2008年06月21日
奇跡は何度まで? クロアチアvsトルコ
EURO2008の準々決勝第2試合、クロアチア(B組1位)vsトルコ(A組2位)の試合がエルンスト・ハッペル・シュタディオンにて行われた。 26度の暑さが、両チームから体力を奪う。前半、クロアチアが多くのチャンスを作るも決めきれない。トルコはファウルが多く、次々と次戦出場停止選手を生み出していく。しかしその後先を考えないハードな守備が奏功し、クロアチアの得点機会を奪っていく。 延長でも決着がつかない、と思われた延長29分にクラスニッチが決めて、遂に試合が動く。しかしグループリーグ第2戦、第3戦と逆転してきた”ミラクル・ターキー”がここでも真価を発揮。ロスタイムにセミヒが殊勲の同点ゴールを上げる。 結局PK戦に突入し、トルコの勢いが勝って3-1。傷だらけのトルコが、ベスト4に名乗りを挙げた。 ■プレビュー クロアチアは第2戦と同じ、4-2-3-1の布陣で挑む。 GK スティペ・プラティコサ DF ダニエル・プラニッチ ヨシップ・シムニッチ ロベルト・コヴァッチ ヴェドラン・コルルカ MF ルカ・モドリッチ ニコ・コヴァッチ イヴァン・ラキティッチ ニコ・クラニツァール ダリヨ・スルナ FW イヴィツァ・オリッチ トルコは正に満身創痍。エムレ・ベロゾールが間に合わず、痛々しいテーピングを巻いて強行出場を続けたセルヴェト・ジェティンが遂にスタメンを外れた。 メフメト・アウレリオが警告累積のため1試合停止、チェコ戦でコレルに暴力行為を働いたGKヴォルカン・デミレルは2試合の出場停止に。 グループリーグ第3戦で大活躍だったアルティントップを上げ目で使ってきた。右SBには本職のサブリが入る。 GK リュシュトゥ・レチベル DF ハカン・バルタ エムレ・アシク ギョクハン・ザン サブリ・サリオール MF メフメト・トパル アルダ・トゥラン トゥンジャイ・サンリ ハミト・アルティントップ カジム・カジム FW ニハト・カフヴェチ 98年W杯の3位クロアチア、02年日韓W杯の3位トルコ。世界を驚かせたチーム同士の闘いの火蓋が切って落とされる。 ■前半 クロアチアの左、トルコの右 試合前の予想としては「クロアチアの左サイドのラキティッチ&プラニッチ」、「トルコの右サイドのSBアルティントップ+アルファ(入れ替わりが多いので)」の対面の争いが、勝利のカギを握るのではないかと考えていた。しかしトルコのテリム監督はアルティントップを中盤に置いて、ボールを触らせる時間を増やした。 試合前に「中盤の方が好きだね」と語ったというアルティントップ、その願いが通じたとは思わないが機能したのは事実。それは後に記述する。 26度という暑さは、両チームに慎重さを与えたのかもしれない。前半に活発な運動量は少なく、若干セーブしている印象を受けた。 5分にクロアチアの左サイド、トルコ最終ラインのパスミスをラキティッチが奪いゴール前に迫る。マイナスの折り返しにスルナは合わせきれず。 さらに18分、前線右サイドでボールを受けたスルナが下がりながらキープ、中央から右前方へ切れ込んできたモドリッチへ託す。モドリッチはドリブルでペナルティエリア右へ侵入しクロス、オリッチが合わせたがクロスバーに当ててしまい、詰めたクラニツァールがヘッドで押し込もうとしたがクロスバーの上。 37分、しっかりと引いて守るクロアチアに対して、M・トパルが目の覚めるようなミドルシュートを放っていくが、これは惜しくもゴール右に逸れてしまった。 ■後半 後半になってもクロアチアが攻める。 69分、クロアチアの攻撃。自陣でアルティントップの縦パスを切ったモドリッチが、そのままドリブルで中央を駆け上がる。たちまち4人に囲まれ、一人にスライディングタックルを受けるが、倒れこみながら絶妙なスルーパス。しかし前線のオリッチが違うベクトルへ走りこんでおり、タイミングを合わせることができず。 さらにラキティッチがオリッチを使ってワンツーパス、エリアに入ったところからシュートを狙うが大きく上へ。 反対にラキティッチから中のオリッチにクロスを供給するも、ヘディングシュートはゴール右へ。 76分、4-1-4-1の守備的MFの「1」で働いていたM・トパルを下げて、セミヒ・シェントゥルクを投入する。若干のポジションチェンジ、セミヒはもちろんニハトとの2トップに入る。 クロアチアのビリッチ監督はまだ動かない。2枚目のカードを切るには、延長戦を見越した場合に慎重にならざるを得ない。 86分、クロアチアが右サイドを崩してショートカウンター。左サイドでラキティッチがフリーをアピールしたが届かず、ドリブルで持ち込んだオリッチをギョクハン・ザンがストップする。 92分、トルコが入れられたクロスボールを弾くと、クロアチアがこぼれた浮き球の落下点をそのままシュートを放つ。しかしオリッチに当たり、オリッチがそのルーズボールを自らシュートに持ち込むがバーの上へ。 クロアチアがシュート14本で枠内5本。トルコが7本放って枠内1本。クロアチアが攻め立てるも90分では勝負がつかず、延長戦に突入した。 ■延長 まさかの残り3分の2ゴール この暑さの中、クロアチアのNo.1タフガイのオリッチは走り続けた。延長開始直後も前線からプレッシャーをかけて、相手にボールを割らせる。しかし延長7分、さすがに交代。第3戦のMan Of the Matchに選ばれ勝利に貢献したイヴァン・クラスニッチがピッチに飛び出す。 依然としてクロアチアペースではあるが10分にトルコ、右サイドのスローインからペナルティエリアの角で、混沌とした中からセミヒがシュートを狙っていく。 さらにその1分後、バイタルエリア(ペナルティアークのすぐ外、DFとMFの間)でフリーになったトゥンジャイが、強烈なグラウンダーシュートを放っていくがこれはゴール左へ。 延長後半になっても、両チーム決め切れない。このままPK戦かと思いきや、攻め続けたクロアチアが遂に試合を動かした。 延長29分、右サイドでポスト役になったモドリッチの右をスルナがオーバーラップ。クロスはDFにカットされたが、モドリッチがラインを割らせまいとボールを拾う。飛び出していたGKリュシュトゥは慌てて戻るが、モドリッチのクロスはフリーのクラスニッチへ。全力でリュシュトゥは戻ったが、逆にその速いスピードがクラスニッチの遅いシュートスピードと入れ違いになり止められず。 土壇場でクロアチアが先制点。さらにトゥンジャイのミドルが大きく上に外れた時、クロアチアの勝利――を誰もが確信した。 ビリッチ監督は残していた3人目の交代枠を準備、時間つぶしにイェルコ・レコの投入を待っていた。 この後クロアチアは、前がかりになるトルコから駄目押しの得点を狙い、ラキティッチが前線にクロスを上げた。走りこんだ2人がオフサイド、GKがFKを素早くリスタート。ボールはクロアチアペナルティエリアに入り、クロアチアのクリアミスを”スーパーサブ”セミヒが押し込んで殊勲のゴールを挙げたのだった。 ■PK戦 同点弾により、勢いは完全にトルコに持っていかれた。しかもコイントスで勝利したトルコが、自軍サポーターの声援をバックに戦えることになった。 クロアチアの最初のキッカーはモドリッチ。予想はしていたが、やはり外した。この試合で120分フルに走り続け、倒れこみながら何度もパスを出し、相手ゴールラインまで全力で走り続けたモドリッチの両足は悲鳴を上げていたに違いない。 微動だにしないGKリュシュトゥにコースを読まれ、おそらくその外側を蹴ろうとしてポスト右に外してしまった。 視界に広がるトルコサポーターを味方につけ、トルコの3人は悠々と決めていく。 対するクロアチア、3人目のキッカーのラキティッチは左に外す。さらにペトリッチのシュートは、GKリュシュトゥが完全に読んでストップ。 トルコがPKスコア3-1で、クロアチアに勝利。ベスト4へ駒を進めた。 ■総括 グループリーグでの活躍を見て、個人的に思い入れが出来たクロアチア。3戦とも高いクオリティ・戦術を見せてくれた。 しかしやはり「良いサッカーをした方が勝つとは限らない」は至極名言である。クロアチアの技術・戦術の前に立ちはだかったのは、「最後まで諦めない」強い気持ちを持ったトルコだった。 ◆プラニッチの存在 もう一つ、クロアチアに関して注目すべきは左SBのダニエル・プラニッチだろう。グループリーグ3戦全てに出場。スタメン・交代なしの270分フル稼働だ。 彼がいかに諸刃の剣かということは、第3戦で論じた。 第3戦で主力を休ませる中でプラニッチを起用したのは、ビリッチの「プラニッチへの信頼」と「本来、攻撃的サイドアタッカーであるプラニッチを左SBに置く不安」という相反するものがあったのではないだろうか。 このトルコ戦でプラニッチは、前半上がる回数は少なく(セーブしていたかもしれない)、後半に度々左サイドを駆け上がったが、グループリーグで見られた効果的なものではなかった。トルコのテリム監督もおそらくそれを把握していただろう、こちらも攻撃的MFであるが右SBで起用していたアルティントップを、中盤に使ってプラニッチとの対面を避けた。アルティントップは攻撃の起点にもなるため、「共倒れ」をしたくなかったのだろう。 そして元々SBであるサブリを配置してケアさせた。それだけではなく、中盤の選手がしっかりと絞ってスペースを消していた。プラニッチが前目でボールを持った際にプレスがかかり、何もさせなかった。 そして延長戦、おそらく疲労がピークに来ていたプラニッチは「もうひと走り」ができなくなっていた。中盤でモドリッチがキープして左サイドに出したところに、プラニッチがトラップミス。CBシムニッチのパスボールも、プラニッチはラインを割らせてしまった。 FWエドゥアルド・シルバ不在におる攻撃力不足を、左SBに攻撃的なプラニッチを置くことで補完する――そのツケがここで回ってきてしまったのだ。 ◆これからのクロアチア 敗れてしまったクロアチア。しかしビリッチという若き名将がいる限り、栄冠は近いはずだ。試合後のコメントをGoal.comより一部抜粋。 「素晴らしい試合をしてくれた両チームに賛辞を贈りたい。この試合は、なぜサッカーが世界で最も人気のスポーツなのか、なぜ最もドラマティックなスポーツなのかを示してくれた。私の選手たちはヒーローにふさわしいパフォーマンスをした」 また5月上旬に、2010年までの代表監督契約を更新したビリッチ。 代表監督の年俸は1000万円以下であるのに対し、ハンブルガーSVが3億以上の年俸、フルハムが現在の50倍となる年俸額を提示してきたが、このような高額オファーを蹴っている。またスタッフも無給で働いたりしているようだ(wowowのクロアチア紹介欄より一部抜粋) 熱い愛国心を持ったクロアチアの、2010年への挑戦に要注目である!! ◆Man Of the Match 50分、ギョクハン・ザンのクリアミスをオリッチが奪い、飛び出したGKを越えるヘディング・ループシュートを狙うが、わずかにGKがさわりゴールに届かず。 82分、25mからゴール右上を狙うスルナの直接FKを、右手一本で掻き出す。 他のシュートは正面で受けることが多く、絶妙なポジショニングを見せたのはトルコのGKリュシュトゥ。セミヒへのアシストを決め、PKでも存在感を見せつけ文句なくMOMの活躍だ。 リュシュトゥはEURO1996やEURO2000に出場、2002年の日韓W杯では3位入賞に大きく貢献。代表で不動のポジションかと思われたが、進境著しいフェネルバフチェのGKヴォルカン・デミレルに正GKの座を奪われた。 そのヴォルカンの出場停止でお鉢が回ってきたが、トルコ代表の歴代最多Aマッチ出場記録保持者は焦ることはなかった。迂闊な飛び出しで失点を喫したが、その他は絶妙なポジショニングでイージーキャッチに持ち込む。 79分、クロアチアの左CKにN・コヴァッチが飛び込んだが、GKリュシュトゥがアパーカットのような気合のパンチングクリア。 91分の33mの距離のスルナの直接FKは、GK直前でバウンドする難しいボールだったが、胸で落としてキャッチ。クロアチアプレーヤーに詰められないよう、前傾姿勢で手元に落とすベテランらしい技術だった。 PK戦、ゴールを決めるコイントスの際には交代したニハトからキャプテンマークを引き継いでいたリュシュトゥ。コイントスに勝利し、ここでも運を引き寄せている。 1人目のキッカーのモドリッチを相手に、最初は一歩も動かず圧力をかける。3人目のペトリッチのシュートの止め方も正に「圧巻」だった。 GKヴォルカンが2試合停止のため、次戦のドイツ戦もリュシュトゥがゴールマウスを守るだろう。 ◆次戦に向けて トルコの悩みは怪我人が尽きないこと、そして警告累積だ。 この試合でトゥンジャイ、アルダ、エムレ・アシクが1枚もらって出場停止。 キャプテンのニハトが、延長後半にFKを蹴った際に右の太もも裏を痛めたようで、負傷交代している。後々、ケガの詳細が明らかになるだろう。 そしてエムレ、セルヴェトは次戦どうなるか分からない。チェコ戦で左ふくらはぎを負傷したCBエムレ・ギュンギョルは今大会絶望。スイス戦で鼠蹊(そけい)部を痛めたMFトュメル・メティンも、この試合出場はなかった。 相変わらず野戦病院と化しているトルコ。それでも3戦連続で逆転勝利を飾ってきた。 「勝負に絶対はない」を体現しているトルコ。残る準々決勝2試合に影響するのだろうか。
posted by batistuta |07:01 |
EURO2008 |
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奇跡は何度まで? クロアチアvsトルコ
はじめまして!
興味深い記事を拝見させていただきました。
今朝の試合はどっちが勝ってもSFでのドイツとは因縁染みたカードになるものだと思っておりました。
クロアチアでしたらGLのリベンジマッチ。
トルコでしたら(これは政治・文化的問題なのですが??)ドイツ国内に移民を多く受け入れた親近国。
試合内容は自分は6時にTVをつけたので詳しい内容はわかっておりませんが、120分の終了間際に2点入るとは・・。 つくづくサッカーってわからないものだと思いました。
この試合は出場停止処分を受けたトルコのフェネルバフチェ所属の正GKの代役は日本とも2002年に対戦したリュシュトゥ。恐縮ですが、自分でもすっかり忘れていました。
トルコの正GKはUEFA=CLでもセビージャ戦での活躍には目を見張るものを感じていました。
また、UEFA=CUPを制したゼニト所属のロシア人の
⑩アルシャビン。
彼らの今期の欧州カップ戦での活躍があり、
(自信や経験値を向上させたのかはわかりませんが)
EUROでの活躍の一因にもなったのではないかと思います。
そのような意味では、
(主力として貢献できたかはともかく)
韓国人2人がCL、及びUEFACUPでの戴冠を達成されたのは日本人としては羨ましくさえ思えます。
話をトルコに戻しますが
SFでの試合は普通に考えてみればほぼ地の利を生かして戦えるドイツ有利は不動だと思います。
ただ、トーナメントを勝ち抜くには(実力+α)の要素が何か絡んでいることがCLを見ても一理あるように思えるので、弱者を応援したくなる自分の性格からはトルコに一泡でも二泡でもドイツに対して噴かせてほしいと思います。
今後もブログの記事内容、楽しみにしています。
駄文であり長文をしつれいしました。
posted by pirosi | 2008-06-21 11:49
奇跡は何度まで? クロアチアvsトルコ
とても面白い試合、そして記事読ませていただきました。ありがとうございます。
一点、”Worst of the match :審判団”の点ですが、ルール上は、オフサイドはアウトオブプレーではなく、審判団のその判断に問題はないと思います。
試合の真実を捉えようとするその記事姿勢、今後とも楽しみにしています。
posted by usag | 2008-06-21 12:31
Re:
書き込み有難う御座います。
pirosiさん<
UEFA CUPのゼニト(ロシア)、チャンピオンズリーグのフェネルバフチェ(トルコ)の躍進が、EUROにも反映されているようですね。
ドイツvsトルコ戦は色々な意味でも楽しみです。クロアチア戦同様、タダでは終わらない気がしますね。後半は特に期待です。
usagさん<
丁寧なご指摘、誠に有難う御座います。
ビリッチ監督が猛抗議しているのを見て、自分も感情が入ってしまいました。試合後に何もありませんしusagさんの仰る通り、ジャッジに問題ないのですね。
本文を少し修正させていただきます。有難う御座いました。
posted by 管理人 | 2008-06-21 16:18


