2007年04月30日
今回は、本誌で私が担当しているマニア向けコンテンツ、『西部謙司の戦術リストランテ』を紹介したいと思います。タイトルにも入っている通り、執筆者はサッカージャーナリストの西部謙司氏。興味深いテーマが隠された試合をピックアップし、それを両チームのシステム上のマッチアップや、選んだテーマが象徴されている1プレー、そして一問一答形式のフリートークでそれらを掘り下げる紙面構成になっています。
■戦術のスモールティップス
むかし、サッカーWEBサイト『2002クラブ』での西部氏の記事で、オフト監督時代の日本代表を例にサッカーにおける、ディティールの重要性を指摘した文章がありました。オフトは、それを「スモールティップス」と呼んでいたそうです。『戦術リストランテ』の目標は、サッカー戦術におけるスモールティップスを解き明かすことにあります。
このスモールティップスの説明として、秀逸な作品があります。
本誌で『CALCIOおもてうら』を連載している片野道郎氏が、静岡のある名門高が行ったイタリア合宿をレポートしたもので、理論派のイタリア人監督、フランチェスコ・ジョルジーニによる日本高校生の長所と短所に対する、鋭い考察が光る内容です。以下、少しだけ引用させていただきます。
(非常に興味深い内容なので、時間がある時にぜひリンク先で全文を読んでください)
「イタリア通信093:日本の高校生に欠けているものは何か?」(片野道郎氏)
http://www.tifosissimo.8m.com/columns/093ragazzijp.html
――引用ここから――
「問題はこちらがボールを持ったときだ。最大の欠陥は、最もベーシックな基礎技術が徹底していないことにある。いくつか挙げてみようか。
ボールを受けるときに軸足で軽くジャンプしてショックをやわらげると共に体の向きをコントロールすること。ヘディングの時に両肘を高く張って飛び上がり頭を強く振り下げること。どんなときにも常に細かく足踏みをして、決して両足を揃えて立ち止まらないこと。スタートを切る一歩目を後ろに踏まず、細かいステップで走り出すこと。後ろから相手をマークするときに両腕を広げて胸で相手に密着すること。マークを背負うときには相手に前に回られないよう両肘を強く張ってブロックすること。ボールの位置とゴールの位置に合わせて正しい体の向きでボールを受けること。次に走り出す一歩目と逆の足でボールを止めること。足でボールを撫でるようにしながら一歩毎にボールにタッチしてドリブルすること。まだあるがこのくらいにしておこう」
――引用ここまで――
日本の高校生はイタリアの同年代の選手と比較して、吸収力があり応用力もある。だが、イタリアでは12歳くらいまでに体に叩き込むべき基礎中の基礎ができていない――。
ジョルジーニの分析を要約すると、大体こんな感じです。この基礎中の基礎の部分がスモールティップスであり、それは生来の資質というよりも知っているか知らないかだけの話で、有り体に言えば教えられれば誰でもできるものと言えます。
このお話で登場したのは体の使い方など技術面のスモールティップスですが、同様のことは戦術面にも言えます。例えば、『戦術リストランテ』の第1回で取り上げたテーマはCLグループリーグ第1節、チェルシー対ブレーメン戦を例に中盤がダイヤモンド型の[4-4-2]同士の攻防の話をしています。
簡単に説明すると、このフォーメーション同士のマッチアップでは、互いのSBのマークはそれぞれ対面するSBが担うことになります(中盤の選手がスライドすると、他の選手のマークが空くため)。SB同士は物理的に距離があるので、このマッチアップのポイントはフリーでプレーできる時間が長くなるSBをいかに利用するか――にあります。これがサッカー戦術におけるスモールティップスの一例です。
前述したようにスモールティップスは、単なる鉄則に過ぎません。これを理解した上でいかに応用していくかが、各チームの個性であり、同時に勝負の分かれ目となります。もちろん、本誌では基礎となるスモールティップスを生かすためにどんな選手が必要で、かつチームとしてどういった狙いで取り組んでいるのか、といったところまで話を掘り下げています。基礎から応用へ、ホップ・ステップ・ジャンプと幅広い人に楽しんでもらえるように作っているので、少しでも多くの人に見てもらえれば幸いです。
フットボリスタ隔週連載コンテンツ
『西部謙司の戦術リストランテ』
第1回「中盤ひし型の[4-4-2]同士のマッチアップ」
第2回「アーセナルの[4-5-1]にみる1トップの重要性」
第3回「バイエルン、戦略化されたミドルシュート」
第4回「バルセロナにみる3+1の極意」
第5回「守備の特殊能力者、カンナバーロ」
第6回「バルセロナの守備。逆転の発想」
第7回「インテルナシオナウ、南米の狡猾さと欧州の組織力の融合」
第8回「異色の組み合わせ。中村がセルティックに起こす化学反応」
第9回「セオリーに裏打ちされたリールのサイド攻撃」
第10回「モウリーニョの秘策。ウインガーを抑える新種のSB」
第11回「奔放から秩序へ。進化したポルトガル代表」
第12回「王道か異端か。ローマの“ゼロトップ”」
第13回「伝統の継承者、C.ロナウド」
posted by 編集部・浅野賀一 |17:07 |
トラックバック(0)
2007年04月26日
以前よく顔を出していた飲み屋の店長から、電話があった。
「今、グラナダに留学するってやつが来てんだよ。サッカーチームはないみたいなんだけど、他に何かアドバイスはあるかな?」
“グラナダ”。記憶の引き出しから情報を寄せ集めてみる。「えぇと、グラナダはいいところですよ。強くはないけど、たしか、クラブはあるはずです」
数年前、溜め込んだ小銭を財布に、スペインを放浪したことがある。
「リーガでも観るか」という目的の他、これといった計画もないままバルセロナに到着したのは夜だった。バルセロナでは、当時ようやく低迷期から抜け出しつつあったバルサ戦を2試合観た。旅行ガイドで得た情報では、バレンシアを楽しむのはサッカーを含めて3日で十分。バレンシアに入るのは金曜でいい。その前に、ちょっと遠回りだけどグラナダへ行ってみよう。
グラナダでは、アルバイシンの丘をてくてく登り、アルハンブラ宮殿を一日中見て回った。何もやることがなくなると、ガイドブックに載っていた日本人ガイドの事務所を訪ねた。その頃スペインはセマナ・サンタ(復活祭)のレジャーシーズン。片言のスペイン語では、バレンシアの次の目的地であるトレドの宿が予約できなかったのだ。
事務所には、口ひげをたたえた紳士と、一匹の猫。壁一面にはギターが吊るされている。20本くらいはあっただろうか。用件を伝えると、紳士はすかさず電話帳を開き、流暢なスペイン語で矢継ぎ早に電話をかける。その間、僕の肩の上には猫が乗っている。
「このペンシオンには日本人の選手が住んでいるそうだ。サッカー好きの日本人だと言ったら、うれしそうに『来い』と言ってたよ」
もののついでにグラナダにサッカーチームがあるのか、と尋ねてみると、なぜか紳士は大笑いする。
「あるよ。それも悲劇的なチームがね」
彼によると、かつてグラナダの地元クラブ、グラナダCFにはかなりの有望期があったそうだ。2部Aで戦っていたシーズンの最終節のロスタイム、このCKさえ耐えれば昇格決定という刺激的なシチュエーション。しかし、グラナダはドーハの悲劇級の失点を喫してしまう。
昇格を逃したショックはそれほど耐え難いものだったのだろうか。翌シーズンは低迷の末に降格。現在も2部B(実質3部)に甘んじているという悲劇のチームである。
あれから数年の後、断片的な記憶を頼りにグラナダCFの歴史を紐解くと、これがれっきとした古豪である。設立1931年。1部在籍17シーズン。歴史的なクラブの格付けでは、サラマンカ(27位)、アラベス(28位)、ビジャレアル(29位)より上の24位。1959年にはバルセロナとコパ・デルレイ決勝を戦い、準優勝に輝いている。どうやら“悲劇”が起こったのは、最終的に昇格ラインから3ポイント差の8位でフィニッシュした1983-84シーズンのことだったようだ(1位レアル・マドリーB、2位ビルバオBには昇格権がなかった)。
このような秀逸なエピソードに出会えるのも、そこにサッカーが根づいているからこそ。世界中をくまなく探したら、どれだけのサッカー談義を掘り起こせることだろうか。考えただけでも気が遠くなる。
さて、壁にかかっていたギターは、スペイン国内の才能あるクラフトマンの制作によるものだった。ガットギターとフラメンコギターを1本ずつ試奏したが、湿気のない気候のせいか、圧倒的な鳴り方をする。気に入ったガットギターの値段を聞くと、200ユーロ(当時のレートで約2万5000円)とのこと。あまりの驚きで買ってしまった。
去年の夏、久しぶりに手入れをしようとギターケースのカバーを開くと、スペインギターが壊れていた。日本の湿気にやられたのだろう。僕の保存の仕方もまずかった。そのうち直そうと思いながら、日々の生活に追われ、今もギターは壊れたままだ。
比べちゃまずいけれど、スペインからやって来た編集長は、緩やかなあちら時間と、せわしない東京時間の時差にも見事に順応してくれたようだ。山手線に揺られ、編集部に通う毎日は楽しいだけのものではないかもしれない。それでも、編集長の『footballista』 生活が、彼にとっても、編集部にとっても、それから読者の皆さんにとっても、価値のあるものになることを願っている。
posted by 編集部・池田孝 |01:02 |
トラックバック(0)
2007年04月24日
5 Years in... (ロンドンでの)5年間。
監督にとってのユートピア。
05年、モウリーニョがチェルシーと結んだ5年の長期契約は、
あまたの監督が夢見る理想への片道切符だった。
サッカークラブも一企業である以上、利益を出さなければ存続できない。
監督が何の制約もなく欲しい選手だけを獲得するなど、夢のまた夢だ。
ところが、チェルシーではそれができた。
今期は経営陣との溝が目立ち始めたが、普通ではあり得ない状況だけに
多少の軋轢は仕方ない。
まさに今が”5年の特権”を享受できるかの分水嶺だ。
まずはCL準決勝リバプール戦、勝負師の底力が問われる。
続々と各国リーグの優勝シーンが選手の喜びの笑顔と共に流れるこの時期に、footballista表紙ではモウリーニョ監督が哀しみに沈んでいます。
2年前の「幻のゴール」で失ってしまったものを取り戻すために
彼はどのような手を打ってくるのか、
今週号のfootballistaではCL準決勝第1レグ チェルシーvsリバプールを特集しています。
posted by PR担当 |17:55 |
トラックバック(0)
2007年04月23日
休日にはサッカーのことを考えないことにしている。
美術館に行ったり、映画を見たり、本を読んだりして過ごす。
「サッカーだけの人生」というのは十代なら純粋で、二十代なら情熱的だが、私のように四十代なら寂しい。
それは日々サッカーに関わっている指導者やジャーナリストであっても同じこと。彼らとオフに会う時は、何に心を動かされたか、怒ったか、笑ったか、悲しんだかが自然に話題の中心になる。そんな時に「いやー、あのメッシの5人抜きが…」とか「カペッロの傲慢なコメントが…」とかは、同年代の友人たちからは出てこない。
代わりに「このまま東京に住み続けられない」とか「好きになった人が結婚していた」とか「いきなり紙一枚で解雇された」とか。サッカーのファンタスティックなイメージに隠された、人々の生の「苦悩」が漏れ出てくることが多い。
悩みなくメッシやC.ロナウドを語れることは幸せである。だが、普通に生きていれば、サッカーは人生のごく一部でしかない。歴史的と言われるメッシのスーパーゴールで15分しか場が持たないのは不幸かもしれないが、逆に、2時間も語り合えてしまうのは味気ないものだ。
私が提供する話題は、映画や本についてであることが多い。
『美しき運命の傷痕』(ダニス・ダノビッチ監督)の最後のセリフ、「私はそれでも後悔していない」と、『ダメージ』(ルイ・マル監督)の同じく「そこにいたのは普通の女だった」は表面的には正反対の結論ながら、実は同じことを語っているのではないかとか。
『孤独と不安のレッスン』(鴻上尚史著)に身をつまされ、「人間は、一人でいる時に成長するのです」という言葉に、まるで10代の青年のごとく反応してしまうとか。
『ノー・マンズ・ランド』(ダニス・ダノビッチ監督)に描かれたジャーナリストの姿には――類型的ではあるが――、サッカー界にも共通するジャーナリズムの基本的な卑しさが良く表現されているとか。
『素晴らしい新世界』(オルダス・ハックスレー著)の新世界で使われる「全員は全員に属する」というスローガンは、小説内でのように階級社会の抑圧のガス抜きとして使われなければ、本当に「素晴らしい」幸福の鍵となりうるのではないかとか。
いや、もっと生々しい個人的な叫びや下品なニヤニヤ笑い付きコメントもあるのだが、ここで公開する訳にはいかない。
サッカーは人生の彩りだ。
だけど、100%捧げてしまう価値はない。「いや、ある!」と反論できる人は幸せだ。
posted by 編集部・木村浩嗣 |10:23 |
トラックバック(0)
2007年04月19日
CLは大詰め、準決勝になってしまいました。その4つのうち3つはイングランド勢。プレミアシップのファンにとっては垂涎のシーズンとなっているでしょう。レアル・マドリーが優勝した99-00シーズンはスペイン勢が4つのうち3つを占め、ミランが優勝した02-03シーズンはイタリア勢が3つを占めました。次はいよいよプレミアの番です。
準決勝までくると、興味はやはり優勝予想。イングランドをはじめ全世界のサッカーファンの間で盛んに議論されているであろうこのネタですが、当然、フットボリスタ編集部においても「あーだ、こーだ」の“CL会議”は活況を呈しています。誰がどこを本命予想に挙げているかはここで言いませんが、個人的な本命はリバプール。
ちなみに、昨季のCLで僕が優勝候補に挙げたクラブはリバプール。ついでにその前もリバプールです。
「なんだ、単なるファンじゃないか」。そう思われても仕方がない。それどころか、むしろうれしいくらい。“リバプードリアン”がリバプールを優勝候補に推さなくてどうしましょう。でも僕のリバプール予想にはちゃんと結果がついてきています。過去2シーズンでリバプールは1度優勝。ということは、予想的中率50%。優勝予想がとにかく難しいCLにおいては、これってかなり上出来な数字ではないでしょうか(笑)
準決勝での対戦がすでに決まっているチェルシーは、CL制覇に並々ならぬ意欲を燃やしている。「バレンシアに負けていたらモウリーニョのクビが飛んでいた」という話からも、チェルシーがどれだけ本気なのかが窺えます。
モウリーニョとベニテスは、なにかと比較される、似たもの同士の監督です。監督就任の時期はともに2004年6月。モウリーニョがわずかに2週間早いだけ。さらにどちらにも選手時代の実績はなく、プレミアには珍しい戦術家であり、保守的な英国メディアからはなにかにつけて批判される外国人監督。それだけでなく、UEFAカップとCLをともに制覇しているという点でも共通です。
そんな似たもの同士の監督が就任してからというもの、チェルシーとリバプールには“因縁”という言葉が頻繁に使われるようになりました。04-05以降の3シーズンの対戦は13回。今回のCLを含めると実に15回という、異常な数字になります。「因縁はUEFAまでもが望んでいる」。そういう声もあるほどです。これまでの13試合の勝敗はチェルシー6勝、リバプール4勝。ですが、欧州に限ればリバプールが1勝3分と無敗。今季の対戦も2勝1敗とリバプールが上回っている。だから僕はリバプールを推すのです。
モウリーニョとベニテスの“舌戦”はCLで四強が出揃った瞬間から早くも始まっています。モウリーニョが「リバプールにはCLしかないから、四冠を狙う我われは不利だ」と話すと、ベニテス監督は「大金を費やしてそれ(四冠)を狙うのは彼らが望んだことだ。我われにはCLしかないが、彼らだってCLを失いたくはないだろう」と言い返した。メディアがおもしろがって煽っていることもあり、この争いは本番まで続くでしょう。
そのチェルシー戦には、“リバプールの隠し球”となるであろう、あの人が帰ってくるかもしれません。かつては「ギグスと双璧」とまで言われたプレミア屈指の左ウインガー、ハリー・キューウェル。ドイツW杯に出場したのを最後に、股関節&足首&右足親指という3箇所を同時に痛めましたが、2度の手術を受けてようやく復帰への見通しが立ちました。当初の10月復帰予想からは大幅にずれ込んだわけですが、順調に行けばチェルシー戦・第1レグの4日前、ウィガン戦で今季初出場を飾ることができそうです。腐らずに過酷なリハビリを最後までやり遂げたキューウェル。このジョーカーを使うことができれば、リバプールにとっては大きな追い風となるでしょう。
決勝の相手は、「2年前のトラウマを葬りたい」(ベルルスコーニ会長)ミランか、「リバプールなんて見たくもない」(G.ネビル)ユナイテッドか。どちらにしても“因縁”満ち満ちた、楽しい試合になることは間違いありません。
『footballista』編集部・宇佐美裕之
posted by ballista |16:50 |
トラックバック(0)
2007年04月18日
SMUDGER BACK
Fergie's party raves up!
【悪ガキ生還。ファギー軍団のパーティー、熱狂の渦中へ】
「変わらないあなぁ」と思って何だかうれしくなった。
不適な面構えと、ド派手なゴールパフォーマンス。
スミスはもともとファウルまがいの荒々しいプレーが持ち味で、
「メチャクチゃだよ、コイツ」と思わず笑ってしまう破天荒な選手だった。
センターMFへのコンバートも、中盤の潰し役としてその激しさを生かす意図だったのだろう。
だが、ちょっと素人くさい発想のこの方針は大失敗。
勢いだけでは中盤は務まらず、ケガもして、おまけに年も取った。
ちょっとは丸くなっているかと心配したが、なんだあの喜び方は!
今週のfootballistaはチャンピオンズリーグ準々決勝第2レグのレビューと、準決勝第1レグ「マンチェスターUvsミラン」のプレビューを特集しています。
そして裏特集はサッカー界に(も)はびこる人種差別問題。
国内サッカーに目を向けていれば、無関心を装うことも可能な問題かもしれません。
しかし、2010年ワールドカップは南アフリカ開催。
日本代表が彼の地を踏める事になってから議論するのでは、
あまりに遅すぎる、そして表面的すぎる。
サッカーの陰の部分も理解しつつ愛し続ける、そんな真のサッカーファン必読の裏特集です。
posted by PR担当 |10:12 |
トラックバック(0)
2007年04月16日
世代交代の遅れが叫ばれて久しいフランス代表の未来に光が見えた一戦だった。先月28日に行われたオーストリアとの親善試合。スターティングイレブンの平均年齢が25.5歳と、ドイツW杯決勝メンバーの29.7歳から大きく若返った「レ・ブルー」は、EURO2008開催国を相手に1-0で勝利を飾った。
24日のEURO予選リトアニア戦(0-1で勝利)と合わせた代表メンバー選出にあたり、レイモン・ドメネクはビエラ、リベリ、アンリ、サハを故障で欠く中盤と攻撃陣に、新しい血を注入する決断を迫られた。その結果、ボランチにラサナ・ディアラ(22歳・チェルシー)、ディアビ(20歳・アーセナル)、トップ下にナスリ(19歳・マルセイユ)、FWにピキオンヌ(28歳・モナコ)とベンゼマ(19歳・リヨン)が初代表に選出された(ベンゼマは11月のギリシャ戦にも招集されたがケガで辞退)。
新顔5人に加え、これまで出場機会に恵まれなかったDFメクセス(24歳・ローマ)、クレルク(23歳・リヨン)、MFマブバ(24歳・ボルドー)ら若手がピッチに立ったオーストリア戦。まもなく就任3年目を迎える指揮官、そしてフランス国民の期待に応え唯一の得点を決めたのは、13歳から各代表で一緒にプレーしてきた19歳の初出場コンビ、ナスリとベンゼマである。「98年組」が代表キャップ128という自らの仏代表記録を更新したテュラムだけというこの試合、当時の優勝舞台となったスタッド・ドゥ・フランスは、新たな時代の到来に湧いた。
この日はレ・ブルーを操ったマルセイユの若き司令塔サミル・ナスリは、17歳でリーグ1にデビューし、すでにリーグ戦84試合、UEFAカップ14試合に出場している。今季からトップ下の定位置を確保、今“フランスで最も10番らしいプレーヤー”と言われ、人気も抜群だ。両親がアルジェリア系移民で、マルセイユ出身とあって当然、ジダンにその姿を重ねる者は少なくない。
「ピッチの10人が躊躇なく彼にボールを回すのだから、それがすべてを物語っている。それほどの才能が彼にはある」とはマルセイユのエモン監督。現時点では8歳で入ったクラブを離れるつもりはないようだが、バルセロナのプレーを「美しい」と語る若きゲームメイカーは、今後着実に欧州の舞台でステップアップしていくことだろう。
カリム・ベンゼマは今季ケガに泣かされたが、2月末に復帰後、リーグ戦とCLに計4試合出場しただけでの選出。将来の代表を背負う存在として、その期待の大きさが窺える。撫でるようなボールタッチが、FWでありながらこちらも英雄を彷彿とさせる。純粋な点取り屋タイプでなく、かつてのジョルカエフ的選手だが、本人は「自分の本当のポジションはセンターフォワード」とアピール。実際、CL2シーズンの出場4試合で3得点と大舞台でそのゴール感覚を証明しており、来季は“ベンゼゴール”を量産する姿を見せてくれるはずだ。
EURO予選ではイタリア、ウクライナが同居する激戦区にあって、順調に勝ち点を積み上げるフランスだが、ベテラン勢の踏ん張りで予想外の決勝進出を果たしたドイツW杯後、世代交代はまたも先送りされた感がある。28日の試合に出場した若手も、主力復帰後は再びベンチを温めることになるのだろう。
フランス黄金期復活のためには、新たなサイクルをスタートさせる時なのかもしれない。フランスW杯・EURO2000連覇という快挙も、エメ・ジャケが92年W杯予選惨敗メンバーを刷新し、EURO96で躍進を遂げた末の結果だった。ドメネク以降の目先の勝利にこだわり過ぎる流れから、そろそろ抜け出してほしいところだ。
と、そんなことを言いつつも、単純に真新しいレ・ブルー、そして「ネクスト・ジダン」の台頭が見たいだけなのだ。アネルカのヒーロー返り咲きもうれしいが、現在エスポワール(U-21代表の呼称で「希望」の意)の中核であるナスリ、ベンゼマら、04年欧州U-17選手権優勝の黄金世代が成長していく様を、大舞台で目にしたい。お洒落なパスから、ずば抜けた身体能力まで、才能はあふれている。リヨンは惨敗したが「シャンパン・サッカー」の未来は明るいはずだ。
『footballista』編集部・赤荻 悠
posted by ballista |14:34 |
トラックバック(0)
2007年04月12日
文章はエンターテインメント、予想大好きな木村編集長(詳細は下記リンクを参照)に触発されて、不肖ながら私、浅野賀一も今夜の欧州チャンピオンズリーグ準々決勝第2レグ2試合の予想をさせていただきます。えっ、賞味期限が短い? こういうのは外れたものを後で見るから面白いんです!
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0607/eucup/column/200702/at00012360.html
予想スコア:マンチェスターU 1-2(Total2-4) ローマ
第1レグはローマの圧勝。マンUは得点シーン以外、チャンスらしいチャンスすら作れませんでした。魔物が棲むといわれるオールドトラッフォードでマンUの巻き返しが必至といわれていますが、第1レグの内容の差は単純なチームの完成度の差だと思います。
マンUの強さはルーニー、C.ロナウドの個の強さです。欧州最高峰の舞台で勝ち進むためには彼らのような「違い」を作れるタレントは必要不可欠ですが、それもベースとなる組織があってのもの。マンUは選手間の連係や個々の経験値は素晴らしいのですが、トップダウン型の命令系統が働きにくいチームなので、戦術的な駆け引きに弱点を抱えています。
決勝トーナメント1回戦で対戦したリールは、明らかにマンUとは選手のレベルに差がありましたが、C.ロナウドは常に二人のマークに晒され自由にボールを持たせてもらえず、ビルドアップが機能しないのでルーニーも試合から消えていました。数的優位を作ることで、戦術的に個の能力差をキャンセルされた訳です。特に第1レグは疑惑の判定がなければ、マンUは負けていたかもしれません。
そしてローマはリール同様に監督を中心としたトップダウン型の命令系統が明確にある駆け引きのうまいチーム。しかも、個の能力はリールよりも上です。第2レグ、勝たなければならないマンUは前に出てくるでしょうが、そうなればローマのカウンターが威力を発揮します。決勝トーナメント1回戦、リヨン戦の再現も十分あり得ると思います。
予想スコア:バレンシア 1-2(Total2-3) チェルシー
シェフチェンコ、バラックを組み込んだ[4-4-2]を採用した今季、チェルシーは不安定な戦いに終始しています。昨シーズンまでの攻撃の生命線は、カウンターに転じた際の両ウイングのスピードでした。それがなくなった今季、はっきり言って攻撃はドログバ頼り。計算が立たないため、勝敗は運に左右される要素が増えています。守備陣の層の薄さもそれに拍車をかけています。
ただ、今季のチェルシーは不確定要素の大きいチームになってしまいましたが、逆に言えばモチベーションが上がった時は強いということ。事前のコメントを聞く限り、チェルシーのバレンシア戦に懸ける意気込みは相当なものがあります。この状況は特に今季のチェルシーにとってはプラス材料になるでしょう。
また攻撃は相変わらずですが、ここにきて守備には十分な目処がついてきました。何だかんだで国内リーグ8連勝。チーム状態は間違いなく上向きです。先ほどトップダウン型の命令系統の話をしましたが、勝負師モウリーニョ率いるチェルシーはその最高峰に位置するチーム。紙一重の勝負になるCLで、彼の存在は心強いです。
ロッベンを欠くのは痛手ですが、J.コールの復帰は朗報です。彼の投入のタイミングは勝敗を分ける1つのポイントになるでしょう。第1レグをケガで欠場したエシアンの復帰が濃厚な点もプラスです。後半、点が欲しい場面では彼を右SBに移す攻撃オプションも使えますしね。際どい勝負は必至ですが、わずかにチェルシーがバレンシアを上回るとみます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
■勝敗予想は難しい…
という記事を試合前に書いたのですが、諸事情あって試合後の公開になってしまいました。ということで、結果発表も兼ねて試合後の感想など。
実は自信があったのはマンチェスターU対ローマの方でした。それが、まさかこんな結果になろうとは。負け惜しみですが、基本的な考えは試合が終わった今も変りません。ただ、ローマがアウェイにもかかわらず、妙に前に出たのは不用意としか言いようがありません。結果的にはキャリックの先制点がすべてでした。あとはさらに前に出たところをカウンター、というローマがやりたかったことを逆にやられてジ・エンド。経験の差と言ってしまえばそれまでですが、慎重に戦えば結果は違っていたのではないでしょうか。
バレンシア対チェルシーはスコアまでピタリ正解でしたが、こちらは反対に全然自信がありませんでした。モウリーニョの采配も当たりましたが、それ以上に後半のバレンシアは足が止まりましたね。選手層の厚さが勝敗を分けたのでしょう。チェルシーはJ.コールが入って、攻撃に幅が出ました。次のリバープル戦(おそらく)が山場ですね。
結果的には1勝1敗。まあまあじゃないでしょうか。それにしてもローマの大敗は驚きました。あれだけ完成度の高かったローマの守備組織が完全に破綻している姿をみると、人間のやるスポーツの奥深さを感じずにいられません。だからこそ、面白いともいえますが…。
『footballista』編集部・浅野賀一
posted by 『footballista』編集部・浅野賀一 |15:34 |
トラックバック(1)
2007年04月10日
こんにちは、footballista PR担当です。
今晩、そして明日の夜といよいよUEFAチャンピオンズリーグの準決勝第2レグ。
睡眠不足の週後半を迎える海外サッカーファンの方も多いのではないでしょうか。
明日発売のfootballistaでは、
バイエルン-ミラン戦とリバプール-PSV戦のプレビューを特集しています。
"キーワードは「油断」「焦り」「奇跡」
第2レグ決戦に求められる経験地と期待値"
そういうわけで、表紙もミラン勝ち抜けの生命線となるこの選手です。
---------------------------------------------------
今号の表紙
CLでミラン勝ち抜けの鍵を握るカカー
L'unica arma, l'unica speranza.
:唯一の武器、唯一の希望
---------------------------------------------------
ミランにとっては過酷なシーズンだった。カルチョ・スキャンダルの発
覚で、CLは予備予選3回戦からの出場を強いられた。多くの選手
がドイツW杯を戦っていた。疲労のピークはシーズン前半に現れ
た。ようやく持ち直した後半戦、バイエルンとのCL準々決勝第1
レグは、相手に大きなアドバンテージを与えてしまった。さらにミュン
ヘンでの第2レグはジラルディーノが出場停止、インザーギも完調では
ない。危機的状況を迎えたミランは、カカーが生み出すスペクタクルに
賭ける。
posted by PR担当 |14:17 |
トラックバック(0)
2007年04月08日
ヨーロッパサッカーを追う生活も、4月に入るとさすがに息切れを隠せない。
各国リーグも佳境だし、CLは桜の花が散るように降って来る。とはいえ、一番ハードなのはCL決勝トーナメント1回戦、という主張には、誰もが同意してくれるだろう。なにしろ1日に見る試合数が多い。
街ではフレッシュマンたちが期待と不安で胸を膨らませているというのに、こちらは夜中からテレビの前に齧りつきだ。当然、寝不足でもある。
人間が1日に許容できるサッカーの試合数は、個人差はあるとしても、3試合がいいところではないかと考えている。そこへ持ってきて4ゲーム×2デイズの強硬スケジュールだ。集中力を保つためには、何か別のモチベーションが必要になる。
そこで“JH”と“ER”である。
もちろん、日本道路公団と救急室ではない。
今シーズンのCLベスト16に進出した国別の内訳を見てみると、イングランド(4)、スペイン(3)、イタリア(3)と、「三大リーグ」と呼ばれるリーグを持つ3カ国がヨーロッパを席巻している様子がわかる。それに続くのが、フランス(2)で、ドイツ、オランダ、ポルトガル、スコットランドが残りを埋める。
仮に全試合を副音声の現地語で見るとすると、実に6つの言語に接することができる訳だ。
言語が異なれば、試合中継のムードも違う。ドラマチック度で群を抜くのは英語(英語圏は放送の洗練度でも他国を寄せつけない強さがある)。実況者がほとんど一人でしゃべり倒すスペイン語とイタリア語は小気味良く耳に響き、ドイツ語は、単語の持つ圧力が強くて気分が高揚する不思議な言語だ。フランス語は(リヨンの敗退に際しても)抑揚を失うことなく終始リラックスムード。オランダ語は非常におとなしく、つかみどころがなかった。ポルトガル語についてはどういう訳かほとんど記憶がない。
さて、各国の言語でつぶさに試合を見ていくと、気になる選手名というのがいくつか出てくる。
「Jの部」からはイタリア語で発音される「ジョアキン(=ホアキン/バレンシア)」。「Hの部」からは、スペイン語で発音されない「アーグリーブス(=ハーグリーブス/バイエルン)」、ドイツ系に多い「ERの部」ではスペイン語で発音される「シュバインシュタイゲル(=シュバインシュタイガー/バイエルン)」など。
僕らが日ごろから頭を悩ます選手名表記の問題も、ヨーロッパ人から見れば些事だろう。それぞれ、自国の言語に変換するという基準があるから事は単純明快だ。
文化というものは、こんな煩わしさを回避するための一つの基準なのかもしれない。欧州のサッカー文化を最高学府とするなら、こんなところで右往左往している僕はまだ小学1年生がいいところか。
現在、CLは準々決勝の真っただ中。生き残った言語は今のところ5カ国語だ。
だいぶ時間があいてしまったので、「●●ジャパン問題」については、また機会を改めて。
『footballista』編集部・池田孝
posted by 『footballista』編集部 |15:43 |
トラックバック(0)