2007年07月12日

バカンスの気休め

選手たちは現在バカンスの真っ最中。長く厳しい1年の疲れを癒しているところだろう。
その一方でクラブは来季に向けた体制づくりを進めており、当然その構想から弾かれる選手も出てくる訳だ。
そんな境遇に巻き込まれ、オフを過ごす選手の心理状態はどんなものか。

普段からテレビの画面を通して、あるいは雑誌の記事に接して、選手のことを、裏も表もわかったような気になっている僕らではあるが、彼らの本当の姿とは、制作側の意図を通して伝えられるものよりはるかに生々しい。

例えばレアル・マドリーのイバン・エルゲラ。昨季の開幕前には戦力外通告を受けた男が、ポジションを取り返し、優勝チームをDFラインから支えた姿には、「ベッカムの逆襲」以上に心を揺さぶられるものがあった。
その彼が、また同じような状況に追い込まれてしまった。
シュスター監督による新体制が動き出したレアル・マドリーは、ドルトムントからドイツ代表のメッツェルダーを獲得。ポルトからブラジル人CBのペペ加入も決まって、おそらく来季、エルゲラの居場所はなく、今のところバレンシアへの移籍の可能性が報じられているようだ。

そんなニュースに接して、ある風景を思い出した。
何年か前、レアル・マドリーの練習場を訪れた時のこと。僕は選手の車が駐めてある駐車場のフェンスの外で、ガラクティコたちの登場を待っていた。
早速出てきたのはラウール。若い女性ファンが黄色い声でサインをねだるが、ラウールはしかめっ面のまま愛車に飛び乗ると、ブォーンと姿を消した。「やっぱり気難しい選手なんだな」と思ったことを覚えているが、誰だって虫の居所が悪い時はあるものだ。ラウールは好きな選手でもあり、とやかく言うつもりはない。
同じしかめっ面でもフィーゴは違った。クリーム色のライダースのジャケットを着込み、近づけばかすかなフレグランスと大人の魅力が漂う。面倒臭そうではあるが、しっかりファンと接するフィーゴに「案外いい人じゃないか」と感心した。

「銀河系」のそうそうたる顔ぶれが、現れては姿を消す中で、レザーのブルゾンを着たエルゲラがやってきた。当時はどこかを故障してメンバーからは外れていたはずだ。ファンと会話を交わしながら、時間をかけ丁寧にサインに応じる姿に、誠実な人柄とプロ意識を感じた。実際に目で見た印象は、何ものにもまして強化される。それ以来、彼はしっかりと僕のお気に入り選手の一人になった。

彼にとっては気の休まるオフではないだろう。
しかし、レアル・マドリーのようなビッグクラブにいることだけが、サッカー選手の人生ではない。素晴らしい人間性を持った選手であれば、違うクラブに行ったとしても、チームメイトとファンから尊敬を勝ち取れるはずだ。
いずれにしても、エルゲラが新しいシーズンをベストな形で迎えてくれることを願う。

posted by 『footballista』池田孝 |20:47 | トラックバック(0)
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