2007年04月16日

フランスの未来は明るいはずだ

世代交代の遅れが叫ばれて久しいフランス代表の未来に光が見えた一戦だった。先月28日に行われたオーストリアとの親善試合。スターティングイレブンの平均年齢が25.5歳と、ドイツW杯決勝メンバーの29.7歳から大きく若返った「レ・ブルー」は、EURO2008開催国を相手に1-0で勝利を飾った。

24日のEURO予選リトアニア戦(0-1で勝利)と合わせた代表メンバー選出にあたり、レイモン・ドメネクはビエラ、リベリ、アンリ、サハを故障で欠く中盤と攻撃陣に、新しい血を注入する決断を迫られた。その結果、ボランチにラサナ・ディアラ(22歳・チェルシー)、ディアビ(20歳・アーセナル)、トップ下にナスリ(19歳・マルセイユ)、FWにピキオンヌ(28歳・モナコ)とベンゼマ(19歳・リヨン)が初代表に選出された(ベンゼマは11月のギリシャ戦にも招集されたがケガで辞退)。

新顔5人に加え、これまで出場機会に恵まれなかったDFメクセス(24歳・ローマ)、クレルク(23歳・リヨン)、MFマブバ(24歳・ボルドー)ら若手がピッチに立ったオーストリア戦。まもなく就任3年目を迎える指揮官、そしてフランス国民の期待に応え唯一の得点を決めたのは、13歳から各代表で一緒にプレーしてきた19歳の初出場コンビ、ナスリとベンゼマである。「98年組」が代表キャップ128という自らの仏代表記録を更新したテュラムだけというこの試合、当時の優勝舞台となったスタッド・ドゥ・フランスは、新たな時代の到来に湧いた。

この日はレ・ブルーを操ったマルセイユの若き司令塔サミル・ナスリは、17歳でリーグ1にデビューし、すでにリーグ戦84試合、UEFAカップ14試合に出場している。今季からトップ下の定位置を確保、今“フランスで最も10番らしいプレーヤー”と言われ、人気も抜群だ。両親がアルジェリア系移民で、マルセイユ出身とあって当然、ジダンにその姿を重ねる者は少なくない。
「ピッチの10人が躊躇なく彼にボールを回すのだから、それがすべてを物語っている。それほどの才能が彼にはある」とはマルセイユのエモン監督。現時点では8歳で入ったクラブを離れるつもりはないようだが、バルセロナのプレーを「美しい」と語る若きゲームメイカーは、今後着実に欧州の舞台でステップアップしていくことだろう。

カリム・ベンゼマは今季ケガに泣かされたが、2月末に復帰後、リーグ戦とCLに計4試合出場しただけでの選出。将来の代表を背負う存在として、その期待の大きさが窺える。撫でるようなボールタッチが、FWでありながらこちらも英雄を彷彿とさせる。純粋な点取り屋タイプでなく、かつてのジョルカエフ的選手だが、本人は「自分の本当のポジションはセンターフォワード」とアピール。実際、CL2シーズンの出場4試合で3得点と大舞台でそのゴール感覚を証明しており、来季は“ベンゼゴール”を量産する姿を見せてくれるはずだ。

EURO予選ではイタリア、ウクライナが同居する激戦区にあって、順調に勝ち点を積み上げるフランスだが、ベテラン勢の踏ん張りで予想外の決勝進出を果たしたドイツW杯後、世代交代はまたも先送りされた感がある。28日の試合に出場した若手も、主力復帰後は再びベンチを温めることになるのだろう。

フランス黄金期復活のためには、新たなサイクルをスタートさせる時なのかもしれない。フランスW杯・EURO2000連覇という快挙も、エメ・ジャケが92年W杯予選惨敗メンバーを刷新し、EURO96で躍進を遂げた末の結果だった。ドメネク以降の目先の勝利にこだわり過ぎる流れから、そろそろ抜け出してほしいところだ。

と、そんなことを言いつつも、単純に真新しいレ・ブルー、そして「ネクスト・ジダン」の台頭が見たいだけなのだ。アネルカのヒーロー返り咲きもうれしいが、現在エスポワール(U-21代表の呼称で「希望」の意)の中核であるナスリ、ベンゼマら、04年欧州U-17選手権優勝の黄金世代が成長していく様を、大舞台で目にしたい。お洒落なパスから、ずば抜けた身体能力まで、才能はあふれている。リヨンは惨敗したが「シャンパン・サッカー」の未来は明るいはずだ。

『footballista』編集部・赤荻 悠

posted by ballista |14:34 | トラックバック(0)
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