2007年05月18日
小さなニュースとビッグ・サム
多くのリーグにおいて監督の解任劇は珍しいことではありませんが、1、2週間前にプレミアシップを代表する2人の監督がその職を辞しました。 4月30日「Allardyce resigns as Trotters boss(アラーダイスがボルトンの監督を辞任)」 サム・アラーダイス監督は、本誌1月10日発売号の企画「猪的ベストイレブン」の監督部門で選出された大男。中田英寿移籍の際には日本でも露出が多かったので、ご存知の方も多いはず。イングランド代表監督有力候補として取り上げられたり、報道番組によって収賄疑惑を告発されたりと、なにかと注目度の高かった監督です。 そんなアラーダイス監督は、近年最も評価を上げた監督の一人。率いたクラブがクラブなだけにモウリーニョやベニテスのそれとは比較になりませんが、それでも中堅クラブのボルトンを、コンスタントに欧州を狙えるクラブにまで成長させました。 ボルトンで選手としてのキャリアをスタートさせた巨漢CBは、実に11年もの間ボルトンに在籍しました。その後はサンダーランド、ミルウォールなどのクラブを転々とし、最後は稲本も所属したウェストブロミッチで細々と(しかし体型はおそらく現在のまま)現役生活を終えています。選手キャリアの中で彼が得たタイトルは77-78の2部リーグ優勝。これだけです。 そんな彼がボルトンに監督として戻ってきたのが1999年10月のこと。その年、当時2部にいたボルトンは6位に入りプレーオフに進出(プレーオフでは敗退)、FAカップではベスト4に進出しました。すると翌シーズンにはプレミアに昇格。“難敵ボルトン”の風評と、“ビッグ・サム”の名声は瞬く間に広がっていきました。その後もカーリングカップ決勝進出(03-04)、クラブ史上初のUEFAカップ出場(04-05)を果たすなど、ボルトンに大きな功績を残すことに成功。しかし、現役時代と同じくタイトルには恵まれなかった…… 「アラーダイスは辞任を発表する前に僕に電話をくれた。『キャプテンとして先に知っておいてほしいことがある』とね」とはケビン・ノーランのコメントです。後任監督は、アシスタントコーチを務めていた“スモール・サム”ことサミー・リー。ノーランは、ビッグ・サムの辞任に相当ショックを受けたそうですが、今はスモール・サム時代の到来を楽しみにしているようです。 そんな騒ぎも落ち着いてきた5月6日、シーズン終了直前という不可解なタイミングで、ニューカッスルでも電撃人事がありました。 5月7日「Geordies leaves out Roeder(ニューカッスルがローダーを解任)」 ローダーは昨季途中からニューカッスルの暫定監督に就任。当時15位と低迷し、チームの雰囲気も最低だった中でスーネス解任後の後始末を任されたローダーは、残り試合を10勝2分3敗という異常な勢い(それまでは7勝5分11敗)で乗り切り、最終的には順位を7位まで押し上げました。 そのローダーを持て囃していた一部のファンやシェパード会長は、手のひらを返したようにローダーに不振の責任を転嫁。今季ニューカッスルは13位と不調でしたが、ただでさえ選手層が薄い中で一時はトップチームの選手がケガで12人も離脱した緊急事態を考慮すれば、責任を押しつけられたローダーが少しかわいそう。クラブ規模で見ればプレミアのトップ6に入るニューカッスルが結果を残せないのは、こういうところに原因があるのかもしれません。 そしてつい先日、この2つの解任劇を結ぶ事実がニュースになりました。 5月12日「Allardyce holds Newcastle talks(アラーダイス、ニューカッスルと交渉)」 メディアがすっぱ抜く形で明るみに出たこのニュースですが、数日後、このニュースを補足するかのように公式発表がされました。当初は「休みが欲しい」と話し、多くをコメントしなかったビッグ・サムでしたが、正式発表後は「夢に見ていた」とニューカッスル監督就任を喜んでいます。 なにはともあれ、新天地でもスタンドの一番前に座って無線でベンチとやりとりをする、ちょっとかわいらしいビッグ・サムを再び見ることができそうです。 この2つの退任劇は、どうも以前からストーリーが立てられていたような気がしてなりません。ニューカッスル首脳陣にローダー解任の必要性はなかったが、アラーダイスの辞任のタイミングを見て半ば強引に非難し、解任に追い込んだ。そうは考えられないでしょうか。あるいは、アラーダイス退任の話が出てくる以前に、裏でアラーダイス就任の口約束があった可能性もあります。 以上はすべて憶測の世界なのですが、不可解な出来事には必ず裏に意図があると僕は思います。それは「隠し切れなかった尻尾」なのかも知れませんし、「隠れ蓑」なのかもしれません。サッカー界は広いようで意外に狭い。「なんでこのタイミングでこんなニュースが?」とか「なんでこの人がここに?」と思ったら、そこから起こり得る可能性をあれこれ考えてみるのも、サッカー(の周辺)を楽しむ方法の一つには違いありません。それが目論見どおりビッグニュースに発展すれば「あっ、やっぱり!」となる訳です。 シェフチェンコの移籍も、アンリの移籍も、モウリーニョの解任も、きっかけはほんの小さなニュースかもしれません。 最後に、5月23日深夜、川崎クラブチッタにて行われるイベント「フットボリスタナイト」について触れておきたいと思います。 http://www.footballista.jp/night/ 『GOAL!2』の特別試写会とCL決勝のライブ中継という2本立てを大型ライブハウスで体感できるというこのイベントは、おそらく日本中どこを探しても見当たらない、唯一の催しでしょう。恋人と二人で楽しむもよし、仲間と連れ立ってワイワイ騒ぐもよし、一人で参加してこのイベントで大勢の友だちを作るのもよいでしょう。このイベントでは、ミランファンとリバプールファンの応援スペースが設けられるようなので、それぞれのファンの連帯感はとても強いものになるはずです。自宅でのテレビ観戦や小さなバーでの観戦もいいでしょうが、もしあなたが日本一の盛り上がりを味わいたいのなら、この「フットボリスタナイト」に参加してみてはいかがでしょうか。
posted by 『footballista』編集部・宇佐美裕之 |11:57 |
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