2008年06月30日
カタイ ドイツvsスペイン
EURO2008の決勝戦、ドイツvsスペインの試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。 立ち上がりでカタさが見られたスペインイレブン。しかしその時間帯にドイツが仕掛けることができず。徐々にスペインがペースを掴むと33分、チャビのスルーパスにF・トーレスが反応し見事に流し込んだ。 反撃を試みるドイツだが、ラームとバラックという攻撃のキーマンが前半終了間際に次々と負傷。交代策が功を奏さないまま時が過ぎ、終盤のパワープレーも、スペインが落ち着いて対処して1-0で逃げ切った。 スペインが11大会・44年ぶり2度目のアンリ・ドロネー杯獲得に至った。 ■プレビュー ドイツは、肋骨骨折のフリングスが出場。コルセット・痛み止めでの出場。バラックは右足のふくらはぎの筋肉を痛めて練習を休んでいたが、スタメン出場を果たす。 GK イェンス・レーマン DF フィリップ・ラーム クリストフ・メッツェルダー ペア・メルテザッカー アルネ・フリードリッヒ MF トルステン・フリンクス トマス・ヒツルスペルガー ルカス・ポドルスキ ミヒャエル・バラック バスティアン・シュヴァインシュタイガー FW ミロスラフ・クローゼ スペインは、準決勝のロシア戦でFKを蹴った際に右太ももを負傷したダビド・ビージャが欠場することに。EURO本大会になってから4-4-2(or4-1-3-2)で順調に勝ってきたが、ここで「試合開始時から」では初めてのクアトロ・フゴーネス(チャビ、セスク、イニエスタ、シルバの4人を置く攻撃的な布陣)を含む4-1-4-1で挑む。 GK イケル・カシージャス DF ホアン・カプデビーラ カルロス・マルチェーナ カルラス・プジョル セルヒオ・ラモス MF マルコス・センナ アンドレス・イニエスタ チャビ フランセスク・ファブレガス ダビド・シルバ FW フェルナンド・トーレス ■動きがカタイスペイン 決勝のキックオフ――スペインの動きが、いきなりカタイ。 S・ラモスからプジョルへの不用意なパスを、クローゼがインターセプトして一気に持ち込む。ここはプジョルが何とかクリアして難を逃れる。 試合開始して10分ほど、スペインのパスがうまく繋がらず「らしくない」印象を与えた。しかしドイツも慎重なゲームの入りか、仕掛けていく風でもない。 すると13分、チャビがコンパクトな振り足で左前方にパスを通すとイニエスタへ。イニエスタの中央へのパスが、DFメッツェルダーに当たりあわやオウンゴール。GKレーマンが掻き出した。 スペインは徐々に、前線のF・トーレスにパスが繋がるようになり、またプレースキックのチャンスを得ていく。しかし高さのあるドイツディフェンスを攻めあぐね、CKもショートコーナーを選択するなど、真っ向からの勝負は控える。 22分、右サイドの深いスペースへ進出したセスクが、後ろのS・ラモスに戻す。S・ラモスのクロスにF・トーレスがヘディングで合わせるも左ポストに嫌われる。メッツェルダー・メルテザッカーというドイツのCBコンビに身長で劣るF・トーレスだが、比類なきジャンプ力とタイミングの良さで先に合わせる技術が高い。 ドイツもここで反撃。左CKを一度弾かれるものの、再び左サイドからクロス。ファーサイドでクローゼが頭で折り返すと、バラックがボレーシュート!しかしS・ラモスがシュートコースに入りブロック。 そのままスペインがカウンターへ。F・トーレスが、身体を寄せるヒツルスペルガーを弾き飛ばし、左サイドを疾風の如く突き抜ける。ボールを奪われGKへバックパスされるが、それをも追いかけプレッシャーをかけて、スローインを獲得する。 F・トーレスのハードワークを厭わない姿勢が、チームを鼓舞する。 ■ゴールシーン詳細 さて33分のゴールシーン。決勝での唯一の得点なので、詳細を記すことにする。 一行で書くと「チャビのスルーパスにF・トーレスが反応し見事に流し込んだ」という冒頭の簡単なまとめになる。その前の動きから。 センターサークル付近でセンナがボールを持つ。少々前がかりか、センナがボールを持ったのが気になったかは分からないが、フリングスとヒツルスペルガーのダブルボランチの2人共が少し上がった状態に。 センナはそれを見逃さずに、スペインの最終ラインとボランチの間にフリーの状態でいたチャビへパス。ダブルボランチは慌てて戻るが、チャビの流れは、水が流れるようだった。チャビは左足で軽く止めながら、反時計回りに半身捻り、右足でそのまま前線へパス。 ラームとメッツェルダーに挟まれていたF・トーレス。後ろからのボールをワンタッチでコントロールし、ラームに前に入られたものの、右側から驚異的なスプリント能力で追い抜く。GKレーマンは悪くない飛び出しだったが、F・トーレスの前では闘牛にすぎなかった。 F・トーレスは右足で軽く浮かせて、GKレーマンの身体をギリギリ越えてゴールの左隅を狙うという、絶妙なコントロールショットを見せた。 「アウェーで得点力が落ちる」との評価もあるF・トーレス。このエルンスト・ハッペル・シュタディオンは試合の進行上、スペインは決勝トーナメントを、全てこの会場で戦った。F・トーレスにとっては「ホーム」になったか。 ■ドイツに立ちはだかるトラブル ドイツは逆転できる強い気持ちを持ったチームだ。しかし、攻撃のキーマンとなりうる2人がアクシデントに見舞われる。 競り合いでセンナとバッティング(頭同士がぶつかる)したバラックが右目尻を切ってしまった。一度止血したものの、再度治療を命じられるなど集中できない状態になった。実際、これ以降のバラックは精彩を欠いていた。 そして左SBのフィリップ・ラーム。 後半開始時にマルセル・ヤンゼンを投入したレヴ監督。勝負するならフリッツでは、とも思ったがラームが足に裂傷を負ったとのことだった。前半のラームは左サイドでの攻撃参加に積極的で、後半にも期待できたのだが…。 代わったヤンゼンも仕掛けてはいったものの、ヤンゼンへ通すパスが失敗続きでチャンスを潰してしまっていた。 それでも59分、左サイドの深い位置のライン際でプジョルとボールを競り合い、ヤンゼンが勝利。クロスを上げ、シュヴァインシュタイガーが落とした。しかしこのボールに変な回転がかかってしまっており、バラックが合わせるも、うまくミートできなかった。 ■ドイツの交代策 局面打開を図るレヴ監督は不調だったゴメスではなく、FWケヴィン・クラニーを先にピッチへ。しかしこれが裏目に出る。クラニーは大舞台に慣れていないのが明らかでボールが、そして地に足につかない。 シュヴァインシュタイガーのスルーパスに反応したものの、クラニーはトラップミス。その直後、左サイドのバラックのクロスでは、クラニーはオフサイド。 終了間際の91分には、右サイドへ流れていたクラニーがクロスを送る場面があったが、ゴール前を見ずに蹴っているように見えた。ボールは大きくファーサイドへ流れてしまった。 結果論だが79分に投入したゴメスを、クラニーより先に入れていたら展開が変わったかもしれない。スペイン生まれのゴメスの方が、モチベーションは高かったはずだ。今大会不調を最後の試合で晴らすこともできた。 ■カタイ、アラゴネス監督の交代策 前の試合で早めに交代カードを3枚使いきった強気の采配を見せたスペインのアラゴネス監督だが、この決勝戦では慎重だった。 1枚目は63分にセスクを下げてシャビ・アロンソ。4-2-3-1にすることで守備の安定を図る。さらにシルバを下げて、サンティアゴ・カソルラを投入。78分にはF・トーレスを下げてグイーサを投入。短い時間で結果を出せるストライカーを置いて、ドイツにプレッシャーを与え続ける。 この代わったカソルラとグイーサが攻撃に絡む。 81分、中央でセンナが持ち右サイドのカソルラへ。左のグイーサへ展開し、さらに中央へ折り返したところにセンナが飛び込む!センナの足が惜しくも届かず、この「3線速攻」は追加点とはならなかった。 この後はスペインがペースを崩さず、スキを与えず。ドイツもパワープレーを仕掛けるが、スペインの牙城は崩せないままタイムアップ。 1-0でスペインが勝利した。 ■総括 またもやバラックが涙を飲んだ。 レヴァークーゼン在籍時、2002年にUEFAチャンピオンズリーグ、ブンデスリーガ、ドイツカップを全て準優勝に終わったことから、バラックに付けられたあだ名が「シルバーコレクター」。今年のチャンピオンズリーグ決勝前にもそれは取り沙汰されて、チェルシーは準優勝に終わった。 しかし、ドイツの前途は暗くない。現在の主力に高齢化はさほど進んでおらず、これから若手を数人入れるだけで、さらに強いチームが作れそうだ。「バラック2世」と言われたロルフェスもまずまずの活躍を見せていたし、少しミスの目立ったGKレーマンの次は、レヴァークーゼンの守護神レネ・アドラーが控えている(できれば今大会で見たかったが…) 2010年に期待だ。 スペインは素晴らしかった。ドイツ地元紙「Marca」のEURO開幕前の調査では、「スペインは決勝に進めるか」というアンケートをとったところ、「できる」と答えたのは6万人の回答のうち24%以下だったという。 当ブログでも恥ずかしながら「予選敗退するのでは」と予想していた。 ◆スペインの「カタイ」 この決勝で感じたのは「カタイ」。 試合開始時の動きのカタサ。 カタイ守備。 カタイ交代策。 カタイ試合終盤のコントロール。 そしてカタイ結束。 「美しい攻撃サッカー一辺倒」だった、今までのスペインにはない勝負強さがあった。イタリア戦でのPK戦勝利にもそれは現われている。 それが最も「カタイ」を感じさせる歴史あるドイツから、スペインが勝利を奪うという結果はなかなか興味深い。 ◆素晴らしい選手たち 前の試合のロシアvsスペイン戦の最後にも論じたが、レアルの象徴でもあり、スペインの象徴でもあったラウール・ゴンサーレスの招集を頑なに見送り続け、最終的に結果を出したアラゴーネス監督。 今大会中に随所に見られた「チームの一体感」。それは当然、表彰式の時でもそうで、チームの団結が強く感じられた。アラゴネス監督の胴上げシーンも微笑ましいものがあった。 ラウールは外れたが、レアルのカシージャスとS・ラモスの2人は完璧だった。 カシージャスは、決勝のドイツCKをことごとく弾き出した。60分のバラックのクロスにクラニーが合わせる手前で、飛び出してパンチングしたところも絶妙。F・トーレスの得点シーンも、もしカシージャスだったなら止めていたかもしれない。この試合で改めて世界最高のGKであることを証明した。 S・ラモスは攻撃に何度も顔を見せていたし、守備面も怠ることなくピンチの時には身体を張って止めていた。激しい上下動はSBの理想と言える存在だった。 カシージャスの前に立つ2枚の壁。プジョルとマルチェナのCBコンビは最高のものを見せた。ラインコントロールが絶妙、高さのある相手チームのFW(イタリアのトーニなど)も見事封じ続けた。これに中盤底のセンナを加えた、「Quatro defensa」とも言える4人は素晴らしかった。グループリーグで各1失点の合計3失点、決勝トーナメントは全てクリーンシート(完封試合)だった。 このブログで何度も書いていることだが、チャビの攻守バランスは絶妙。センナの守備負担を軽減しつつ、攻撃にも積極的に参加。決勝でも何度もF・トーレスにスルーパスを出しドイツの守備陣を恐怖に陥れた。66分のS・ラモスに合わせたFKも見事。 決勝のピッチに立てなかったビージャだが、4得点で得点王を獲得。F・トーレスとグイーサが2得点。この2人も印象に残るテクニカルなゴールを決めてみせた。 ドイツのポドルスキが得点王争いで3得点と迫ってはいたが、ビージャは仲間の勝利を信じ意に介してないようだった。このこともスペインの結束を感じさせる。 →スペイン代表の雰囲気についてのスポナビ記事リンク ◆アラゴネス監督の進退は 見事優勝を果たしたスペイン。優勝は監督の力が大きかったこと(戦術、采配、人心掌握など)は、誰も異論を挟めないところだろう。しかし、アラゴネス監督の続投は決まっていない。フェネルバフチェ監督就任が噂されてはいるが、まだ正式決定ではない。 契約延長のオファーが来ないことにアラゴネス監督が怒っている模様。監督が代わると、プラスよりマイナスの影響が大きいことは火を見るより明らか。 アラゴネス監督のスペイン代表戦績は、54試合38勝12分4敗。スペイン代表監督歴代最高の勝利数を挙げ、ここ22試合19勝3分けと正に「無敵艦隊」ぶりを発揮。しかも「勝つのは親善試合だけ。大きな大会での決勝トーナメントは勝てない」というジンクスも打ち破った。 さてスペインの勝利により、少し勢いを失っていたリーガ・エスパニョーラがかつての輝きを取り戻すのか。それともスペインの人材が、プレミアに流出するか(実際ビージャ移籍が取り沙汰されている)。 EUROが終了した今、移籍市場の活発化、そして迎える08-09シーズンがどうなるか。まだまだ面白くなりそうだ。
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posted by batistuta |07:59 |
EURO2008 |
コメント(3) |
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カタイ ドイツvsスペイン
コメント投稿者ID :
>しかし、ドイツの前途は暗くない。
そうかなぁ。
今回、レギュラーがダメだと控えで期待できそうなのがいなかった。
バラック、ポドルスキー、シュバインシュタイガーがもしアウトだと、
なんだか勝てそうな気がしないじゃないですか。
(それでも勝つのがドイツかも知れませんが)
スペインはベンチにセスク、アロンソ、グイサ、カソルラ、デラレッド、セルヒオガルシア。
更に次の世代にすごいのがウヨウヨ。
これに比べるとドイツは人材的には寂しい。
スペインが凄すぎるだけかも知れませんね。
失礼。
posted by ぺろ | 2008-06-30 11:46
たしかに
コメント投稿者ID :
スペインの層の厚さには、驚きを超えて嫉妬してしまう。
しかしまぁ、今回のEUROは・・・
トルコが凄かった。
posted by 海外素人 | 2008-06-30 19:50
Re:
コメント投稿者ID :
書き込み有難う御座います。
ぺろさん<
>スペインが凄すぎるだけかも知れませんね。失礼。
<スペイン人の方ですか、おめでとうございます。
海外素人さん<
トルコ絡みの試合をベストマッチに挙げる方も少なくないみたいですね。テリム監督続投らしいですから、2010年はどうなるのか楽しみです。
posted by 管理人 | 2008-07-03 22:54
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