2008年06月11日

裏を取る動きの教科書 スペインvsロシア

 
 EURO2008の第1戦、グループD・スペインvsロシアの試合がシュタディオン・ティヴォリ・ノイにて行われた。
 スペインはビージャとF・トーレスの2トップ。これに中盤のパスセンスが融合した「スルーパスと、裏を取る動き」の教科書のようなプレーで、何度も好機を作った。
 20分にロシアの縦パスをカプデビーラが蹴り返すと、そのままロシアゴール前へ。反応したF・トーレスが追いつきGKを引きつけてお膳立て。ビージャが難なく決めた。
 44分にはロシアのCKをしのぐと、カウンターからイニエスタのスルーパス。ビジャがGKの股を抜くゴール。
 そして75分にはカソルラからセスクへ。セスクのスルーパスを受けたビージャがDFをかわしてゴールに叩き込みハットトリック達成。
 ロシアもCKをパブリュチェンコが押し込んで一矢報いるものの、今度はセスクに決められて結局4-1でスペインが圧勝。
 無敵艦隊が好調な滑り出しを見せた。


 ■プレビュー
 スペインはダビド・シルバ、フランセスク・ファブレガス、チャビ、アンドレス・イニエスタの中盤「クアトロ・フゴネス」が話題に。しかしEURO直前の親善試合でも行っていた2トップで行く。

 GK イケル・カシージャス
 DF ホアン・カプデビーラ
    カルロス・マルチェーナ
    カルラス・プジョル
    セルヒオ・ラモス
 MF ダビド・シルバ
    チャビ
    マルコス・センナ
    アンドレス・イニエスタ
 FW ダビド・ビージャ
    フェルナンド・トーレス

 対するロシアは、UEFAカップ優勝&UEFAカップ得点王、ゼニトのFWパヴェル・ポグレブニャクが5月28日にセルビアと対戦した親善試合で左ひざの軟骨を負傷。復帰が困難と診断され、代表経験のないFCクルリア・ソベトフ・サマラのイワノフを追加招集することに。
 「ロシアの新皇帝」とも言われるアンドレイ・アルシャヴィンは予選の最終戦で暴力行為を働き、2試合の出場停止処分。スペイン戦とギリシャ戦に出られない。

 GK イゴール・アキンフェーエフ
 DF ユーリ・ジルコフ
    デニス・コロディン
    ロマン・シロコフ
    アレクサンダー・アニュコフ
 MF セルゲイ・セマク
    ディニヤル・ビリャレトディノフ
    イゴール・セムショフ
    コンスタンティン・ジリアノフ
    ドミトリー・シチェフ
 FW ロマン・パフリュチェンコ


 ■期待されたマジック
 韓国代表をW杯ベスト4、PSVをCLベスト4、オーストラリアをW杯ベスト16の成績に導く。そんな”ヒディンク・マジック”に期待しないわけにはいかない。しかし、主力を欠いた状況、持ち駒が制限される中ではさすがに厳しいようだった。

 ロシアは規律ある動きでスペインゴールまで迫る。
 16分のセムショフのシュートは左に外れた。
 22分にはシチェフが右サイドを深くエグり、グラウンダー性のマイナスのクロスを2人がスルーしてジリアノフが狙ったがポストに嫌われた。
 そこまでプレッシャーがあるわけではないスペインのディフェンスを前に、少々自滅気味のパスを繰り返した感すらあったロシア。
 マジックは雨にかき消されたか。


 ■機動力、そして個人能力
 スペインは自由にやっていた。TV解説では4-4-2と出ていたが、チャビと守備的MFのセンナがアンカーとなり守る他は前線のF・トーレス、ビージャ、シルバ、イニエスタが自由に動き回った。
 2トップのビージャとF・トーレスは本当に速い。
 20分の場面、ロシアの縦パスをカプデビラが蹴り返すと、ボールが間を抜けてロシアゴール前へ転がる。慌てて戻ろうとするロシアDFを、F・トーレスはまるで「早送り」のような動きで置き去りにする。そしてF・トーレスはドリブルでGKの飛び出しを待って横パス。DFとの間合いを測りつつゴール前に走りこんでいたビージャが、フリーの状態で難なく決めてみせた。1-0、スペイン先制。

 23分にはF・トーレスの個人技。シルバの縦パスに裏へ行くと見せかけてストップ、インステップ(足の甲)でボールを止めると、裏を警戒したロシアDFが完全に振られてしまった。F・トーレスは易々とシュートに持込んだが、これはGK正面に。


 ■教科書のような
 ゴールチャンスの次はチャンスメイク。
 F・トーレスは右に大きく開いてボールをもらうと、中に絞ったイニエスタへ。すると斜めに走りこみ、裏を狙うビージャにイニエスタがスルーパス。完璧に呼吸があったが、これは苦しい体勢からのシュートとなってしまった。

 そして44分、ロシアのCKをしのぐと、スペインはカウンターを仕掛ける。カプデビーラがドリブルで持ち上がってパス。受けたイニエスタから、またもロシア最終ラインの裏を突いたビージャへ。ビージャはGKの股を抜き、ロシアゴールを陥れた。2-0、スペインが突き放す。

 75分には交代で入ったカソルラからセスクへと細かく繋いで、最後はセスクのスルーパス、またもビージャが抜け出す。まとわりつくDFシロコフをドリブルでかわしてゴールに叩き込みハットトリック達成。

 中盤の高いパスセンス、ビージャの裏を取る動きが最高の形で発揮され、まるで教科書のように綺麗に決まっていった。


 ■ロシア、一矢報いるも
 ロシアは86分、右CKをニアでシロコフが頭で合わせてファーに送り、最後はパフリチェンコが決めた。しかしこの1点を返すのが精一杯。
 89分に再び右CKを得たロシア、セカンドボールをスペインのオフサイドラインの上げ損ねを突いて、キャプテンのセマクがフリーでボールを受けたが、コントロールに時間がかかり絶好の得点機を逃した。

 ロスタイム、得失点差を減らしたいロシアだが、集中力が失われたかDF同士のバックパスをミス。ビージャが奪いそのままゴール前までドリブル、周りが上がるのを待つ。DFの動きを読みきり、右にいたチャビへフワリとしたパスを送る。チャビはそのボールを強烈なボレーシュートで叩く。そしてGKが弾いたところをセスクが頭で押し込んだ。リプレーでは完全にオフサイドだったが、副審がこれを見逃した。

 4-1、スペインが圧倒的な力の差を見せつけた。


 ■総括 2つの艦隊
 オーストリアのインスブルック、海から遠く離れた内陸の街で”無敵艦隊”と”バルチック艦隊”が激突した。
 「巨砲と艦数のみに頼り作戦が大ざっぱだった」と伝えられるバルチック艦隊の戦術のように、ロシアはパフリュチェンコのミドルレンジのシュートが目立った。最初のうちは組織だった「らしい」攻撃を見せてはいたが、大味になっていった感がある。もちろん主砲の一つ(ポグレブニャク)と操舵手(アルシャヴィン)を欠いたことも大きな影響だっただろうが、こればかりは仕方がない。
 ヒディンクはヴラディミール・ビストロフを後半から出して、70分あたりにまた下げるという奇策も出したが功を奏さなかった(単純にビストロフの動きが悪かっただけだろうが)。
 ロシアが守るにはスペインにスペースを与えてしまい、カウンターを仕掛けるスピードがあまりに遅すぎた。
 ヒディンクマジックは今大会中に見られるか。期待して待ちたい。

 一方の”無敵艦隊”は大型の戦艦ではなく、機動力をもった駆逐艦といったところか(あまり軍隊に詳しいわけではない付焼刃知識だが)。 
 高い精度のパスが最終ラインを何度も貫通し、相手を完膚なきにまで打ちのめした。

 スペインは1964年以来(!)のEURO優勝へ向けて、完璧な船出を飾ったかに見える。しかしそこは「万年優勝候補」、世界中のファンが懐疑的な目で見ているかもしれない。
 ワールドカップ・ドイツ大会では、ロシアと同じ(元)共産圏のウクライナを4-0で叩きのめして勢いに乗り、グループリーグを3戦全勝で通過。しかし決勝トーナメント1回戦で、グループGをギリギリの2位で通過したフランスと戦い1-3と惨敗。フランス復活への踏み台になってしまった。

 もちろんスペインはグループリーグ突破に集中するのみだろう。次の相手はスウェーデン、無敵艦隊がヴァイキング狩りに乗り出す。

posted by batistuta |03:51 | EURO2008 | コメント(0) | トラックバック(0)
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