2008年02月03日

スペインへと飛び立った、微笑みのエリート

冬の移籍市場が閉まった。

サッカー雑誌に携わる者にとって、この時期は最も忙しい時期の一つに挙げられます。『footballista』は、週刊誌という特長を生かしてできるだけ新しい情報を届けたいという願いの下、情報の収集に多くの時間を費やしました。もちろん、本誌のページ数には限りがあるため“膨大な資料”とはなりませんが、それでも読み物としての質、情報のスピードという面で読者には納得していただきたいと思いますし、我われもその自信を持って作っています。現在作業に取りかかっている移籍特集は2月6日の発売。楽しみにしていてくださいね。

今冬の移籍選手のリスト(詳しくは次号をご覧ください)の中で、僕は一人だけ話したことのある選手がいます。その選手と会ったのは、オランダに旅行した時に訪れたアムステルダム・アレナ――の脇にある練習場。第一印象は、「とても大きくて恐そうな選手」だったのですが、数分もしないうちにその印象はすっかり変わりました。

彼の名はヘドビヘス・マドゥロ。05年ワールドユース(現U-20W杯)でオランダ代表のキャプテンを務めたアヤックスユースの出世頭で、中盤と最終ラインならすべてこなせるユーティリティプレーヤーでもあります。04-05シーズンのプロデビュー後、たった3試合でA代表に招集されたことで、ニュースにもなった選手です。

アムステルダム・アレナ脇の練習場で見た彼は、若いからか、それとも単に当番制だったのか、淡々と練習用具を片づけていました。ビブスやカラーコーンを抱えて歩く背中からも、“何で俺がオーラ”や“面倒くさいオーラ”なんてものは出ていませんでした。

歩いている最中にファンに呼び止められると、笑顔で「OK!」のひと言。重い荷物を降ろし、気さくにサインに応じたり、赤ちゃんを抱っこしたりしていました。その時僕は、「やっぱりプロの選手はさすがだな」というより、「これが20歳の選手なのか」という驚きがあったことを覚えています。

先ほども触れましたが、マドゥロはアヤックスユースの出世頭で、オランダ代表としても各世代で代表に選ばれてきた、いわばエリート。その彼が練習後の片づけをやり、声をかけられれば数十人のファンの要望に笑顔で応じている。その姿に僕は少し感心しましたし、うれしくなりました。

彼とはほんの少し英語で言葉を交わしただけですが、彼の人の良さはそれで十分わかった気がします。たとえファンとの交流がクラブの規則だったとしても、彼がそれを守るために動いたのではなく、「プロとしての信念」に従ったゆえの行動だったというのが、その場で感じられたからです。

マドゥロはこの冬、何かと話題のバレンシアに新天地を求めました。監督のクーマンはアヤックス時代の恩師ですが、僕は彼の今後が少し心配です。クーマンは選手をファンやメディアから遠ざけるために「壁」を作り始めました(詳細は先週号の連載コラムページにて)が、この壁が初の国外挑戦となる彼の心に悪影響を与えないことを願うばかりです。

クーマンもまさか、「ここでのやり方はすべて俺が教えてやる。ファン? バレンシアでは選手はファンにあまり近づかないものなんだ」なんて言わないでしょうが。
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posted by 『footballista』編集部・宇佐美裕之 |15:59 | トラックバック(0)
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