次々と負傷。交代策が功を奏さないまま時が過ぎ、終盤のパワープレーも、スペインが落ち着いて対処して1-0で逃げ切った。
 スペインが11大会・44年ぶり2度目のアンリ・ドロネー杯獲得に至った。


 ■プレビュー
 ドイツは、肋骨骨折のフリングスが出場。コルセット・痛み止めでの出場。バラックは右足のふくらはぎの筋肉を痛めて練習を休んでいたが、スタメン出場を果たす。

 GK イェンス・レーマン
 DF フィリップ・ラーム
    クリストフ・メッツェルダー
    ペア・メルテザッカー
    アルネ・フリードリッヒ
 MF トルステン・フリンクス
    トマス・ヒツルスペルガー
    ルカス・ポドルスキ
    ミヒャエル・バラック
    バスティアン・シュヴァインシュタイガー
 FW ミロスラフ・クローゼ


 スペインは、準決勝のロシア戦でFKを蹴った際に右太ももを負傷したダビド・ビージャが欠場することに。EURO本大会になってから4-4-2(or4-1-3-2)で順調に勝ってきたが、ここで「試合開始時から」では初めてのクアトロ・フゴーネス(チャビ、セスク、イニエスタ、シルバの4人を置く攻撃的な布陣)を含む4-1-4-1で挑む。

 GK イケル・カシージャス
 DF ホアン・カプデビーラ
    カルロス・マルチェーナ
    カルラス・プジョル
    セルヒオ・ラモス
 MF マルコス・センナ
    アンドレス・イニエスタ
    チャビ
    フランセスク・ファブレガス
    ダビド・シルバ
 FW フェルナンド・トーレス


 ■動きがカタイスペイン
 決勝のキックオフ――スペインの動きが、いきなりカタイ。
 S・ラモスからプジョルへの不用意なパスを、クローゼがインターセプトして一気に持ち込む。ここはプジョルが何とかクリアして難を逃れる。
 試合開始して10分ほど、スペインのパスがうまく繋がらず「らしくない」印象を与えた。しかしドイツも慎重なゲームの入りか、仕掛けていく風でもない。

 すると13分、チャビがコンパクトな振り足で左前方にパスを通すとイニエスタへ。イニエスタの中央へのパスが、DFメッツェルダーに当たりあわやオウンゴール。GKレーマンが掻き出した。
 スペインは徐々に、前線のF・トーレスにパスが繋がるようになり、またプレースキックのチャンスを得ていく。しかし高さのあるドイツディフェンスを攻めあぐね、CKもショートコーナーを選択するなど、真っ向からの勝負は控える。

 22分、右サイドの深いスペースへ進出したセスクが、後ろのS・ラモスに戻す。S・ラモスのクロスにF・トーレスがヘディングで合わせるも左ポストに嫌われる。メッツェルダー・メルテザッカーというドイツのCBコンビに身長で劣るF・トーレスだが、比類なきジャンプ力とタイミングの良さで先に合わせる技術が高い。

 ドイツもここで反撃。左CKを一度弾かれるものの、再び左サイドからクロス。ファーサイドでクローゼが頭で折り返すと、バラックがボレーシュート!しかしS・ラモスがシュートコースに入りブロック。
 そのままスペインがカウンターへ。F・トーレスが、身体を寄せるヒツルスペルガーを弾き飛ばし、左サイドを疾風の如く突き抜ける。ボールを奪われGKへバックパスされるが、それをも追いかけプレッシャーをかけて、スローインを獲得する。
 F・トーレスのハードワークを厭わない姿勢が、チームを鼓舞する。


 ■ゴールシーン詳細
 さて33分のゴールシーン。決勝での唯一の得点なので、詳細を記すことにする。
 一行で書くと「チャビのスルーパスにF・トーレスが反応し見事に流し込んだ」という冒頭の簡単なまとめになる。その前の動きから。

 センターサークル付近でセンナがボールを持つ。少々前がかりか、センナがボールを持ったのが気になったかは分からないが、フリングスとヒツルスペルガーのダブルボランチの2人共が少し上がった状態に。
 センナはそれを見逃さずに、スペインの最終ラインとボランチの間にフリーの状態でいたチャビへパス。ダブルボランチは慌てて戻るが、チャビの流れは、水が流れるようだった。チャビは左足で軽く止めながら、反時計回りに半身捻り、右足でそのまま前線へパス。

 ラームとメッツェルダーに挟まれていたF・トーレス。後ろからのボールをワンタッチでコントロールし、ラームに前に入られたものの、右側から驚異的なスプリント能力で追い抜く。GKレーマンは悪くない飛び出しだったが、F・トーレスの前では闘牛にすぎなかった。
 F・トーレスは右足で軽く浮かせて、GKレーマンの身体をギリギリ越えてゴールの左隅を狙うという、絶妙なコントロールショットを見せた。

 「アウェーで得点力が落ちる」との評価もあるF・トーレス。このエルンスト・ハッペル・シュタディオンは試合の進行上、スペインは決勝トーナメントを、全てこの会場で戦った。F・トーレスにとっては「ホーム」になったか。


 ■ドイツに立ちはだかるトラブル
 ドイツは逆転できる強い気持ちを持ったチームだ。しかし、攻撃のキーマンとなりうる2人がアクシデントに見舞われる。
 競り合いでセンナとバッティング(頭同士がぶつかる)したバラックが右目尻を切ってしまった。一度止血したものの、再度治療を命じられるなど集中できない状態になった。実際、これ以降のバラックは精彩を欠いていた。

 そして左SBのフィリップ・ラーム。
 後半開始時にマルセル・ヤンゼンを投入したレヴ監督。勝負するならフリッツでは、とも思ったがラームが足に裂傷を負ったとのことだった。前半のラームは左サイドでの攻撃参加に積極的で、後半にも期待できたのだが…。

 代わったヤンゼンも仕掛けてはいったものの、ヤンゼンへ通すパスが失敗続きでチャンスを潰してしまっていた。
 それでも59分、左サイドの深い位置のライン際でプジョルとボールを競り合い、ヤンゼンが勝利。クロスを上げ、シュヴァインシュタイガーが落とした。しかしこのボールに変な回転がかかってしまっており、バラックが合わせるも、うまくミートできなかった。


 ■ドイツの交代策
 局面打開を図るレヴ監督は不調だったゴメスではなく、FWケヴィン・クラニーを先にピッチへ。しかしこれが裏目に出る。クラニーは大舞台に慣れていないのが明らかでボールが、そして地に足につかない。
 シュヴァインシュタイガーのスルーパスに反応したものの、クラニーはトラップミス。その直後、左サイドのバラックのクロスでは、クラニーはオフサイド。
 終了間際の91分には、右サイドへ流れていたクラニーがクロスを送る場面があったが、ゴール前を見ずに蹴っているように見えた。ボールは大きくファーサイドへ流れてしまった。
 結果論だが79分に投入したゴメスを、クラニーより先に入れていたら展開が変わったかもしれない。スペイン生まれのゴメスの方が、モチベーションは高かったはずだ。今大会不調を最後の試合で晴らすこともできた。


 ■カタイ、アラゴネス監督の交代策
 前の試合で早めに交代カードを3枚使いきった強気の采配を見せたスペインのアラゴネス監督だが、この決勝戦では慎重だった。
 1枚目は63分にセスクを下げてシャビ・アロンソ。4-2-3-1にすることで守備の安定を図る。さらにシルバを下げて、サンティアゴ・カソルラを投入。78分にはF・トーレスを下げてグイーサを投入。短い時間で結果を出せるストライカーを置いて、ドイツにプレッシャーを与え続ける。

 この代わったカソルラとグイーサが攻撃に絡む。
 81分、中央でセンナが持ち右サイドのカソルラへ。左のグイーサへ展開し、さらに中央へ折り返したところにセンナが飛び込む!センナの足が惜しくも届かず、この「3線速攻」は追加点とはならなかった。 

 この後はスペインがペースを崩さず、スキを与えず。ドイツもパワープレーを仕掛けるが、スペインの牙城は崩せないままタイムアップ。
 1-0でスペインが勝利した。


 ■総括
 またもやバラックが涙を飲んだ。
 レヴァークーゼン在籍時、2002年にUEFAチャンピオンズリーグ、ブンデスリーガ、ドイツカップを全て準優勝に終わったことから、バラックに付けられたあだ名が「シルバーコレクター」。今年のチャンピオンズリーグ決勝前にもそれは取り沙汰されて、チェルシーは準優勝に終わった。

 しかし、ドイツの前途は暗くない。現在の主力に高齢化はさほど進んでおらず、これから若手を数人入れるだけで、さらに強いチームが作れそうだ。「バラック2世」と言われたロルフェスもまずまずの活躍を見せていたし、少しミスの目立ったGKレーマンの次は、レヴァークーゼンの守護神レネ・アドラーが控えている(できれば今大会で見たかったが…) 2010年に期待だ。


 スペインは素晴らしかった。ドイツ地元紙「Marca」のEURO開幕前の調査では、「スペインは決勝に進めるか」というアンケートをとったところ、「できる」と答えたのは6万人の回答のうち24%以下だったという。
 当ブログでも恥ずかしながら「予選敗退するのでは」と予想していた。

 ◆スペインの「カタイ」
 この決勝で感じたのは「カタイ」。
 試合開始時の動きのカタサ。
 カタイ守備。
 カタイ交代策。
 カタイ試合終盤のコントロール。
 そしてカタイ結束。

 「美しい攻撃サッカー一辺倒」だった、今までのスペインにはない勝負強さがあった。イタリア戦でのPK戦勝利にもそれは現われている。
 それが最も「カタイ」を感じさせる歴史あるドイツから、スペインが勝利を奪うという結果はなかなか興味深い。


 ◆素晴らしい選手たち
 前の試合のロシアvsスペイン戦の最後にも論じたが、レアルの象徴でもあり、スペインの象徴でもあったラウール・ゴンサーレスの招集を頑なに見送り続け、最終的に結果を出したアラゴーネス監督。
 今大会中に随所に見られた「チームの一体感」。それは当然、表彰式の時でもそうで、チームの団結が強く感じられた。アラゴネス監督の胴上げシーンも微笑ましいものがあった。

 ラウールは外れたが、レアルのカシージャスとS・ラモスの2人は完璧だった。
 カシージャスは、決勝のドイツCKをことごとく弾き出した。60分のバラックのクロスにクラニーが合わせる手前で、飛び出してパンチングしたところも絶妙。F・トーレスの得点シーンも、もしカシージャスだったなら止めていたかもしれない。この試合で改めて世界最高のGKであることを証明した。
 S・ラモスは攻撃に何度も顔を見せていたし、守備面も怠ることなくピンチの時には身体を張って止めていた。激しい上下動はSBの理想と言える存在だった。

 カシージャスの前に立つ2枚の壁。プジョルとマルチェナのCBコンビは最高のものを見せた。ラインコントロールが絶妙、高さのある相手チームのFW(イタリアのトーニなど)も見事封じ続けた。これに中盤底のセンナを加えた、「Quatro defensa」とも言える4人は素晴らしかった。グループリーグで各1失点の合計3失点、決勝トーナメントは全てクリーンシート(完封試合)だった。

 このブログで何度も書いていることだが、チャビの攻守バランスは絶妙。センナの守備負担を軽減しつつ、攻撃にも積極的に参加。決勝でも何度もF・トーレスにスルーパスを出しドイツの守備陣を恐怖に陥れた。66分のS・ラモスに合わせたFKも見事。

 決勝のピッチに立てなかったビージャだが、4得点で得点王を獲得。F・トーレスとグイーサが2得点。この2人も印象に残るテクニカルなゴールを決めてみせた。
 ドイツのポドルスキが得点王争いで3得点と迫ってはいたが、ビージャは仲間の勝利を信じ意に介してないようだった。このこともスペインの結束を感じさせる。
 →スペイン代表の雰囲気についてのスポナビ記事リンク


 ◆アラゴネス監督の進退は
 見事優勝を果たしたスペイン。優勝は監督の力が大きかったこと(戦術、采配、人心掌握など)は、誰も異論を挟めないところだろう。しかし、アラゴネス監督の続投は決まっていない。フェネルバフチェ監督就任が噂されてはいるが、まだ正式決定ではない。
 契約延長のオファーが来ないことにアラゴネス監督が怒っている模様。監督が代わると、プラスよりマイナスの影響が大きいことは火を見るより明らか。
 アラゴネス監督のスペイン代表戦績は、54試合38勝12分4敗。スペイン代表監督歴代最高の勝利数を挙げ、ここ22試合19勝3分けと正に「無敵艦隊」ぶりを発揮。しかも「勝つのは親善試合だけ。大きな大会での決勝トーナメントは勝てない」というジンクスも打ち破った。

 
 さてスペインの勝利により、少し勢いを失っていたリーガ・エスパニョーラがかつての輝きを取り戻すのか。それともスペインの人材が、プレミアに流出するか(実際ビージャ移籍が取り沙汰されている)。
 EUROが終了した今、移籍市場の活発化、そして迎える08-09シーズンがどうなるか。まだまだ面白くなりそうだ。


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posted by batistuta |07:59 | EURO2008 | コメント(3) | トラックバック(0)
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2008年06月28日

引き分けにさえ 清水vs京都

 
 Jリ-グ第14節、清水エスパルス(15位)vs京都サンガ(12位)の試合が、日本平スタジアムにて行われた。
 京都は水本が初出場、初スタメン。期待通りの対人の強さを見せる。攻撃面でもフェルナンジーニョの加入が目に見えて大きく、中断前との違いを見せる。シュート数で清水を圧倒する京都。先制点も古巣相手にフェルナンジーニョが決めた。
 しかし5分後に枝村に技ありシュートを決められ、83分には藤本のFKに原が飛び込みオウンゴールを誘った。
 清水が逆転勝ちを収め、京都はリーグ再開後の2連敗となってしまった。


 ■プレビュー
 清水のU-23の若武者たち。FW岡崎 慎司はトゥーロンで負傷し、本田拓也・山本海人はベンチだ。
 市川 大祐が欠場の模様。その右SBのポジションには、筑波大学時代に関東大学リーグ得点王、MVPにも輝いたFW戸田 光洋が入った。昨季清水に加入してからコンバートされたとのこと。
 注目の高卒ルーキー大前 元紀がベンチ入りしたが出番はなかった。

 GK 西部 洋平 
 DF 戸田 光洋 
    青山 直晃 
    高木 和道 
    山西 尊裕 
 MF マルコス パウロ 
    伊東 輝悦 
    藤本 淳吾 
    枝村 匠馬 
 FW マルコス アウレリオ 
    西澤 明訓 

 京都は注目の水本 裕貴が初登場。ナビスコから監督の信頼を勝ち得た大久保裕樹がCBのコンビを組む。増嶋が左SBのポジション、不調の田原はスタメンを外れ、大剛が3トップに入る。
 古巣相手に出場が期待された森岡隆三は、残念ながらベンチにもいなかった。

 GK 水谷 雄一
 DF 角田 誠
    大久保裕樹
    水本 裕貴
    増嶋 竜也
 MF 佐藤 勇人
    シジクレイ
    中谷 勇介
 FW 渡邉 大剛
    柳沢 敦
    フェルナンジーニョ 


 ■前半 新加入、ポジションチェンジによる危うさ
 前半、いつもはスタメンの田原がトップで張るが、ここに柳沢が入る。常にライン裏を狙う動きで、清水ディフェンスに緊張感を持たせる。
 初めてに近いだろうか、左SBに入った増嶋だが、不慣れなのが明らか。パスミスを繰り返し、守備でも度々マーカーを離してしまうことがあった。攻め上がりでも期待感のあるクロスを上げられず。
 シジクレイもつられるようにパスミスを何度か見せた。中断前と全く異なるディフェンスライン。連携もゼロからに等しいかもしれないが、ここでボールを奪われたら即失点に繋がる。
 実際に枝村のフリーのシュート(足を滑らせてミートできず)、M・アウレリオのシュートなど、クリアが浅く危険なシュートを打たれる場面が見られた。

 京都のゴールキックの際、ターゲットはほぼ田原。これは間違いない。しかしピッチにいない今、ターゲットはシジクレイだった。もしシジクレイのデフォルトポジションがいつもの中盤底で、ゴールキックの度に高い位置でもらおうとして失敗してカウンターを食らったらどうするのか。今日はそういうシーンはなかったが、不安はよぎった。

 しかしリスクをかける分、面白いシーンはあった。度々高い位置でボールを持ったシジクレイ。45分に左サイドからフェルナンジーニョがドリブルで切れ込み、ペナルティアークの柳沢へパス。後ろへ戻したところで、シジクレイがミドルシュートを放った。GK正面ではあったが、抑えの効いた良いシュートではあった。


 ■後半
 後半開始時に、清水の長谷川監督が先に仕掛ける。M・パウロを下げて兵働 昭弘を投入。藤本・戸田との筑波大学OBトリオだ。

 しかし先制点を挙げたのは京都。
 左寄りになっていた京都の攻撃が右に振られ、右SBの角田へ。アーリークロスを挙げDFの足に当たるも危険な位置へ。柳沢がヘディングシュート、GKが弾いたところをフェルナンジーニョが詰めた。京都、先制点!

 「昨日の友は今日の敵」、フェルナンジーニョ相手にゴールを決められて意気消沈する清水かと思われたが、同点はあっけなかった。
 53分、前線の右サイドへ流れた西澤がキープ、後ろの兵働に戻す。兵働は枝村に預けてワンツーを狙うが、DFに潰される。枝村はこれを確認してか、間合いを少し空けてマークする大久保を揺さぶってからシュートに持ち込む。このコントロールショットが、ファーサイドのポスト内側に当たり、さらに逆ポストに当たってゴールラインを割った。清水が同点ゴールを決めて1-1。

 66分、京都は田原と林の2枚同時投入で局面打開を図る。しかし清水の藤本の精度の高いFKとスルーパスでチャンスを作られる。京都は角田が右サイドでチャンスを作るが、田原や勇人が決めきれない。
 逆転を狙う清水は、78分にM・アウレリオを下げて、2年目のFW原 一樹をピッチに送り込む。これが大当たりした。83分、左60度・40m付近からの清水のFK、キッカーはもちろん藤本。巻くような弾道のクロスを上げると、入ったばかりの原がコ-スに入り込む。マークマンの大久保の対応が遅れて、後ろからユニフォームを掴むのみ。シジクレイの足に当たったようでオウンゴール扱いとはなったが、京都の完全なミスだった。

 92分、最後の攻撃でセンターサークルにいたアタリバが背面に大きく蹴り上げる。清水のDFがクリアミス、田原が拾い押し込むだけだったが、GKの飛び出しに焦ったか大きく浮かせてしまう。

 ゲームオーバー、清水が逆転勝ちを収め、通算800ゴールとホーム150勝の達成を見せつけられた結果となった。


 ■総括
 京都、リーグ戦アウェイで5連敗達成。15位に後退したものの、中位がダンゴ状態のために「まだ大丈夫」と思ってるんじゃないだろうか?フェルナンジーニョ・水本の補強で「これで大丈夫」と思っているのだろうか?選手・監督に危機感が感じられない。

 シーズン序盤、各試合あるいは試合中にシステムを変更してちょっとした話題になった「加藤采配」ではあるが、ここのところ脆さを見せてきている。
 フェルナンジーニョのプレースキック(FK・CK)の精度の高さを生かして、高さのある田原に合わせるのは一種のセオリーではあると思うが、G大阪戦・この清水戦と、フェルナンジーニョと田原を入れ替える交代策。
 しかも柳沢・フェルナンジーニョと動きの良かった前線をごっそり代えて、攻撃の流れを分断し、83分の清水逆転ゴールの直前に中谷に代えてアタリバ投入。ああいうインターバルを置くと、集中力が切れるのは守備の方である。今回それがまともに出た。清水のFW原をほとんどフリーにしてしまっていた。

 この試合のWorst Of the Matchは、やはり田原を挙げるしかないだろう。73分のクロスにヘディングで合わせた場面。手前に林が飛び込んでおり、ブラインドになっていた言い訳はできるかもしれない。しかしロスタイムの最後のシュートは、弁明のしようがないだろう。加藤監督も試合後のインタビューで「あれは決めてほしい」とコメントしている。


 ◆MOM 角田 誠
 世間ではやたらと評価が低い気がする。今日の試合のキーマン・Man Of the Match
は、間違いなくこの男。CBから右SB、右SHにコンバートされ、時にサイドでの守備に不安を見せたりする。しかし右サイドの攻撃の活性化に一役買える選手である。

 前半はフェルナンジーニョのCKに2度ほど、角田が合わせそうな惜しい場面があった(一度目は右CK、シジクレイと少しカブった。2度目は左CK、ニアにいたがDFのクリアにあう)。
 今季のサンガで、唯一CKを直接叩きこんだのは角田だけだ。
 フェルナンジーニョのCKは素晴らしく、良いポジションに飛び込める角田、そして田原・シジクレイが必要だ。だからこそ田原とフェルナンジーニョは同時起用しないと意味がないと思う(練習で相性が悪いのだろうか?)

 そして、この試合の角田の真骨頂は「アーリークロス」(相手陣内まで深く切り込まず、浅い位置から上げるクロス)だった。今日3度ほど見せたが、どれも「GKとDFの間へ」というセオリー通り、しかも飛び出しにくい速さと強さのあるボールを蹴りこんでいた。

 後半開始時、若干左サイド寄りの攻撃になっていたサンガにおいて、右サイドの角田がドフリー。しかしその直後、48分に生まれたゴールへの起点。 
 左寄りになっていた京都の攻撃が右に振られ、右SBの角田へ。アーリークロスを挙げDFの足に当たるも危険な位置へ。柳沢がヘディングシュート、GKが弾いたところをフェルナンジーニョが詰めた ……は上のコピー&ペーストである。

 62分にはまたも角田のアーリークロスから決定機。
 DFに当たり正面にボールがこぼれる。そこを勇人が、左上隅を狙って強烈なシュートを放っていったがクロスバーに嫌われた。

 69分にもまたアーリークロスを見せたが、これは決定機にはならず。しかしこの再三の狙いが、次のプレーに繋がる。
 73分、右サイドでボールを持った角田は詰めてくるDFを前に、またもアーリークロスを上げるような小さなキックフェイントを1~2回入れる。警戒したDFを置き去りにして、一気に縦突破!絶妙のクロスを送ったが、これを田原が決め切れなかった。


 ◆勝つ意識
 「相手より走り、相手より強い気持ちで、シンプルに泥臭くチャレンジする」
 これが現在の京都のスローガンだが、最後に「(~チャレンジして)勝つ」をつけてほしい。

 最近の試合後のコメントは、毎試合のように「悪いゲームではなかった」「いい内容でプレーできていた」というものが多い。
 確かに新加入選手、大久保のようにスタメンを勝ち得た選手などがいる中で、前線も最終ライン、いや全体的に連携不足になっているのは否めないし「仕方がない」のかもしれない。しかしこれで残留できなかったら、全て水泡に帰してしまうのではないか。

 最近は「引き分けにさえ」持ち込めず、しっかり負けるパターンが多い。相手チームも「(自チームの)内容が悪かったが、京都相手だったから勝てた」と思うことも多いだろう。

 次はホーム西京極で、現在12位の大分戦。中位以下のチームに勝てないと、降格圏内なんてあっという間だ。いや、もう片足をまるまる突っ込んでいる。

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posted by batistuta |20:32 | 京都サンガ | コメント(7) | トラックバック(0)
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2008年06月27日

リアリズム ロシアvsスペイン

 
 EURO2008の準決勝第2試合、ロシアvsスペインの試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。
 グループリーグ第1戦に続く再戦。ロシアは第3戦からアルシャヴィンが戦列に復帰して別チームに化けたため、この準決勝は全く別物になると考えられた。
 しかしそのアルシャヴィンの存在感が全くなく、ロシアの枠内シュートは88分のシチェフのシュート1本にとどまった。
 スペインは前半のビージャの負傷退場で流れを失うかと思われたが、代わって入ったセスクにより「クアトロ・フゴーネス」が復活。中盤のポゼッションが上がった。そして後半の50分、"美しき遅攻"からイニエスタのパスをチャビが決めて先制。決めきれないF・トーレスと交代したグイーサが73分にゴール。さらにシルバもゴールを決め、気がつけば第1戦と同じ3点差での快勝となった。
 スペイン、24年ぶりの決勝進出を決め、ドイツと雌雄を決することになった。


 ■プレビュー
 ロシアはドミトリー・トルビンスキとデニス・コロディンが出場停止。

 GK イゴール・アキンフェーエフ
 DF ユーリ・ジルコフ
    アレクセイ・ベレズツキ
    セルゲイ・イグナシェヴィッチ    
    アレクサンダー・アニュコフ
 MF セルゲイ・セマク
    コンスタンティン・ジリアノフ
    イゴール・セムショフ
 FW アンドレイ・アルシャヴィン
    ロマン・パフリュチェンコ
    イワン・サエンコ 


 スペインは、警告累積も怪我人もない。正に万全の体制。
 イタリア戦の勝利後にGKカシージャスが「PK戦に勝つことは宝くじに当たったようなもの」と語った。強さに加え、今のスペインには「運」がある。

 GK イケル・カシージャス
 DF ホアン・カプデビーラ
    カルロス・マルチェーナ
    カルラス・プジョル
    セルヒオ・ラモス
 MF アンドレス・イニエスタ
    チャビ
    マルコス・センナ
    ダビド・シルバ
 FW ダビド・ビージャ
    フェルナンド・トーレス


 ■センナの存在感
 開始早々、スペインが仕掛ける。5分、センターサークル付近からシルバが最前線のビージャへ。これがオフサイドもなく通り、横へ飛び込んできたF・トーレスにパス。これはGKアキンフェーエフがブロックした。さらにビージャ、チャビとミドルシュートを放ち、ロシアゴールを脅かす。

 一方のロシアは調子が上がらない。パフリュチェンコのミドルシュートや、直接FKなど枠内を捉えることができない。持ち前の運動量も鳴りを潜めている。おそらくスペインの中盤底に居座る番人、マルコス・センナを避けてだろうか、アルシャヴィンが左、サエンコが右に張る形を取る。相手SBの上がりも止める効果も狙ってのことだろう。しかしアルシャヴィン側のS・ラモスは気にかけることもなく、何度も右サイドをオーバーラップした。
 そしてこのロシアの4-3-3の形が「攻守分断」となってしまい、前線にパスが繋がらない。戦う前にセンナに名前負けしたかのようだ。 

 しかしここでスペインにアクシデント。
 29分にビージャが直接FKを蹴った際に足を痛めたよう。様子を見ていたが、交代を余儀なくされる。34分にはフランセスク・ファブレガスが入った。


 ■Quatro Jugones
 EURO開幕前には「クアトロ・フゴーネス」の文字がメディアを席巻した。

 “クアトロ・フゴーネス”とは「4人の創造者」を意味し、高い技術を持つチャビ、セスク、イニエスタ、シルバの4人が共存することでスペインの攻撃が魅力的になった。
 しかし守備的MFセンナに多大な負荷がかかること、ビージャとF・トーレスの好調から併用も考えられ、スペインの1stオプションとしてはセスクをベンチに下げての4-4-2、チャビが攻守のバランスを取る形が功を奏してきた。
  
 ビージャの急な負傷で、流れが変わるかに見えた。
 しかし考えると、このクアトロ・フゴーネスが同時にピッチに立ったのは第1戦ロシア戦の途中のみ。ロシアに相性の良いシステムなのかもしれない。

 前半は運動量を抑えただけだったのか、それともハーフタイム中にヒディンクの檄が飛んだか。後半開始して、ロシアが高い位置からプレスをかけてきた。しかしこれが裏目に出る。

 中盤のポゼッション(ボールキープ)が上昇したスペインは、ロシアのプレスにも動じることなくパスを回していく。走らされてしまうロシア。
 そして50分、ロシアのペナルティエリアの左角でボールをキープしたイニエスタ。ロシアのディフェンスラインは整っている。しかしそのわずかな隙間を縫うパスを通し、飛び出してきたのはチャビ!GKの股を抜くシュートで先制点を決める。
 エルンスト・ハッペル・シュタディオンが一瞬、バルセローナのホーム、カンプ・ノウになったかのような錯覚を受けた。

 さらにスペインが攻める。中央でボールを持ってDFを引きつけると、左の外れでフリーになっていたF・トーレスにボールが渡る。しかしF・トーレスのシュートはバーの上へ外れる。


 ■監督采配の分かれ目
 先制されたロシア、ヒディンクが勝負に出る。ディニヤル・ビリャレトディノフ、ドミトリー・シチェフの2人を一気に投入。しかしシステムに問題があるのか、戦況は変わらない。

 62分、右サイドでシルバをポストに使ってS・ラモスが上がってボールを受けてクロスを送る。F・トーレスが詰めていたが、ここも決め切れない。
 F・トーレスはこの試合で何度もペナルティエリアでボールを持って緊張感を漂わせるが、なかなか決めることができない。

 すると69分にアラゴネス翁が勝負に出る。
 残り20分あるにも関わらず、残りの交代枠を使い切ってきた。チャビに代えてシャビ・アロンソ、F・トーレスに代えてダニエル・グイーサと、2枚同時交代。今後追いつかれての延長戦、もしくは怪我人が出た際には緊急事態となるが、アラゴネス監督がロシアにとどめを刺しに来た。

 するとこれが大当たりする。交代で入ったセスク、X・アロンソの2人がミドルシュートでGKアキンフェーエフを脅かす。
 そして73分、ロシアの攻撃を防いだ後、シルバが中央をドリブルで上がる。前線で右サイドに逃げたグイーサがボールを受ける。上がってきたS・ラモスに戻して、グイーサはゴール前へ。S・ラモスは、中央のペナルティアークにいるセスクへパス。セスクはこれをダイレクトで前線へ。右から流れてきたグイーサが一旦ロシアの最終ラインに並び、絶妙のタイミングでラインウラへ抜け出した。
 GKが飛び出すも、読みきっていたグイーサは右足アウトサイドで浮かせた。美しく弧を描いてボールはロシアゴールへ吸い込まれる。それを確認しつつグイーサはコーナースポットへ猛然とダッシュ、そしていつものパフォーマンスだ。同郷の先輩、フランシスコ・ミゲル・ナルバエス・マチョン、 "キコ"。かつてのスペイン代表で活躍したFWにオマージュを捧ぐ。

 この時間で2点差――勝利を確信したスペインサポーターは、いつもの「闘牛士の煽り」を叫ぶ。スペイン代表のパスが通る度、歓声が上がる。

 そしてショーは終わらない。 

 82分、ロシアからボールを奪うと、自陣内でイニエスタにボールが渡る。2秒ほど長くタメると(現代サッカーで2秒は長い)、 左サイドを上がるセスクへパスを通す。セスクはロシアDF2人の意識を引きつけると、1点目のアシストのリプレーを見ているかのようなパス。月並みな言い方だが、針の穴を通すように。シルバはそれを決めるだけだった。

 まるで良いところのないロシア。最後にFKを得て、アルシャヴィンがクロスを送りシチェフが頭で合わせた。この試合で初めてのロシアの枠内シュート。あまりにもシュートが来ないと、集中力が切れていてもおかしくないが、GKカシージャスにそのようなことはない。しっかりと止めてみせた。
 
 試合終了。スペインが3-0でロシアに快勝した。


 ■総括
 ロシアは全くと言っていいほど、良いところがなかった。期待されたアルシャヴィンはどこにいたのだろうか?本当にピッチにいたのか?そう思わざるをえないほど、完全に封じられた。
 アルシャヴィンはオランダとの準々決勝の後、「EURO後にはイングランドかスペインでプレーするのではないか」と報じられ、アルシャヴィン自身も「バルセローナでプレーするのが夢」と語っていた。そのバルセローナの選手を前に萎縮したか、「もう移籍は決まった」と慢心があったか。
 対面するS・ラモスには右サイドを何度も上がられ、逆サイドのサエンコはカプデビーラに封じられた。

 ◆数々のジンクスを乗り越え
 ロシアがホーム扱いのために赤いユニフォーム、スペインは黄色いユニフォームだった。スペインでは黄色は「不幸の色」とされている。もちろん迷信ではあり、このユニフォームを着て戦った2月6日のフランス戦には勝利している。
 試合前のスタジアムの上空は美しい夕陽が出ていた。しかしこの後に雨が降り出した。ロシアの赤を消すような天候。

 そしてヒディンクの準決勝のジンクスは守られる結果となってしまった。
 「敗北の方程式 オランダvsロシア」のコメント欄でpirosiさんのご指摘にあった通り、決勝には縁がなかったようだ。

・98フランスWC オランダ代表を率いてベスト4進出:ブラジルにPK負け 3位決定戦でクロアチアに敗北
・02日韓WC 韓国を率いて3位(誤審など色々噂はあるが)
・PSVを率いた04-05のCL 準決勝でミランにアウェーゴールで敗北

 そして上記の02年の日韓ワールドカップ準々決勝、スペインが何度もゴールを取り消されて、延長戦の末にPK戦負けを喫した忘れがたい記憶。その相手はホーム韓国を率いるヒディンク監督だった。


 ◆アラゴネスのリアリズム
 こんなにも自国民から信頼されていない監督がいるだろうか。「続投すべきか?」という世論調査をすれば「NO」が突きつけられ、メディアも監督ではなく選手を信頼しているよう。そして極めつけはスペインサッカー協会。
 アラゴネス監督はフェルナンド・イエロSD(スポーツ・ディレクター)と確執がある。就任直後からアラゴネス監督の後任監督探しをスタートしているという正に内紛そのまま。 (スポーツナビより一部抜粋)

 スペインのこれまでの上位進出を妨げてきたのは「内紛」。かつてのスペインの内乱や、レアルとバルサ、フランコとカタルーニャの対立など民族的なまとまりに欠けてきた。

 「レアル=中央政権」――この見方はいまだ根強い。

 このレアルの象徴であり、今季クラブを優勝に導くなど絶好調だったラウール・ゴンサーレスは招集されなかった。しかしラウールという「怖いアニキ」が不在のため、チームに一体感があるのも事実。このロシア戦だけに関わらず、ベンチで選手たちが肩を組むような雰囲気の良さ、一体感があることによって、スペインがここまで来れたのではないか。
 そしてイエロ(周知の通りレアルの名選手)は、レアルの監督であったビセンテ・デル・ボスケを後任監督に据えようとしている。

 話を戻す。
 アラゴネス監督は「移籍金65億円の男」を特別扱いしない。調子が悪ければF・トーレスは外される。「アンタッチャブルな存在」であったラウールを外すアラゴネス監督、F・トーレスを外すことなど何でもない。第1戦のロシア戦で下げられたF・トーレスが、下がった時にアラゴネス監督を無視した、とゴシップに近いような報道があったが、3点目を決めたビージャがベンチにいたF・トーレスに駆け寄ったこと、そして試合後の記者会見でビージャがF・トーレスを賞賛したことでチームの雰囲気を保っている。

 叱るべき人が叱り、同僚が励ます。社会の縮図のような、心理学の基本のような。

 このロシアとの試合での69分の交代も、実に理に適っている。
 スペインのシステムは、チャビとセンナが中盤でコンビを組む4-4-2。チャビが前に進出したり、下がって守備をしたりと「攻守の天秤」が絶妙だ。当然、チャビには運動量が要求される。
 69分に同じバランサーのX・アロンソを投入。そして第3戦で1ゴール・1アシストを決めたグイーサをF・トーレスに代えることで、「もう1点を狙いつつ、守備・中盤の運動量を失わない」バランスの取れた交代だった。センナ以下、最終ラインに綻びはなく代える必要がなかった。

 「リアリズムそのもの」と言えるイタリアを、「残酷なリアリズム」といえるPK戦を制したスペイン。攻撃の美しさを失わずに結果を得ている。イタリアのPK戦での引き分け以外は全勝。
 決勝の相手はもう一つのリアリズムの国、ドイツだ。3度の優勝、2度の準優勝を誇り、グループリーグを苦しみながらも突破、準決勝でも内容をトルコに持っていかれながらも勝利にこぎつけた。

 ちょうど20年前のEURO優勝国はオランダ。"ミランのオランダトリオ"、マルコ・ファン・バステン、ルート・フリット、フランク・ライカールトを擁して、美しい攻撃が欧州を制した。今年も美しい"クアトロ・フゴーネス"が優勝するのか?
 それとも番狂わせの前大会のギリシャに反して、今年は手堅く行くと見てドイツなのか!?
 
 決勝は29(日)にウィーンのエルンスト・ハッペル・シュタディオン、このロシア戦と同じ会場にて行われる。


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posted by batistuta |08:23 | EURO2008 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年06月26日

Blood Sweat & Beers ドイツvsトルコ

 
 EURO2008の準決勝第1試合、ドイツvsトルコの試合がザンクト・ヤーコブ・パルクにて行われた。
 傷だらけのトルコ、堅く守って一発カウンター狙いかと思われたが、前半から攻勢に出る。調子が上がらないドイツを攻め立て12分に大きなチャンスを作った後、22分にはU・ボラルが押し込んでトルコが何と先制。
 しかしドイツも絶好調のポドルスキ&シュヴァインシュタイガーコンビでトルコゴールを陥落させる。
 後半に入り、お互いのペナルティエリアで微妙な判定が出るもノーホイッスル。しかし79分にラームのアーリークロスをクローゼがヘディングでゴール。
 しかし「残り10分はSuper Turkey Time」。86分にセミヒのスーパーゴールが決まり、2-2の同点に。しかしこのセミヒのゴールに繋がるミスをしたラームが、90分に汚名返上弾。
 ドイツが苦しみながらも気迫のトルコを退けて、決勝進出を決めた。


 ■プレビュー
 ◆ドイツ
 ドイツは、中盤の守備の要のトルステン・フリングスが肋骨骨折のためにベンチスタート。一部報道では先発の可能性もあったが、大事を取ったようだ。
 4-2-3-1システムは、準々決勝のポルトガル戦と同じ。

 GK イェンス・レーマン
 DF フィリップ・ラーム
    クリストフ・メッツェルダー
    ペア・メルテザッカー
    アルネ・フリードリッヒ
 MF シモン・ロルフェス
    トマス・ヒツルスペルガー
    ルカス・ポドルスキ
    ミヒャエル・バラック
    バスティアン・シュヴァインシュタイガー
 FW ミロスラフ・クローゼ


 ◆トルコ 
 キャプテンのエムレ・ベロゾールは太もも裏を痛めており、グループリーグ第1戦しか出場できていない。エムレからキャプテンマークを引き継いだニハト・カフヴェチは、準々決勝のクロアチア戦の延長後半にFKを蹴った際、右の太もも裏を痛めて今大会絶望。
 チェコ戦で左ふくらはぎを負傷したCBエムレ・ギュンギョルも今大会絶望だ。守備の要でCBのセルヴェト・ジェティンは、ベンチにはいたがユニフォーム姿ではない。

 そして気迫でプレーするあまり、警告数が今大会1位というトルコは、トゥンジャイ・サンリ、アルダ・トゥラン、エムレ・アシク、ヴォルカン・デミレルといった主力を出場停止で欠く。
 「満身創痍」「野戦病院」――そんな言葉では足りないほどの緊急事態。特に足りていないCBのポジションには、187cmと高身長の守備的MFメフメト・トパルが入った。結果、M・トパルが試合のカギを握ることになるのだが、それは後の話。

 GK リュシュトゥ・レチベル
 DF ハカン・バルタ
    ギョクハン・ザン
    メフメト・トパル
    サブリ・サリオール
 MF メフメト・アウレリオ
    ウグル・ボラル
    アイハン・アクマン
    ハミト・アルティントップ
    カジム・カジム
 FW セミヒ・シェントゥルク 


 ■レヴ監督とテリム監督の因縁
 98-99シーズンにトルコリーグのフェネルバフチェの監督を務めたことがあるドイツ代表のヨアキム・レヴ監督。そして宿敵ガラタサライを率いていたのは、トルコ代表のファティ・テリム監督である。この時の直接対決は、テリム監督の1勝1分けとリード。


 ■ドイツとトルコ
 そして代表間の直接対決としては、トルコがドイツに対して直近では3勝1分け、1992年の親善試合まで遡りドイツが勝っていないという。

 トルコ移民の「行き先」はドイツが中心であり、関係は浅くない。トルコの中心選手であるハミト・アルティントップはドイツのゲルゼンキルヘン出身であり、弟ハリルと共に地元のシャルケを牽引した。ハミトは今年からバイエルンに加入し、大きな戦力となっている。


 ■前半 トルコが圧倒
 さてそのアルティントップは、準々決勝以降はサブリに右SBを任せて前線で攻撃にふんだんに絡んでいく。8分にはラームの不用意なパスを奪い、シュートまで持ち込んだ。
 調子が上がらないのか、動きが良くないドイツ。一方のトルコはケガや出場停止で主力がいないにも関わらず、この大会で最高の動きを見せる。戦前には引きこもって一発カウンター狙いか、とも考えられたが全く逆で、全体をコンパクトにしたディフェンスを築き、ドイツの攻撃時にスペースを与えない。
 攻撃でもサイドでの1vs1の仕掛け、クロス、後ろからの上がりとドイツを圧倒していった。13分には右サイドを押しこみ、アイハンがマイナスのパスを出すと、エリア内でカジムがフリーでシュート、これはクロスバーを直撃。しかしこぼれ球をしっかりと拾い、H・バルタが左サイドを深くエグってクロス、ニアでセミヒが合わせようとしたがクリアされる。

 決めきれないトルコかと思われたが、22分にドイツゴールをこじ開けた。
 右サイドから粘り強く攻め続けるトルコ、ドイツはクリアができない。低いクロスボールがゴール前に来ると、カジムがスライディングという苦しい姿勢でシュート。フワリと上がったボールはGKレーマンを越えてクロスバーに当たる。ドイツvsクロアチア戦でも見た光景、レーマンがボールを見失うとU・ボラルが押し込んだ。
 トルコ、本大会で初の先制点を挙げる!

 しかしピンチの後はチャンス――トルコのボールキープを、バラックと挟み込んでクローゼがインターセプト。カウンターへ持ち込むと、ヒツルスペルガーが左サイドのポドルスキへと展開。この時点で4vs5とドイツの数的不利だったが、ポドルスキが素早くニアへクロスを上げると、身体を上手く入れたシュヴァインシュタイガーが「点」で合わせて、ドイツ同点に。
 この時パスコースに入られたのは、初CBとなったM・トパルだった。

 前半終了。
 シュート数が前半で、ドイツが3本の枠内1。トルコは15本の枠内9。CKも2-5とトルコが圧倒。数字上でも、内容でもトルコが圧倒した。

 トルコは、守備面でも4-1-4-1をコンパクトに保ち、スペースを消した見事な守備。
 今季チャンピオンズリーグ準々決勝で対戦があったチェルシーとフェネルバフチェ。この試合のドイツのトップ下のバラックと、トルコのM・アウレリオは正にその再現だった。あの時はバラックの勝利だったが(2nd legで得点も決めている)、臥薪嘗胆、このEUROではM・アウレリオが奮起。この試合では、バラックの存在感を消し去った。


 ■後半 ドイツの勝ち越し
 前半終了間際、中盤のロルフェスがアイハンとの競り合いで負傷。後半開始からトルステン・フリングスがピッチに入る。

 50分、ドイツにやっと面白い崩しが見られた。 
 センターライン中央右寄りからメッツェルダーが縦パス。ポドルスキが戻りながら受けて、中央のバラックへ。ポドルスキが下がって出来たスペースを、左SBラームが一気に上がる。受けたラームに、カジムが慌てて下がり対応。エリアへ向けてドリブルで仕掛けるラーム。そこにサブリが横からスライディングタックル。
 しかしノーホイッスル。たちまち湧き上がる怒号とブーイング。リプレーで見ると確かに足に行っている。

 逆にこの後、カジムがエリア内でラームにユニフォームを引っ張られて転倒する場面があった。副審の目の前だったが、ノーホイッスル。この日の主審は、あまりファウルを取らない印象。

 シュヴァインシュタイガーの右サイドからのショートカウンターを、M・アウレリオがストップするなど相変わらずの堅守を見せるトルコ。攻めあぐねるドイツだったが、79分に試合を動かした。
 ディフェンスラインの様子を見ながら中央のフリングスから左サイドのラームへ。ラームはアーリークロスを選択し、絶妙なところを狙った。GKリュシュトゥがパンチングを狙って飛び出したが、クローゼの頭が勝り、ヘディングシュートがトルコゴールに突き刺さった。ドイツ、勝ち越し!
 ここでもマークマンは急造CBのM・トパル。そしてGKリュシュトゥの届かない絶妙なアーリークロス、そして「空対地砲台」のクローゼ弾。全てがうまく回ったドイツの勝ち越し点だった。


 ■Super Turkey Time
 クローゼのゴールは79分。そう、1分後は試合残り10分。"何か"が起きる、スーペル・トルコ・タイムの開演だ。
 81分のU・ボラルの左CKは、ファーサイドのセミヒを狙った素晴らしいクロスボール。GKレーマンがパンチングクリアするので精一杯だった。

 そしてテリム監督が勝負に出る。メヴリュト・エルディング、ギョクデニズ・カラデニズの2人を投入し、一気にFW二枚投入。
 テリム総督から攻撃の号令が下されると、全面攻撃に出たトルコ。ドイツからボールを奪うと攻めに転じ、右サイドをサブリがオーバーラップ。厳しくマークするラームをうまくかわしてクロス、ゴールニアに走りこんできたセミヒがまたも殊勲のゴール!レーマンがブロックしていたが、わずかな隙間に巧みに流し込んだ。
 
 このまま延長戦にもつれ込めば、精神的にはトルコが優位に立てるのではないか…そう思われたた90分。「諦めない魂」の元祖たるドイツの面目躍如。
 左サイドバックが本職だが右利きのラーム、浅い位置でボールを持って中央へ切り返し。限界に来ていたカズムが足をつらせて転倒、ラームは中央のヒツルスペルガーに預けると猛然とペナルティエリアへダッシュ。決して簡単ではないコースだったが、ヒツルスペルガーが精確なパスを通し、受けたラームがゴールを挙げた!
 先ほどはサブリに抜かれての失点だったために、自分で尻拭いを出来たラーム。

 ロスタイムは3分。刻一刻と時は過ぎたが、ドイツゴール前でバラックがトゥメルを倒しFK。正面25mあたりの距離。これが決まろうものなら、奇跡以上だ。すでに3分は過ぎていてラストワンプレー、ここで決めないと終わり。カジムと交代で入ったばかりのトゥメル、アルティントップがキッカーの位置に。直接か、合わせるか。

 観客、そしておそらくはTVの前の聴衆も固唾をのむ。今までトルコは信じられない奇跡を起こしてきた。
 
 助走を入れず、トゥメルが左足で柔らかく狙った。しかしボールは大きく上へ外れ――ホイッスルと共に、トルコ行進曲が鳴り止んだ。
 
 
 ■総括
 「出場可能なのは13人。控えGKがFWに入ることもあるかもしれない」――緊急事態も甚だしいトルコだったが、ここまでの激闘を見せると誰が予想しただろうか。この試合、内容ではむしろトルコが勝っていた。
 EURO2004、W杯ドイツ大会で予選落ちと、大舞台での経験が少ない今大会のトルコ代表。世界3位を経験しているエムレ・ベロゾール、エムレ・アシク、ニハト・カフヴェチら"兄貴たち"はピッチにいない。唯一GKリュシュトゥ・レチベルが最後方から支援してくれるが、前半はGKリュシュトゥの出番が少なかったくらいだった。
 得失点差は予選参加14チームで最下位。この事実に「トルコはグループAの草刈場になるだろう」とも予想していた。

 この試合でトルコを支えた、"躍進"フェネルバフチェの三銃士。
 ウグル・ボラルとカジム・カジム、セミヒ・シェントゥルク。U・ボラルとカジムはEURO予選に出場すらしていない。U・ボラルは左サイドを何度も突破しチャンスメイク、先制点も決めてみせた。カジムはEURO本大会全4試合に出場、テリム監督の信頼も厚い。セミヒは途中出場が多かったが、今大会の3ゴールは全て記憶に残るものだった。

 試合前にテリム監督はこの若武者たちについて、こう語っている。

 「本大会前、成功を収めるには経験と意欲のどちらが大切かと質問されたが、私は意欲と答えた。3人とも若いが、意欲に満ちている。チームの力になっているのも、彼らのそうした気持ちがあるからだ。今大会ではカズムを初戦から使い続けている。彼は熱い気持ちを持つつつも、自分をコントロールできる選手だ。ドイツ戦ではこうした若手に任せることができるだろう。若いが、年齢は問題ではない。若手ならでは躍動感、力強さがチームの大きな武器になるはずだ」  (uefa.comより抜粋)

 テリムの采配、そして選手を見抜く力。このベスト4入りは、正にテリムの力が最大限に発揮されたものだった。
 
 
 一方のドイツは良いところが少なかったが、それでも勝ちにこぎつけられるのが勝者たる由縁。3度の優勝、2度の準優勝は参加国でもちろん最高の成績であり、EUROとの相性の良さを物語る。
 不調のマリオ・ゴメスを安易に投入せず、バランスを崩さない交代策は地味ながら見事。ラームが守備に難を見せたが、キッチリ落とし前をつけた。ヒツルペルガーは抑えの効いたミドルを打てず何度も枠を外したが、パスの精度は高く、4-2-3-1移行後はサイド・中盤底でも高い適応力を見せている。
 唯一の気がかりは、肋骨を骨折しているフリングスが完全ではないこと。痛み止めを打ちながらのプレーとも聞く。そしてレーマンの不安定さ。他国代表GKと比べると明らかで、アーセナルでの出場機会不足の影響が如実に現われている。

 ドイツの決勝の相手はロシアかスペインか。CBコンビも安定しているとは言い難い。クロアチアにもポルトガルにも、そして満身創痍のトルコにさえ2得点づつ決められた。ドイツファンには心臓に悪いが、中立の観客には「点の取り合い」というエキサイティングな試合展開が、決勝で期待できるかもしれない。

 Blood Sweat & Beers――ロルフェスが流血し、汗をかきつくしたカジムが足をつり、最後はドイツのビールでの乾杯という結果に終わった。


 ところでトルコの同点ゴールの後に、乱入者が現われたよう。TVには映らなかったがもしかしたらジミー・ジャンプか?調子に乗らせないために、効果を出させないためにワザと映さなかったのかもしれない。


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posted by batistuta |10:10 | EURO2008 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年06月26日

収穫 G大阪vs京都

 
 ガンバ大阪のACL出場のため延期されていたJリ-グ第11節、G大阪(8位)vs京都サンガ(12位)の試合が、万博記念競技場にて行われた。
 地力の差か、G大阪のペースで試合が進む。バレーが決めきれない時間が続いたが、54分に遠藤が決めてこれが決勝点に。
 0-1で敗れた京都だが、久し振りに次の試合が楽しみになる「収穫」の多い試合だった。


 ■プレビュー
 平島崇に関して情報不足のため分からないが、手島和希は負傷のためベンチ外に。大久保裕樹が今季初の出場にしてスタメン。
 注目の新加入選手、清水から来たフェルナンジーニョはベンチスタート。G大阪から移籍した水本裕貴は今週末の清水戦から出場可能、「昨日の友は今日の敵」とならなかった。

 GK 水谷 雄一
 DF 角田 誠
    増嶋 竜也
    大久保裕樹
    渡邉 大剛
 MF シジクレイ
    中山 博貴
    佐藤 勇人
 FW 柳沢 敦
    田原 豊
    徳重 隆明

 G大阪は、播戸が足首の捻挫により欠場。安田 理大はベンチスタート。

 GK 藤ヶ谷陽介 
 DF 加地 亮 
    中澤 聡太 
    山口 智 
    下平 匠 
 MF 橋本 英郎 
    明神 智和 
    遠藤 保仁 
    二川 孝広 
    ルーカス 
 FW バレー 


 ■襲い来る"縦"の脅威
 昨年のナビスコ王者であり、リーグでも最後まで優勝戦線に絡んでの3位であったG大阪。今季は厳しいACLの日程に苦しめられているため現在8位と奮わない。
 しかし、やはりこのG大阪のプレースタイルは観ていて面白い。今季の京都の試合を(TV放映がなかったナビスコを除いて)全て観てきたが、今のところ最も面白い対戦相手だった。

 前線のバレーは、ありきたりな言い方を承知で言えば、正に重戦車。何本も送られる後方からのパスに対して、寄せてくるDFにビクともせず前を向けるボディバランスはやはり魅力だ。そんなバレーに絡むのはFC東京から来たルーカス。自らもシュートを狙いつつ、スペースメイキングや繋ぎのために下がるなど献身的な動きには頭が下がる。
 この2人に二川と遠藤が、常にパスを狙う。G大阪サポには「ワクワク」、対戦相手サポには「ハラハラ」である。これは決められても仕方がない、むしろ嬉しいかも、という複雑な境地にまで至った。

 最高のお膳立てをしてもらっているにも関わらず、決め切れなかったのがバレーだ。全て決められたら0-3とか0-5で京都が負けているんじゃないだろうか、と思ったほどだ。EUROでのルーカ・トーニを彷彿させる位に、決定機を外す。
 もちろん京都のDFも奮起していた。中でも今季初出場で、バレーのマンマークについていた大久保のプレッシャーやいかに。GK水谷と1vs1になりかけたところを、スライディングでクリアしたり、身体を寄せたりしていた。初出場という点で言えば、及第点だろう。

 G大阪ユース上がりで安田の一つ下の左サイドバック、下平。下平の攻め上がりも見事で、39分には角田を振り切りクロスを上げ、バレーにチャンスを与えた。8つ年上の加地も巧みなアーリークロスを見せ、両サイドから京都ゴールを脅かす。

 終始、試合の主導権を握ったのはG大阪。
 54分に二川が、京都の選手に囲まれながらも粘り、ペナルティーアークにいるルーカスへ。その様子を窺いながら、前線へスルスルッと上がっていた遠藤。ルーカスはそれを見逃さず、二川のパスをつま先で背面方向にダイレクトパス。遠藤はGKの動きをしっかりと読み、コースへ流し込んだ。
 この1点が決勝点となった。
 

 ■悪くなかった京都
 ……とここまで書くと、京都がボロボロだったかのように見えるがそうでもない。中断前にはなかった「期待感」があったのだ。
 
 開始して5分までに2つほどG大阪ゴールに迫る場面があった。その後、押し込まれる時間帯だったが14分、G大阪のCKをクリアするとそのままカウンターに持ち込む京都。前線から自陣まで戻った柳沢が右サイドに張りポストプレー、角田が柳沢を使ってワンツーで抜け出し、さらに前で右サイドに張っていた中山ともワンツーを使って、ゴールエリアでGKと1vs1になる。隅を狙ったが、ゴール左へ惜しくも外れた。これを決め切れない辺りが遠藤との差か。
 出番の少ない角田だが、元はセンターバックにも関わらず、右サイドハーフや右サイドバックで面白いプレーを見せる。個人的に好きな選手である。

 そしてそのすぐ後、自陣の左サイドから大剛が勇人を使ってワンツーで抜け出したり、柳沢や中山がサイドへ張り出したりと、前半は京都がサイドを上手く使う場面が多かった。預けてタッチ&ゴーを繰り返せば、大剛もゴール前でシュートを放ったりする。途中で中谷を入れたにも関わらず、大剛を左SHに上げずにそのまま左サイドバックに残したのも、その方が攻撃に厚みが出ると、加藤監督は考えたのではないか(実際には、後半の大剛の攻め上がりが少なかったが)
 
 フェルナンジーニョの加入でポジションを脅かされるであろう徳重は、今日は何度もウラを突くプレーを見せた。残念ながらそのほとんど(全て?)がオフサイドではあったが、パサーと呼吸が合えば面白くなる。3トップの柳沢が右に張り、田原が少し右に流れれば左から中央にかけてスペースが出来る。そういう突き方をすれば、また面白そうだ。

 さて58分に入ったフェルナンジーニョ。185cm田原と交代。161cmというJリーグ登録選手最小だが…本当に小さい。
 しかしこのフェルナンジーニョ、やはり凄かった。コーナーキックやフリーキックのプレースキックに関して「上手い」とか「定評がある」とか言われている徳重や林と比べて、レベルの違いを感じさせる(両選手を貶める意図はありません、あしからず)。
 京都にセットプレーでの得点が少ないということは、中断中の「まとめ」で記したが、これは今後の大きな武器になるかもしれない。増嶋のロングスローをGK藤ヶ谷が処理をミスしてCKになった場面があったが、こういう合わせ技も期待できる。
 その後は遠目のFKで、ゴール前の増嶋に放り込む場面があった。通常の流れているプレーでは連携が必要だが、セットプレーでの連携プレーは比較的早く構築できるのではないだろうか。
 高さのあるシジクレイや田原がいるのだから、CKで直接合わせて…という場面に期待したい。

 こういう精度の高いパスを目の当たりにした後では、アタリバのパスの稚拙さが浮き彫りになってしまう。調子が良い時は面白いパスを出したりするが、如何せん不安定である。ガンバレ、アタリバ。


 ■総括 と言うより次戦に向けて
 おそらく連携面を考えてフェルナンジーニョを途中交代で入れた加藤監督。試合後のコメント:

>中盤前めの選手をサイドに開いてプレーさせていたので、相手に中盤でパスを繋がれてしまいました。後半にポジションを修正して、相手の中盤の厚みに対して抵抗できるような形に変えました。
 
 とある。しかし流れの中でチャンスを作れていたのは前半だと感じた。それはやはり「得点を狙いに行く上でリスクを犯しているから」であり、サイドを起点にすることでピッチを広く使い攻撃できていたと思う。大剛と角田の両サイドバックの上がりで厚みをもたらすこともできていた。
 徳重を中谷に変えたことで逆にバランスが崩れてしまい、後半はフェルナンジーニョのプレースキックでしかチャンスを作れなかった印象がある。そしてそのセットプレーのクロスボールの先には田原と交代してしまい、そこにはいない…と。

 守備に関しては、再び手前味噌で申し訳ないが、「ボランチ・シジクレイ」が当たっていると思われる。ただでさえ、縦を何度も通されたG大阪の攻撃に、シジクレイをCBに起用していたら悲惨な結果だったかもしれない。大久保起用はリスキーではなかった(もちろん健康ならば手島がベストだろうが)。
 時に4バックの前での壁に、横から崩された時は空中戦で守るシジクレイ。奪い返してからの散らし・展開も悪くない。巨漢だが、懐深いボールキープを見せてくれる。

 後半はフェルナンジーニョと交代で田原を下げた後に、柳沢が負傷退場するというアクシデントに見舞われてしまった。1点を取って引いて守ってしまっているG大阪を、加入したてで小柄なフェルナンジーニョのワントップで崩すのは容易ではない。
 サイドを崩したところで、クロスに合わせられる選手が少ない。失点後のあの流れでは、負けも仕方ないと言える。

 ただ、光があった。


 ◆水本加入
 さて世間で(特に古巣の千葉、G大阪)とやかく言われている水本。京都も今冬の大量補強に加えて、ここでフェルナンジーニョ・水本を補強と「今季の京都は、読売ジャイアンツみたい」との声もあるようで…
 また水本のG大阪退団が「北京五輪のために出場機会を求めての退団」(新聞報道であり、事実かは分からないが…)とあるが考えれば柳沢も同じ理由(出場機会)であり、水本はただただ時期が悪かった。実際は京都が開幕前から狙っていたというが…

 しかし、水本がこれまでの補強選手と比べて明らかに異なるのが「若さ」だ。梅本社長も、そして加藤監督も、水本の将来性を含めて大きな期待を寄せているだろう。京都ではスタメンを死守するくらいに活躍してほしいし、ずっと京都でやっていってほしいもの。
 あまり穏やかではない移籍だったため、他のクラブだけではなく「いきなり背番号8をつけた水本」に対して、懐疑的な目を向ける京都サポーターもいるのも事実。認めさせるには水本自身がピッチで証明するしかない。サンガの一員に相応しく、北京でもDFの要として活躍できるということを。
 厳しいが、プロは結果が全て。サンガの当面の目標は、結局J1残留になりそうだ(開幕してしばらくは「上位進出」という夢を見れたが…)。その目標達成にフェルナンジーニョと水本が大きな力となってくれることに期待である。

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2008年06月24日

EURO2008 ARCHIVES

 
 EUROも遂にベスト4が出揃いました。

 初めて当ブログにいらっしゃった方にも、これまでの闘いを振り返るのにも便利な一覧表みたいなものを作ってみます。携帯で見て頂いている方には、リンクで飛べませんので少々無意味かもしれませんが…
 (自分の作業には少し関連しています)

 また快進撃のロシアの中心人物であるアンドレイ・アルシャヴィン、所属のゼニトについて過去に取り扱った記事へのリンクも張っておきます。

 お時間ありましたら、ご覧になってみて下さい。

 ■開幕前の優勝、得点王予想(もちろん改竄はしていません)

 EURO PREVIEW ~無敵艦隊はアルプスに停泊できず~
 スペインが優勝したら大ハズレもいいとこです。

 ■EURO2008 Group League #1
 
 美しき守備 スイスvsチェコ
 M・ジョーダンとC・ロナウド ポルトガルvsトルコ
 オーストリアvsクロアチア & ドイツvsポーランド
 計画通りか ルーマニアvsフランス
 Clockwork オランダvsイタリア
 裏を取る動きの教科書 スペインvsロシア
 堅守と衰えの行方 ギリシャvsスウェーデン


 ■EURO2008 Group League #2

 大航海時代 チェコvsポルトガル 
 開催国相手+雨=? スイスvsトルコ
 SBが勝負を分けたか クロアチアvsドイツ
 英雄の記録 オーストリアvsポーランド
 危機 イタリアvsルーマニア
 クライフイズム オランダvsフランス
 Sting スウェーデンvsスペイン
 背水の帝国 ギリシャvsロシア


 ■EURO2008 Group League #3

 スイスの中のトルコ人 スイスvsポルトガル
 恵みの雨 トルコvsチェコ
 まるでラグビーのやうに オーストリアvsドイツ
 諸刃の剣 ポーランドvsクロアチア
 ウラ得点王 フランスvsイタリア
 贅沢な控え オランダvsルーマニア
 ピチーチの輝き ギリシャvsスペイン
 皇帝出現? ロシアvsスウェーデン


 ■EURO2008 Quarter Final

 ロジカルな勝利 ポルトガルvsドイツ
 奇跡は何度まで? クロアチアvsトルコ
 敗北の方程式 オランダvsロシア
 籤引 スペインvsイタリア


 ■アンドレイ・アルシャヴィン特集

 ゼニトって何?
 ゼニトvsバイエルン(UEFAカップ)
 矛盾 ゼニトvsレンジャーズ

 「ゼニトって何?」ではまだアルシャヴィンの名前が出て来ず、「vsバイエルン」の記事ではアルシャヴィンが欠場ではありますが、ゼニト絡みということで一応記載しておきます。

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2008年06月23日

籤引 スペインvsイタリア

  
 EURO2008の準々決勝第4試合、スペイン(D組1位)vsイタリア(C組2位)の試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。
 イタリアはピルロが警告累積により出場停止。司令塔を欠き、攻め手を欠く。その一方でキエッリーニが奮起し、スペインの攻撃を耐え凌いだ。
 EURO準々決勝の4試合で3試合目の延長戦、そして2試合目のPK戦となった。世界最高峰のGK同士の対決、ブッフォンが1人を止めたがカシージャスが2人をストップして、スペインがPK戦を制した。


 ■プレビュー
 スペインはグループリーグ第2戦のスウェーデン戦と同じ布陣。

 GK イケル・カシージャス
 DF ホアン・カプデビーラ
    カルロス・マルチェーナ
    カルラス・プジョル
    セルヒオ・ラモス
 MF アンドレス・イニエスタ
    チャビ
    マルコス・センナ
    ダビド・シルバ
 FW ダビド・ビージャ
    フェルナンド・トーレス


 イタリアはアンドレア・ピルロ、ジェンナーロ・ガットゥーゾが警告累積のため出場停止。DFアンドレア・バルツァーリがケガのため出場不可。
 グループリーグ第3戦のフランス戦でのシステム、4-3-1-2をデフォルトに。

 GK ジャンルイージ・ブッフォン
 DF ファビオ・グロッソ
    ジョルジョ・キエッリーニ
    クリスティアン・パヌッチ
    ジャンルーカ・ザンブロッタ
 MF マッシモ・アンブロジーニ
    ダニエレ・デ・ロッシ
    アルベルト・アクイラーニ
    シモーネ・ペロッタ
 FW ルーカ・トーニ
    アントニオ・カッサーノ


 ■前半
 前半のスタッツ。スペインのシュート数は10、枠内2。イタリアは2、枠内1。ピルロを欠くイタリア、いやピルロがいた時ですら攻撃のバリエーションが少なかったのが現実。ルーマニア戦でのCKからパヌッチのゴール、フランス戦のPKとデ・ロッシのFKのコースチェンジによるゴールの3点のみ。
 可能性としてはフランス戦のように、トーニにボールが集まることだったが前線にボールが行かず、渡ったとしてもプジョルとマルチェーナのCBコンビがしっかりとトーニに寄せてシュートに持って行かせなかった。

 スペインは今まで左サイドのシルバ、右サイドのイニエスタといった配置だったが、この試合はポジション交換していた。ザンブロッタ・グロッソというイタリアSBとの相性を考えていたのかもしれない。
 シルバはこの試合で最もシュート意識が強く、何度もイタリアゴールを脅かしたがGKブッフォンが立ちはだかった。「そこから打って、入るはずもない」と言わんばかりに、次々にシュートをストップしていく。


 ■リスクを犯さなかったイタリア
 「勝つ時は1-0で良い」――イタリアの美学であり、0-0でPK戦を選ぶのも辞さないだろう。
 ピルロほど攻撃の組み立てを効果的にできていなかったデ・ロッシとアクイラーニの中盤。ペロッタはローマでトップ下にいることが多いが、あくまで「トッティありき」のシステムでの役割。今回のEUROでの「4-3-3」「4-2-3-1」「4-3-2-1」のどれであっても、あまりペロッタが持ち味を出せるポジション・周りとの連携がなかったように思える。
 アンブロジーニの運動量は目立つほどではない。セットプレー、CKやFKでのフィジカルの強さを生かした絡みに期待をかけるとはいっても、120分でイタリアが得たCKはたったの1本。
 攻撃の手詰まり感は拭えず、両SBのグロッソ・ザンブロッタの効果的な上がりは見られない。2トップではトーニが前線に張るが、ボールが来ないカッサーノは下がってもらいに来る。しかしカッサーノがセンターライン近くでボールを受けたところで、前線をルックアップしても出すところがない。

 「4-4-2」のスペイン、中盤真ん中のチャビが上がりがちになった時には「4-1-3-2」に近くなる。イタリアがもし1点を取りに行くのならば「4-2-3-1」の形にして、センナにプレッシャーをかけることもできた。ただその場合は、失点のリスクももちろん上がる。

 交代カードを先に切ったのはイタリア。ペロッタを下げてカモラネージを投入。これで「4-3-1-2」から「4-3-2-1」というトーニのワントップに、カッサーノとカモラネージの2シャドーという形に近くなった。この後にはカッサーノに代えてアントニオ・ディ・ナターレを入れて「4-3-2-1」をキープしていたようだった。

 この「クリスマスツリー」が機能するのは、前線に「個で局面を打破するプレーヤー」が必要な気がする。昨年のチャンピオンズリーグ王者のミランのカカがそうであり、今季のアレッシャンドレ・パトでもある(パトの加入がシーズン最初からだと、ミランの成績は全く違っていたはず)。カッサーノは少々持ちすぎるし、トーニも独力突破型ではないのはバイエルンでのプレーを見て明らか。

 
 ■崩せなかったスペイン
 ただイタリアで最も良かったのはキエッリーニである。高さのないスペインFWにあって、平面的な勝負強さを持ちウラを取る能力に長けたビージャ・トーレスという2人に対しては、間違いなくファビオ・カンナヴァーロが相性が良かった。そのカンナヴァーロを大会前に負傷させてしまったのがキエッリーニである。
 そのキエッリーニが最も活躍したのは皮肉な話だ。責任感もあったのかもしれない。シュートコース、パスコースなど「コースを消す動き」が素晴らしく、地味ながらスペインの得点機を潰していった。パヌッチらと協力し、積極的なライン上げでオフサイドも多く取った。

 スペインの得点機の一つであった延長前半3分の場面。
 左サイドをドリブルで上がったビージャがクロス、ファーサイドでグイーサが折り返して、セスクがシュートもキエッリーニのクリアにあう。浅いクリアボールにシルバが食らいつきシュートまで持ち込むが、この時もシュートコースを消していたのはキエッリーニだ。ブッフォンと並んで、スペイン完封に貢献したといえる。

 後半終わってから表示されたスタッツは、スペインがシュート数18、枠内5本、CK7本。イタリアはシュート7本、枠内2本、CKは1本。スペインが幾度となくシュートを放ったが、巧みにスペースを消してイージーなシュートを打たせなかったイタリアだった。


 ■PK戦
 イタリアが守りきった。しかし得点はできない。スコアレスドローは当然の帰結だったかもしれない。クロアチアのビリッチ監督の言葉のように「PK戦はくじ引きのようなもの」である。世界最高峰のGK2人の対決、どう転んでもおかしくない。

 結果論かもしれないが、PKのキッカーやシチュエーションを軽く分析する。

 スペインの1stキッカーはビージャ。PK職人として有名である。そして2人目のカソルラ、4人目のグイサ、5人目のセスクと、交代選手をしっかり使った(グイーサはストップされた)
 対するイタリアは、ドイツW杯のフランスとの決勝戦で最後に決めたグロッソが1stキッカー、しっかりと沈めた。

 しかし外してしまったイタリアの2人。
 2番目はマンチェスター・ユナイテッドとのチャンピオンズリーグ準々決勝でPKを外したことが記憶に新しいデ・ロッシ。4人目は、延長後半に接触プレーで倒れこみ、観客から大ブーイングを受けてのプレーを続けることになったディ・ナターレ。
 何となくデ・ロッシとディ・ナターレが外した状況も納得が行く。

 そしてコイントスによる「スペインサポーターをバックにしたPK戦」。クロアチアvsトルコ戦でも、味方サポーターをバックにしたトルコが、PK戦を勝利している。


 ■今後のスペイン
 スペインの良かった点といえば、内容はどうあれ、何とか勝ち抜けたこと。
 他の準々決勝のブロック、ポルトガル・クロアチア・オランダは1位通過をグループリーグ第2戦で決め第3戦で主力温存し、準々決勝では途端に動きが悪くなり敗れ去った。スペインも決して動きが良くはなかったが、何とか乗り切った。これは大きい。

 準決勝の相手はロシア。グループリーグ第1戦で4-1と完勝したが、その第1戦不在だったアンドレイ・アルシャヴィンが第3戦、準々決勝と輝き続けている。試合を経ることで、ヒディンクのスペイン対策材料が蓄積されているだろうし、前回対戦の課題を修正してくるはず。
 今大会最強とも見られたオランダを、(オランダの動きが悪かったとはいえ)内容を伴う圧勝劇。勢いは間違いなくロシアにある。


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posted by batistuta |17:26 | EURO2008 | コメント(5) | トラックバック(0)
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2008年06月23日

敗北の方程式 オランダvsロシア

 
 EURO2008の準々決勝第3試合、オランダvsロシアの試合がザンクト・ヤーコブ・パルクにて行われた。
 死のグループCで9得点・1失点、3連勝。圧倒的な強さを見せていたオランダだが、この試合では精彩を欠いた。FKでの守備に難があったロシア相手にチャンスを決めきれず、逆に56分にパフリュチェンコに決められてしまう。
 後半終了間際のFK、今度はファン・ニステルローイがきっちりと合わせて土壇場で追いつく。追い風がオランダに吹いたかと思われたが、ミドルシュートなどの単調な攻撃でリズムを作れないオランダ。
 延長になるとオランダの動きはさらに悪くなり、ロシアのカウンターが目立つようになる。そして延長22分にトルビンスキのゴール、26分にはアルシャビンが止めを刺す3点目。
 グループリーグでの戦いぶりで優勝候補に挙げられたオランダが1-3で敗れ、アッサリと決勝トーナメントから姿を消すことになった。


 ■プレビュー
 オランダはグループリーグ第1戦、第2戦と同じ布陣で挑む。

 GK エドウィン・ファン・デル・サール
 DF ジョヴァンニ・ファン・ブロンクホルスト
    ヨリス・マタイセン
    ハリド・ブラルーズ
    アンドレ・オーイェル
 MF オルランド・エンヘラール
    ナイジェル・デ・ヨンク
    ウェスレイ・スネイデル
    ラファエル・ファン・デル・ファールト
    ディルク・カイト
 FW ルート・ファン・ニステルローイ


 ロシアは「凱旋の皇帝」アルシャヴィンを軸に構成。

 GK イゴール・アキンフェーエフ
 DF ユーリ・ジルコフ
    セルゲイ・イグナシェヴィッチ
    デニス・コロディン
    アレクサンダー・アニュコフ
 MF セルゲイ・セマク
    イワン・サエンコ   
    イゴール・セムショフ
    コンスタンティン・ジリアノフ
 FW アンドレイ・アルシャヴィン
    ロマン・パフリュチェンコ 


 ■敗北の方程式
 EUROを欠かさず観ている人なら既にお分かりのことだが、これまで行われた準々決勝の3試合、全てグループリーグ1位のチームが負けている。コンディションを整えるため、グループリーグ第3戦では控えメンバーを中心にした布陣。こうすることによって体力の回復はできるが、試合への集中力が落ち、試合勘がおかしくなるようだ。
 ピッチ全体を使い、SBファン・ブロンクホルストの幅広い攻撃参加、CBハイティンハやGKファン・デル・サールのような高いフィードセンス。文句のない好チームのオランダ――のはずだった。


 ■前半
 開始してすぐの7分。オランダのゴールキックを奪ってそのままカウンターに持ち込むロシア。右に展開し、セムショフがクロス。パフリュチェンコがフリーでヘディングに持ち込むが、これを外してしまった。この時は「チャンスを決めきれないロシアが負けるのか」と思っていた。まさかこの後、ロシアの方がチャンスを多く作れると思わなかったからだ。

 オランダは流れの中のプレーでは、効果的な崩しができない。タッチ&ゴーなどあるはずもなく、SBの上がりもない。
 ファン・デル・ファールトの精確なFKがゴール前に放り込まれるが、デ・ヨンクやファン・ニステルローイが届かないという場面が繰り返される。終わってから考えると、この「届かない」は「惜しい」のではなく、(休んだにも関わらず、いや休んだからか)コンディションが上がらないプレーヤーの「もう一走り」が出来ていなかったのだろう。ファン・デル・ファールトの感覚としては、いつもならこのクロスボールのスピードで決めてくれるという信頼感があったはず。

 前半にロシアで目立っていたのはコロディン。CKのこぼれ球というセカンドチャンスで、ミドルシュートを放っていったが、今大会の傾向としては珍しく枠を捉えていた。遠くから、もしくは直接FKでのシュートがほとんど浮いてしまう公式球、EURO PASS。コロディンのシュートはGKファン・デル・サールを脅かした。


 ■後半
 後半開始時、試合の流れを変えたいオランダのファン・バステン監督が先に動いた。カイトに代えて、ロビン・ファン・ペルシーを投入。第3戦での好調ぶりからスタメン起用も考えられたが、後半からの出場となった。
 しかしこの試合のファン・ペルシーはシュートの精度を欠いた。72分にロシアゴール前のペナルティアークという近い位置でFKを得たオランダ、スネイデルが蹴るかと思われたがファン・ペルシーが思い切り蹴りフカした。その他の場面でも、ファン・ペルシーのミドルシュートは枠を外すことが多かった。

 54分になるとオランダは、ブラルーズを下げてヨニー・ハイティンハをピッチに送り出す。先日に生まれたばかりの娘が亡くなってしまったブラルーズ。悲しみの強行出場となったが、この試合では逆効果だったようだ。前半は積極的な上がりを見せることは出来ず、左サイドに流れてくるパフリュチェンコの対応に追われた。アルシャヴィンもドリブル突破を狙ってきた場面もあり、ヒディンクが「オランダの傷心の右サイド」を徹底的に突いてきたのかもしれない。
 ともかくも停滞気味、いやむしろチャンスが多いと言えない前半を経てきたオランダ。攻撃のカードを切るかという選択肢の前に、0-0というスコアで守備的な選手同士を代えるという事態になってしまった。

 そしてこの交代で、試合の流れにハイティンハが乗り切れていなかったか。
 オランダの右サイド、つまりはロシアの左サイドをアルシャヴィンが攻めこみ、オーバーラップしたセマクがボールを受けて、ゴール前へクロス。マークについてきたマタイセンをうまく外し、ニアに走りこんだパフリュチェンコが合わせてゴール。
 オランダ、このEURO本大会で初めて先制点を許した。

 さらにロシアの攻撃が続く。
 アルシャヴィンが中央からドリブルで上がり、右のサエンコへ。トラップでファン・ブロンクホルストをかわしてシュートに持ち込んだがゴール右へ外れた。

 すると62分、オランダはエンヘラールを下げて、イブラヒム・アフェライを投入。グループリーグ第2戦でも使った戦術、「ファン・デル・ファールトを中盤底で」起用する。ロッベンのコンディションが悪かったのだろうか。1点リードを許している時に若いアフェライで行く余裕があったか。
 対するロシアは、今日はベンチスタートだったディニヤル・ビリャレトディノフをここで投入、セムショフを下げる。システムのバランスは崩さないが攻撃的な姿勢は保つ。

 この試合のキーポイントだったかもしれない「主審のファウル基準」。他の試合と比べて、当たりの強い守備を流す傾向にあったリュボシュ・ミヘル氏のジャッジ。
 69分に激しいルーズボールの競り合いがあったが、笛で止まることはなく、オランダが諦めたかにも見えつつ、ロシアがルーズボ-ル争いに勝利。そのままショートカウンターを仕掛け、縦パスをパフリュチェンコがダイレクトで前へ流す。浮き球になり、苦しい体勢からアニュコフがシュートもGKファン・デル・サールがストップ。
 残り約20分、ロシアはたったの1点リードという場面で、右SBアニュコフが最前線まで顔を出しリスクを犯している。

 70分を過ぎるとオランダの足が「目に見えて」止まってくる。アルシャヴィンが何度もゴールライン近くまで深くエグってマイナスのクロスを上げ続ける。
 ロシアは攻勢を保ち続け、素早いカウンターでオランダを追い込む。さらに前線のサエンコを下げて、フレッシュなドミトリー・トルビンスキを入れてくる。
 またもロシアは左サイドを攻め、GKファン・デル・サールの飛び出しを避ける横パスにトルビンスキが合わせるだけだったが、シュートまで持っていけなかった。

 すると86分にパフリュチェンコのハンドにより、左45度・30m付近のFKを得たオランダ。今まで散々作ってきた「FKで、GKとDFの間に放り込み、合わせる」がようやく結実。スネイデルのFKを、ファン・ニステルローイがフリーでヘディングで合わせて同点弾。ヨハン・クライフに並ぶ代表通算33得点目を挙げた。

 その後、オランダの前線へのボールがラインを割りかけた時、スネイデルがボールセーブ。そこにコロディンがスライディングタックル、主審がイエローカードを提示。すでにこの試合で1枚もらっているコロディンが退場で、延長戦でロシアが圧倒的に不利かと思われたが、その前にスネイデルのセーブの時点でラインを割っていたとの副審判断で、カードも取り消された。


 ■延長
 こうなると交代枠を使いきってしまったオランダが不利。
 中2日のロシアは、延長戦でも激しく動き回る。アルシャヴィンが1vs1を仕掛け、パフリュチェンコのシュートはクロスバーを直撃。アルシャヴィンがまたもサイドを深くエグってクロス、これはトルビンスキが決めきれない。ロシアがFKを得ると、ジルコフの惜しいシュートが出る。

 延長後半になってもロシアの猛攻が続く。
 延長22分。もう何度見たか、アルシャヴィンがまたもゴールライン際まで突破してクロス。GKファン・デル・サールを越えるループ気味のパスに、トルビンスキが飛び込んだ。ファーサイドでギリギリのところ、左足のアウトサイドで軽く合わせて、自身のポスト直撃も避ける見事なシュート。ロシアに追加点が生まれて2-1。

 延長24分、ここでもヒディンクは攻撃的な交代。FWパフリュチェンコに代えてドミトリー・シチェフを投入。時間稼ぎの意味合いもある交代だが、FWを代えることによって前線からの守備をすることもできる。

 26分、ロシアの相手陣内の浅い位置で右サイドからスローイング。ペナルティエリアに向けてロングスロー、中央からニアサイドへ流れてきたアルシャヴィンが、ボールの動きをしっかり捉えてシュートに持ち込む。名手ファン・デル・サールの股間を抜くシュートで、オランダに止めを刺す。
 この試合で代表引退となったファン・デル・サール、記憶に残る「嫌な」最後のシュートだっただろう。 

 CKはオランダ4、ロシア11。圧倒的にロシアがオランダゴールへ殺到していた結果だ。ロシアがオランダを下し、準決勝に進出した。


 ■総括
 「時計の街スイス」で、快進撃を続けたオランダ。次の準決勝からオーストリアのウィーンでの試合になる予定だったため、次で負けた場合に「精巧な時計じかけのオレンジ、ウィーンでは動かず」のような題名を考えてもいたが、まさかここで敗れるとは思わなかった。
 冒頭に記した「敗北の方程式」に当てはまってしまった。あれだけダイナミックな攻撃、不安視されていた守備が安定していたが、この試合では一変した。
 トルコのような反撃の強い力を感じることもなく延長、いや後半あたりから単調・淡白な攻撃になってしまった。ファン・デル・ファールトやスネイデルがミドルシュートを打っていったが、守備陣形が整っているロシアは焦ることはなかった。
 また27度という暑さが、オランダの運動量を奪ったかもしれない。


 対するロシアも同じ条件のはずだが、運動量は圧倒的。後半以降も運動量は落ちることなく、カウンターの時にはサポートが常に上がってきていた。
 1点目の起点になり、2点目をアシスト、3点目を自ら決めたアルシャヴィンは間違いなくMan Of the Match。ブラルーズら不安定になったDF陣を徹底的に突き、ゴールラインまでのドリブル突破でロシアにチャンスを作り、オランダにはプレッシャーを与え続けた。

 またもや”マジック”を見せつけたヒディンク監督は「テクニック、戦術、体力のすべてでうちがオランダを上回っていた。最後はわれわれの強靭(きょうじん)なスタミナが試合を決定付けた」と試合後に語っている。オランダの調子は悪かったが、ロシアが強かったのも紛れもない事実。もしオランダが本来の調子であったとしても、「必ず」勝ったとは言いきれないだろう。

 ロシアの次の相手はスペインvsイタリアの勝者。グループリーグ初戦で1-4で大敗したスペインにリヴェンジしたい気持ちが強いだろう。過ちは2度繰り返さない。今のロシアには”皇帝”がいる。


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posted by batistuta |01:42 | EURO2008 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年06月21日

奇跡は何度まで? クロアチアvsトルコ

 
 EURO2008の準々決勝第2試合、クロアチア(B組1位)vsトルコ(A組2位)の試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。
 26度の暑さが、両チームから体力を奪う。前半、クロアチアが多くのチャンスを作るも決めきれない。トルコはファウルが多く、次々と次戦出場停止選手を生み出していく。しかしその後先を考えないハードな守備が奏功し、クロアチアの得点機会を奪っていく。
 延長でも決着がつかない、と思われた延長29分にクラスニッチが決めて、遂に試合が動く。しかしグループリーグ第2戦、第3戦と逆転してきた”ミラクル・ターキー”がここでも真価を発揮。ロスタイムにセミヒが殊勲の同点ゴールを上げる。
 結局PK戦に突入し、トルコの勢いが勝って3-1。傷だらけのトルコが、ベスト4に名乗りを挙げた。


 ■プレビュー
 クロアチアは第2戦と同じ、4-2-3-1の布陣で挑む。

 GK スティペ・プラティコサ
 DF ダニエル・プラニッチ
    ヨシップ・シムニッチ
    ロベルト・コヴァッチ
    ヴェドラン・コルルカ
 MF ルカ・モドリッチ
    ニコ・コヴァッチ
    イヴァン・ラキティッチ
    ニコ・クラニツァール
    ダリヨ・スルナ
 FW イヴィツァ・オリッチ


 トルコは正に満身創痍。エムレ・ベロゾールが間に合わず、痛々しいテーピングを巻いて強行出場を続けたセルヴェト・ジェティンが遂にスタメンを外れた。
 メフメト・アウレリオが警告累積のため1試合停止、チェコ戦でコレルに暴力行為を働いたGKヴォルカン・デミレルは2試合の出場停止に。
 グループリーグ第3戦で大活躍だったアルティントップを上げ目で使ってきた。右SBには本職のサブリが入る。

 GK リュシュトゥ・レチベル
 DF ハカン・バルタ
    エムレ・アシク
    ギョクハン・ザン
    サブリ・サリオール
 MF メフメト・トパル
    アルダ・トゥラン
    トゥンジャイ・サンリ
    ハミト・アルティントップ
    カジム・カジム
 FW ニハト・カフヴェチ

 98年W杯の3位クロアチア、02年日韓W杯の3位トルコ。世界を驚かせたチーム同士の闘いの火蓋が切って落とされる。


 ■前半 クロアチアの左、トルコの右
 試合前の予想としては「クロアチアの左サイドのラキティッチ&プラニッチ」、「トルコの右サイドのSBアルティントップ+アルファ(入れ替わりが多いので)」の対面の争いが、勝利のカギを握るのではないかと考えていた。しかしトルコのテリム監督はアルティントップを中盤に置いて、ボールを触らせる時間を増やした。
 試合前に「中盤の方が好きだね」と語ったというアルティントップ、その願いが通じたとは思わないが機能したのは事実。それは後に記述する。

 26度という暑さは、両チームに慎重さを与えたのかもしれない。前半に活発な運動量は少なく、若干セーブしている印象を受けた。
 5分にクロアチアの左サイド、トルコ最終ラインのパスミスをラキティッチが奪いゴール前に迫る。マイナスの折り返しにスルナは合わせきれず。
 さらに18分、前線右サイドでボールを受けたスルナが下がりながらキープ、中央から右前方へ切れ込んできたモドリッチへ託す。モドリッチはドリブルでペナルティエリア右へ侵入しクロス、オリッチが合わせたがクロスバーに当ててしまい、詰めたクラニツァールがヘッドで押し込もうとしたがクロスバーの上。
 
 37分、しっかりと引いて守るクロアチアに対して、M・トパルが目の覚めるようなミドルシュートを放っていくが、これは惜しくもゴール右に逸れてしまった。


 ■後半
 後半になってもクロアチアが攻める。
 
 69分、クロアチアの攻撃。自陣でアルティントップの縦パスを切ったモドリッチが、そのままドリブルで中央を駆け上がる。たちまち4人に囲まれ、一人にスライディングタックルを受けるが、倒れこみながら絶妙なスルーパス。しかし前線のオリッチが違うベクトルへ走りこんでおり、タイミングを合わせることができず。
 さらにラキティッチがオリッチを使ってワンツーパス、エリアに入ったところからシュートを狙うが大きく上へ。
 反対にラキティッチから中のオリッチにクロスを供給するも、ヘディングシュートはゴール右へ。

 76分、4-1-4-1の守備的MFの「1」で働いていたM・トパルを下げて、セミヒ・シェントゥルクを投入する。若干のポジションチェンジ、セミヒはもちろんニハトとの2トップに入る。
 クロアチアのビリッチ監督はまだ動かない。2枚目のカードを切るには、延長戦を見越した場合に慎重にならざるを得ない。

 86分、クロアチアが右サイドを崩してショートカウンター。左サイドでラキティッチがフリーをアピールしたが届かず、ドリブルで持ち込んだオリッチをギョクハン・ザンがストップする。
 92分、トルコが入れられたクロスボールを弾くと、クロアチアがこぼれた浮き球の落下点をそのままシュートを放つ。しかしオリッチに当たり、オリッチがそのルーズボールを自らシュートに持ち込むがバーの上へ。

 クロアチアがシュート14本で枠内5本。トルコが7本放って枠内1本。クロアチアが攻め立てるも90分では勝負がつかず、延長戦に突入した。


 ■延長 まさかの残り3分の2ゴール
 この暑さの中、クロアチアのNo.1タフガイのオリッチは走り続けた。延長開始直後も前線からプレッシャーをかけて、相手にボールを割らせる。しかし延長7分、さすがに交代。第3戦のMan Of the Matchに選ばれ勝利に貢献したイヴァン・クラスニッチがピッチに飛び出す。

 依然としてクロアチアペースではあるが10分にトルコ、右サイドのスローインからペナルティエリアの角で、混沌とした中からセミヒがシュートを狙っていく。
 さらにその1分後、バイタルエリア(ペナルティアークのすぐ外、DFとMFの間)でフリーになったトゥンジャイが、強烈なグラウンダーシュートを放っていくがこれはゴール左へ。

 延長後半になっても、両チーム決め切れない。このままPK戦かと思いきや、攻め続けたクロアチアが遂に試合を動かした。
 延長29分、右サイドでポスト役になったモドリッチの右をスルナがオーバーラップ。クロスはDFにカットされたが、モドリッチがラインを割らせまいとボールを拾う。飛び出していたGKリュシュトゥは慌てて戻るが、モドリッチのクロスはフリーのクラスニッチへ。全力でリュシュトゥは戻ったが、逆にその速いスピードがクラスニッチの遅いシュートスピードと入れ違いになり止められず。

 土壇場でクロアチアが先制点。さらにトゥンジャイのミドルが大きく上に外れた時、クロアチアの勝利――を誰もが確信した。
 ビリッチ監督は残していた3人目の交代枠を準備、時間つぶしにイェルコ・レコの投入を待っていた。

 この後クロアチアは、前がかりになるトルコから駄目押しの得点を狙い、ラキティッチが前線にクロスを上げた。走りこんだ2人がオフサイド、GKがFKを素早くリスタート。ボールはクロアチアペナルティエリアに入り、クロアチアのクリアミスを”スーパーサブ”セミヒが押し込んで殊勲のゴールを挙げたのだった。


 ■PK戦
 同点弾により、勢いは完全にトルコに持っていかれた。しかもコイントスで勝利したトルコが、自軍サポーターの声援をバックに戦えることになった。

 クロアチアの最初のキッカーはモドリッチ。予想はしていたが、やはり外した。この試合で120分フルに走り続け、倒れこみながら何度もパスを出し、相手ゴールラインまで全力で走り続けたモドリッチの両足は悲鳴を上げていたに違いない。
 微動だにしないGKリュシュトゥにコースを読まれ、おそらくその外側を蹴ろうとしてポスト右に外してしまった。

 視界に広がるトルコサポーターを味方につけ、トルコの3人は悠々と決めていく。

 対するクロアチア、3人目のキッカーのラキティッチは左に外す。さらにペトリッチのシュートは、GKリュシュトゥが完全に読んでストップ。

 トルコがPKスコア3-1で、クロアチアに勝利。ベスト4へ駒を進めた。
 

 ■総括 
 グループリーグでの活躍を見て、個人的に思い入れが出来たクロアチア。3戦とも高いクオリティ・戦術を見せてくれた。
 しかしやはり「良いサッカーをした方が勝つとは限らない」は至極名言である。クロアチアの技術・戦術の前に立ちはだかったのは、「最後まで諦めない」強い気持ちを持ったトルコだった。

 
 ◆プラニッチの存在 
 もう一つ、クロアチアに関して注目すべきは左SBのダニエル・プラニッチだろう。グループリーグ3戦全てに出場。スタメン・交代なしの270分フル稼働だ。
 彼がいかに諸刃の剣かということは、第3戦で論じた。
 第3戦で主力を休ませる中でプラニッチを起用したのは、ビリッチの「プラニッチへの信頼」と「本来、攻撃的サイドアタッカーであるプラニッチを左SBに置く不安」という相反するものがあったのではないだろうか。

 このトルコ戦でプラニッチは、前半上がる回数は少なく(セーブしていたかもしれない)、後半に度々左サイドを駆け上がったが、グループリーグで見られた効果的なものではなかった。トルコのテリム監督もおそらくそれを把握していただろう、こちらも攻撃的MFであるが右SBで起用していたアルティントップを、中盤に使ってプラニッチとの対面を避けた。アルティントップは攻撃の起点にもなるため、「共倒れ」をしたくなかったのだろう。
 そして元々SBであるサブリを配置してケアさせた。それだけではなく、中盤の選手がしっかりと絞ってスペースを消していた。プラニッチが前目でボールを持った際にプレスがかかり、何もさせなかった。

 そして延長戦、おそらく疲労がピークに来ていたプラニッチは「もうひと走り」ができなくなっていた。中盤でモドリッチがキープして左サイドに出したところに、プラニッチがトラップミス。CBシムニッチのパスボールも、プラニッチはラインを割らせてしまった。

 FWエドゥアルド・シルバ不在におる攻撃力不足を、左SBに攻撃的なプラニッチを置くことで補完する――そのツケがここで回ってきてしまったのだ。

 ◆これからのクロアチア
 敗れてしまったクロアチア。しかしビリッチという若き名将がいる限り、栄冠は近いはずだ。試合後のコメントをGoal.comより一部抜粋。 

 「素晴らしい試合をしてくれた両チームに賛辞を贈りたい。この試合は、なぜサッカーが世界で最も人気のスポーツなのか、なぜ最もドラマティックなスポーツなのかを示してくれた。私の選手たちはヒーローにふさわしいパフォーマンスをした」

 また5月上旬に、2010年までの代表監督契約を更新したビリッチ。
 代表監督の年俸は1000万円以下であるのに対し、ハンブルガーSVが3億以上の年俸、フルハムが現在の50倍となる年俸額を提示してきたが、このような高額オファーを蹴っている。またスタッフも無給で働いたりしているようだ(wowowのクロアチア紹介欄より一部抜粋)

 熱い愛国心を持ったクロアチアの、2010年への挑戦に要注目である!!


 ◆Man Of the Match
 50分、ギョクハン・ザンのクリアミスをオリッチが奪い、飛び出したGKを越えるヘディング・ループシュートを狙うが、わずかにGKがさわりゴールに届かず。
 82分、25mからゴール右上を狙うスルナの直接FKを、右手一本で掻き出す。

 他のシュートは正面で受けることが多く、絶妙なポジショニングを見せたのはトルコのGKリュシュトゥ。セミヒへのアシストを決め、PKでも存在感を見せつけ文句なくMOMの活躍だ。
 
 リュシュトゥはEURO1996やEURO2000に出場、2002年の日韓W杯では3位入賞に大きく貢献。代表で不動のポジションかと思われたが、進境著しいフェネルバフチェのGKヴォルカン・デミレルに正GKの座を奪われた。
 そのヴォルカンの出場停止でお鉢が回ってきたが、トルコ代表の歴代最多Aマッチ出場記録保持者は焦ることはなかった。迂闊な飛び出しで失点を喫したが、その他は絶妙なポジショニングでイージーキャッチに持ち込む。

 79分、クロアチアの左CKにN・コヴァッチが飛び込んだが、GKリュシュトゥがアパーカットのような気合のパンチングクリア。
 91分の33mの距離のスルナの直接FKは、GK直前でバウンドする難しいボールだったが、胸で落としてキャッチ。クロアチアプレーヤーに詰められないよう、前傾姿勢で手元に落とすベテランらしい技術だった。

 PK戦、ゴールを決めるコイントスの際には交代したニハトからキャプテンマークを引き継いでいたリュシュトゥ。コイントスに勝利し、ここでも運を引き寄せている。
 1人目のキッカーのモドリッチを相手に、最初は一歩も動かず圧力をかける。3人目のペトリッチのシュートの止め方も正に「圧巻」だった。
 GKヴォルカンが2試合停止のため、次戦のドイツ戦もリュシュトゥがゴールマウスを守るだろう。


 ◆次戦に向けて
 トルコの悩みは怪我人が尽きないこと、そして警告累積だ。
 この試合でトゥンジャイ、アルダ、エムレ・アシクが1枚もらって出場停止。
 キャプテンのニハトが、延長後半にFKを蹴った際に右の太もも裏を痛めたようで、負傷交代している。後々、ケガの詳細が明らかになるだろう。
 そしてエムレ、セルヴェトは次戦どうなるか分からない。チェコ戦で左ふくらはぎを負傷したCBエムレ・ギュンギョルは今大会絶望。スイス戦で鼠蹊(そけい)部を痛めたMFトュメル・メティンも、この試合出場はなかった。
 相変わらず野戦病院と化しているトルコ。それでも3戦連続で逆転勝利を飾ってきた。

 「勝負に絶対はない」を体現しているトルコ。残る準々決勝2試合に影響するのだろうか。


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posted by batistuta |07:01 | EURO2008 | コメント(3) | トラックバック(1)
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2008年06月20日

ロジカルな勝利 ポルトガルvsドイツ

 
 EURO2008の準々決勝第1試合、ポルトガルvsドイツの試合がザンクト・ヤーコブ・パルクにて行われた。
 優勝候補同士がいきなりの激突、試合内容も決勝のような素晴らしいものとなった。
 序盤はポルトガルが押し気味に試合を進めるも、22分にポドルスキの左サイド突破からシュヴァインシュタイガーが合わせてゴール。さらに26分、シュヴァインシュタイガーのFKに頭で合わせたクローゼのヘッドで追加点。
 ポルトガルもC・ロナウドの崩しを、N・ゴメスが押し込んで同点。後半の巻き返しに望みをつなぐ。
 後半、ポルトガルはCKで千載一遇のチャンスを得るも、ペペがフリーのシュートを外してしまう。そのペペがさらにクローゼにハードタックルをしてFKを与えてしまい、FKに再びバラックが合わせて、3-1とドイツが突き放す。
 ポルトガルは、交代で入ったナーニからのクロスにポスティガが合わせて追いすがるも、反撃はここまで。
 ドイツが3-2で勝利し、準決勝に駒を進めた。


 ■プレビュー
 勝利した第1戦、第2戦と全く同じ布陣で挑むポルトガル。

 GK リカルド
 DF パウロ・フェレイラ
    リカルド・カルバーリョ
    ペペ
    ジョゼ・ボシングワ
 MF ジョアン・モウチーニョ
    プティ
    シモン・サブローサ
    デコ
    クリスチアーノ・ロナウド
 FW ヌーノ・ゴメス

 ドイツは不振のFWマリオ・ゴメスを切る英断。
 予想通り、機能したラーム左SB、フリードリッヒを右SBに。
 圧倒的な運動量で中盤を活性化してきたトルステン・フリングスは、オーストリア戦で肋骨を骨折。この試合は出場しなかったが「局部麻酔を注射して出場する可能もある」とのことなので、現時点では今大会絶望というわけではないようだ。
 そのフリングスの穴は、レヴァークーゼンで中盤のディフェンスリーダーとして活躍しているロルフェス。ヒツルスペルガーとのダブルボランチ。
 右利きのシュバインシュタイガーが右サイドハーフに回り、左にポドルスキ、バラックのトップ下という4-2-3-1で挑む。

 GK イェンス・レーマン
 DF フィリップ・ラーム
    クリストフ・メッツェルダー
    ペア・メルテザッカー
    アルネ・フリードリッヒ
 MF シモン・ロルフェス
    トマス・ヒツルスペルガー
    ルカス・ポドルスキ
    ミヒャエル・バラック
    バスティアン・シュヴァインシュタイガー
 FW ミロスラフ・クローゼ
    

 ■レヴ監督の不在
 グループリーグB最終戦、オーストリア戦で退席処分を受けたドイツのヨアキム・レヴ監督は、この日スタンド観戦を余儀なくされる。試合が終わって30分経つまではチームとの接触を禁じられた。
 このことから交代策での戦況打開はない、ドイツは前半に勝負をかけるだろうと予想できた。
 ハンス・ディーター・フリック・アシスタントコーチが指揮を務めたが、レヴ監督が戦前に用意周到に準備をしたか、フリックが采配したか?おそらくは前者だろう。


 ■サイドの攻防
 ポルトガルのC・ロナウドとシモン。対戦相手、戦況に応じて左右を変えるウィングポジション。ドイツで好調なポドルスキを封じるべく、ハードワークを厭わないシモンを当てた。序盤は効いていたかに見えたが…。

 19分、右サイドでシモンがボールを持つと、上がっていたボシングワにパス。シモンが中に絞った後のスペースにノシングワがドリブル、フリーの状態になりクロスを上げる。モウチーニョが飛び込んだが、頭で合わせられずに膝を当ててフカしてしまった。

 22分、ドイツの左サイドで美しい突破が見られた。
 センターライン付近に張ったポドルスキがボールをもらうと、クローゼとワンツーパス、そしてさらにバラックとワンツーパスと、ポドルスキがピッチに稲妻を描く。落ちた雷が地面を這うかのように、抜け出したポドルスキが一気に加速。追いすがるボシングワを右手で払いのけスペースメイク、クロスを上げるとニアにシュバインシュタイガーが飛び込み、合わせた。
 ドイツ、先制点を挙げる!

 勝負所と捉えたドイツがさらに猛攻。
 センターサークル付近でバックパスを受けたCBメッツェルダーが、意表を突いてドリブルで仕掛ける。左サイド突破の後の、中央突破は効いた。思わずプティがファウル、イエローカードを受ける。
 左60度、35m前後の長い距離。バラックが直接狙うには遠すぎる。脚力のあるシュバインシュタイガーがキッカーを務めた。
 しかしシュバインシュタイガーは直接狙わず、集団へ向かってクロス。すると拍子抜けするほどフリー状態になっていたクローゼがヘディングシュート。メルテザッカーが走りこんでスペースを作った状況だった。
 ドイツが追加点、2-0とポルトガルを突き放す。

 
 ■思惑通りのドイツ、誤算のスコラーリ
 好調ポドルスキの崩しで1点、そして得意のセットプレーで2点目を挙げたドイツ。監督不在の中、思惑通りの流れに来ている。
 対するポルトガルはスコラーリ監督の采配に期待だが、大きな誤算が生じた。ボールの競り合い中に左ひざを地面に強打したモウチーニョが戦線離脱。前半で「交代枠」と「中盤の運動量」を同時に失ってしまった。

 それでも40分、ドイツの攻撃を凌いで反撃に転じたポルトガル。早いカウンターに持ちこみシモンがドリブルで上がり、左サイドのC・ロナウドへ。メルテザッカーは間合いが甘く、簡単にウラを取られた。C・ロナウドがシュートまで持ち込むがここはレーマンがストップ、しかしN・ゴメスがキッチリと詰めて押し込んだ。
 N・ゴメスは、後方へのこぼれ球をバックステップしつつ、利き足でない左足を強く振り抜き、メッツェルダーのクリアを狙った足を弾く強いシュート。ベテランの味わいを見せ、ユルゲン・クリンスマン、ヴラディミール・スミチェル、ティエリ・アンリに次いで史上4人目のEURO三大会連続のゴール記録とした。


 ■失いかけた両尾翼
 前半終了間際にC・ロナウドの惜しいシュートがあり、後半の反撃に期待を持たせたポルトガル。C・ロナウドが突っかけてフリードリヒに、シモンが仕掛けてラームにそれぞれイエローカードを与えた。サイド攻撃が肝であるポルトガルを相手に、両SBという尾翼が無力化するかに見えた。

 さらに攻めるポルトガル。57分の右CK、ニアでデコがバックヘッドですらし、ペペがフリーでゴール前に。しかしこれを上に外してしまい、ペペは恨めしそうにゴールネットを握る。
 
 しかしペペのミスはここで終わらなかった。

 ドイツのカウンター、クローゼが左サイドを攻め上がるところを、ペペが肩でタックルしてイエローカードをもらいFKを与える。クローゼはサイドに出て治療に当たるもすぐ回復し、ピッチに戻る主審判断を待っていた。
 この治療の時間で間が空いてしまった。守備には危険な時間帯、その予感が的中する。左45度、40mという前半の得点シーンより角度がついているところからのFK、シュバインシュタイガーがクロスを狙う。
 戻りを待つクローゼが前線にいなかったため、ドイツはターゲットが少なかったが、それがポルトガルに安心感を生ませたのだろうか。バラックはあっさりとフリーになり、ヘディングシュートでポルトガルゴールに突き刺した。
 そのバラックについていたのはフィジカルに劣るP・フェレイラ。「突き飛ばされた、ファウルだ」と主張するが、どう考えてもマークマンの選択ミス。3-1とドイツが突き放す。


 ■迷走するスコラーリのシステム、無難だが的確なドイツ采配
 3失点を喫した後、ナーニがピッチサイドに立つ。ハードワーカーのシモンを下げないだろう、ましてやC・ロナウドは下げるはずがない。予想通り、N・ゴメスを下げた。これで左からシモン、C・ロナウド、ナーニという1トップ+2WGに近い形に。
 しかしC・ロナウドのCF起用は、EURO予選で既に失敗している。さらにプティを切ってエウデル・ポスチーガを投入。C・ロナウドとポスチーガの2トップ、シモン&ナーニのサイドハーフに、R・メイレーレスとデコの2ボランチに近い形になった。
 4-4-2、これもポルトガル・サッカーに合うものではない。単発の攻撃に終わるばかり。R・メイレーレスのミドルは、枠を捉えない大味なシュートに終始する。

 C・ロナウドに絶好のポジションでFKのチャンスが回ってきたが、ここで公式球「EURO PASS」に泣かされることになった。プレミアで、チャンピオンズリーグで何度も観られた美しい無回転のFK。おそらく観客や視聴者、そしてC・ロナウドの頭の中で描かれた弾道と残像は、鮮やかに落ちてドイツゴールに突き刺さるはずだった。
 しかしボールはゴールラインを割ったあたりで、申し訳なさそうに落ちるのみ。

 ドイツは無難で地味だが、時間やポジションなど的確な交代。
 C・ロナウドのシュートが外れ、スタジアムにポルトガルサポーターの溜息が充満すると、ヒツルスペルガーを下げてティム・ボロウスキを投入。第3戦のオーストリア戦で90+3分の投入という時間稼ぎ的な交代でしかピッチに入れなかったが、今回は73分での交代。グループリーグ突破に余裕のなかったドイツ、出場機会の少ない選手を入れてモチベーションアップも図れる。
 そして攻守にハードワークを厭わなかったシュバインシュタイガーを下げ、クレメンス・フリッツを右サイドに入れる。元々右SBのフリッツ、逃げ切るには守備能力が生かされる。
 終了間際の89分には、時間稼ぎにヤンゼン投入。正に的確な交代カードの切り方だった。

 87分、ナーニが左サイドで3人のドイツDFに囲まれながらもクロスを上げて、ポスチーガのゴールをお膳立て。ポルトガルはこの後パワープレーに挑み、ペペやカルバーリョも上がっていくが、フィジカル・高さに勝るドイツを相手に正攻法で挑んでも、歯が立たなかった。

 前回のEURO2004でのイングランド戦で、次々とシステムを変更して最後は右SBにデコを配置するというバクチ的な神采配を見せたスコラーリ(この辺りの行は、杉山茂樹氏の新書「4-2-3-1」での解説が面白いので一読をオススメします)。しかし今回は、前半でのモウチーニョの負傷退場という誤算により、賭けには出られなかったのかもしれない。

 両SBを削って前の枚数を増やすなら、P・フェレイラあたりを削ることも妥当に思えた。穿った見方になるかもしれないが、彼含めて最終ラインの3/4がスコラーリ就任予定のチェルシーの選手だ。
 もちろん、左SHはフレッシュなボロウスキ、右SHもシュバインシュタイガーからフリッツに代わっており、先手を打たれていた感はある。

 結局、ポルトガルvsドイツは3-2で、ドイツが逃げ切り勝利した。


 ■総括
 ポルトガルの敗戦理由は3つある。

1.Worst of The Matchと言っていい、ペペのミスの数々。
 レアル・マドリーでの多くのミスで心配していたが、第1戦でのゴールで今大会は大丈夫、との印象を与えていた。しかし、この試合では57分に絶好の得点機を逃した。
 守備面ではドイツの1点目、ポドルスキのサイド突破のカヴァーリングミス(もちろんここはドイツ側を褒めるべきだが)。
 スターティングメンバーで最も背の高いペペが、セットプレーで存在感を見せるべきだが、2点目のシーンでしっかり崩された。そして決勝点となる3点目のキッカケになるFKを献上、イエローカードまでもらった。

2.1週間の休み 
 11(水)の第2戦でグループリーグ首位通過を決めたポルトガルは当然、主力を温存した。しかしこの結果、19(木)までほぼ一週間空くことになってしまった。「主力のコンディション回復」と「ゲーム感、勢い」と考えた場合に、後者が悪くなってしまった。
 このことが影響しているのか「グループリーグを全勝で終えたチームが優勝したのは、1984年に開催国として頂点に立ったフランスが最後」というデータがある(uefa.comより)。

3.そして本文にあるようにスコラーリの誤算、修正が効かなかったことであろう。
 フィジカルで劣るセットプレーでの失点は、おそらくゾーンディフェンス。結果としては失敗に終わった。前線にいた選手がほとんどフリーの状態であったことが、セットプレー対策が誤っていたことを雄弁に物語る。


 ドイツは右サイドハーフのベルント・シュナイダーの離脱で、一気にサイドが弱体化するかと思われた。しかしポドルスキとシュバインシュタイガーの復調でキッチリと穴を埋めてきた。両者ともバイエルンで不調、「助っ人外国人」トーニやリベリー、ファン・ボメルらに出場機会を奪われ、スタメンを外れる時も少なくなかった。

 「お祭りムードが漂っていたドイツW杯の3位決定戦は参考にならない」と迂闊なことを書いてしまったが、結果的にはこの試合もシュバインシュタイガーの独壇場と言っても良かったくらいの活躍。
 3位決定戦でもDFに当たってのオウンゴールシュートを含めた3得点で、勝利に貢献したシュバインシュタイガー(その時決められた1点は、今日と同じN・ゴメス)。今日は1得点目を挙げ、2点目・3点目はFKでアシスト。シュバインシュタイガーは全ての得点に絡んだ。
 シュバインシュタイガーが守備をしっかりやったことも大きい。対面するシモンに負けないハードワーク、ハードマークを見せてポルトガルのサイド攻撃を弱体化させた。正にMan Of the Match、大車輪の活躍だった。

 サイドの崩しとセットプレーという、「自分の長所を生かし、相手の弱点を突く」ドイツらしいロジカルな勝利。「バテるほど」前半に勝負を仕掛けていったのも、当たった采配と言えるかもしれない。

 「サッカーというのは単純な競技さ。22人の男たちが、90分間、ボールの後を追いかけ回す。そして、最後にドイツ人が勝つんだ。」
 1990年W杯イタリア大会の準決勝。1対1の激戦の末、PKで西ドイツに屈したイギリスのエースストライカーだった、ゲリー・リネカーの敗者の弁。

 もちろんドイツも優勝候補一番手であった。しかし飛躍の年と見られていたC・ロナウドがいるポルトガルが優勝する機運も高まっていた。

 しかしこの現実――。

 ドイツはグループリーグとまるで別チームだった。

 この現実に戦々恐々としているのは、オランダやスペインかもしれない。先述した「グループリーグを全勝で終えたチームが優勝したのは、1984年に開催国として頂点に立ったフランスが最後」というデータ。
 クロアチアが満身創痍のトルコ相手に負けるようだと、その不安は一層加速化するかもしれない。

 アルシャヴィンの活躍でグループリーグ突破を果たした「皇帝凱旋」のロシア、3-0でオランダが息の根を止めたと思っていたイタリアの滑り込み通過。

 準々決勝はまだ始まったばかり――


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