2008年02月20日
セ界最多安打男
予告通り巨人と2年総額10億円(推定)という破格の契約をしたアレックス・ラミレス選手をいろいろな視点から検証してみました。よく見る個人成績はこんな感じでしょう。
試合数 安打 本塁打 打点 打率 出塁率 長打率
144 204 29 122 .343 .371 .569
ご存じの通りセ・リーグ歴代1位の204安打を打ち、リーグ最多の122打点を記録している。
また、なまじデータ好きが乱用する(僕は数字自体が何かを意味しているわけではないのであまり好きではない)OPSは.940でこれはリーグ4位です。
しかし打点というのは個人成績含まれているし、打撃3部門などといって打率と本塁打と並んで最も目にする機会が多い数値の1つだ。我々が生まれたときには既に打撃3部門は定着していたし、その3つのタイトルを全て獲得した打者を三冠王と呼び、最強の打者と定義づけられていた。しかしよく考えてみればこれは個人成績であって、個人成績ではない。打席に入ったとき、塁上にどれ程のランナーがいるかに大きく左右される。2007年度にラミレス選手が自分自身で打点を上げ、同時に得点を記録したのは(当たり前だが)本塁打数の29だけです。つまり他の93打点は他の選手が塁上にいたから記録できたわけで、全てがラミレス選手の手柄ではない。もちろん多い方がいいに決まっているし、リーグの打点王になったラミレス選手は素晴らしい。ただ単純に打者個人の検証に使うには難しい数値である。ということで打点のことはひとまず忘れて欲しいです。
2007年のラミレス選手は今までと少し違っていた。というかまさか安打の記録を塗り替えるとは思わなかった。ラミレス選手といえば強引なプルヒッター(引っ張る打者)のイメージが強かった。しかし昨年は広角に打ち分けていた気がする。3年契約を結んだ05年以降の安打方向を調べてみました。
年度 左 中 右 内野 計
05 79 44 32 13 168
(47.0%) (26.2%) (19.0%) (7.7%)
06 73 46 32 10 161
(45.3%) (28.6%) (19.9%) (6.2%)
07 81 44 57 22 204
(39.7%) (21.6%) (27.9%) (10.8%)
本塁打数
年度 左 中 右 計
05 27 5 0 32
06 18 7 1 26
07 19 4 6 29
やはり右方向の安打は増えている。右方向への本塁打も増えていることからバッティングフォームが変わったと推測できる。僕は素人なので詳しくはわからないが、今までと全く同じフォームだったらこんなに差はでないと思う。右方向に打てるように調整したのだろう。
1つ目の検証結果
「07年から広角に打てる打者に変貌した」
それと内野安打も増えている。内野安打22本はリーグ5位だ。ちなみにベスト5は、1青木選手、2赤星選手、3東出選手、4鳥谷選手、5位ラミレス選手です。俊足の左打者に混じって鈍足の(というほど遅くはない気もするが)右打者がランクインしている。このランキングの上位に右打者が食い込むこと自体すごい。俊足の右打者、中日の井端選手が18本、荒木選手が16本です。打数が違いすぎるからかと思ったがそうではない。内野安打/打数=内野安打率はラミレス選手が.037で、井端選手は.031、荒木選手は.035です。ラミレス選手は右打者の中では非常に内野安打を打つ確率が高いのです。特別足が速いわけではないので内野手を強襲するヒットが多いということでしょう。プロの内野手のグラブを弾くほど速い打球を打っているということだと思います。これも検証結果の1つです。
「打球が非常に速い」
そのためでしょうか?併殺打は毎年のように多いです。
昨年は14本でリーグ10番目の多さでした。
ラミレス選手は「四球を選ばない強打者」として有名です。
07年の四球数は23個です。打席数は628なので、四球は約3.7%しかない。リーグ全体では32779打席で2480四球なので約7.6%ですから平均的な打者の半分です。四球が少なくなる原因として考えられるのは
1.ボール球に手を出す(選球眼が悪い)
2.他の打者よりストライクゾーンにくるボールが多い
2は打力が低い打者に多く観られる傾向。特に投手打者に四球を与えるシーンはほとんど観ない。「こいつは打てないだろうから四球で出したらバカらしい」ということでストライクばかり投げるのだろう。リーグを代表する強打者ににそんな感覚で対戦する投手はいない。よってラミレス選手はボール球に手を出すということでしょう。
ボール球とはストライクゾーンの外にきた球です。ストライクゾーンは
「打者が自然体でバットに当てられるゾーン」と定義されている。
要するに「ボール球を打つときは自然体ではない」ということになります。だからほとんどの強打者(好打者)はボール球に手を出さない。逆に手を出す選手は成績を残しにくい。よってラミレス選手は
「ボール球に手を出しながら好成績を残すことができる珍しい打者」
逆に言えば珍しいから「四球を選ばない強打者」と呼ばれるわけです。
ストライクカウント別成績は次の通りです。
(本当はボールカウントも含めたデータが欲しかったが探せなかったのであきらめました)
ラミレス選手
カウント 打数 安打 打率
0ストライク 166 79 .476
1ストライク 172 63 .366
2ストライク 256 62 .242
合計 594 204 .343
リーグ全体(データの都合で投手を除く)
カウント 打数 安打 打率
0ストライク 6477 2263 .349
1ストライク 7536 2512 .333
2ストライク 13529 2761 .204
合計 27542 7536 .274
打率に目がいってしまうが、注目は打数です。打数全体に占める割合は
ラミレス選手
0スト・27.9%、1スト・29.0%、2スト・43.1%
リーグ全体
0スト・23.5%、1スト・27.4%、2スト・49.1%
「浅い(早い)カウントから積極的に打つ打者」
であることが解ります。せっかく調べたのでもう少し楽しみましょう。
全く意味はない。箸休めとでも言いましょうか、単なるお遊びです。
ラミレス選手の打数をリーグ平均の割合にするとカウント別打数は
0ストライク・139~140打数
1ストライク・162~163打数
2ストライク・291~292打数
となります。打率をそのまま当てはめてみると安打数は
0ストライク・66~67安打
1ストライク・59~60安打
2ストライク・70~71安打
合計は195~198安打となります。
積極的に打ちにいったからこそリーグ記録を塗り替えられたわけです。
本題には全く関係ありません。
長打率をみてみます。計算式は塁打÷打数です。「1打数当たりいくつの塁が稼げるか」という数値です。全打数本塁打ならば4.000です(おそらく不可能ですが)。本塁打、三塁打、二塁打といった長打が多い選手が上位を占めるため長打率と呼ぶ。しかし打者走者としての走塁技術も関係してくる。例えば(これもおそらく不可能ですが)全打数で内野安打を打った(外野に1本も打球が飛ばなかった)選手の長打率は1.000です、プロ野球記録はランディ・バース選手が1986年に記録した0.777なので、この選手は1度も外野に打球を飛ばすことなく長打率のシーズン記録を大幅に更新してしまうことになる。例えは極端すぎるが、要するに1を超える選手は(今のところ)いないので単打を打っても数値が上がるわけで、純粋に長打を打つ力を比較できるわけではないということです。
ラミレス選手は高橋由伸選手に次ぐリーグ2位の.569です。
「打撃(打者走者としての走塁を含む)で塁を獲得できる効率は非常に高い」
回りくどい表現になってしまったがこう表現するしかない。
次に本塁打について考えてみます。
巨人がラミレス選手の獲得を発表したときこう思った人が多いのでは?
「またスラッガー(ホームラン打者)獲るのかよ!」
しかし今回は意外なことが解りました。
本塁打数はリーグ9位の29本です。しかし打数は選手それぞれ違うため、本塁打を打つ技術を調べるには本塁打率を計算する必要がある。
本塁打率とは「その名の通り本塁打を打つ確率」…ではない。
計算式は打数÷本塁打なので、「1本打つのに何打席かかるか」という数値です。
長打率といい、本塁打率といい名称を考え直す必要がある気がする。
しかし本塁打率は名称はともかく、純粋に本塁打を打つ技術を比較することができる数値です。
ラミレス選手の本塁打率は20.48です。20打数~21打数に1本のペースで本塁打を打つ選手ということです。
ラミレス選手は昨年終盤「あと1本打って30本の大台に乗せたい」と発言していましたが、昨年のペースではあと20~21打数必要でした。
本人も口にしている「30本の大台」ですが、それを打つのに600打数以上かかる打者は本当にスラッガーでしょうか?人それぞれの考えはあるでしょうけれど、少なくとも僕はスラッガーではないと思う。
確かにラミレス選手には本塁打王受賞歴(03年)があります。そのときの本塁打率は14.18です。03年は間違いなくスラッガーでした。ただ過去は過去です。検証結果
「07年のラミレス選手はスラッガーではない」
補足しておきますが、
「本塁打率が低かったのは警戒されていたから」
という考えもあるだろうが、警戒されていても本塁打を量産できるのが真のスラッガーである、と僕は考えます。
話をまとめると
ボール球だろうが構わず、浅い(早い)カウントから積極的に打ちにいき、広角に速い(鋭い)打球を量産できる打者、しかしスラッガーではない
これがデータからみる07年のラミレス選手の紹介文です。
巨人もスラッガーばかり集めているわけではない。…と締めたかったところだがそうはいかなかった。
巨人入団会見での一言
「40本以上本塁打を打って、本塁打王になりたい。」
40本打つためには07年のペースでは、800打数以上必要です。それは不可能な数字なので、本塁打を打つペースを上げなければなりません。600打数だとしても本塁打率15でちょうど40本です。上記の通り03年にはこの本塁打率15をクリアしているので、可能かもしれない。しかし07年に作り上げた広角に鋭い打球を打てるフォームを変えるのはもったいない気がする。打撃改造に失敗したらどうするつもりだろう?
全然活躍できなかったらそれはそれで面白いかも
文章に多少おかしな点があるかもしれないし、説明不足な点もあるかもしれない、しかし僕は専門家ではないので(あくまで趣味なので)、それだけは理解して欲しいです。
「説明不足だ」ということを偉そうに書く人がいて困っている。よく考えてみて欲しい、僕は数値のみを観て(計算して)そこから自分なりの検証をしている。要するに僕と同等の知識があれば何の説明もなく数値だけを観たって理解できるはずです。コメントを見る限りほとんどの人は僕の説明不足かもしれない(理解できる人が多数派ならば説明不足ではない気がする)文章で理解できているわけなので、理解できないのに偉そうにしている人はすごく恥ずかしいですよ。解らないことがあれば「こういう数値からそのように考えるのは何故ですか?」というような書き方にして頂きたい。そういった疑問にはできるだけ解りやすく返信していきたいです。その返信も説明不足だったりして…(苦笑)
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posted by なお |18:00 |
野球(打者) |
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セ界最多安打男
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長くて、読む前に疲れちゃった(笑)。ただ逆方向への安打が増えた事、四球を選ばない事、イメージほど本塁打を打っているわけではないという事は良く分かった。個人的には2年10億ですか? ここまでの価値はないと考えます。明るいキャラで好かれていますが勝負を決めるような劇的なイメージはなく、むしろ粗く、ハッキリ言えばどうでも良い場面で打ってばかりというイメージ。ヤクルトが去年、最下位だった事もそれを証明している。もちろん投手力などの問題もあるんでしょうけど。去年の最多安打などは契約最終年にアピールの為に頑張った結果、としか思えないです。ハウエル、ペタジーニのようになるとは限らないですがならないとも思えないです。
posted by 長文 | 2008-02-20 18:46
セ界最多安打男
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なるほど
posted by ありがとう | 2008-02-20 19:37
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
とても面白い記事で興味深く読ませてもらいました。ご自身で考えられていることが伝わる文章で、なるほどと思うことも多かったです。
ただ一点、細かいことですが気になることがありました。検証という言葉がちょっと相応しくない形で使われて言うのではないかということです。「仮説を立てることができる」というような表現に変えた方がいいのではないでしょうか。おそらくこのことは説明不足だと指摘する人がいる一因ではないかと私は考えます。
例えばラミレス選手は足が速くない右打者なのに内野安打が多い。よってラミレスの打球は早いことが検証できたという表現をなさっていますが、さすがにこれは検証という表現は不適切です。例えば(正しいかどうかは別として)ラミレス選手が内野安打になり安いコースに狙って打っている可能性だとか、打球が早いなら弾いてもそのあと時間的な余裕をもって処理できるのではないかというような反論を否定できないからです。そこにはさらに証明材料が求められます。検証という言葉は一般的にその仮説が正しいということを証明するという文脈で使われるものです。他の可能性を完全につぶさなくてはならないのです。管理人さんのおっしゃることはデータに基づいたすぐれた仮説ではありますが、検証とは呼びづらいものであると思います。もちろん仮説、検証どちらの方がすぐれているというものではないと思います。
えらそうな言い方になっていたら申し訳ないのですが、管理人さん、読者の方含めてちょっとした用語の混乱でストレスをためていらっしゃるように思えたのでもったいなく思いコメントさせていただきました。長文、失礼いたしました。
posted by さの | 2008-02-20 20:47
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
打力の面から見ればいい考察だと思いますよ
posted by トラふぁん | 2008-02-20 20:48
セ界最多安打男
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このブログ個人的にスキですね
posted by q | 2008-02-20 21:17
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
そういえば、管理人さんは以前の記事でヤクルトの得点効率の低さを挙げていましたね。
これは良くも悪くもラミレスが打線を切っているからではないかと思います。
ヤクルトは1,2番の出塁率が12球団最高です。それをラミレスが安打で返すことで得点につながっていることが打点の多さからも予想できます。
しかし、ラミレスは打率の割には出塁率が低く、併殺が多い。そして本塁打が少ない代わりに両リーグ最多の二塁打を打っています。
このことから今期のヤクルトは一塁が空いた状況で4番に回ったと考えられ、それによってチーム最多本塁打のガイエルが厳しい攻め方をされていたのではないでしょうか。
しかも、ヤクルトは下位打線が弱いので、ガイエルを歩かせても返すことが出来ません。前に鈍足のラミレスがいたり、初回で考えると1死又は2死で迎える確率が高いことを考えると尚更です。実際6~8番の打点は、前の打者の出塁率が高いにもかかわらずリーグ最低です。
1~3番で点は取れるが、そこから先を切り捨てるような打線の組み方が得点効率を下げているのだと推測してみました。
ラミレスが抜けたことで、今期取り組んでいる機動力野球がむしろ効果を発揮するかもしれないと思っています。彼の得点能力分よりは実際の得点は落ちないのではないでしょうか。
蛇足ですが、最後の文は少し余計では?コメント欄に浅いコメントや荒らしコメントがつくのはよくあることですし、いちいち対応していたらキリがないと思います。明らかに聞き入れなくてもいい物は適当にスルーしておいた方が良いと思うんですが。ただ、管理人さんの意見があるでしょうから、それでいいとも思います。どっちだよって感じですが、少し喧嘩腰で、荒れてしまいそうで怖かったので書いてみました。意味不明でしたらスルーして下さい。
posted by 長文失礼 | 2008-02-20 22:18
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
さのさんの言う通りだと思います。
僕は説明不足、というより論理がやや強引、といった印象を受けます。
posted by t | 2008-02-20 23:49
人任せですみませんが
コメント投稿者ID :
ラミレスのスカウティング・レポートとしては、
1 早打ちである
2(今年は)右方向へのヒットや内野安打が多いが、併殺も多い
3 打席の割にHRは少なめ
というまとめでしょうか。
他のデータとしては、球場別のHR数と試合数比(狭い神宮が多いのか?)も知りたいところ。
また、情報がないでしょうが22本の内野安打の内容(強襲が多いのか? 方向は?)はわかりませんか。
posted by モト | 2008-02-21 00:07
球場別データは
コメント投稿者ID :
公表されていますね。
ラミレスは20打席に1本の割合で、神宮、東京D、甲子園などはほぼその比率どおりか近い数字でした。
打ってないのはナゴヤDと横浜S。逆に意外に打ちまくっているのが1、2試合しかない地方球場。合計60打数くらいで6本打ってました。
最近の地方球場って、広いはずですよね。
もうひとつ、驚きの数字は、初球の打率が5割を超えていること。また、1塁の空いた2・3塁では11打数ながら.636の打率です。
得点圏打率が毎年、3割3分前後というのも立派です。
posted by モト | 2008-02-21 00:21
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
説明不足だとは思わないし解りやすいと思いますよ。ラミレスはホームラン狙いなら怖くありませんね。もし40発狙うなら7番ぐらいに置いたら
怖いでしょうね。個人的には二岡、小笠原、阿部のクリーンアップで李、ラミの6、7番も良いかなと思いますがどうでしょう
posted by チキチキましーん | 2008-02-21 00:29
セ界最多安打男
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去年は確変では?
posted by tosi | 2008-02-21 10:44
セ界最多安打男
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分析いいけど文長すぎ。読む気失せる
posted by | 2008-02-21 22:39
セ界最多安打男
コメント投稿者ID :
今日本で最強の右打者ですよ。
posted by でもね | 2008-02-22 00:08
ラミレスには・・
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そんなに期待できないことがわかりましたね。
今年のラミレスは右方向へのヒットより
ホームランなんだろうし・・・・・。
40本狙うんだろ?多分いかないと思うけど。
巨人はホームラン打つ選手は一杯いるんだし
ラミレスまでホームラン狙う必要ないのにね・・。
巨人以外の他球団は一安心ってとこですか・・。
posted by | 2008-02-23 06:38
セ界最多安打男
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すげーおもしろい!
毎日見ます!
posted by marni | 2008-04-15 10:52
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