2008年06月26日
Blood Sweat & Beers ドイツvsトルコ
EURO2008の準決勝第1試合、ドイツvsトルコの試合がザンクト・ヤーコブ・パルクにて行われた。 傷だらけのトルコ、堅く守って一発カウンター狙いかと思われたが、前半から攻勢に出る。調子が上がらないドイツを攻め立て12分に大きなチャンスを作った後、22分にはU・ボラルが押し込んでトルコが何と先制。 しかしドイツも絶好調のポドルスキ&シュヴァインシュタイガーコンビでトルコゴールを陥落させる。 後半に入り、お互いのペナルティエリアで微妙な判定が出るもノーホイッスル。しかし79分にラームのアーリークロスをクローゼがヘディングでゴール。 しかし「残り10分はSuper Turkey Time」。86分にセミヒのスーパーゴールが決まり、2-2の同点に。しかしこのセミヒのゴールに繋がるミスをしたラームが、90分に汚名返上弾。 ドイツが苦しみながらも気迫のトルコを退けて、決勝進出を決めた。 ■プレビュー ◆ドイツ ドイツは、中盤の守備の要のトルステン・フリングスが肋骨骨折のためにベンチスタート。一部報道では先発の可能性もあったが、大事を取ったようだ。 4-2-3-1システムは、準々決勝のポルトガル戦と同じ。 GK イェンス・レーマン DF フィリップ・ラーム クリストフ・メッツェルダー ペア・メルテザッカー アルネ・フリードリッヒ MF シモン・ロルフェス トマス・ヒツルスペルガー ルカス・ポドルスキ ミヒャエル・バラック バスティアン・シュヴァインシュタイガー FW ミロスラフ・クローゼ ◆トルコ キャプテンのエムレ・ベロゾールは太もも裏を痛めており、グループリーグ第1戦しか出場できていない。エムレからキャプテンマークを引き継いだニハト・カフヴェチは、準々決勝のクロアチア戦の延長後半にFKを蹴った際、右の太もも裏を痛めて今大会絶望。 チェコ戦で左ふくらはぎを負傷したCBエムレ・ギュンギョルも今大会絶望だ。守備の要でCBのセルヴェト・ジェティンは、ベンチにはいたがユニフォーム姿ではない。 そして気迫でプレーするあまり、警告数が今大会1位というトルコは、トゥンジャイ・サンリ、アルダ・トゥラン、エムレ・アシク、ヴォルカン・デミレルといった主力を出場停止で欠く。 「満身創痍」「野戦病院」――そんな言葉では足りないほどの緊急事態。特に足りていないCBのポジションには、187cmと高身長の守備的MFメフメト・トパルが入った。結果、M・トパルが試合のカギを握ることになるのだが、それは後の話。 GK リュシュトゥ・レチベル DF ハカン・バルタ ギョクハン・ザン メフメト・トパル サブリ・サリオール MF メフメト・アウレリオ ウグル・ボラル アイハン・アクマン ハミト・アルティントップ カジム・カジム FW セミヒ・シェントゥルク ■レヴ監督とテリム監督の因縁 98-99シーズンにトルコリーグのフェネルバフチェの監督を務めたことがあるドイツ代表のヨアキム・レヴ監督。そして宿敵ガラタサライを率いていたのは、トルコ代表のファティ・テリム監督である。この時の直接対決は、テリム監督の1勝1分けとリード。 ■ドイツとトルコ そして代表間の直接対決としては、トルコがドイツに対して直近では3勝1分け、1992年の親善試合まで遡りドイツが勝っていないという。 トルコ移民の「行き先」はドイツが中心であり、関係は浅くない。トルコの中心選手であるハミト・アルティントップはドイツのゲルゼンキルヘン出身であり、弟ハリルと共に地元のシャルケを牽引した。ハミトは今年からバイエルンに加入し、大きな戦力となっている。 ■前半 トルコが圧倒 さてそのアルティントップは、準々決勝以降はサブリに右SBを任せて前線で攻撃にふんだんに絡んでいく。8分にはラームの不用意なパスを奪い、シュートまで持ち込んだ。 調子が上がらないのか、動きが良くないドイツ。一方のトルコはケガや出場停止で主力がいないにも関わらず、この大会で最高の動きを見せる。戦前には引きこもって一発カウンター狙いか、とも考えられたが全く逆で、全体をコンパクトにしたディフェンスを築き、ドイツの攻撃時にスペースを与えない。 攻撃でもサイドでの1vs1の仕掛け、クロス、後ろからの上がりとドイツを圧倒していった。13分には右サイドを押しこみ、アイハンがマイナスのパスを出すと、エリア内でカジムがフリーでシュート、これはクロスバーを直撃。しかしこぼれ球をしっかりと拾い、H・バルタが左サイドを深くエグってクロス、ニアでセミヒが合わせようとしたがクリアされる。 決めきれないトルコかと思われたが、22分にドイツゴールをこじ開けた。 右サイドから粘り強く攻め続けるトルコ、ドイツはクリアができない。低いクロスボールがゴール前に来ると、カジムがスライディングという苦しい姿勢でシュート。フワリと上がったボールはGKレーマンを越えてクロスバーに当たる。ドイツvsクロアチア戦でも見た光景、レーマンがボールを見失うとU・ボラルが押し込んだ。 トルコ、本大会で初の先制点を挙げる! しかしピンチの後はチャンス――トルコのボールキープを、バラックと挟み込んでクローゼがインターセプト。カウンターへ持ち込むと、ヒツルスペルガーが左サイドのポドルスキへと展開。この時点で4vs5とドイツの数的不利だったが、ポドルスキが素早くニアへクロスを上げると、身体を上手く入れたシュヴァインシュタイガーが「点」で合わせて、ドイツ同点に。 この時パスコースに入られたのは、初CBとなったM・トパルだった。 前半終了。 シュート数が前半で、ドイツが3本の枠内1。トルコは15本の枠内9。CKも2-5とトルコが圧倒。数字上でも、内容でもトルコが圧倒した。 トルコは、守備面でも4-1-4-1をコンパクトに保ち、スペースを消した見事な守備。 今季チャンピオンズリーグ準々決勝で対戦があったチェルシーとフェネルバフチェ。この試合のドイツのトップ下のバラックと、トルコのM・アウレリオは正にその再現だった。あの時はバラックの勝利だったが(2nd legで得点も決めている)、臥薪嘗胆、このEUROではM・アウレリオが奮起。この試合では、バラックの存在感を消し去った。 ■後半 ドイツの勝ち越し 前半終了間際、中盤のロルフェスがアイハンとの競り合いで負傷。後半開始からトルステン・フリングスがピッチに入る。 50分、ドイツにやっと面白い崩しが見られた。 センターライン中央右寄りからメッツェルダーが縦パス。ポドルスキが戻りながら受けて、中央のバラックへ。ポドルスキが下がって出来たスペースを、左SBラームが一気に上がる。受けたラームに、カジムが慌てて下がり対応。エリアへ向けてドリブルで仕掛けるラーム。そこにサブリが横からスライディングタックル。 しかしノーホイッスル。たちまち湧き上がる怒号とブーイング。リプレーで見ると確かに足に行っている。 逆にこの後、カジムがエリア内でラームにユニフォームを引っ張られて転倒する場面があった。副審の目の前だったが、ノーホイッスル。この日の主審は、あまりファウルを取らない印象。 シュヴァインシュタイガーの右サイドからのショートカウンターを、M・アウレリオがストップするなど相変わらずの堅守を見せるトルコ。攻めあぐねるドイツだったが、79分に試合を動かした。 ディフェンスラインの様子を見ながら中央のフリングスから左サイドのラームへ。ラームはアーリークロスを選択し、絶妙なところを狙った。GKリュシュトゥがパンチングを狙って飛び出したが、クローゼの頭が勝り、ヘディングシュートがトルコゴールに突き刺さった。ドイツ、勝ち越し! ここでもマークマンは急造CBのM・トパル。そしてGKリュシュトゥの届かない絶妙なアーリークロス、そして「空対地砲台」のクローゼ弾。全てがうまく回ったドイツの勝ち越し点だった。 ■Super Turkey Time クローゼのゴールは79分。そう、1分後は試合残り10分。"何か"が起きる、スーペル・トルコ・タイムの開演だ。 81分のU・ボラルの左CKは、ファーサイドのセミヒを狙った素晴らしいクロスボール。GKレーマンがパンチングクリアするので精一杯だった。 そしてテリム監督が勝負に出る。メヴリュト・エルディング、ギョクデニズ・カラデニズの2人を投入し、一気にFW二枚投入。 テリム総督から攻撃の号令が下されると、全面攻撃に出たトルコ。ドイツからボールを奪うと攻めに転じ、右サイドをサブリがオーバーラップ。厳しくマークするラームをうまくかわしてクロス、ゴールニアに走りこんできたセミヒがまたも殊勲のゴール!レーマンがブロックしていたが、わずかな隙間に巧みに流し込んだ。 このまま延長戦にもつれ込めば、精神的にはトルコが優位に立てるのではないか…そう思われたた90分。「諦めない魂」の元祖たるドイツの面目躍如。 左サイドバックが本職だが右利きのラーム、浅い位置でボールを持って中央へ切り返し。限界に来ていたカズムが足をつらせて転倒、ラームは中央のヒツルスペルガーに預けると猛然とペナルティエリアへダッシュ。決して簡単ではないコースだったが、ヒツルスペルガーが精確なパスを通し、受けたラームがゴールを挙げた! 先ほどはサブリに抜かれての失点だったために、自分で尻拭いを出来たラーム。 ロスタイムは3分。刻一刻と時は過ぎたが、ドイツゴール前でバラックがトゥメルを倒しFK。正面25mあたりの距離。これが決まろうものなら、奇跡以上だ。すでに3分は過ぎていてラストワンプレー、ここで決めないと終わり。カジムと交代で入ったばかりのトゥメル、アルティントップがキッカーの位置に。直接か、合わせるか。 観客、そしておそらくはTVの前の聴衆も固唾をのむ。今までトルコは信じられない奇跡を起こしてきた。 助走を入れず、トゥメルが左足で柔らかく狙った。しかしボールは大きく上へ外れ――ホイッスルと共に、トルコ行進曲が鳴り止んだ。 ■総括 「出場可能なのは13人。控えGKがFWに入ることもあるかもしれない」――緊急事態も甚だしいトルコだったが、ここまでの激闘を見せると誰が予想しただろうか。この試合、内容ではむしろトルコが勝っていた。 EURO2004、W杯ドイツ大会で予選落ちと、大舞台での経験が少ない今大会のトルコ代表。世界3位を経験しているエムレ・ベロゾール、エムレ・アシク、ニハト・カフヴェチら"兄貴たち"はピッチにいない。唯一GKリュシュトゥ・レチベルが最後方から支援してくれるが、前半はGKリュシュトゥの出番が少なかったくらいだった。 得失点差は予選参加14チームで最下位。この事実に「トルコはグループAの草刈場になるだろう」とも予想していた。 この試合でトルコを支えた、"躍進"フェネルバフチェの三銃士。 ウグル・ボラルとカジム・カジム、セミヒ・シェントゥルク。U・ボラルとカジムはEURO予選に出場すらしていない。U・ボラルは左サイドを何度も突破しチャンスメイク、先制点も決めてみせた。カジムはEURO本大会全4試合に出場、テリム監督の信頼も厚い。セミヒは途中出場が多かったが、今大会の3ゴールは全て記憶に残るものだった。 試合前にテリム監督はこの若武者たちについて、こう語っている。 「本大会前、成功を収めるには経験と意欲のどちらが大切かと質問されたが、私は意欲と答えた。3人とも若いが、意欲に満ちている。チームの力になっているのも、彼らのそうした気持ちがあるからだ。今大会ではカズムを初戦から使い続けている。彼は熱い気持ちを持つつつも、自分をコントロールできる選手だ。ドイツ戦ではこうした若手に任せることができるだろう。若いが、年齢は問題ではない。若手ならでは躍動感、力強さがチームの大きな武器になるはずだ」 (uefa.comより抜粋) テリムの采配、そして選手を見抜く力。このベスト4入りは、正にテリムの力が最大限に発揮されたものだった。 一方のドイツは良いところが少なかったが、それでも勝ちにこぎつけられるのが勝者たる由縁。3度の優勝、2度の準優勝は参加国でもちろん最高の成績であり、EUROとの相性の良さを物語る。 不調のマリオ・ゴメスを安易に投入せず、バランスを崩さない交代策は地味ながら見事。ラームが守備に難を見せたが、キッチリ落とし前をつけた。ヒツルペルガーは抑えの効いたミドルを打てず何度も枠を外したが、パスの精度は高く、4-2-3-1移行後はサイド・中盤底でも高い適応力を見せている。 唯一の気がかりは、肋骨を骨折しているフリングスが完全ではないこと。痛み止めを打ちながらのプレーとも聞く。そしてレーマンの不安定さ。他国代表GKと比べると明らかで、アーセナルでの出場機会不足の影響が如実に現われている。 ドイツの決勝の相手はロシアかスペインか。CBコンビも安定しているとは言い難い。クロアチアにもポルトガルにも、そして満身創痍のトルコにさえ2得点づつ決められた。ドイツファンには心臓に悪いが、中立の観客には「点の取り合い」というエキサイティングな試合展開が、決勝で期待できるかもしれない。 Blood Sweat & Beers――ロルフェスが流血し、汗をかきつくしたカジムが足をつり、最後はドイツのビールでの乾杯という結果に終わった。 ところでトルコの同点ゴールの後に、乱入者が現われたよう。TVには映らなかったがもしかしたらジミー・ジャンプか?調子に乗らせないために、効果を出させないためにワザと映さなかったのかもしれない。
posted by batistuta |10:10 |
EURO2008 |
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Blood Sweat & Beers ドイツvsトルコ
こんな試合の後は、Blood Sweat & Laki(トルコ火酒)ですかね。
posted by akiri | 2008-06-27 03:27
Re:
書き込み有難う御座います。
トルコの地酒にラキというのがあるんですね。初めて知りました。
しかしあの怪我人だらけでホントにトルコはよくやりましたね。控えGKのフィールドプレーヤー起用は少し見たかったですが…(笑)
posted by 管理人 | 2008-06-27 22:15


