2007年04月30日
西部謙司の戦術リストランテ
今回は、本誌で私が担当しているマニア向けコンテンツ、『西部謙司の戦術リストランテ』を紹介したいと思います。タイトルにも入っている通り、執筆者はサッカージャーナリストの西部謙司氏。興味深いテーマが隠された試合をピックアップし、それを両チームのシステム上のマッチアップや、選んだテーマが象徴されている1プレー、そして一問一答形式のフリートークでそれらを掘り下げる紙面構成になっています。 ■戦術のスモールティップス むかし、サッカーWEBサイト『2002クラブ』での西部氏の記事で、オフト監督時代の日本代表を例にサッカーにおける、ディティールの重要性を指摘した文章がありました。オフトは、それを「スモールティップス」と呼んでいたそうです。『戦術リストランテ』の目標は、サッカー戦術におけるスモールティップスを解き明かすことにあります。 このスモールティップスの説明として、秀逸な作品があります。 本誌で『CALCIOおもてうら』を連載している片野道郎氏が、静岡のある名門高が行ったイタリア合宿をレポートしたもので、理論派のイタリア人監督、フランチェスコ・ジョルジーニによる日本高校生の長所と短所に対する、鋭い考察が光る内容です。以下、少しだけ引用させていただきます。 (非常に興味深い内容なので、時間がある時にぜひリンク先で全文を読んでください) 「イタリア通信093:日本の高校生に欠けているものは何か?」(片野道郎氏) http://www.tifosissimo.8m.com/columns/093ragazzijp.html ――引用ここから―― 「問題はこちらがボールを持ったときだ。最大の欠陥は、最もベーシックな基礎技術が徹底していないことにある。いくつか挙げてみようか。 ボールを受けるときに軸足で軽くジャンプしてショックをやわらげると共に体の向きをコントロールすること。ヘディングの時に両肘を高く張って飛び上がり頭を強く振り下げること。どんなときにも常に細かく足踏みをして、決して両足を揃えて立ち止まらないこと。スタートを切る一歩目を後ろに踏まず、細かいステップで走り出すこと。後ろから相手をマークするときに両腕を広げて胸で相手に密着すること。マークを背負うときには相手に前に回られないよう両肘を強く張ってブロックすること。ボールの位置とゴールの位置に合わせて正しい体の向きでボールを受けること。次に走り出す一歩目と逆の足でボールを止めること。足でボールを撫でるようにしながら一歩毎にボールにタッチしてドリブルすること。まだあるがこのくらいにしておこう」 ――引用ここまで―― 日本の高校生はイタリアの同年代の選手と比較して、吸収力があり応用力もある。だが、イタリアでは12歳くらいまでに体に叩き込むべき基礎中の基礎ができていない――。 ジョルジーニの分析を要約すると、大体こんな感じです。この基礎中の基礎の部分がスモールティップスであり、それは生来の資質というよりも知っているか知らないかだけの話で、有り体に言えば教えられれば誰でもできるものと言えます。 このお話で登場したのは体の使い方など技術面のスモールティップスですが、同様のことは戦術面にも言えます。例えば、『戦術リストランテ』の第1回で取り上げたテーマはCLグループリーグ第1節、チェルシー対ブレーメン戦を例に中盤がダイヤモンド型の[4-4-2]同士の攻防の話をしています。 簡単に説明すると、このフォーメーション同士のマッチアップでは、互いのSBのマークはそれぞれ対面するSBが担うことになります(中盤の選手がスライドすると、他の選手のマークが空くため)。SB同士は物理的に距離があるので、このマッチアップのポイントはフリーでプレーできる時間が長くなるSBをいかに利用するか――にあります。これがサッカー戦術におけるスモールティップスの一例です。 前述したようにスモールティップスは、単なる鉄則に過ぎません。これを理解した上でいかに応用していくかが、各チームの個性であり、同時に勝負の分かれ目となります。もちろん、本誌では基礎となるスモールティップスを生かすためにどんな選手が必要で、かつチームとしてどういった狙いで取り組んでいるのか、といったところまで話を掘り下げています。基礎から応用へ、ホップ・ステップ・ジャンプと幅広い人に楽しんでもらえるように作っているので、少しでも多くの人に見てもらえれば幸いです。 フットボリスタ隔週連載コンテンツ 『西部謙司の戦術リストランテ』 第1回「中盤ひし型の[4-4-2]同士のマッチアップ」 第2回「アーセナルの[4-5-1]にみる1トップの重要性」 第3回「バイエルン、戦略化されたミドルシュート」 第4回「バルセロナにみる3+1の極意」 第5回「守備の特殊能力者、カンナバーロ」 第6回「バルセロナの守備。逆転の発想」 第7回「インテルナシオナウ、南米の狡猾さと欧州の組織力の融合」 第8回「異色の組み合わせ。中村がセルティックに起こす化学反応」 第9回「セオリーに裏打ちされたリールのサイド攻撃」 第10回「モウリーニョの秘策。ウインガーを抑える新種のSB」 第11回「奔放から秩序へ。進化したポルトガル代表」 第12回「王道か異端か。ローマの“ゼロトップ”」 第13回「伝統の継承者、C.ロナウド」
posted by 編集部・浅野賀一 |17:07 |
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